はじめに

 今年も東京アニメアワードフェスティバル2018のコンペ作品をコンプ!疲れたけど得るものは多かったなー。長編コンペのレベルが下がったような気もしたけども…。代わりに全然新作観てないけど…。

本の方のログ

今月のおすすめ!

[cf_cinema format=3 no=1 post_id=8369 text=” めちゃくちゃ評判良かったのでこちらも期待値をガンガン上げて臨んだのだけど、それをあっさり乗り越えてきた!普通に大傑作でしたね。まず、みんな言ってるけど死者の国のビジュアルが圧倒的。メキシコの「死者の日」が祝祭的雰囲気だというのは『007 スペクター』とかホドロフスキーの『エンドレス・ポエトリー』で知ってはいたんですが、本作のそれはアニメーションということもあって、ひたすらに鮮やか。日本のお盆のイメージしかない人間なので、死者の国に入る前の墓地での場面もかなりの異文化的衝撃を受けたんですが、死者の国の垂直的な広がりと南国的な色彩の暴力は未知の領域でただただ新鮮。住んでる連中も基本的にはのんきで陽気だし、日本のジメッとした地獄/天国とは全く違いますね。ベースになっているのが明るいと、こうまで違うのか!という驚きがあります。で、予告編見た時点ではビジュアルと音楽で押してくる映画だと思ったんですよ。そしたら、脚本も抜群にいいんです!特に中盤にある逆転劇には見事に騙されました。ミスリードと伏線の使い方が実に上手い。実は死者の国からは簡単に帰れるんだけど、簡単には帰るわけにはいかないという主人公の強い動機が物語の原動力であり、「家族という絆と呪い」というテーマにつながっているのも良かったですね。家族というものが大切なものであると同時に個人を縛る呪いになってしまっているということを描いたという点では家族制度のモダンな解釈であり、現在進行系で変わりつつあるものを描いているという点で時代性の高い作品になっていると思います。”]

観た映画一覧(時系列順)

[cf_cinema format=3 no=2 post_id=8062 text=” 「怪物」がどう見ても実写版ツェッドさん!動きがめちゃ可愛い!でもすごく不安にもなる(案の定…)!デル・トロ監督、マイベストは『パンズ・ラビリンス』だったんですけど、この映画も甲乙つけがたいですね…。冷戦下のアメリカの雰囲気、特にあの研究所の重厚な感じが実に良かった。美術全般的に最高。幾つもの伏線が結実するラストにも驚かされましたね。しかし、主人公たる怪物とイライザ(サリー・ホーキンス)に感情移入するのは当然だと思うんですが、マイケル・シャノン演ずるストリックランドも魅力的なキャラクターでした。買ったばかりのキャデラックがボロボロになるころで思わず涙…。全体的に重苦しくシリアスな展開にも関わらず、ちょくちょく挿入されるネタも面白かった。クソマズパイのくだりとかトイレで手を先に洗うか後で洗うかのとことか(後で洗えや!)。ところで、公開前にちょっと話題になってた「ぼかし問題」、確かに腰の動き激しかったけど、数秒やで…。物語にはそれほど影響しない(しかし、この場面が後半のイライザと「怪物」の抱擁のシーンと対比的に描かれていることは指摘しておいてもいいだろう)、ので思ったよりも気にならなかった…んだけど、あの美しい画の中に唐突にぼかしが現れるのには違和感は拭えない。あと猫さんなー…。おいジジイ!居眠りしてんじゃねーよ!”] [cf_cinema format=3 no=3 post_id=8064 text=” ちょっとこれ……、脚本と設定、ガバガバじゃないすか…。なんで23世紀末に地球滅亡してんの??まあ滅亡するのはいいんだけど、なんでわざわざ恒星間移民船が必要なの??22世紀の科学力で普通に恒星間移動できますよね、旅行感覚で。それこそどこでもドアで。まあこの部分も23世紀に科学力が衰えたんだろう、と好意的に解釈(でもタイムマシンあるんだよな…)しても、なぜ海賊団がわざわざ21世紀にやってきて地球のエネルギーを横取りしようとするのか全くわからん。多分、時間線が分岐するから問題ないんだと思うんだけど、いや、それにしてもな…。そもそもなんで海賊団なのかが全くわからんし、財宝を集めていたのが最高に意味不明。美術品を集めてたのならまだわかるけど…。移民先に金銀財宝持っていってどうするんだ?海賊団が地球以外の星からやってきた、というならまだわかるんだけど、しっかりくっきり「地球大好き!」とか言っちゃってるし…。その点、「アニマル惑星」とか「ブリキのの迷宮」とか「宇宙小戦争」とかは上手くやってたよね…。川村さんとかいう人、過去のドラえもん全く観てないのかな…。せっかく星野源さんが主題歌歌ってるのに…。この主題歌がまたいい歌で、個人的気には『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』でPerfumeが歌う「未来のミュージアム」に匹敵する名曲。作画もとてもハイクオリティ、特に空き地で出来杉君が宝島の話を始めて、のび太が家に帰るまでの一連のシークエンスが非常に良かった。テーマもちょっと時代がかってるけど、「大人は絶対に間違えないの?」のあたりとか良かったんですけどね…。脚本入れ替えて作り直して欲しいレベル。“] [cf_cinema format=3 no=4 post_id=8066 text=” 芥川さん(の羅生門)が溶鉱炉の中に沈んでいくシーンで涙…。いや、マジでそういうシーンがあるんだって!敦くんと芥川さんの共闘も映画ならでは(2期の最後で一緒に戦ってるけど!あれよりもくだけてる感じ!尊い!)という感じでよかったし、芥川さんが気持ち悪くなかった。福沢社長と森先生もね~すごくいいシーンがあるんですよ…。尊い。自分の異能力が分離して襲ってくるというめちゃくちゃチートな能力で横浜中の異能力者が襲われるんですが、元から暗殺者の鏡花ちゃんがすごく頼れる感じになっていて良い。見せ場も多い。でも一番活躍したのはたぶん中也。あの能力、強すぎでは…。例によって太宰さんとのチームワーク(チームじゃないのに!)が気持ち悪いレベル。テーマ的には自分の一部である忌まわしき部分(異能力)をどう肯定し、生きていくか、という自分好みなやつで最高!その点で、敦くん/鏡花ちゃん/芥川さんという対照的ながら似通った登場人物をチームにして描いたのは正解だったと思う。国木田さんとか自分の異能力に負い目とか全然無さそうだしね。まあそのせいで全く見せ場のないキャラも結構いたんだけど(特にポートマフィア側)、このへんはトレートドオフですね。しゃーない。あ、あと太宰さんの「にゃ~ん」が聞けたので良かった(小並感)。”] [cf_cinema format=3 no=5 post_id=8404 text=” 手描きなんだけど、たまにFlashアニメみたいなぎこちない動きをする変なアニメ。でも背景美術とかがたまらなく良い。出てくるキャラクターも普通の庶民なんだけど、妙に強烈なキャラで面白い。”] [cf_cinema format=3 no=6 post_id=8436 text=” 靴下を片方だけ食べる妖怪だか妖精がシマを巡って抗争を繰り広げる話。イカれてるぜ!”] [cf_cinema format=3 no=7 post_id=8410 text=” 正直、何故これがコンペに食い込んだのかがわからない…。主人公のウサギと敵方のモグラがとにかくイラつくのはいいとして、そんなに映画祭向けの作品じゃないと思うんだけどなー。ただ、途中のドタバタは割と盛り上がる。”] [cf_cinema format=3 no=8 post_id=8408 text=” 長編コンペでは頭一つ抜けてたのでグランプリも納得。毎回グランプリは翌年くらいに上映されるので、今から楽しみ。”] [cf_cinema format=3 no=9 post_id=8138 text=” 短編部門優秀賞の『キャサリン』も良かったけど、個人的にはパブロ・ポレドリ監督の一人制作作品『コーポレーション』が好み。予告編に置いてます。
 上映作品一覧は以下の通り

  1. 北川惠/長井勝見『あの日まで』
  2. ウィンシュルス・ワルゲンヴィッツ/デニス・ワルゲンヴィッツ『死神の父と息子』
  3. ☆ ジャナ・ベクマンベトワ『ちゅんちゅん』
  4. 浅野陽子『すみっこのこ』
  5. カーロン・ハーヂ『ザ・エビル』
  6. ブリット・ローズ『キャサリン』
  7. ☆ セルシー・ケア『燃え尽きる』
  8. フランク・ディオン『頭が消えていく』
  9. アーシェムボルト・マルヴァン/ブコウ・デサール/ヒュグ・マーク/クッケ・アルノード/マイン・ヒューゴ/オルソ・マンゾネッタ・ヴィンセント/ヤン・カイ『ピストン』
  10. ★ パブロ・ポレドリ『コーポレーション』
  11. ナディア・アンドラセブ『舐める音』

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[cf_cinema format=3 no=10 post_id=8183 text=” このスロットはとにかく短編グランプリを取った『ネガティブ・スペース』!早く映像ソフト出して欲しい!あとキューライス先生の『鴨が好き』もドッカンドッカンウケてた。
 上映作品一覧は以下の通り。

  1. ウリ・クラノット/ミシェル・クラノット『何も起こらない』
  2. アリ・アルー/マーチン・ハーメン/ジュルス・リゴレ/サミュエル・クルゲルツ『イチゴの香水』
  3. ★ マックス・ポーター/ルー・クワハラ『ネガティブ・スペース』
  4. フレデリック・トレンブリー『人形は泣かない』
  5. イェブゲニヤ・ジルコヴァ『龍の橇』
  6. エミリー・ジノ『暗い暗い森の中』
  7. ツェン・ユ・ツァイ『野菜とライムソース添えのローストチキン』
  8. ☆ キューライス『鴨が好き』
  9. ティンティン・リウ『初咲の花』
  10. シャーロット・ポンチン/タチアナ・ジュスケウィッツ/ベノワ・ルロ/フランク・メニゴ/ゾー・ネロ『ケイロ』
  11. ズィライ・フェン『アンフォの通り』

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[cf_cinema format=3 no=11 post_id=8286 text=” 認知症を扱ったショートフィルム『メモ』が今回の短編コンペの中ではマイベスト!予告編に置いてます。
 上映作品一覧は以下の通り

  1. アデル・エルバッドラウィ『長い道のり』
  2. スレッシュ・エリヤット『籠』
  3. チンツェン・チュ『やっと ―ぎりぎりのところ―』
  4. ☆ チュアン・ユ・シン『あたしのこと聞こえてる?』
  5. 大谷たらふ『Serph Feather (overdrive version) 』
  6. イィシャン・ワン『私の修正』
  7. マオ・チャオ『靄の都市の秘密』
  8. ギヨーム・オーベルヴァル/レ・ドゥゾール/サイモン・ゴメ/ティモシー・ヘック/ヒューゴ・ァグロンジュ/アントニー・ラローイェ/デイビット・ラッシュカリ『けもの』
  9. ヴィニー・アン・ボセ『あなたのブラウンナンバーはいくつ?』
  10. ★ ジュリアン・ブクエール/エレーナ・デュプレソワール/ジュール・デュラン/ヴィヴィアン・グィマレ/イネ・シーバー『メモ』
  11. ロビン・ペリシエール/ジェローム・バッティステリ/マチルデ・カーティニー/ニコラス・エヴェン/マエナ・パイレ/ジュディス・ワーラー『本の向こう側』
  12. ☆ ニコラス・キャピテイン/セリーヌ・デステール/ルーカス・ダークハイム/レニ・マロ『オフ・シーズン』

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[cf_cinema format=3 no=12 post_id=9729 text=” 一つの学校の中でも表現の幅が広いなー。特に良かったのは、幼児の空想力が爆発するオウ・イ・シュウ監督の「初めての幼稚園」。遊具がガチャコンと変形していくあたりが好き。上映作品一覧は以下の通り。

  1. ヨウ・シ・テイ『殺人犯』
  2. グ・ガ・テイ『チャオ・チャオ』
  3. ヒ・シ・ケン『死神訓練班』
  4. ゼン・カイ・クン『スイム・ユアウェイ』
  5. ★オウ・イ・シユウ『初めての幼稚園』
  6. チン・アン・キ『狂犬病』
  7. ハン・エイ『虎爺』
  8. キュウ・コク・イ『彼ら』
  9. チョウ・セ・カイ『試練』

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[cf_cinema format=3 no=13 post_id=8344 text=” 新文芸坐の「夜フェス」にて。ヨン・サンホ監督の長編第二作。とにかく、主人公の父親(というかこっちが主人公だよね…)がパワフルでクソで最高(最悪!!)!!ツバをカーーーーッペッ!って吐き出すファーストカットからもう最高!!これだけでこいつの性格が完全に把握できるのすごい笑 まあこのおっさんの顔が怖すぎるってのもあるんだけど。板垣恵介っぽいキャラデザ(親父のみ)。こいつが娘の入学金使い込むわ、礼拝所に殴り込みかけるわとやりたい放題で最高!他の登場人物の思惑とかどこ吹く風でまさに我が道を行くオラオラ系主人公ですね。何回か、「あ、ここで改心するんやな…」というポイントがあるんですが、ことごとく外してくるのがいっそ気持ちいい。自分のせいで娘が風俗堕ちして、奪還しに行く場面、ちょっとリーアム・ニーソンみを感じたんですが、全く反省していないのがすごい。物語の後半、自分たちが騙されてたことが判明した後、おっさんの旧友が「騙されてたかもしれないけど、天国に行けたこいつは幸せだったんだ」と語る、物語の根幹的なテーマに肉薄する場面があるんですけど、これから詐欺師の事務所にカチコミかけるおっさんが気になりすぎて、いい話が全く頭に入ってこない笑 社会派アニメなのにおっさんのキャラが濃すぎるんですよ。最後の方とか完全におっさん応援モードですからね。殺ったれーー!って叫びたくなる。『我は神なり』応援上映、絶対やってほしいな!結局、親父が帰ってこないで、みんな騙されてたほうが明らかに被害が少なかったというひどい話でした。あいつ来なければ死者0で済んだのになあ…。最後、おっさんが「俺は正しかったのに!!!」って叫ぶシーンで本編が終わるんですけど、脳内で「言い方あぁあああ!!」(白石監督の『ノロイ』のアレ)ってツッコミ入れざるを得なかったです。”] [cf_cinema format=3 no=14 post_id=8060 text=” まー、あれですよね。悪いのは親父ですよね。ちゃんと一族郎党皆殺しにしなかったからこんなことに…。超科学力を持ったアフリカ奥地の謎の国ワカンダが、えらい魅力的で、これだけでご飯3杯分くらいの価値があります。ガジェットとかはトニー・スタークんちにもありそうなんで別に目新しくないんですが、部族社会の文化がいいんですよ。各部族の長が集まる会議の場面が何回かあるんですけど、みんな個性あって。個人的に良かったのは緑のスーツをパリッと着こなしたおじさん(名前がわからん)。現代アフリカっぽいよね。対照的に、バリバリのバーバリアンスタイルのエムバク(ウィンストン・デューク)も良かった。例によって最後助けに来るし。で、この国の王が決闘で決められるんだけど、この場面の儀式感もまた良くて…。どことなく、ミュージカルっぽいのね。でもプロトコル的には完全にいかれてて、キチガイでも王になれちゃうっていう。鉄人28号みたいだな。「強大な科学力(武力)をどう使うか」というテーマについては現代日本を連想するし、「武力があることが知れたら世界中から袋叩きになる」あたりはどうしてもイラクが頭をよぎる。最後の演説でティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)が言う「賢者は橋を作り、愚者は壁を作る」は現代のアメリカではなかなか刺激的な発言のようにも思える。あとアーマード・サイが強い!”] [cf_cinema format=3 no=15 post_id=8374 text=” むむむ…なんかこの雰囲気、観たことがあるぞ…。と思ったら『ロブスター』の監督なのか。あちらもなかなか理不尽な世界観でしたが、今作も負けず劣らず。むしろ、現代を舞台にしてしあわせ家族が惨劇に巻き込まれるので、より理不尽な感じがします。ニコール・キッドマン演ずる主人公の妻が「夫の不始末を私達が負う責任があるのかしら?」と問いかける場面があるんですが、そりゃそうだよね。そして「結局、あの病気?はなんだったのか」という点は最後まで説明されない。あのクソウザガキの正体も。観た人はモヤモヤしたものを抱えたまま劇場を後にすることになる(と思う)のだが、そういう意味では観客もまたこの不条理劇の中に取り込まれてしまっている。「45日以内に配偶者を見つけないと動物に変えられてしまう」という奇想天外な設定を大真面目にやりきった前作『ロブスター』と同じように、本作でもランティモス監督は突拍子もない呪いを「いかにもそれらしく」描き出すことに成功している。日常と非日常をゆっくりと揺れ動くかのようなティミオス・バカタキスのカメラワークが良い。正面から映した画がいつの間にか真上から見下ろす形になってるカットとか。物語の下敷きになっているのは近親者を生贄にする苦悩を描いたエウリピデスの『アウリスのイピゲネイア』なんだけど、その筋で行くとあのエピローグの後も悲惨なことになるような…。あと最後の猟銃構えてグルグルまわるのがあまりにも滑稽すぎてさすがに笑ってしまった。いや、もっとスマートな方法あったんじゃないですかね…。医者なんだから薬使うとか…。コリン・ファレルがやけっぱちになった表現としては良かったと思うけど。”]

まとめ

 『リメンバー・ミー』、年間ベストに入るかは微妙だけど、カラフルで立体的なビジュアルの素晴らしさはさすが世界のディズニーって感じですよね。テーマも良かったし。今年はTAAFのレビューも長編・短編ともにちゃんと書けたのでみんな読んで!