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【映画レビュー】『神々のたそがれ [神様はつらい]』

投稿日:2014年4月29日 更新日:


 恐ろしい映画を見た。
 画面を覆う泥とも糞尿ともつかないどろどろの粘着性の物質。タールのような血のような黒い液体が注がれ、そこにハラワタが加わる。王が顔を突っ込む水盆の水でさえも本当にきれいな水であるのか…。全編白黒であることが幸いしてか出てくるどろどろはどれもよくわからない。グロテスクさが軽減されているのと反比例して、「よくわからなさ」は加速している。泥のように見えるそれはもしかしたら牛の糞かもしれないし、虐殺された誰かの腸なのかもしれないという疑惑が常に頭の片隅に浮かんでいる。

 例によって、ストルガツキー兄弟の原作からはSF分がごっそり抜き取られている。地球から来たはずの「神様たち」は暴徒に対して銃を抜くこともなく、ただ断片的な知識だけで人々から崇められている。時折思い出したように挟まれる「地球」という単語や汚れないハンカチ、そして終りと始まりを告げるサックスなどはここが「地球ではない」ことを示すアクセントとして機能している。SF者としては物足りなくもある反面、一から十までナレーションで説明していたら恐ろしいほどの駄作になったに違いない。

 物語は全編が混乱の最中にある。フレームの中では常に必要以上の人々が蠢き、知って知らずかカメラに目線を投げかけてはフレームアウトしていく。カメラの前を横切るソーセージが、誰かの糞尿が、鶏の頭が視界を遮る。ストーリー上、おそらく重要であろう人々があっけなく死んでいく。物語の後半で「神」であるドン・ルマータ(レオニド・ヤルモルニク)は「ここは地獄だ」とぼやく。そして「神もつらいんだ」とも。しかし、同時に「地球には帰らない」と叫ぶこの神の「つらさ」はいかばかりか。

 この映画を見る我々は画面の向こう側の愚行を笑って見ることができるのだけれども、同時に向こう側からも見られている。「神」ドン・ルマータは我々自身のことでもあるが、彼が支配している「無知蒙昧な現地人」もまた我々のことであるし、少なくとも一度通ってきた歴史である。そうだ、これは歴史の物語だ。カメラに視線を投げかけて去っていく人々は、遠い未来の、あるいは過去の我々の姿であるかもしれないのだ。フレームの中にある、この「どこかで見たことのある」架空の惑星の小さな世界は、唾液と鼻水と血と泥と糞尿と、そして数えきれないほどの愚行の痕跡をもって我々に迫ってくる。傍観する神を尻目に淡々と進む、この世界の人々の静かな息遣いと圧倒的な熱量!

追記(2015年3月1日)

 めでたく配給が決まりましたね!てっきりイメージフォーラムだと思ってたんですが、ユーロスペースで2015年3月21日(土)から!個人的には元の『神様はつらい』のタイトルのほうが良かったですが…(^_^;)

 この調子でまたゲルマンオールナイトとかやってほしいなあ。あとコンプリートBlu-rayBOX!この精細感はBlu-rayでなければ!

リンク ユーロスペース

基本情報

神々のたそがれ [神様はつらい]  Трудно быть богом [Hard to Be a God]177 min

監督:アレクセイ・ゲルマン

音楽:ビクトル・レベデフ

脚本:アレクセイ・ゲルマン/スベトラーナ・カルマリータ

撮影:ウラジミール・イリイン/ユーリー・クリメンコ

出演:レオニド・ヤルモルニク/アレクサンドル・チュトゥコ/ユーリー・アレクセービチ・ツリーロ/エフゲニー・ゲルチャコフ/ナタリア・マテーワ

上映開始日:2015年3月21日

公式サイトhttp://www.ivc-tokyo.co.jp/kamigami/

公式Twitterhttps://twitter.com/kamigami_german

原作はこちら。


2014年のすいちく’s ベスト映画1位でございます。

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