南北ものにハズレなし!『宝くじの不時着 一等当選くじが飛んでいきました』

北と南の交流ものコメディ。この手の映画(少なくとも日本で公開するやつは)は本当にハズレがない。DMZの取水場でのささやかな飲み会の場面も素敵だけれど、「人質」として交換留学のような形で互いの文化を体験していくパートが実にいい。単なるカルチャーギャップギャグにとどまらず、38度線で区切られた全く異なる世界を機転と人脈で切り抜けていくサバイバル感。ロマンスあり友情ありで紡がれた人間関係がミッションのささやかな成功とともに断ち切られていく無常感。フィクションだからどうにでもなるはずなのに、そのあたりのシビアな感覚がむしろ心地よかった。早く統一してくれ、と思わず願ってしまう。

【公式】映画『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』

『劇場版SPY×FAMILY CODE: White』はいいクソ映画

『SPY×FAMILY』という作品の面白さの軸の一つはアーニャの変顔にあると思っているのだけど、そういった意味ではかなり面白い作品。というかそのあたりしか魅力がない。前半はひたすらに退屈。ただ、物語を牽引していくモチベーションは、てっきりロイドの任務がらみだろうな〜と思っていたので、このあたりは上手かった。

さて、本作の中盤、とある事情によってうんこを我慢しないといけない状況に陥ったアーニャの場面がとにかく面白い。変顔のパターンが異常に多いのも良いポイントなのだけど、途中に挟まる「うんこの神」のシーンがまあすごい。タッチがアートアニメ寄りなのにテーマはうんこだし、うんこの神のCVはなんとあの千葉繁御大!これがまあ合いすぎててすごいんですよね。「フンッ!」のシーンは劇場で思わず笑ってしまった。ノリノリだなあ。

映画なのでクライマックスは大スペクタクルなのだけど、さすがにこの規模だとロイドもヨルもお互い誤魔化し切れないだろ…、と思いつつ、これが許されるなら映画いくらでも作れるな…とも思ったり。

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』大ヒット上映中

『インドの食卓』:インド料理ってなんやねん

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「そこに「カレー」はない」というサブタイトルがあまりにもインパクトがあるのだけど、タイトルに偽りなしで、「インドに「いわゆるカレー」はないぞ」というお話。というかインドってめちゃくちゃ広いのでそりゃあ地域ごとにいろいろ特色やら違いやらがあるよね、という至極当然の話なんですよね。とはいえ結局どういうことなの?という時に読むと良い本ですね。「なんとなくカレー」みたいなイメージだったインド料理に対する解像度が爆上がり。

4000年前に遡るインド料理の起源から、定番料理のバターチキンとタンドーリチキンの発祥、肉とベジ(ベジタリアン)、インドのコーヒー/チャイ/アルコールといった飲み物事情、そして最近注目を浴びている「インド中華」まで、基礎から応用まで様々なテーマが扱われていて、新書だけれどもこれ一冊読んでおけば「インド料理とはなんぞや」といった質問に答えられる(気がする)。

個人的に面白かったのは、インドではベジがデフォルトで肉を使っていると「ノンベジ」と呼ばれるとか、インドに進出したマクドナルドの戦略とか、北はナン/南は米といった区分があるとか…。

それにしてもこないだの『ソース焼きそばの謎』といい、ハヤカワ新書はこのへんのニッチで面白いテーマを拾ってくるの得意だなあ。