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【レポート】第95回アニメスタイルイベント 原口正宏アニメ講義vol.4 データ原口とアニメのデータ

      2016/05/18


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はじめに

 前回まではアニメ史の概観というか、主要4プロダクションの歴史を辿るものでしたが、今回はデータ原口先生こと原口正宏さんの「リスト」にフォーカスした回です。データ原口先生がどのようにしてリストというものに向き合っているのかがわかる数々の証言が得られました!ちなみに、この記事を編集しているのは講義から1年以上経った2016年5月だったりします。。。

 前回の「第92回アニメスタイルイベント 原口正宏アニメ講義vol.3 商業アニメを作り上げてきた4大河とその支流たち2」のまとめはこちらになります。

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 今回もメモしきれなかった面白い話がたくさんあるので、有志の方がまとめてくださったTogetterのまとめの方も読んでみてください!

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原口正宏アニメ講義vol.4 – Togetterまとめ

アニメ講義


!notice!

トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。

登壇者

原口正宏さん(アニメーション研究者。通称、データ原口。以下「」)

小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「」))

第一部

原口さんが来るまでのあれやこれや

■ 原口さん30分遅れる。

■ つなぎとしてサムシング吉松さん乱入!

■ やたらアニメに詳しい巣鴨の一般人のおじさんの話1

■ データ原口さんがどんな人間かというお話。

■ 「バブルガム・クライシス」問題2

リスト制作委員会のタイトルに対する考え方

原 公式が決めたタイトルがあるということは重々承知しているんですけど、100年後のことを考えた時に、資料での表記と映像素材との間でタイトルの違っていると、2つのバージョンがあったのではないかと考えてしまう。例えば『桃太郎海の神兵』3という作品がありますけど、実際のフィルムには「桃太郎」って付いていないんですよ。少なくとも、自分がこの目で見たものについては「見たよ!」ということを示しておきたい。

小 「ゴールドライタン」問題とかもありますねー4

原 特撮界でも同じことが起こっていて、最近は「ウルトラマンT」(タロウ)と表記している人もいますね。「空想特撮シリーズ」から呼ぶのか、とか。でもそうすると「カルピス劇場」とかもいれないといけないし、最近では枠情報はタイトルからは外してます。

小 副題がすごく長いのがあるときはどうするんです?最近だと『暁のヨナ』5とか『アルドノア・ゼロ』6とか。

原 基本的には全部拾うべきだとは思います。大きい文字を優先で。

原口さんとリスト

原 5歳位の時に、「ウルトラマン」と「キングコングの逆襲」7のパンフに載っていた東宝怪獣映画とウルトラマンの全話リストに出会って、「なんてすばらしいものがあるんだ!」となりまして。『ウルトラマン』8は良かったんだけど、次の『ウルトラセブン』9がリストがなくて、で、自分で作って作ってたんですけど、時々わからない怪獣が出てきたりして…。『キャプテンウルトラ』10をやってたときは一回、家族で外食があって、帰ってきたら間に合わなかったんですよ。泣きわめいていたら母親がTBSに電話して聞いてくれたんです。「今日の『キャプテンウルトラ』に出ていた怪獣の名前を教えて下さい」って。もう一回、より難易度の高い時があって、それは『ウルトラファイト』11なんですけど、『ミラーマン』12と『スペクトルマン』13の時は裏番組があったので地獄でしたね。当時の同級生と補完しあったりしてました。

■ ここで乾杯!

原 ここに徳木さん14のリストがあるんですけど、彼はビデオがなかった時期にテレビの前で速記で全部スタッフを書いていたんですよ。で、ここにあるのが『グロイザーX』15のリストなんだけど、「ナック問題」16というものがあって、本放送時の貴重なリストなんです。
 1981年にビデオデッキが登場したので17、「アニメージュ」は創刊号18からこれによって全スタッフを記録するという素晴らしいことをやっていたんですね。でも、当時は数台のデッキでやっていたらしくて、時々抜けが合ったり、量が多すぎて翌月に回すということがあって、結局1年くらいで終わってしまったんだけど、偉大な一歩でした。
 こちらが83年のリストですけど( すごい美品!)、当時はスタッフによって作品のクオリティにかなり差があって、原動画、演出なんかを全部書いていったんですが、あるグループを追っかけていくと、どのスタジオに所属しているのかがわかったというのがあります。
 ある時、『キン肉マン』19のある話数が抜けていたので、東映に手紙を書いたら、東映の製作の目黒さん20という人がとても良い人で、いろいろ教えてくれたんですね。で、そこは埋まったんだけど、他にもどのスタジオに所属しているのかわからない人たちがいて、総務の部屋にいた吉岡さん21に聞いたら教えてくれました。
 テロップには間違いがあるから意味が無いんだ、という人にも何人か会ったんだけど、間違いも記録であって、なにか理由があって間違っていることもあるんですね。例えば、『狼少年ケン』22のテロップで「月岡貞夫」23の「岡」が「丘」になってて、ずっと誤字だと思ってたんだけど、この前、月岡さんに聞いたら、当時、児玉喬夫さん24がテロップ書いてたんですけど、「月岡さんの岡はこっちのほうがいいよ!」という理由でこうなっていて、要するに間違ってなくてペンネームだったんですね。私のところではコンピュータを使ってペンネームの処理をしてまとめています。

第二部

『パーマン』を埋めろ!

小 とりあえず「アニメディア」25見せようよ。

原 真ん中辺りにちょっとサイズが小さいページがありまして…。この当時の細かいものを調べたいときにはまだ使えますよ。こういうよくできた資料が出来ては消え、出来ては消え…。

小 81年なら「アニメディア」、83年は原口さんのリストがある、というわけですね。

原 「アニメダマ」26という雑誌があるんですけど、今日は持ってくるのを忘れました。杉山卓さん27に、「完全版のリストを作りたいんです!」ということで連絡したら「いいよ」ということで正社員で入りまして。完全に趣味みたいなことをインタビューしていました。「どこのスタジオからここに来ました」みたいな。

小 83年のリスト見せてくださいよ。

原 大学の時に作った同人誌ですね。この年、『パーマン』28が始まったんですけど、1人だと失敗する!ということで、2年目から後輩を操ってですね。「君はパーマン係!」と。あと、別の大学の似たようなリストマニアの人と電話で「そこの草冠はどうのこうの…。」ということで補完しまして、そのおかげで84年には全部埋まったんですよ!パーマンが!「『パーマン』埋まりました」という報告したら「涙がでるほど感動しました!」という手紙が来たりしまして(笑)

小 これを含めて2冊の同人誌を作って、これがターニングポイントになったわけですね?

原 当時、「アニメージュ」のスタッフリストはすでにあったんですけど、どうみても放送と合ってないんですよ。特番で飛ばされてても放映日が前の週になってたり。で、鈴木さん29「これじゃパーフェクトじゃないですよ」ということを言ったら「じゃ、お前やれ」ということで、翌月から携わることになりました。
 私が制作したのは83年からなんですけど、その時から録画は全部残すということを決意したんです。自分の表記も間違っているかもしれませんから。

小 自分すらも信用しない、と。

原 はい。それで、次は過去をどうにかしよう、と。古い作品だと、そもそもフィルムにテロップが入ってなくて、テロップカードというもので入れていたので、誰がやっていたかわからないんですよね。
 それで、なるべく過去のものに触れる際には色々なネットワークを使いまして、なるべく本放送に近いものを孫ダビでもいいから入手しようということでやっています。

■ 原口さんがパソコンをいじっているのを見るタイム

場をつなぐための「魔女っ子大全集」の話(「サリーちゃん」のフィルモグラフィが空白…)

小 いまやったら「サリーちゃん」とか埋まるの?

原 埋まる埋まる!「サリーちゃん」も「アッコちゃん」も埋まるよ!当時、30話くらいからずっとずっと同じEDが続くということがあったんだけど、このあたり宮崎さんが原画やってるはずなんだけどなー、と思いながら悲しい思いをしてたんですが、あるとき馬込にある東映の巨大なフィルム倉庫に日参して、エンディングの調査をしたんですよ。

トンデモテロップの話

原 その1、『アニメドキュメント ミュンヘンへの道』30。これは声の出演が…。2枚目、青野武31が2人いてしかもかっこ入りという。小黒くんはよくわかってると思うけど、兼役があると()つけてあるんですが、それをそのままテロップにしちゃったんですね。
 次は、「新みなしごハッチ」32の第1話、原動画のところに「1,2,3、4」という数字が…。本来、活字にしない部分も活字にしちゃった例です。
 3つ目、第27話33のエンディングですけど、声の「松島みのり」「松島三川」に…。みのりを書いたら漢字に見えちゃったんですね。

小 東京ムービーはちゃんとしているやつと変なやつの差が激しいですね(笑)

歴史の掘り起こし方

原 当時の記録を掘り起こしていく時に、行きつけのお店とかを聞いていくのがいいんですよ。青春が蘇ってきていろいろ話が聞けるんです。で、それとは別にスタジオの平面図とかを書いてもらうんですけど、その時にいろいろと「こういうことがあった」ということも出てくるんですよね。それを他の人に聞くと違っていたりしてね。そういうのを突き詰めていくと、隣にいた人が嫌いなやつだったりして、どっちも嘘は言ってないんですよね。そういうオーラルヒストリー的な部分と資料史的な部分が面白かったし、勉強になりましたね。
 作られていく(アニメの)数が国民の数を超えちゃうと思うんですよ。そういったときに、今日これが放送されました、ということを記録しておくことで、何年か経った時に、役立つように考えて記録していきたい。作品研究というのは一つの作品を深く掘り下げていくというものもあると思うんですけど、僕がやりたいというのは「とにかくまんべんなく拾う」ということですね。そして、それを後の人に受け継いで行って欲しい。

小 後継者欲しいんですか?

原 先に言ったようなことがあるので、とにかくまんべんなく取れる人がいいですね。好きなアニメだけって人ではダメ。画面を記録するのはもちろんだけど、記録のための記録ではなく、最終的には統計的に処理したいというのがあります。

第三部

吉田忠勝34とトランスグローバル

原 吉田忠勝さんはナウシカの王蟲を描いた人ですが、トランスグローバル!これはかつて『鉄腕アトム』が始まる前にアニメーターを抱えていた会社なんですけど、今回、功労賞35受賞に際してインタビューする機会があったんですけど、これはトランスグローバルのことを訊くしかない!ということで行ってきたんですが、いろいろと新情報がありました!
 トムとジェリーのすごく奇妙な日本語版を描いてるんですね。それと、幻のアニメ「ジャングル太郎」!トランスグローバル動画部というのは確かにあって、アメリカのリスト本36に若干ながら表記があるんですね。「TARO, GIANT OF JUNGLE」。それで吉田忠勝さんがその原画持ってた!吉田さんのノートがものすごくて、移籍の変遷が全部記録してあって、昭和33年に入社して最初はトレス。この年は…『もぐらのアバンチュール』の年ですよ!昭和39年に『少年ケニヤ』というよくわからないアニメがあって、この年に『ジャングル太郎』もあります。
 吉田さんは「ナウシカ」を原作の線の多い絵でやりたかったんだけど、宮崎さんからは「線を減らせ」という指示があって、でも後半進行が遅れてくると線を減らせということも言えなくなって、結局、原作のまんまになってしまったという。普通と逆のパターンですね。
 『幽☆遊☆白書』は「炎の絆」37の濁流シーンをやってます。5人の鬼が濁流に飲まれるんだけど、どの鬼がどれかわかるようにちゃんと番号振ってあるんですよ!実際のものを見ると暗くてせっかくの原画がわからないんだけど(笑)

まとめ

 今回は歴史のお話というよりは、「データの扱い方」の話でしたね。特にタイトルの処理の方法であるとかペンネームの扱いは興味深いポイントでした。それとリストを制作するようになった紆余曲折。本当に一生を捧げてる感じですね。地道でストイックな姿勢には頭が下がります。
 次回の講義も楽しみです!


イベント概要

イベント名第95回アニメスタイルイベント 原口正宏アニメ講義vol.4 データ原口とアニメのデータ
日時2015年2月15日13:00 - 16:00
会場阿佐ヶ谷ロフトA
料金前売:1,500円 当日:1,800円

関連リンク

■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/

関連商品



 「ジャングル太郎」の記載がある資料。

Notes

  1. サムシネ!第214回 巣鴨の食堂にて(1) | WEBアニメスタイル
  2. 全8巻のOVAシリーズだが、PART3までとPART4以降でタイトルに含まれる年号が異なる。
  3. 1945年、瀬尾光世演出(監督)。
  4. 1981年に放送された『ゴールドライタン』は再放送時に『黄金戦士ゴールドライタン』に改題された…のだけど当時の番宣ポスターなどでは最初から「黄金戦士」が付いているらしくよくわからない、という問題。あの『キン肉マン』のサンシャインとよく間違えられるロボットアニメです。
  5. 2014年、米田和弘監督。タイトル内に「YONA -The girl standing in the blush of dawn-」という英語表記が含まれる。
  6. 各話タイトルが長い…という話だったと思う…。
  7. 1967年公開の『長篇怪獣映画ウルトラマン』(円谷一監督)と『キングコングの逆襲』(本多猪四郎/円谷英二監督)の二本立て。
  8. 1966-67年。
  9. 1967-68年。
  10. 1967年。
  11. 1970-71年。
  12. 1971年12月5日-72年11月26日。日曜19:00-19:30。裏番組は『シルバー仮面』(『シルバー仮面ジャイアント』)。
  13. (『宇宙猿人ゴリ』→『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』→『スペクトルマン』)。1971年1月2日-72年3月25日。土曜日19:00-19:30。裏番組は『巨人の星』。
  14. 徳木吉春さんのこと。1954年生まれ。「アニメージュ」の編集顧問等。
  15. 1976年、秦泉寺博監督。
  16. 株式会社KnacKは現在の株式会社ICHI(2008年に商号変更)。『チャージマン研』(1974年)を作った会社。「ナック問題」というのはよくわかりませんでした…。
  17. アニメ様もこの年にビデオデッキが家に来た、と仰ってますね。WEBアニメスタイル | アニメ様365日 第90回 ビデオデッキがやってきた
  18. 1978年5月26日創刊。
  19. 1983-86年。
  20. 製作の目黒宏さんだと思われる。
  21. 東映アニメーションの専務取締役、製作本部担当兼労務担当だった吉岡修さんかな?たぶん現・常勤顧問。
  22. 1963-65年。月岡さんはキャラクターデザイン。
  23. 月岡貞夫(つきおかさだお)[1939年5月15日-]。手塚治虫のアシスタントから東映動画へ。東映最初のTVアニメシリーズである『狼少年ケン』(1963年)の企画立案をしたことでも知られる。1964年に東映動画を退社し、虫プロへ。1970年以降はCM・短編を中心に活躍。現在は宝塚大学等で後進の育成に努めている。
  24. 児玉喬夫(こだまたかお)[1936年-]。1959年に東映動画に入社。『狼少年ケン』(1963年)、『まんがこども文庫』(1978年)、『シニカル・ヒステリー・アワー』(1988年)など。
  25. 1981年創刊。学習研究社。
  26. アニメーション監督・演出家の杉山卓さんが編集出版していた「プロのためのアニメ情報誌」。完全スタッフリストを載せていた。ネットで調べてもあまり情報がないですね。こちらのサイトが詳しいようです。 アニメダマ : ネット版アニメレポート -Anime Report-
  27. 虫プロの人という理解であってますか?『ワンダースリー』のチーフディレクターとか。
  28. シンエイ動画制作の第2作の方ですね。監督は笹川ひろしさん。
  29. 2代目編集長の鈴木敏夫さん。83年時点では副編集長。
  30. 1972年、大隅正秋監督。ミュンヘン・オリンピックへ向けて練習を重ねる日本代表チームを追ったドキュメンタリー。アニメと実写で全16話。
  31. 『昆虫物語 新みなしごハッチ』。1974年、 原征太郎監督。
  32. ちょっと聞き逃しちゃったんですけど、「新みなしごハッチ」は全26話なので、無印の『昆虫物語 みなしごハッチ』の第27話「盗まれた王子」だと思われます。確認しときます。
  33. 吉田忠勝(よしだ・ただかつ)[1938年8月18日-]。トップクラフト創設メンバーの一人。今だ現役のベテランアニメーター。
  34. 2015年3月の「東京アニメアワードフェスティバル2015」にて、月岡貞夫さんらと並んでアニメーターとして功労賞を受賞。
  35. メモ漏れちゃったんですが、”Animated Movie Guide”(Jerry Beck, 2005)だと思われます。。
  36. 『幽☆遊☆白書 冥界死闘篇 炎の絆』。1994年、飯島正勝監督。

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