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 長編コンペティション4作品の中では圧倒的にクオリティが高かったのでグランプリも納得!
 独創性に限って言えば、他の3本に軍配が上がるんですが、完成度は今作が群を抜いています。ただ、去年まではこのレベルの作品が4本競っていたイメージがあるので、「今年はどうしたんや?」という感じもあり(もちろん、他の3作も良作ではあるのですが!)。

 台湾版『おもひでぽろぽろ』という前評判の通り、中年に差し掛かって様々な問題を抱える主人公が帰郷を契機として自らの過去を振り返り、前に進み出すというストーリー。「おもひで~」のタエ子がただ漠然とした不安感を抱えているのに対して、本作の主人公であるチーはより切実な悩みを抱えていて、それが台湾という国の歴史とゆるやかにつながっているのが特徴的。幼少期からの半生を辿る中で、例えば自由化を求める学生運動であるとか、禁書に手を出した従兄弟が公権力によって弾圧されるエピソードなどが、違和感なく挿入されていく。たぶん自分のような日本の鑑賞者にとっては新鮮な面もあり、普遍的な要素を感じ取れるだろうし、台湾の人々は自分たちの人生と結びつけて考えるのだろうと思う。この、ミクロな個人の人生とマクロな国の歴史というものが有機的に絡み合ってストーリーが成り立っているのがこの作品の大きな魅力の一つだ。

 

 ところで、個人的には『おもひでぽろぽろ』よりも『ちびまる子ちゃん』を連想したり。幼少期は特に。お父さんのデザインとか完全にヒロシだし。このキャラデザすきだなー。登場人物みんな魅力的なんだけど、物語のキーとなるおばあちゃんも良かった。子供の頃の空想の場面などにはアニメーションらしい表現が効果的に使われてて、パンチの弱い湯浅政明監督のような雰囲気が楽しい(連想したのはもちろん、『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』)。

 そういえば面白かったのが、ちょくちょく日本への目配せがあったこと。『キャンディキャンディ』とか『科学忍者隊ガッチャマン』とか。特にガッチャマンは扱いが大きかったです(北京語(?)で主題歌を歌う!)。これは日本でも是非ロードショーで上映してほしいですね。これまでのグランプリ作品はどれも1年遅れくらいで公開となっているので、たぶん2019年の公開だろうと思います。期待!

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