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【映画レビュー】『シーズンズ 2万年の地球旅行』:地球の仲間たちのためにコンコルド広場をぶっ潰そう!

投稿日:2016年1月21日 更新日:


 最初に断っておくと、映像は非常に素晴らしい。極寒の地のバイソンの群れから始まり、メンフクロウの高い鳴き声、森のなかをゆく鹿の親子、オオカミの狩りとそれから逃れようとするイノシシ、夜の森を飛ぶムササビ、小動物の巣篭もりを上から写したカットも楽しい。四季の巡りを通して、森に生きる住人たちの生々流転が活写されていく。

 とりわけ印象的なのが、森のなかを駆けるオオカミを並走して撮影した映像。木が密集している上に、起伏も激しい森の地面をオオカミと同じ速度で走るために作られたという特殊な撮影機材によって、あたかも自分が獣になったかのような疾走感を味わえる。逆説的な物言いになるが、ドキュメンタリーであることを忘れてしまうような劇映画的臨場感で、この場面だけでもこの映画を見る価値は十分にある。

 ところが、この映像美の世界にだんだんと暗雲が立ち込めてくる。「2万年の地球旅行」というサブタイトル通り、2万年前から現代までをドキュメンタリータッチで構成した作品であるわけだけれども、そもそも現代の動物たちを使って2万年前からの歴史を再現しようとする所から違和感を覚える。これは本当にドキュメンタリー映画なのか?そして中盤、原始人類が登場してはじめて、「これは再現ドキュメンタリーだ」ということに気付く。「物語」の後半は人間と動物の関わりを描きつつ、過去の人類の愚かな環境破壊を糾弾するかのような雰囲気に傾いていく。自然ドキュメンタリーを観ていたはずなのに、第二次世界大戦の一場面が出てきたりもする。

 極めつけは終わりの方に映るコンコルド広場で、ナレーションが「ここは、1万年前には豊かな森林が広がっていた場所です」。うーん、地球上の大抵の都市は1万年前には豊かな森林だったと思いますよ。この言葉を聞いてどれだけの人間が「コンコルド広場を森に戻そう!」と思うのだろうか。

 もちろん、過去の人類の行き過ぎた環境破壊は反省されるべきだし、動物の目線を借りてこの問題に取り組むという切り口も、有効な方法の一つだと思う。しかし、この映画を見た後の歯切れの悪さはなんなのだろう。それは一つには、ある意味だまし討ちとも言えるようなやり方にあるのだと思う。おそらく、この映画を見に来る人の9割方は「(かわいい)動物メインの自然ドキュメンタリー」を期待して来るのだとおもうけれども、いざ終わってみたら「動物たちのおうちが無くなったのはどう考えても過去の愚かな人類が悪い!」みたいなメッセージが届いているという…。ケーキを食べに来たら中身が二郎系だったみたいな。最後に繰り返すけれども、映像は本当に素晴らしい。

 ついでに付け加えておくと、嫌な予感しかしなかった鶴瓶氏の吹き替えナレーションは最初のほうこそまともなのだけど、随所随所でいつもの関西弁に戻っており、美しい映像と絶望的に合っていない。

基本情報

シーズンズ 2万年の地球旅行  Les Saisons97 min

監督:ジャック・ペラン/ジャック・クルーゾ

出演:笑福亭鶴瓶/木村文乃

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