映画レビュー

【映画レビュー】『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』

投稿日:2014年5月4日 更新日:


 一言で言ってしまえば、「社会不適合者でアル中のオヤジが周囲のいい年した大人を巻き込みながらただひたすらにビールを飲む話」なのだけれど、そこはエドガー・ライト監督とサイモン・ペッグ&ニック・フロストのコンビ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』もかくやという恐ろしいテンポで話が進み、アバンタイトルの回想シーンが終わるやいなや特に小難しい理由を付けるでもなく、あっという間にかつての仲間を集め(注:20年後です)、故郷に凱旋してしまう。

 そしてそこから始まる怒涛のパブクロール!学生時代に制覇できなかった「一晩で12軒のパブを回って計12パイント飲む」。ただそれだけなのだけれど、1パイントって約0.5リットル(473ミリリットル)なので、よく考えれると恐ろしいことではある。さて、予告編でもわかるように、パブ巡りを続ける中でゲイリー(サイモン・ペッグ)たちは、町の異変に気付き、謎の侵略者との戦いを繰り広げていく。…のだけれど、この映画が本当に恐ろしいのはここからで、普通に考えれば①町から脱出する ②建物に避難して敵を迎え撃つ の2通りの選択肢があると思うのだけれど、なんと彼らはパブ巡りを続けるのである!もちろん、もろもろの理由によって途中離脱してしまう者もいるのだけれど、ゲイリーだけは最後までパブ巡りにこだわり続ける…。

 思うに、この映画における「パブクロール」とはゲイリーにとっての一種の通過儀礼なのだ。物語の後半でゲイリーはアンディ(ニック・フロスト)たちに、自らの心情を吐露する。「お前らは金も地位も家庭もある。でも俺は自由だ!」と。自由は子どもの特権である。そして同時に、この儀式は彼にとってアイデンティティを確認する場でもある。「俺は空っぽだ。俺にはこれ(パブクロール)しかないんだ」。だから、ゲイリー・「キング」となった彼は最後に水を求める。子どものような無邪気な笑顔を浮かべながら。

基本情報

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!  The World's End108 min

監督:エドガー・ライト

音楽:スティーブン・プライス

脚本:エドガー・ライト/サイモン・ペッグ

撮影:ビル・ポープ

出演:サイモン・ペッグ/ニック・フロスト/パディ・コンシダイン/マーティン・フリーマン/エディ・マーサン/ロザムンド・パイク/ピアース・ブロスナン/デビッド・ブラッドリー/ビル・ナイ

関連商品

関連コンテンツとスポンサードリンク

-映画レビュー

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

【映画レビュー】『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』:東映まんが映画の遺伝子を見た。

TAAF2015でコンペティション部門グランプリを受賞したトム・ムーア監督『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2016年8月公開)のレビューです。東映長編動画のテイストありつつ、ジブリ的要素もありつつ、それでいて異国の雰囲気を持つ傑作アニメーション映画。

no image

【映画レビュー&レポート】『息の跡』:3.11後の世界を生きる。

小森はるか監督による震災ドキュメンタリー映画『息の跡』のレビューです。震災後の世界を力強く生きる一人の男性を映し続けた、他のドキュメンタリーとは一線を画する作品です。関東最速上映の2016年3月10日新文芸坐にて。小森はるか監督と映画評論家・三浦哲哉さんのトークショーの覚書もあります。

『オン・ハピネス・ロード』:市井の人々によって紡がれる台湾現代史【映画レビュー@TAAF2018】

東京アニメアワードフェスティバル2018(TAAF2018)の長編コンペティション部門グランプリ作品、サン・シンイン監督『オン・ハピネス・ロード』のレビューです。台湾の民主化の歴史とそれに絡めるように語られる一人の女性の半生を描いた物語。完成度がめちゃ高いです。後で一次選考委員(堀川憲司さん、本郷みつる監督、叶精二さん(モデレーター))による解説の覚書を追加予定。

【映画レビュー】『アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ』

カリコレ2016で上映された『アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ』のネタバレ(あまり)無しレビューです。揚げたて(じゃない場合もある)ドーナツが襲ってくる映画。監督は『アイス・ジョーズ』でおなじみのスコット・ホイーラー。あの名作『アタック・オブ・ザ・キラートマト』へのオマージュがあるようなないような。

【映画レビュー】『シーズンズ 2万年の地球旅行』:地球の仲間たちのためにコンコルド広場をぶっ潰そう!

ジャック・ペラン&ジャック・クルーゾ監督によるドキュメンタリーっぽいお説教映画『シーズンズ 2万年の地球旅行』のレビューです。映像はとてもいいのにだんだんと説教くさいことを言い出す面白映画です☆

search