『北極百貨店のコンシェルジュさん』、オールタイムベスト級

いやもうとにかく絵が良いし音楽が良いしテーマもかなり最高!今年のベスト10に入れるのはもちろんだけど、オールタイムベストにも普通に食い込んでくる傑作。

正直全く期待してなかったんだけどタイムラインでの評判が妙に良かったのと一応原作も読んでいたので上映終了間際に飛び込んでみたのだけど、いやあ大当たりですね。

上映時間70分という短さなのに、これほど色々詰め込んで全くごちゃごちゃしていないのもすごい。よくある動物擬人化ものかと思って観ていると、痛烈に懐に切り込んでくるテーマの深さ。絶滅動物を資本主義と発展の象徴のようなものである百貨店でおもてなしするというグロテスクさもさることながら、その百貨店自体も「滅びゆく存在」の一つであるという入れ子状の構造も美しい。単純に秋乃さんの成長物語としても素晴らしい出来。中心にしっかりとした幹がありつつ、小枝が複数ある物語は強いね。

そして何より作画が実にいい。原画陣で確認できたのは松本さん、本田さん、井上さんあたりだけど、さすがIGというクオリティ。情報量の多い最近のWeb系とは違って素朴で漫画的な動きなのだけど、そうそうこれが観たかったのよ~!という感動。かと思えばデパート内を駆け巡る秋乃さんのトリッキーな動きや終盤の感情表現の豊かさなど、素晴らしき作画アニメ!

そうそう、音楽も素晴らしくて特に頻繁に流れる「北極百貨店の歌」は耳にいつまでも残る良曲。

年の暮れにもなって素晴らしいものを観れて大変満足です。

映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』公式サイト

思ったよりも大人向け。『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

絵に描いたような因習村のどろどろした描写がいい。みんな言ってるけど横溝正史感。このIPでこの題材をやろうという心意気がまず素晴らしい。TVアニメの鬼太郎自体はどちらかというと子供向けの作品だと思うのだけど、それをここまで大人向けにチューンナップするとは。主人公の一人である水木のバックボーンが水木しげるのそれとオーバーラップするわけだけれど、妖怪漫画家水木しげるの戦争漫画家としての側面が生かされていて、この構成は実に上手いと感じた。

舞台となるのは戦後まもない人里離れた「因習村」であるわけだけれど、遠く離れているように思えて、実は現代の日本との距離の近しさを意識させるような展開で、このあたりの問題意識もまた心地よい。あの胸糞悪い哭倉村への距離は思いの外近い。というよりも昭和という薄皮を隔てた現代日本そのものなのではないかとすら思える。

テーマ的には重苦しいし、嫌な展開が次々に起こるのだけど、それはそれとして、水木とゲゲ郎(鬼太郎の父)とのバディものとしても素晴らしく面白い。特にクライマックスの展開にはお約束ながら痺れるものがある。しかも(やや無理矢理感はあるとはいえ)、原作鬼太郎(『墓場鬼太郎』)に繋げようとするあたりも上手い。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』公式サイト

今年3度目の『グリッドマンユニバース』

新文芸坐のトリガー特集にて。さすがに3回目だし、そんなに面白くないんじゃないかなと思っていたけど(Blu-ray買ってるのに!)、やっぱりめちゃくちゃ面白い。今回の上映について言うと、やはり音響が良く、特にガウマさんのいびきがガチでうるさくて感動してしまった。あと今回は音響と画面がいいということでアクションシーンに注目してみていたのだけど、ドラマパートに負けず劣らずこちらも素晴らしいということが再確認できたのが良かった。特にクライマックスのバトルは作品のテーマとも深く絡み合うやりとりがあり、実に盛り上がる。

上映前には雨宮監督とアニメ様(小黒さん)のトーク。雨宮監督が思いの外気持ち悪いオタクでとても良かった。最後まで六花を好きになれなかったと告白していて笑ってしまった。

盲腸にかかる

あまりにも腹が痛くて我慢できずに15年ぶりに自主的に病院へ。ウイルス性胃腸炎の類だと思って高をくくっていたらまさかの盲腸、かつ今からだと手術もできないということで薬で散らすことになった。金曜日を休みにして4連休にしていたのだけど、予定をすべてキャンセル。気になっていたフレンチを予約していたのでかなり悲しい。というか絶食と告げられ絶句。まあダイエットにいいかと前向きに考える。

治療は服薬と通院時の点滴。点滴をするのは30年ぶりくらいかな。とにかく時間がかかって退屈だが、本を読む時間が出来たと思えばいいか。

とりあえず最初の3日間は絶食(ウィダインゼリーのみ)したけれど、意外と行けるなという印象。絶食明けの家系ラーメンが異常な美味しさで感動してしまった。

平成悪魔くんと令和悪魔くん

『悪魔くん』の新作がやるということで1989年の『悪魔くん』を観ていました。全42話。OPは見たことあるし、歌えるのですが、そういえば本編を観たことがなく。地味にサトジュン(佐藤順一監督)の初期の監督作なんですね。

やはり面白いのは仲間が12人もいるというあたり。当初は12人の仲間(12使徒)を集めるという目的なのですが、さすがにすぐに全員集まり、その後は世を乱す巨悪に立ち向かうという展開。で、この12使徒が面白い。作品の顔とも言えるのはやはり百目とメフィスト2世だと思うのですが、百目なんて冷静に考えるとかなりキモいというか、キモかわいいの元祖みたいな存在だし、移動担当の家獣やら頭脳担当のヨナルデパズトーリみたいなやつもいるし…(最初は覚えづれーと思ってたけど最後には馴染んでいた)。美少女キャラから異形までよりどりみどり。この多種多様な連中を、悪魔くんが場にあったキャラを例の「エロイムエッサイム」で呼び出すという流れ。ちょっとポケモンっぽくて面白い。推しの12使徒はでかいのに影がうすい象人とねずみ男ポジのこうもり猫。まあみんないいキャラなんだけど。全体的にキーアイテムである「ソロモンの笛」がチートアイテムすぎるんですが、このアイテムが無効化される回とか奪われる回とかあって飽きさせない。一番驚いたのは拠点である「見えない学校」が飛んだり消えたりする展開ですね。古いけどめちゃくちゃ面白いのが驚き。

そして、満を持して令和版『悪魔くん』ですが、いやー、まあこれはこれでいいんですが、なんかこう…うーん。Twitterで平成版のファンがブチギレてたのもちょっとわかりますわ。メフィスト2世がえっちゃんと結婚して家庭作ってたり、初代悪魔くんが前作から変わらぬ姿でいるあたりは良かったんですが…。主人公含めて新キャラの連中がことごとく馴染めず…。まあ主人公の2代目悪魔くんは性格はともかくデザインは水木タッチで良かったんですが、風間親子とかグレモリーとかキャラデザがそもそも浮いてるし…キャラはすごく好きなんですが…。あと見えない学校がボロボロになってるとか、イースター島行ってるのに鳥乙女が出ないとか(まあペルーにいるからかな)…。とまあ色々言いたいことはあるんですが、やはり前作のキャラが出ると上がりますね。特に家獣が出てきたのは熱かった!終盤の百目とこうもり猫もかなり良い。あと8話のメフィスト2世の活躍は「これこれ〜!これが観たかったんや!!」ってなりましたね。個々の脚本は第7話の「人間」とかが結構良かったんですが、全体のストーリーは、うーーーーん、正直あまり好みではなかったですね…。ていうか2期の構想なしであのオチにしたのマジですか?正気?あまり期待してないけど、2期やるなら声変わっていいので12使徒出してください…。

新アニメ「悪魔くん」

『僕のヒーローアカデミア』39巻、めちゃくちゃ盛り上がるけどいつまで続くんだ感もある。

ここのところ、新刊が出るたびに毎回言ってるんだけど、とにかく密度がすごい。というよりも無理やりまとめに入っている感すらある。この1巻の中でも轟家、トガちゃんとお茶子、オールマイトvsAFO、と三つのエピソードが同時並行的に描かれていて、そのどれもがものすごい情報密度と熱量で描かれている。いくらなんでもクライマックスが続きすぎてて堀越先生の精神が心配になってしまうレベル。

個人的にグッと来たのはやはりトガちゃんとお茶子の関係性を描いたエピソード。「違う出会い方をしていれば友達になれたかもね」というよくあるぬるいifを飛び越えて、「こうなるしかなかった」という運命の厳しさ。その上で生まれる「血のつながり」という関係の尊さ。ヒーローとヴィラン、(無自覚な)差別者と被差別者はなぜ生まれるのか、というあたりはこの作品全体に通底するテーマだし、ここで決着が着く女子二人の複雑な関係性については改めて分析する価値があると思います。例えばフェミニズムとポストフェミニズム、フォーディズムとポストフォーディズムを軸にした分析とか(まんま河野真太郎先生に影響されてるな…)。