短編コンペティション スロット①(全11作品)

[cf_cinema post_id=8149 format=3 text=” 柔らかい絵柄とは裏腹に、ヘビーな作品。ストップモーションで描かれた「あの日」の前日のある一家の日常の一コマ。モサモサした和紙っぽい衣服とか表情(特に口)の漫画的な表現が面白い。「来月はディズニーランドだ!」のあたりで、結末が予想できてしまうのが非常につらい…。6分程度の掌編で、後半は現在の実写映像に切り替わる。前半の柔らかい絵柄であの惨劇を描くことには限界があり、一方で現在では失われてしまった「あの日まで」の日常は実写では描くことが出来ない。このあたりの切り分けはアニメーションの限界と可能性を示す好例だと思う。連想したのは片渕須直監督の『この世界の片隅に』。あれも今は失われてしまった戦前の広島を活写していた。この作品を含むスロット1は3月11日には上映されていないのだけど、おそらくは意図的にその日を外したような気がする。選考委員解説の方でも同じようなことをおっしゃってたけど。311にはつらすぎる。”]
[cf_cinema post_id=8153 format=3 text=” 初っ端の「ゴキブリ・フレーク」でやられた…。物語としてはタイトル通り死神親子の交流を描いたオーソドックスなものながら、ブラックユーモアまみれなので返って爽快。ガキの方はテレビのヒーロー番組に感化されて天使に憧れているのだけど、食肉工場から牛を救い出したところ思わぬ展開に…。ストーリーにひねったところはなく、むしろ予想通りなのだけど、ゾンビの場面の臨場感とか牛の死に様とかクスっと笑わせてくる。「ゴキブリ・フレーク」もそうだけど、ガキの部屋の壁紙が落ちてくる爆弾モチーフだったりと何かと芸が細かく、全体としては丁寧な作り。奇しくも「台湾アニカップ」の方で上映されたヒ・シケン監督の『死神訓練班』も死神親子の話だったけど、あちらがモダンでスタイリッシュな作りなのに対して、本作はクラシカルで泥臭い作品。だがそこがいい!”]
[cf_cinema post_id=8156 format=3 text=” 英題が『Tweet-Tweet』なので完全にTwitterものだと思いこんで観始めると全く違うので驚く。完全にTwitterに毒されている。直訳はもちろん、日本語題の『ちゅんちゅん』(さえずり)ですよね…。一本のロープと足だけを使って人生を表現したミニマルで最高な作品。ロープの形態(細い紐から有刺鉄線まで)と表情豊かな脚さばきだけでここまで深みのある表現をするというのが驚きです。足の造形が非常にリアルであるのに、やってることは綱渡りというシュルレアリスム的な雰囲気が印象的で、アニメーションならではの表現だと思います。主人公の顔が見えないのがもどかしいという気持ちが次第に消えいくのも面白い。そして第二の主人公でもあるスズメも可愛い!必見です(と言ってもネットでも観れないけど…)。”]
[cf_cinema post_id=8158 format=3 text=” 「学校滅亡計画」という名前の物騒さと、少女の他愛もない妄想というギャップが楽しい。現実世界の描写も荒っぽいテイストだけど、妄想世界の中ではさらに荒々しく、切り貼りで作られたらくがきのようなキャラクターたちが自由に動き回る。この自由さがアニメーションの魅力なんだと思う。少女の頭の中というミニマルでプライベートなものが世界に反映され、世界とつながっていく、「すみっこ」と「教室」がつながっていく、ある種の救済のような小さい物語。最後の向き合う机は商業アニメの影響もどことなく感じられた。女の子たちの関西弁もすごくキュート。”]
[cf_cinema post_id=8160 format=3 text=” 真っ先に連想したのはテリー・ギリアム。日本の商業アニメーション寄りの人でも、最近だったら劇団イヌカレーなんかを思い出すんじゃないかな。日本でももっとこういうシュールで実験的なものが商業アニメーションのシーンに出てきてもいいと思うんだけど。…と書いたところで思い出したのが(トークの方でも出てたけど)『ポプテピピック』笑 洋楽あまり聞かないんで楽曲についてはコメントしづらいんだけど、表現で特に気に入ったのはシザーハンズが花弁にメタモルフォーゼするところ。少女が主役というところはシュヴァンクマイエルっぽさもあるよね。”]
[cf_cinema post_id=8164 format=3 text=” え、これが優秀賞なんすか??!!確かに個人的にはむちゃくちゃ面白かったんですけど、一般受けしないよあな…。というかペット飼ってた人(特に猫!)は要注意!飼ってるペットが(何故か)次々と死んでいってしまう女の子キャサリンのお話。後半は『ハッピーツリーフレンズ』になるのでそういうのがダメな人はキツイと思います。死に様もコミカルなんですけどね。長靴のやつは実際にありそうで嫌すぎる…。主人公のキャサリンの顔がシンプソンズ的なちょっとイラッとする造形なのもある種のフックになっていて、そいつがどんどんペットを殺していくもんだから、「何やこいつ!」という感情が生じると同時にぐんぐん引き込まれていく。色使いが独特なのも特徴で、べったり青かったり黄色かったりする平面が、全く別のものに変貌していくのも実にアニメーション的で楽しい。あと中盤に出てくる黄色カップルのベロチューシーンが下品で不快で最高!”]
[cf_cinema post_id=8168 format=3 text=” 非常に短い尺の中で一人の人間の半生を描ききった傑作。とても丁寧な作り。物語の構造は瞬時に理解できるので意外性はないのだけれど、不思議と印象に残るのは演出力の高さかな。中年に差し掛かり、人生に対する倦怠感を感じていた主人公が自身の半生を見つめ直して前に進み出す、という大まかなストーリーは長編コンペティションでグランプリを受賞した『オン・ハピネス・ロード』と同じだし、メインターゲットとなる層にはグッとくるモティーフなんだと思う。逆に子どもが観てもわけわからないだろうなー。そういう意味では、映画祭ならではの作品とも言える。最後、少女のセーフティベルトを締めて発進するカット、場面が変わると少女がぬいぐるみに変わってるわけなんですが、ベタなんだけどめちゃめちゃ好きなシーンです。”]
[cf_cinema post_id=8172 format=3 text=” スロット3の方で、本作と同じく認知症をテーマとした作品『メモ』を観ていたので、理解が早かった。うっすらとでも背景を掴んでおくと全く印象が違う作品だと思う。何も知らないで観るとシュルレアリスム的な作とも捉えられるし、テーマがわかった上で観るとたまらなく悲しくなる。『メモ』と違ってこちらはある種ペシミスティックな結末なんですよね。頭が外れてしまうというアイデアは、認知症というテーマを表すのに絶妙な表現で、コミカルなところもあり、シリアスな側面もあるというところが上手い。3DCGの作品だけど、色合いや表現は柔らかい。列車の車窓を魚たちが飛んでいく幻想的な場面、「大きい人」の不気味な存在感が印象的だった。”]
[cf_cinema post_id=8175 format=3 text=” 車椅子の男が白バイ警官とレースをする。改造車椅子のデタラメさが楽しいのだけど、どうにも尖ったところがない。イルミネーションとかピクサーの色に染まってしまっている。それ自体では多分食べていけると思うし、職業アニメーターの学校の方針としては正しいんだろうけれど、このような国際的なアニメーション映画祭で観る短編としては少し物足りない。”]
[cf_cinema post_id=8178 format=3 text=” インフォグラフィックライクで無機質なビジュアルが印象的な作品。小さな個人事業主から財閥への成長が組織図の拡大という形式で語られる。物語の形式で描けば一大叙事詩になるであろう長大なストーリーが小さなパネル(あるいは窓)としての無個性な個人の集合離散という形をとってシンプルかつリズミカルに描かれる。会社が成長すると画面の横に建築物ウインドウがフェードインしてくるのがシムシティっぽい(この時の音もスマホゲーライクで楽しい)。登場人物たちは人生ゲームのコマのようにシンプルにデザインされているが、彼らがときおり見せる人間臭い行動(例えば社長と秘書との情事とか)がこの作品をより面白くしている。資本主義(グローバリズム)に対するシニカルな視線が垣間見える怪獣映画っぽいオチも楽しいのだけど、出来れば当初のシンプルなデザインで終わっていたら(個人的には)より良かったかも。”]
[cf_cinema post_id=8180 format=3 text=” 猫がおっさんになってやってくる話。ゆるーい感じのキャラクターとかゆるーい感じの作画が最高に楽しい。色とか塗ってないものの方が普通に多いし笑 そして、自由でありつつも、小さな物語がきちんと完結していくところが好感が持てます。まあ一言で説明しづらいストーリーではあるのですが。一人暮らしの女のもとにおっさん(元・猫)がやってきて、何をするでもなくアイス食ったりする。よくわからない世界観ですが、家の前が墓場だったり空がどんよりしてたり、なんだかそんな感じのアンニュイな雰囲気が素敵。登場人物たちが皆一様に無表情なのも特徴的で、日常空間で繰り広げられる非日常的な世界が面白い。二人(一人と一匹)でアイス舐めてる場面が好きだなあ。”]

選考委員解説(エディ・メホングさん、白石慶子さん、叶精二先生(モデレーター))

表現とテーマの多様性の中から選び取る難しさ

叶 モデレーターの叶精二と申します。よろしくお願いいたします。早速ですが、本プログラムは一次選考を行っていただいた先生2名にご登壇いただいて、審査の様子であるとか作品の解説などをお伺いしたいと思います。エディ・メホングさん白石慶子さんのお二方です。皆様、拍手でお迎えください。せっかくですので審査員の先生方、自己紹介をお願いできればと思います。

白 白石慶子と申します。普段はアニメーションの監督として仕事をさせていただいております。主にTVアニメのオープニング、エンディング、今でしたら『ハクメイとミコチ』というTVアニメのオープニングの監督ですとか、『クズの本懐』というアニメのエンディングの監督をやっています。よろしくお願いたします。

叶 お願いいたします。それではエディさん。

エ エディ・メホングと申します。フランスから参りました。2001年にフランスのアニメーション学校1を卒業後、ヨーロッパと日本で10年ほどアニメーターとして活動しております。現在はヤピコ・アニメーション2という会社を設立しまして、日本と海外のアニメーションの橋かけとなるように頑張っております。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。

叶 早速色々お伺いしていきたいんですが、この短編コンペティションの「スロット1」、全部で11作品もあるわけですけれども、これをさらに多くの作品の中からお選びになったということで、お伺いしたところによると2名ずつグループでそれぞれ180作品くらいをご鑑賞いただいて、さらに最終選考をするという、非常に複雑な大変な審査をなさったわけですが、審査のときの様子などお伺いできればと思います。

白 私達は同じ作品を観たあと、自分たちはこれを推薦したい、というものを選んで、今回の作品に反映させていただいてます。けっこうお互い選んだ作品が違いますね。

叶 そうなんですか!(笑)かぶらなかったんですね。

白 同じ作品を選んだこともあったんですけど、やっぱりお互い違うものを推薦したものもあって、私は日本出身で、エディはフランス出身で、見え方ですとか、感じ方ってのが違うのかなという印象がありました。

エ とても選ぶのが難しくて、なぜかというと、それぞれタイプがかなり違っていて、ストップモーションですとか3DCGですとか、本当に色々なタイプがあったので…。違ったタイプのものを選んだのはすごくいいことだと思っています。

叶 本日、(観客の)皆さんに御覧頂いた11作品の中で特にお二方がこれはというふうに推された、やはりこれを残したいと思った作品、思い入れのある作品があればお伺いしたいんですが…。

エ 『燃え尽きる』という作品がすごく好きでして、なぜかというと、少人数で作られているんですけども、すごくクオリティの高い音楽、ストーリーテリング、様々な技術がギュッと詰まっていて、とても素晴らしいと思います。

白 今回本当に色々な手法ですとか、テーマというものを扱っているので、なかなかこう一本というのは難しいんですが、『すみっこの子』という作品、こちらストップモーションで、コマ撮りって言いますと親しみやすいかもしれないんですけど、なにか実際手に触れるものを一枚一枚写真にとって、それをアニメーション化していくという作品で、日本のアニメーションの色々な継ぎ方があるというところをお伝えしたいな、と思って推していました。あとはそうですね、今日観た中では、『頭が消えていく』という日本語のタイトルになってるんですけど、こちらの作品は、おそらく主人公のおばあちゃんが認知症ですね。記憶を忘れていくということが、実際にビジュアルとしても頭が消えていく、実際に目に見える形で頭をどこかに置いてしまったり、どこかに行ってしまったり、(そして)最後に頭が戻ってくるという、なにかこう記憶という目に見えないものが頭という目に見えるものとして描かれていて、そういうやり方もすごく興味深いなと拝見しておりました。

叶 本当におっしゃる通りテーマが深いものがとても多くて、認知症を扱ったものには、他のスロットでもですね『メモ』3という作品があったりですとか、あるいは今回来日していただいているパコ・ロカ4さんという漫画家さんが描いた『皺』という作品なんかもフェレーラス監督5によってアニメ化されていて、それがさきがけだとは思うんですけど、老人のアルツハイマーとか日常みたいなものを扱った作品はそれまでアニメーションではほとんど考えられなかったわけですけど、そういったものが昨今いろんな形で短編や長編で作られるようになって、テーマがどんどんどんどん深く掘り下げられてるなあという感じは確かにしますね。それと、お二人が挙げてくださった作品、奇しくもと言うか、お二人とも出身校の後輩がお作りになったものを挙げてらっしゃるのがちょっと印象深かったんですけれども、お二人がゴブランとか東京藝大6に在学していた時と比べて、今の後輩の方たちが作っていらっしゃるアニメーションについてはどういう風にお考えでしょうか。

白 私は東京藝術大学のアニメーション専攻というところを修了しておりまして、今はフリーランスで活動しています。日本のよくあるTVアニメーションのような2Dのもの以外にも、今回の『すみっこの子』のようなストップモーションのように実際手に触れるもので作られたものというのは昔からあるんですが、最近は商業のTVアニメでも、最近だと『ポプテピピック』7が話題になっていますけど、そういった色々な手法を使ったものが、地上波に乗るようなところにどんどん浸透してるので、これから芸大の修了生の作品がみなさんの目に触れる機会がこれから増えるんじゃないかなと思っております。

叶 だんだんボーダレスになってるというかハイブリットになってると申しますか、テレビで深夜にやってるようなものを、藝大の伊藤有壱8先生のところで育ったような人たちが砂絵であるとか切り紙カットアウトといった技法で作られるようになってますよね。白石さんがいらっしゃったサンライズの中でそういうアートアニメーションを作られる方が活躍されるているというのは、(白石さんが)そのさきがけの道を開拓なさったんじゃないかなと思うんですけど、どんどん新しい人たちが出てきていますよね。特に女性が活躍されているという感じがしますね。ゴブランはいかがでしょうか?

エ ゴブランに関しては基本が新しくなって、多様化したことですね。セルロイドで制作していた頃は、本当に短いフィルムしか作ることができなくて、しかもチームで作らなくてはいけなかったんですけど、今では、少人数で色んなフィルムを作ることができるようになっていると思います。

叶 日本の学生さんの卒業制作のような若い方の作品って個人で力のある作品を作っていることが多いんですが、ゴブランとかカルアーツのようなフランスの学生の作品は集団でとても素晴らしい作品を作っていると思います。そういうチームワークというのはどういう風に作られてるんでしょうか。

エ 現状については多くは語れないんですけど、私が学生だった10年前に関して言うと、それぞれの役割分担を明確にしてやっていました。例えば、アニメーター、キャラクターデザイナー、ディレクターというように、そこをはっきり分けるというのがポイントだと思います。

叶 日本の専門学校の卒業制作もそういう役割分担でやってるはずなんですけど、なかなかここまでのクオリティのものっていうのは出てこないですよね。切磋琢磨したりですとかプロ意識のようなものが高いのかななんて思ったりもするんですが…。

「失われたもの」を再現するアニメーションの力

叶 冒頭に上映されました『あの日まで』という作品、東日本大震災の被災の実情と言いますか、家族で被災して亡くなってしまった人の思い出、在りし日の姿をパペットのコマ撮りのアニメーションで再現するということをなさっていて、僕の主観かもしれないんですが、日本のコマ撮りのアニメーションで東日本大震災について、それをテーマにしたりモティーフにしたりして表現している作家が多いような気がするんですよね。中村誠9の『ちえりとチェリー』10であったりとか、村田朋泰11の『松が枝を結び』12であったりとか…。ドワーフ13の合田監督14も作られてますけれども、白石さんも広島の作品を扱われたりしていて、非常に辛い記憶なんですけども、あえてアニメーションでそういうものを、復元したりとか作品として結晶していくという、そういった作家の思いというのはどういったものなんでしょう。

白 ちょうど明日は3月11日で震災から7年経ちますけれども、まだこうして震災のことを思い出させてくれる、伝えていく作品が作られていて、そして今回の作品を観てもそうなんですが、震災が起きる前の実写で撮影してなかったものを、こうしてアニメーションの力を使って再現できるんだなということを感じています。あと私自身も去年、三陸国際芸術祭という岩手県の大船渡、津波の被害があったところですね、そちらにワークショップに行きまして、大船渡幼稚園の子供達と一緒にアニメーションワークショップをしたんですけれども、保育園児ですともう震災を知らない世代なんですね。震災後に生まれている子どもたちにもアニメーションを一緒に作るなどの活動を通して、震災のことを伝えていくというようなこともこれからの表現者としてはしていきたいな、と思っております。

叶 さきほどの『頭が消えていく』という作品もそうなんですが、実際にそれを再現ドラマにするとか、あるいはドキュメンタリーとして生々しく当時のフィルムとかを引き出してくるというのと、アニメーションの再現性というのはぜんぜん違うものがあるんですよね。ある意味優しいし、子どもでも大人でも一目瞭然でそれが感情的に伝わるように、パペットの優しさであるとか、ある種切り詰めた、省略化したものの中にそういうものがより深く込められているような気がします。そういった表現についてはいかがですか?

エ アニメーションの素晴らしいところは、本当にそこだと思います。実写では表現しきれない感情の動きなどを表現するというところが、私もとても素晴らしいところだと思っています。

 

選ばれる作品の条件とは

叶 今回のコンペティションをおやりになって、特にこういうところを気をつけて選んだというところなどあれば最後にお伺いしたいんですが。

白 本当にいろんな手法であったりテーマがあるので、一概には言えないんですが、ただやはり、色々な人に観てもらいたい、子供から大人まで、日本から海外の方まで、かつ、これから観続けていって欲しいな、という作品を特に選ばさせていただいております。

叶 白石さん、去年も一次審査をなさっていただいたんですけども、去年と比較というのも難しいと思うんですが、そのへんの特徴とかはいかがですか?

白 年々、色々な技法を使ったものですとか、それこそ本当にデジタルからアナログまで垣根を超えて作られたものがでてきたりしていて、あとはその中でも商業とインディペンデントの境目がどんどんなくなってきているな、というのを感じております。是非みなさんが色んなアニメーションを観ていただいたり、もっと色んな国同士が一緒に作れるようになってくれるといいなあと思っています。

叶 日本との合作もあるといいですよね。日仏合作とかあると嬉しいですね。

エ 選考で気にした点は二点ありまして、私自身が2Dを専門としていたこともあって、色々な技法を使って作品を作られていたところにとても興味を持ちました。それで、技法というところと、あとは私個人が本当に感情移入できるかどうかというところをポイントにして選びました。

叶 僕も去年一昨年と参加させていただいているんですけど、全体的に3Dのもの、ピクサーやディズニーのような全部が3Dという感じのものが逆に減っているなという感じがして、その分バラエティが本当に豊かですよね。『ザ・エビル』なんかはカレル・ゼマン15みたいだなと思ったりもして。でもみんなデジタルなんですよね、仕上げとか撮影とかエフェクトとかは。デジタルなんですけども、非常にアナログに逆行しているような豊かな感じがして、とても楽しいなあと思ったりもしています。
 せっかくですから、ご登壇の審査員の皆様にご質問などあれば挙手いただければお答えいただけると思いますが、いかがでしょう?今日は、セレクトされたお客様ですから。鋭い質問が出るのではないかと…。

Q 予備審査を通る作品と残念ながら通らなかった作品の、何か決定的な傾向といいますか、やはり作品としてはこういうものがないと通らないねというものはありますか?

叶 難しい質問されますよね〜(笑)いかがでしょうか?

エ 私の中で具体的な基準を設けまして、個人的に楽しめないという作品と、あとはやはり一定のクオリティを保っていないといけないということで、自分の中での基準を作って選択をしました。

白 本当に審査員をすると、この難しさを痛感するんですけど、今回も触れられていない作品、一作品一作品をおすすめしたい気持ちもありますし、今回上映されていない作品も本当に様々な国から送られてきていて、是非みなさんには色々なものを観ていただきたいんですけど、どうしても本数には限りがあるというところで、そこで最終的に選ばれていくものというのが、やはりなにか観る側を意識しているものですとか、もちろんそれがわかりやすいわかりにくいこともあるんですけれども、そこでなにか伝えたいものがあるんだな、これは沢山の人に観てほしいんだな、という熱意があるものを特に選ばさせていただいているつもりです。

叶 いや、難しいと思うんですよね。昨日も同じようなお話があったんですけれども、やはりこれだけ作品の数が多いとテーマが被る作品があるんじゃないか、ということを僕の方で聞かせていただいたんですが、そうしたら審査員のお二方が「やはりそれはある」と。やろうとしていることが非常に似ている、表現も似ているというものが並んでしまうことがあるということなんですよね。完全なオリジナリティというかたちで横に並べられなくて、どうしても同じテーマだったらこっちのほうが優れているという、どうしても比較してしまうという、そういう難しさはありますね、という話をなさってました。ですから、そういうテーマも含めてある種のオリジナリティのようなものを問われるのかなという気はしますよね。そういう意味では、戦争だったら戦争をどうやって描くかということがやっぱり鍵になるでしょうし、最終的にはやはりオリジナリティなのかなあという、ちょっと抽象的なんですが、そんな気もしたりしました。
 ほか、よろしいですか?あと1分なんですけど(笑)簡単なご質問であれば、一問だけお答えできますが…。よろしいですか?
 それでは長らくたくさん作品を御覧頂いて、質疑応答そしてトークショー御覧頂いてありがとうございました。それではこのプログラムの方はこちらで終わりになりますので、先生方にもう一度拍手をお願いいたします(拍手)素晴らしい作品を、本当に大変な思いで選んでいただきました。このあとも長編の上映ございますので、よろしかったら引き続き御覧ください。それでは本日はありがとうございました(拍手)

NOTES

  1. “Gobelins, l’École de l’image”。フランスの代表的なアニメーション教育機関。今回の映画祭にも多数出品されている。
  2. 2012年設立。本社はフランスで日本に支社がある。2016年のジャパンエキスポで磯光雄監督の新作を発表している。
  3. 短編コンペティションのスロット3で上映。ゴブランの卒業生たちが作った認知症をテーマとした作品。すごく好き。
  4. パコ・ロカ(2008年-)。スペインの漫画家。代表作はスペイン内戦をテーマにした『灯台』[El Faro](2004年)、『皺』[Arrugas](2007年)など。『皺』は2012年の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
  5. イグナシオ・フェレーラス(1960年-)。スペインの映画監督・脚本家。『しわ』は初長編作品。
  6. 東京藝術大学の映像研究科アニメーション専攻は今年で10周年。毎年やってる卒業制作展はクオリティが高いのでオススメ。
  7. 『ポプテピピック』(2018年、シリーズディレクター:青木純、梅木葵)。今年の最優秀クソアニメ。番組内コーナーが豊富で(というかそれしかない)、AC部の「ボブネミミッミ」やUchuPeopleのフェルトアニメーション「POP TEAM DANCE」、佐藤美代のサンドアート「ポプテピピック昔ばなし」など、様々な表現のアニメーションが使われたことでも話題となった。
  8. (1962年-)。東京藝術大学映像研究科アニメーション専攻立体アニメーション領域の教授。白組出身。NHKの『ニャッキ!』が代表作。
  9. 中村誠監督(1970年4月16日-)。アニメーション監督・脚本家。代表作は『劇場版AIR』『劇場版CLANNAD』の脚本など。
  10. 2015年に制作されたパペット・アニメーション。少女の冒険と成長を通して「命の大切さ」と「想像力の可能性」を描いた作品。イマジナリーフレンズのチェリーがやたらとでかい。
  11. 村田朋泰監督(1974年7月4日-)。ストップモーションアニメーター。代表作は『睡蓮の人』(2004年)など。
  12. 2017年。震災をテーマにした短編のパペット・アニメーション。
  13. どーもくんでお馴染みのコマ撮りアニメーションの会社。
  14. 合田経郎(1967年1月16日-)。コマ撮りアニメーション作家。代表作は「どーもくん」シリーズや宇多田ヒカルの『ぼくはくま』MVなど。
  15. カレル・ゼマン(Karel Zeman,1910年11月3日-1989年5月5日)。チェコのアニメーション作家。ジュール・ヴェルヌの作品の映像化で知られる。