映画レビュー

【映画レビュー】『ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ』:輸血袋?こっちは「給油袋」だぜ!

投稿日:2016年2月22日 更新日:


 冒頭、手作りアーマーに身を包んだ男たちが登場する。「マッド・マックス」シリーズに露骨に影響を受けたと思しきその様相を見て、「ああ、マッド・マックスなのはここだけなのだな」とおそらく誰もが思うだろう。しかし、B級映画によくある流行りの映画をもじったタイトル「だけ」のダメ映画…だと思って観に行くとかなりの肩透かしを食う。もちろん、良い意味で。

 流星雨が降った夜、突如として人々がゾンビへと変貌する1。平穏な日々を送っていた自動車整備士のバリー(ジェイ・ギャラガー)は妻子とともに間一髪脱出し、連絡の取れなくなった妹・ブルック(ビアンカ・ブラットリー)のもとへと走る…と、ここまではよくある話。

 最大のポイントは隕石の影響によって(?)、あらゆる化石燃料が使えなくなってしまっているという点。じゃあ、どうやって車を動かすのかというと…なんとゾンビの血と息が可燃性になっているのだ!かくして、ゾンビを燃料とするあまりにも非人道的過ぎるマッドなカーチェイスが展開されるのであった。捕らえられたゾンビが息を採取するために口にマスクを嵌められ、手足を縛られている姿はまさに『マッド・マックス 怒りのデスロード』の給油袋(トム・ハーディ)そのもの!ちなみにゾンビが死ぬと燃料も切れるので、その都度補給(給ゾンビ)する必要がある。ゾンビから逃げるのではなく、逆に捕まえに行くゾンビ映画というのはなかなか珍しい。「クソ、燃料が切れた」「ゾンビを探さなきゃ!」「おーい!」のコンビネーションにはおもわずほっこり。ゾンビから逃げるためにゾンビを探さなければいけないというこの矛盾!オーストラリアの荒野がメインとなるので、なかなかゾンビに出くわさないというのもポイント高い2

 タイトルこそおふざけだが、実はかなり丁寧に作られた作品で、主人公が妻子と別れる際も目を逸らすこと無くしっかり描写するところに好感を覚える。娘を撃ち殺し、苦悩するジェイ・ギャラガーの演技もなかなか良い。政府機関の車両には火花を散らす装置が取り付けられていて、さりげなく電気駆動であることが示されていたりするし、非道な人体実験に興じる博士(バーイン・シュワート)が防護服着てディスコミュージックでノリノリなところは『オデッセイ』っぽさを感じる。この博士にゾンビの血を輸血させられたりしたブルックはゾンビの視覚と行動をある程度コントロールできるようになる能力を得るのだけど、彼女の脱出譚もゲームの『SIREN』を思い出す面白さ。ゾンビの血は可燃性、という伏線を活かした最後の政府軍との戦いも盛り上がる。おもしろ黒人枠でアボリジニのベニー(レオン・バーチル、うっかり生存者の頭をショットガンで吹き飛ばしちゃうドジっ子♪)というのもまたオーストラリア感があって良い。

 まあ、最後はおもいっきり投げっぱなしジャーマンなんだけど、いまさら気にするポイントでもないよな!

基本情報

ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ  Wyrmwood: Road of the Dead98 min

監督:キア・ローチ=ターナー

脚本:キア・ローチ=ターナー/トリスタン・ローチ=ターナー

撮影:ティム・ネーグル

出演:ジェイ・ギャラガー/ビアンカ・ブラッドリー/レオン・バーチル/キース・アギウス/ルーク・マッケンジー/バーイン・シュワート

NOTES

  1. ピーター&マイケル・スピエリッグ監督の『アンデッド』(2003年)を思い出しますね。そういえばこちらもオーストラリア製。
  2. ハワード&ジェイ・フォード監督による『ゾンビ大陸アフリカン』を思い出す。

関連コンテンツとスポンサードリンク

-映画レビュー

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

【レポート/レビュー】記録映画『飄々~拝啓、大塚康生様~』&大地丙太郎監督トークショー【TAAF2015】

目次記録映画『飄々~拝啓、大塚康生様~』大地丙太郎監督特別講演「私のなかの東京ムービー」大塚さんとの思い出記憶の中のトムス・エンタテインメント(東京ムービー)トムスの中で影響を受けた作品アニメ業界内で …

【映画レビュー】『スパイダーマン:ホームカミング』:イキリスパイディVS中小企業のおっさん【あまりネタバレなし】

ジョン・ワッツ監督、トム・ホランド主演の『スパイダーマン:ホームカミング』の(基本的には)ネタバレなしレビューです(最後の最後に結末についてのネタバレがあります!)。今回は最初からベンおじさんが死んでるから話が早いぞ!あと敵の空飛んでるやつがそこらの町工場のおっさんなのでとても良い。

【映画レビュー】『イレブン・ミニッツ』:大人のピタゴラスイッチ!

イエジー・スコリモフスキ監督の最新作『イレブン・ミニッツ』のネタバレなしレビューです。とある街の一角に起きた11分間の群像劇。めぐり合わせって素敵ですね、というおはなし。

なんでどうして大ヒット?『愛がなんだ』はいいぞ!【2019年4月に観た映画感想レビューまとめ/全4本】

2019年4月に観た映画の感想レビューまとめです。ネタバレなし。ここ5年くらいで一番映画観てないけど、大体当たりだったのでヨシ(๑•̀ㅂ•́)و✧ 一押しは大ヒットしてる今泉力哉監督の『愛がなんだ』!

【映画レビュー】『戦慄怪奇ファイル 超コワすぎ! FILE-01恐怖降臨!コックリさん』:工藤D大活躍でシリーズ再起動!

ぼくらの工藤Dが帰ってきた!  金属バットを持った工藤Dが好きだ。「鬼に金棒」ではないが、「工藤にバット」という組み合わせにはなんとも言えない安心感がある。AD市川に、田代カメラマンに、防衛庁幹部に、 …

search