本のレビュー

【本のレビュー】今月読んだ本まとめ:『プラネタリウムの外側』から。【2018年3月】

投稿日:2018年4月1日 更新日:


はじめに

 今月読んだ本は当たりばっかりでしたねー。TAAFとかイベント多目だったんですけど、まあまあ読めた方ですかね…。漫画ばっかだけど…。

良かった本5冊くらい

宮内悠介『超動く家にて 宮内悠介短編集』

 ゲラゲラ笑いながら一晩で一気に読了。宮内先生、比較的シリアスな作風という捉え方だったんだけど、本書は全編これバカSF。「宮内悠介短編集」じゃなくて「宮内悠介バカSF短編集」の方が正確だったのではないか。テイストとしては『スペース金融道』が近いけど、あれよりも悪ノリが激しい。ギブスンの『クローム襲撃』を村上春樹の『パン屋再襲撃』のテイストで書いた『クローム再襲撃』(あとがきも春樹み)、パイロットと支援AIの漫才ものかと思いきやまさかのところに着地する『夜間飛行』あたりが良かったけど、やはり表題作である『超動く家にて』の出来が素晴らしい。あとがきで「1ページに1個叙述トリックを入れた」と書いているように、ページをめくる度に「私聞いてない!」という新たな設定がどんどん出てくる。実は舞台が✗✗だったり、実は登場人物が熊だったり…。1ページ毎に爆笑してしまうのだけど、そこに真面目くさったアホみたいな挿絵が追い打ちをかける…。「定番」の絵とかほんとずるい。この一編だけでも元取れますわ!

篠原健太『彼方のアストラ』

 タイムラインで絶賛され、友人からも大プッシュされたので読んでみたけど、たしかにこれは面白い!1巻、2巻までは、まあぶっちゃけ普通のサバイバルSFものなんですよね。が、続く3巻、4巻でぐんぐん面白くなる。特に4巻では、それまで語られなかった様々な設定が一挙に押し寄せてくる。「え!嘘やろ!!」って10回くらい叫びながら読んでた。ちょうど上に挙げた『超動く家にて』が超叙述トリック小説なんだけど、どことなく同じようなテイストを感じた。まさか登場人物たちの共通点が✗✗だったとは…、出発地が○○じゃないとは…。いくつもの伏線が上手く貼られていて、かつ綺麗に回収される。5巻というコンパクトさゆえの物足りなさと収まりの良さ。最終5巻はかなり駆け足になっている印象はあるし、ハッピーエンドすぎる感はあるものの、物語を美しく収束させているのは否定できない。出来の良い一本の映画を観たかのような読後感。かなりオススメ。

麻生鴨『伴走者』

 これもTwitterのフォロワーさんにおすすめされた本。ブラインドマラソンとブラインドアルペンスキーの話なんだけど、軸となるのがタイトルにもなっている「伴走者」。一言で言っちゃうと、「目の見えない競技者の目になる人」なんだけど、競技者自体が晴眼者に迫る技量の持ち主である場合、伴走者にも世界レベルの高い技術が求められるんだとか。で、この小説はそんな伴走者の視点に立った2篇の物語。どちらの話も盲者のキャラクターが良い。悪知恵の働くふてぶてしいおっさんと、恋に恋する、あまりやる気のない女子高生。ちょくちょく「全盲ギャグ」が挟まれるのも良いし、特に「冬・スキー編」では全盲者の日常生活が丁寧に描かれていて、取材の質の高さを感じさせる。そして、情景が眼前に広がるかのような描写力に優れた文章が実に良い。本当にその景色を見ているかのような錯覚に陥る。どちらも必ずしもハッピーエンドとは言えないものの、こんなにも爽やかな読後感の小説は久しぶりだ。年間ベストに絶対入れたい。

背川昇『キャッチャー・イン・ザ・ライム』

 ラップバトルで部活もので百合で、という盛り沢山なように見えて綺麗にまとまっている。ラップバトルっていうのがまずいいよね。漫画で扱ってるのがあまり無いし、インドア派の人間には縁遠いので新鮮なことばかりだし。ところどころに基本的な事柄の解説が挟まれているので、初心者にも安心。そして、主役となる4人の少女がまたいい。特に主人公の皐月ね。人前で全然話せないっていうラッパーにあるまじきキャラだけど、それゆえにめちゃくちゃ親近感あるし、彼女の成長が軸となっているのも物語としてわかりやすい。根暗ラッパーというキャラ付けも成功してるよね。絵柄がわりと目が大きめなのが特徴で、好みが分かれそうだけど、個人的にはすごく好き。コマの扱いも独特で、4コマがベースかと思いきや普通の漫画の体裁になるし、ここぞという時は2ページで縦4コマという大胆なコマ割りがあったりする。部長決定戦のところとか印象的。題材が独特なのでとっつきにくいかもしれないけど、これはすごくオススメ。今後が楽しみな作品です。

早瀬耕『プラネタリウムの外側』

 去年買った『未必のマクベス』がめちゃんこ面白かったので、即購入。表面は緩めの恋愛小説に見えてれっきとしたSF小説なのであった。最初のエピソード「有機素子ブレードの中」は日本を縦断する寝台列車での男女の出会いから始まるのだけど、恋愛もののパロディのような偶然の重なりが描写されるかと思いきや、突然それまでの出来事が仮想現実の中で繰り広げられるシミュレーションだったという事実が明かされる。しかし、その「有機素子ブレードの内側」の外側である「この世界」は「どこの内側」なのか。そのあたりのネタバレはないのだけど、その「もしかしたらここも内側なのかもしれない」という曖昧さが面白い。そして、そのメタSF的な構造をさり気なく意識させつつ、「内側の世界」(そういえばこの小説という形式自体が「内側」なのであった)に夢中にさせてくれる、細やかな描写の数々。『未必のマクベス』から思っていたけど、人間同士のドラマティックでない会話がとても上手い人ですよね。5篇の作品の中ではやはり表題作である「プラネタリウムの外側」が出色。これは死んでしまった元恋人を仮想現実で再生させる女性の話で、そこを仮想現実とは認識していない(はずの)彼との会話が日常から飛躍していくあたりが面白い。「>衣理奈は、プラネタリウムの外側にいるんだね」とか。あと会話ではないけど、「有機素子ブレードの中」の「駄目だっ!そこは設定していない」はめちゃくちゃ言ってみたい台詞!

まとめ:その他良かった本&来月読む本

 今月は粒ぞろい、どれもこれも面白かった!年間ベストに入れたいやつばかり。中でも『プラネタリウムの外側』は絶品でした。

その他良かった本

 喫茶をテーマにした短編連作集。フラットな読みやすい絵で、いかにも入ろうなキャラクターが良い。個々のエピソードが緩やかに繋がりあっているのも短編連作ならでは。自販機の話が好き。

 こちらも短編連作集。安定の道満節。どれもハズレ無し。

来月買う本

 気付くと出てるやつ。前巻の引きがなかなか強烈だったのでどう展開するか楽しみ。

 大日本帝国とドイツ第三帝国が第二次世界大戦で勝利した世界を描く『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の続編。前作と違って今回はメカバトルてんこもりだとの噂。絶対買うでしょ。

読んだ本一覧

suitikuの本棚 – 2018年03月 (38作品)
伴走者
伴走者
浅生鴨
読了日:03月08日
評価5


空の中 (角川文庫)
空の中 (角川文庫)
有川浩
読了日:03月15日
評価4


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