今週はなんか忙しくてコンテンツに触れる機会がなかった…。

『ひらやすみ』の説明しすぎないのが心地よい。

『ひらやすみ』第6巻。相変わらず漫画が上手すぎる。ヒロトが退院した後の開放感を表す見開きとか、後半のヒロトとなつみの距離感が伝わってくるすだれの使い方とか。人の感情ってやっぱり言葉だけじゃ物足りなんですよ。そういった意味では心情をモノローグで語らないのはすごくいいですね。最近の説明しすぎ作品に対するカウンターパート。

作中でさまざまな物語が並行して進んでいくのも魅力的な本作ですが、てっきり石川さんとくっつくのかな、と思っていたよもぎさんのエピソードがかなり好き。カタログギフトはねーだろ、とか、二日酔いの朝に味噌汁出されたら惚れてしまうわ、とかとか。良いシーンが多すぎる。

ヒロトとなつみがすれ違う後半のゾンビ映画撮影のエピソードもまさにこの作品の根幹となるテーマを表している良エピソードですね。「無駄なことこそ大事」というのは最近の自分のテーマでもあるので「うんうん」と頷きながら読んでしまいました。これよこれ。

それにしても「『ひらやすみ』って映画化されてたよね?」って思わず口走ってしまうくらい近年の出来の良い邦画の雰囲気があるんですよねえ。今泉力哉監督とか沖田修一監督感がすごいある。

20周年なのに全く話題になっていない…。『住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー』

二十周年&夏休みということで今週は『住めば都のコスモス荘 すっとこ対戦ドッコイダー』を観ていました。実に本放送ぶり。

最終2話、特に動画枚数1万枚超の最終第12話「熱血バトルでドッコイ」はもちろんかなりいいんですが、改めて通して観た時に印象深いのは中盤のいかにもドタバタコメディなエピソードなんですよね。特に良かったのが第7話「栗華の夢でドッコイ」。まあこれはドタバタコメディじゃないんですけど、影の薄いサブキャラである栗華(クリーカ)をがっつり主役に据えるという判断も凄いですし、演出と作画が素晴らしい。コスモス荘の他の面々と違って栗華さんてかなり常識人かつローテンションだと思うんですけど、そんな彼女のエピソードに相応しいしっとりとした演出で印象に残ります。かと思いきや後半にはカロリー多めのアクションシーンがあったりもして。彼女の夢が現実につながっていくというオチも素晴らしく自分好み。当時は全く記憶に残らなかったのにこの歳になって観ると、オールタイムベストの一本です。そうそう、タイトルコールもこのエピソードだけ違っているんですよね。そのあたりの「幕間」感も素晴らしい。

他にも東出太さんの一人原画で、異常なレイアウトかつぬるぬる動く作画が魅力的な第5話「小遣い値上げでドッコイ」も話のしょうもなさと相まって好きなエピソードですね。内容は本当にくだらいないのに、作画が異常に良くて引き込まれてしまうんですね。そうはならんやろ、という謎の演出が多く、作家の色が出ていますね。

推しはやはり梅木瑠璃ことエーデルワイス。EDのゆるい顔がかなり好き。釘宮さんの最初期の仕事という意味でも見どころがあります。

『春あかね高校 定時制夜間部』のそこはかとない暗さが良い

定時制高校を舞台にした日常系コメディ漫画…なのだけど、かなりクセの強い作品。こう、なんというか「無理して明るく振る舞っている感」とでも言うべきか。

主人公のはなおは「着たい服を着たいから」という理由で定時制に通っているのだけど、そのほかの面々はかなりクセつよ系。不登校の子とかはすぐに思いつくんだけど、40歳まで精神病院入りしてようやくシャバに出てきた人とかかっこつけの元ホストとか一対一じゃないとしゃべれないコミュ障とか。

こんな面々が高校生活を送る中でのコミカルなやりとりが売りなのだけど、バックボーンが複雑な人が多いので「これは素直に笑っていいのかな…」というシーンも多く、このあたりが「無理して明るく振る舞っている感」を感じた由。よしえさんの精神科医と歯医者のエピソードとかいい話っぽいんだけど、いや壮絶な人生すぎるだろ…、とかね…。最終話のはなおの「徐々に詰んでいく人生しか見たことがないんだけど 現実にあるのかな本当に 豊かで幸せな人生みたいなやつって」のあたりとかかなり切実。そして自分が一番共感したのはすぐにバックれてしまう癖があるゆめちゃんですね…。すごくわかる。

絵も話もかなり癖があるんですが、それゆえに唯一無二のテイストがあってかなり魅力的な作品。これ1巻で終わってしまうのはもったいないなあ。