東京国際映画祭1本目は荒削りだけど魅力的な『愛は銃』

東京国際映画祭1本目は台湾の若手俳優リー・ホンチーが主演兼監督をつとめた作品。若手が作ったこともありかなり荒削りなんだけど、撮影と音楽が良すぎて完成度は不思議と高い。

物語としてはヤクザ者の男が社会復帰しようとする話で、さらに舞台が台北ではない寂れた地方都市。台湾でもこの手の作品あるのねー。邦画で割と見がちなテーマですよね。台湾の地方都市の雰囲気も日本にめちゃくちゃ近いのでかなり邦画を観ているような気分になりましたね。そして台湾における東京ってやっぱり台北なのね、というのがよくわかる話でもありました。東京と同じようにある種の憧れと憎しみが入り混じった感情が冒頭から迸っていて、そのあたりも面白いポイント。

そしてとにかく映像と音楽がかなり良い。音楽は環境音楽的なテイストで、流れている映像とのミスマッチ具合がむしろ逆にオシャレ感あって個人的にはかなり好き。田舎の道をあてどもなく歩くシーンでああいう曲流すのセンスあるわあ。そしてベストシーンは主人公がピアノを焼くシーン。構図と光のコントロールが絶妙で大好きすぎる。ワンショットが長いし。「お前らこういうのが好きなんだろ?」って見透かされている感はあるものの…。やっぱ若者だから流行りの演出やってくるのかなあ。

(かなり)荒いけど個人的にはだいぶ好き。コンペだと微妙だけど、個別の部門なら全然ありですね。

【愛は銃】 | 第36回東京国際映画祭

開拓時代の暴力の普遍性:『開拓者たち』

https://www.youtube.com/watch?v=HCQRns4HLsM&pp=ygUP6ZaL5ouT6ICF44Gf44Gh

チリの開拓時代の暗部をえぐり出す作品。冒頭から凄惨な暴力が提示され、一気に20世紀初頭のパタゴニアへと心が引き込まれる。暴力と差別が横行する開拓時代の様相と荒々しくも美しいむき出しの大地の対比。開拓ものといえば人間と自然の戦いになると思うのだけど、ここでは自然>白人>先住民という序列になっている。

物語はそんな無法時代に羊毛の輸出ルートを探索する3人の男の旅を描く。主人公となる視点は白人と先住民の間に生まれた青年。中盤に置かれた先住民の虐殺シーンがやはり衝撃的だ。主人公の青年は無辜の人々を虐殺しようとする旅の仲間たちに銃を向けるが、彼らに発砲することはなく虐殺の場面は濃い霧に覆われていく。このシーンでの霧はもちろん同時代・後世における隠蔽の象徴である。

面白いのは最終章の部分である。虐殺の旅から数年後。中央(ブエノスアイレス)からやってきた役人が虐殺の事実を告発しようとするのだが、辺境の土地に住む「旅」の主人公の元青年とその妻を粗末な小屋の隣で正装させてティータイムを演出しようとする。この部分には虐殺の隠蔽とは別種の「隠蔽」、チリにおける先住民の地位を改竄しようとする意図が込められていると見ても良いだろう。

【開拓者たち】 | 第36回東京国際映画祭

チョコの伝統と新時代のアニメーション:『トニーとシェリーの魔法の光』

昨年までの「ジャパニーズ・アニメーション部門」から「ビジョンの交差点」と装いを新たにした東京国際映画祭のアニメーション部門。最大の特徴は海外作品を扱うようになったことで、国際映画祭で日本の作品だけやってもしょうがねーだろ、と思ってたのでこれは良い変化。東京アニメアワードフェスティバルと被る気もするけどあっちは春だしちょうどいいかもしれないですね。プログラミング・アドバイザーは昨年同様、評論家の藤津亮太先生。いい方向性の転換なので、積極的に応援したいと思っていたのですが結局1本しか観れず…。

この『トニーとシェリーと魔法の光』はチェコ/スロバキア/ハンガリーの合作で中欧的な雰囲気のパペットアニメーション。光り輝く身体を持つトニーの住む古びたアパートにシェリーという女の子が引っ越してくる。このアパートには謎の黒い塊がふわふわ浮いていて、それは二人の子供達にしか見えない。二人はアパートの謎を解くためにアパートの中を探索し始める。

チェコの人形アニメーションといえばやはりイジー・バルタ、イジー・トルンカあたりを想起するのだけど、彼らの遺伝子を色濃く受け継ぎつつモダンな作風になっているのが印象的。トークショーでは「イジー・バルタの影響を受けて〜」という発言もありました(ここで同時通訳の方が省略してしまったイジー・バルタという単語をすかさず拾ったMCの藤津先生はさすがでした)。アニメーションとしての質の高さも見どころですが、土地に住まう精霊というチェコならではの地域性を生かした物語も魅力的。精霊のもふっとした可愛さやアパートの個性豊かな住人たちの造詣も素晴らしく、さらに主人公・トニーが被差別性を克服していくという物語の現代性もあり、短い尺の中にかなりの要素が盛り込まれているのも良かったです。

【トニーとシェリーと魔法の光】 | 第36回東京国際映画祭

今回の映画祭でベスト!『タタミ』

今回の映画祭でベスト。イランとイスラエルの確執についてはなんとなく知ってはいたのだけど、スポーツにあまり関心がないので、今回の映画に描かれているような事件は初めて知った。

序盤のスピーディーで淡々としたレイラの快進撃が突如として一転し、徐々に不気味さを増していく様が実にうまい。スポーツものであり、ポリティカルサスペンスであり、ホラーでもある。特にファンだと称する男と記念写真を撮ろうとするシーンの一瞬にして雰囲気が変わってしまうあたりは統制国家としてのイランの恐ろしさが伝わってくる。

そしてレイラとコーチであるマルヤム・ガンバリのシスターフッド的な連携も素晴らしい。ガンバリは中盤まで国家に従い、レイラの出場を止めようとする。それは彼女の両親も脅迫の対象になっているという事情もある。しかし彼女もまた過去のオリンピックで国家の統制によって金メダルを逃しており、複雑な心情を抱えている。そのことは止めようとしながらもレイラの勝利が伝えられるとわずかに顔を緩めるといった繊細な演技によって表現されている。ガンバリが全てを捨て去ってレイラに公然と声援を送るようになる終盤の展開がかなり好き。

ところでイスラエルとイランが対立し、イランが悪者になる話なのでイスラエル大使館が後援に入るのはまあ当然なんだろうけれど、情勢が情勢なだけにちょっとモヤっとしてしまった。まあそれにしても映画の出来は非常に良い。

第36回東京国際映画祭 – タタミ

普通に騙された:『白鍵と黒鍵の間に

恒例のテアトル優待券消費で鑑賞。なので全く期待していなかったわけだけれど、これが存外に面白い。

とにかく面白いのが構成で、ネタバレ気味になるのでここでは書くのを控えるが、まんまと騙されてしまった。池松壮亮が一人二役ということは知っていたのだけど、それでも良い具合に騙されました。後半に種明かしがあった後のキャラクターの変貌ぶりに驚かされるのも楽しい。あとこの映画、銀座のあるキャバレーの年末のある一日を描いた作品なんですけど、こういうテイストの映画に弱いんですよね。『グランドホテル』とか『ラジヲの時間』とか『マスカレードホテル』とか。一日の話なので当然一日の話なんだろうな、と思って観ていると見事に騙されます。楽しい。

役者陣の演技も素晴らしく、南と博を演じ分けた主演の池松壮亮が良いのはもちろんのこと、脇を固める人々も実にいい。恋人でもない微妙な関係の千佳子役の仲里依紗、飄々としたバンマスの三木役の高橋和也、地味な役どころだけど印象が深いキャバレーの支配人役の杉山ひこひこ…。

なんでもないような一日のようでいて後半はものすごいところまで雪崩れ込んでいくのが爽快。ジャズものなのでクライマックスの演奏シーンもめちゃくちゃ良いです。それだけにCパートの演劇は評価が分かれるのではないかなあ。個人的には面白いとも思ったけどわりとノイジー。

映画『白鍵と黒鍵の間に』オフィシャルサイト

chocoZAPはじめました

chocoZAP(チョコザップ)|ライザップが作ったコンビニジム

入会金0円+友人が始めたということで気になっていたchocoZAPに入ってみました。

とりあえず最初の一週間が終わろうとしていますが、とにかく体験がいいです。

着替えなくて良いのが本当に良いです。今までも24Fitnessとか入っていたこともあったんですが、長続きしなかった原因はやっぱりこれですわ。荷物持っていくのもだるすぎるし、現場で着替えるのもめちゃくちゃだるい。これがないだけでかなり100点。会社帰りに手ぶらで行ってスーツでとりあえず5分でも運動できるというのは革命ですよ。

あとはジムにスタッフがいない点。いやいてもいいんだけど、運動弱者って基本的に視線が気になるんで…。服屋と同じですわ。

ジムへの入退出はアプリで行うんですが、このアプリがまたよくできてる。マシンの使い方も丁寧に説明されていてかなりユーザーフレンドリー。運動の記録に加えて、無料でもらえる体組成計と連動することで身体の記録も取れるのもかなり良い。一覧で見えるというのがいいんですよね。ジムの混み具合もリアルタイムで表示してくれて、空いてるから行こうかな、という気持ちになります。

とにかくジムに行くというハードルが極限まで下げられているという印象で、実際に今のところ毎日行けています。

いやー、これは売れますわ。