今年の最初から始めたこの週報、なんとか一年続けられました。読み返すと何を考えていたのかがわかって面白いので、とりあえず来年(今年)も続けるつもりです。
目次
『枯れ葉』:老舗の頑固親父が作ったような味わい。
ちらっと出てくるスマホと時代がかったラジオから流れてくるウクライナ戦争の悲報がなければ80年代に撮ったと言われても全く違和感がない。変わらぬ老舗の味というか、頑固親父がしぶしぶ作った、みたいな雰囲気がある。カメラの感じとかとても21世紀とは思えないし、話し運びにしても控えめに言って「イマドキ」な感じがしない。
ところが、やはりというべきか、これがめちゃくちゃ面白い。「またこのパターンか〜」と思いつつも、引き込まれてしまう手際は流石の一言。というか一周回って面白いというか。だって、今の時代に「交換した連絡先を落とししまってすれ違う男女」なんて描かないじゃないですか。逆に新鮮ですよ。それも二人で観た映画館の前で互いに探していてすれ違ったりするのね。いやー、いいわ!このカウリスマキ流の人間への信頼感。(その後に悲劇が起きるとはいえ)食卓の場面がとてもいい。
「ハガレン」全部読む
先日、久々に「シャンバラを征く者」を観た影響で原作版『鋼の錬金術師』を一気に読んでいました。そして最後の方を読んでいなかったことが判明…。こういうオチだったのか。等価交換だなあ。
それにしても今改めて読むとマンガが上手い!これだけ入り組んでいて登場人物も多い物語をコントロールする技術力の高さ。今連載している『黄泉のツガイ』もそうだけど、敵味方がどんどん入れ替わっていくダイナミズムと、それでいて物語の軸がしっかりしているので混乱することもなく。27巻という長さも今からするとかなりちょうどいい。物語の構造としてはいわゆる「大きな物語」的な構造で、これも時代を感じさせて面白いポイントですね。『黄泉のツガイ』の方は(今のところ)対照的に黒幕がわからなくなっていて、意識的にか無意識的にかはわからないのだけれど、このあたりの時代の感覚を反映させる嗅覚のようなものは流石の一言。
それと、生命に対する倫理観のようなものが素晴らしいですね。散々ネタにされがちなヒューズ中佐の死があそこまで綿々と後を引いていくとは思わなかった。生命、そして死というものに対する畏敬の念のようなものを感じます。
来年はアニメ版(『鋼の錬金術師』&『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』)を観ていこうかなと思います。
大学生になった聡実くん良すぎる。『ファミレス行こ。』(上)
『カラオケ行こ!』のまさかの続編。大学生になった聡実くんと狂児のゆるいけれどどこか寂寞とした感の漂う交流。「ヤクザとカタギのBL未満の話」と言ってしまうと安っぽく聞こえるけれど、当然ながらそこに収まらない豊かさが魅力的な作品。例えば聡実くんのバイトしてるファミレスがどうみてもサイゼリヤだったり、サイゼの例の絵が物語の軸になったり。極めつけはファミレスでたむろしている謎の男たちで、彼らの正体のあたりがかなりツボでした。
定番の会話劇も異常に面白く。初っ端から「聡実くんはどこの大学やったっけ?たこ焼きもぐもぐ学部だっけ?」とかいうレベルのセリフがどんどん出てきてめちゃくちゃ楽しい。この狂児の適当感、全く変わってなくて最高of最高。
基本ゆるくて楽しい話ではあるのだけど、どこか不穏な空気が漂うのは「終わり」が決まっているからだろうか。この不安感が最高潮に達するのが上巻のラストの思わず後から抱きついてしまう聡実くんのくだり。エモすぎる。
『カラオケ行こ!』がヒットしてるし、こっちも是非映画化してほしい。
最後まで密度がすごすぎる:『ハイパーインフレーション』最終第6巻
買い忘れていたのを年末の慌ただしい時期に購入。最後の最後まで敵味方が目まぐるしく入れ替わり、緊張感が最後まで持続する素晴らしい構成。収まるべきところに収まったという感じで、実に満足度が高い最終巻だった。
ルークの能力が無効化されたところでさすがにもうダメかと思ったのだけど、そこからの巻き返しがすごい。これまでに培った人脈やルークの素の能力で逆転していくかなり熱い展開。偽札が本物として認められることで経済が上向いてしまうあたりは笑った。理論的にはそうなるよね。それにしてもこの物語が6巻というページ数に収まっているのもすごすぎる。密度という点で言うとなかなか類を見ない感じなのではないか。
シリーズを通してよかった登場人物はやはりグレシャム。あの行動力と精神力と起業家マインド!あれだけ魅力的な人間だと、手癖が悪いあたりもご愛嬌で済んでしまうのがすごい。ある意味で目指すべき人間の一人ですらある。
『検閲官のお仕事』は「検閲」のイメージがガラリと変わる良書
ブルボン朝フランス、イギリス領インド、冷戦期の東ドイツという3つの異なる地域/体制下における「検閲」について書かれた本で、「検閲」というものに対するイメージが180度、とまではいかないけれど、120度くらいはガラリと変わる良書。
やっぱり検閲っていうとしかめっ面したおじさんがでかいハンコで「承認/非承認」を押していくイメージがあると思うんですけど、まあ現実としてはそう単純な話でもなく。体制(≒国)の方針としてはかっちりとしたものがあることもあるのだけれど、実際の検閲を行う「検閲官」のレベルになってくると、その作業は著者や組織との綱引きのような様相を呈していて、検閲官はさながら編集者や共犯者といった性質まで帯びてくるのですね。このあたりの絶妙な駆け引きなんかが当時の実際の検閲官の記録から掘り起こされ、色を帯びてくるのが実に面白い。
結局、検閲する側も人間ですからね、というお話ですね。「検閲」というものに対する解像度が爆上がりするのでかなりおすすめです。
素晴らしい幕引き:『違国日記』最終第11巻
今年完結した漫画ではもちろんこれがベストなんだけど、すごすぎて飲み込むのに時間がかかるタイプの作品。
とにかく最終話(Last Page)が良すぎる。朝の回想シーンで終わるのもいいし、物語の最初の一文に戻ってくるのがねー。こういうのに弱い。槙生さんの送る詩も物語の最後を締めくくるに素晴らしい。
また最初から読み直したくなる大傑作。
「すこしふしぎ」を地で行く傑作短編集:『商店街のあゆみ』
「ユリイカ」で特集が組まれるほど今脂が乗っているpanpanya先生の新刊短編集。
表題作の「商店街のあゆみ」はタイトル通り「商店街が移動していく」話で、全然違うんだけどフィリップ・リーヴの「移動都市」シリーズとかを思い出したり。常にその場所にあるはずの「商店街」がいつのまにか消えてしまうというのは今まさに我々が体験していることでもあるのが面白い。
他に印象に残ったのは存在しているのに存在していない土地をめぐる「うるう町」。こういう日常、というかお役所仕事に潜むバグのような話は好きだなあ。2台の車が衝突して全ての部品がいい感じに入れ替わって組み上がってしまう「奇跡」も、こういうSF短編小説あったよなあ、という感じでかなり大好き。
なんというか藤子・F・不二雄よりも「すこしふしぎ」をやっているという感じがするなあ。
ピーター・ルーガーへ行く
忘年会として恵比寿のピーター・ルーガーへ行きました。個室を使ってみたかったのでなんとか7名を集め、コースはオーセンティックな20,000円のコース。
いやー、美味しいです。めちゃくちゃ美味しいんですけど、お酒入れて30,000円は若干きつい気がしますね。この価格帯なのにおしぼりじゃなかったのも地味に気になるポイント。ホスピタリティはさすがにいいんですが…。肉も美味しかったし…。ただやはり金額を考えると一回来ておくと十分かな…という気持ちが拭えない。富裕層になったらまた来たいかな、という温度感ですね。体験できたのは素直によかったです。
喫茶店で年を越す(2年目)
今年も大晦日の夜から新宿三丁目の「珈琲貴族エジンバラ」に篭っていました。
大晦日なのにやたらと賑やかなこの雰囲気、本当に好きですね。ほぼ満席でしたが、いい感じに人の入れ替わりがあって待っている人もいない程度の混み具合。
今年最後に食べたのはいつも食べているポテトグラタンとサンドイッチでした。最後に食べるのにちょうどいい感じの美味しさ。
21時くらいに入り、年が代わった3時過ぎに退店。元旦午前3時の山手線は外国人だらけでした。日本人はみんな家でのんびりしてるのかな。
今年も良い年越しでした。
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