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大人のピタゴラスイッチ映画
【映画レビュー】『イレブン・ミニッツ』

      2017/07/20

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 「音」が印象的な映画である。5時の教会の鐘から物語が始まり、車両盗難の警報音、救急車のサイレン、高度を下げる飛行機、窓から飛び込んだ鳩が鏡を割る音。分断され、細切れになった11分間の物語を、これらの音が繋ぎ止める。そして、映画全体を覆い尽くす低く唸る不協和音。

 映画は、その最初から何かが起きそうな不穏な空気に満ちている。ホテルの一室、各部屋の電話線を抜いて回る映画監督の男(リチャード・ドーマー)。女優として、彼の元を訪れる婚約したばかりの女(パウリナ・ハプコ)、彼女を追うが部屋に入れない夫(ボイチェフ・メツファルドフスキ)。ホテルそばの広場では、おそらく生徒に手を出したか何かで出所したばかりのホットドッグ屋の男(アンジェイ・ヒラ)がシスターたちを相手にホットドッグを売りさばいている。そこからほど近い、街の別の場所では何かに気付いた若い男(ウカシュ・シコラ)が質屋に押し入ろうとしている。

 彼らの他にもホットドッグ屋の息子のバイク便の男(ダビド・オグロドニク)や、ホテルで密会する男女(ピョートル・グロバツキ/アガタ・ブゼク)らが登場するが、とにもかくにも11分しかないとは思えないほどの濃密なドラマが展開される。人から人、場所から場所へとザッピングしていくので、今がどこなのかいつなのか、わかりにくくなるような気もするのだけれど、前述したように「音」がそれらを示す目印となっている。

 全体の輪郭と着地が次第にわかってくる形の映画だが、オチについてはおそらく予想を裏切られるだろう。「空に浮かんだシミのようなもの」が登場した時点で、「あー、こういうオチでしょ。」と高をくくってしまうと、まんまと騙されてしまう。スコリモフスキは曰くありげな要素を散りばめているが、結局のところ、それらは全てミスリードだったというオチにまず驚かされる。例えば、意図してかどうかはわからないが、轟音を響かせながらビルをかすめてゆく飛行機、最後に巻き上がる噴煙、そして『11分』というタイトルは、どうしても「9.11」の悲劇を思い出してしまうが、それ自体がミスリードさせる仕掛けでもある。

 そして、そのミスリードさせる要素も含めて、最後の「ピタゴラスイッチ」的な仕掛けを動かすためだったということに気付く。この最後の数分間のためにあったそれまでの80分弱の物語とそこに張り巡らされた緻密な伏線。登場人物たちの運命的な邂逅を思うとき、冒頭と末尾に置かれた監視カメラの映像は、あたかも監督自身が神であるかのように感じる。

予告編

基本情報

イレブン・ミニッツ  11 minutes81 min

監督:イエジー・スコリモフスキ

音楽:パベウ・ミキェティン

脚本:イエジー・スコリモフスキ

撮影:ミコワイ・ウェプコスキ

出演:リチャード・ドーマー/ボイチェフ・メツファルドフスキ/パウリナ・ハプコ/アンジェイ・ヒラ/ダビド・オグロドニク/アガタ・ブゼク/ピョートル・グロバツキ/アンナ・マリア・ブチェク/ヤン・ノビツキ/ウカシュ・シコラ/イフィ・ウデ/マテウシュ・コシチュキェビチ/グラジナ・ブウェンツカ=コルスカ/ヤヌシュ・ハビョル

公式サイトhttp://mermaidfilms.co.jp/11minutes/

公式Twitterhttps://twitter.com/elevenminutes16

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