『GAMERA -Rebirth-』:キャラクターは異常者しかいないけど、怪獣のデザインが良すぎる。

怪獣のデザインがとにかくいい。特にギロン。映画版のもっさりした感じも良かったんですが、こちらのギロンのイタチっぽいデザインがかなり良い。動きもかなり機敏でイタチ感がすごいのね。このあたりはアニメならではという感じ。包丁部分の特徴もそのままに、俊敏に飛び回り、さらに遠距離攻撃まで。劇中でもガメラに重傷を負わせるくらいの強さ。バイラスの固定砲台モードもメカめかしくて良かったし、あっという間にやられるかませ犬なところもいい。もちろん、主役のガメラも素晴らしい。凄まじい重厚感の表現。2話のジャイガー戦のあたりとかアニメなのにかなりの特撮感がある。

一方でキャラクター周りは『シドニアの騎士』あたりを継ぐ感じで、…まあそんな感じですね。今までのポリピク(というか瀬下監督)作品で慣れていたんですが、それでもかなり違和感がありますね…。で、キャラクターの外見だけもあれなんですが、まともな人間がほとんどいないのもすごい。メインキャラだとジョーくらいしか正常な判断力を持ってる奴がいないんですよね。ただ、これは話が面白くないというわけじゃなくて、むしろ昭和ガメラ的な超展開のオマージュとして楽しんで見てました。いやでも冷静になると異常な話よ!

怪獣の造形もいいんですが、最終話での自衛隊の活躍も見どころ。第1話からひたすら待機する戦車隊が描かれていて半ばギャグ感があったんですが、最終話の74式戦車の隊列行動や行進間射撃はかなり見応えありますし、戦車隊の隊長のキャラクターもいいです(劇中では数少ないまともな大人)。

『アートとフェミニズムは誰のもの?』は解像度をが上がる良書。

非常に読みやすい。アート(特に現代アート)とは何なのか?フェミニズムとは何なのか?そしてアートとフェミニズムにどんな関連があるのか?という、最近よく話題にのぼるようになってきたホットトピックについて平易な言葉で豊富な例を交えて説明されている。

特にしっくり来たのは「アートは見るものではなく読み解くもの」という説明。このあたりは感覚的に分かってはいたし、説明もできるのだけど、ここまで簡潔に言語化されているのがありがたい。これからはこの一文だけで説明できる。

著者はアートとフェミニズムをともに「世界を良くするためのツール」として説明していて、さらにどちらもが現在閉塞状態(タコツボ化)していると説く。男性社会であるアートワールドと女性中心のフェミニズムのどちらもが同じような状況にあるというのが面白いし、この二つのツールを組み合わせることで実際にどのように世界を変えていけばいいのかについて、日常的なレベルから実践的な方法論が論じられているのがとても良い。フェミニズムの視点でアートを読み解く事例も豊富に紹介されていて、この分野に疎い自分にとってはかなり解像度が上がった。

とにかく読みやすい本なのでアートもフェミニズムもよくわからないという人にぜひ読んでほしいのだけど、まあそういう人は読まないよな…という気もするのが切ない。

『ビバリウムで朝食を』の2巻では世界の謎が少しだけ明かされる。

藤子イズム(すこし・ふしぎ)あふれるジュブナイルハードSF第2巻。

ついにタイムマシン(厳密には違うけど)、どこでもドア、しずかちゃんが登場。タイムマシンも「どこでもポータル」もどちらもデザインまんまだけど、これがいい具合にミスリードを誘っていて面白い。「なぜタイムマシンで未来に行けるのが6分間なのか?」「なぜ世界に猫がいないのか?」あたりの謎が一気に解明される後半の「過去編」が圧巻。タイトルから箱庭系だとは思ってたけど、ハードSFというよりはドラえもん寄りなのが面白い。そしてここでタイトル回収。「特異解ビバリウム」もセンスありすぎて良いけど、個人的には「神様なりきりセット」も藤子センスありすぎて最高。個人的に連想したのはやはり『セルフ・クラフト・ワールド』で、ドラえもんのシリーズで言うと『映画ドラえもん のび太の創世日記』。

いくつかの謎が解明されると同時にまた様々な謎が提示されて物語を牽引していくのもさすがのストーリーテラー。「なぜ未来世界は寒くて星が見えないのか?」「オバケの正体とは?」「ノドカちゃんの死」あたりが次巻で一気に解かれると予想。そして大長編ドラえもんがモティーフなので一夏の物語として終わるんじゃないかなあ。つまり『ヴォイニッチホテル』あたりと同じように次巻最終巻だと思う。そしてそれくらいがちょうどいい物語だ。2、3巻で終わる漫画は名作が多いし。

今回出てきたないしょ道具の中では「解体インパクトドライバー」がダントツでやばい。身体バラして組み替えは原作通りだけど、身体共有はかなり面白いしいかにも道満先生らしいフェチズム。個にして全だぜ!