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【映画レビュー】『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』:アニメーション的おまつり騒ぎ

投稿日:2015年10月13日 更新日:


シンプルモダンな「まんが映画」

 「アニメミライ2013」で大人気を博した『リトルウィッチアカデミア』待望の続編。当初は前作と同じくらいの長さを想定していたとのことだが、クラウドファウンディングの大成功を受けて、ほぼ2倍の1時間弱に。

 ストーリーの大筋は非常にシンプルな映画だ。前作と同様に主人公はアッコ(潘めぐみ)、ロッテ(折笠富美子)、スーシィ(村瀬迪与)の問題児3人組。度重なるトラブルを引き起こした罰として彼女らに課せられたのは毎年行われる街の祭りでのパレードを行うというものだった。彼女らと同様の問題児、アマンダ(志田有彩)、コンスタンツェ(村川梨衣)、ヤスミンカ(上田麗奈)の3人とともに、中世の魔女狩りを再現したパレードをどうにかして楽しいものにしようとするアッコだったが、彼女の思いはどうにも空回りで…。

 基本は「文化祭もの」とでも言うべきテンプレートをベースとしたみんなで何かを作り上げるというストーリー。もちろん、起承転結という起伏、仲間割れで一度挫折してからの復活と、クライマックスへと突き進む展開は王道ながら熱いものがあるし、テンポもサクサク進むのが気持ちいい。特に、終盤、やりたい放題のアッコに温厚なロッテが本音をぶつけるシーンなどはドラマ的に見応えがあるし、目玉となるパレードの動力源についての伏線の処理も面白い。とはいえ、アッと驚くような技巧に富んだどんでん返しや手に汗握るサスペンスといった、奇をてらった要素は何もない。あとついでに言うならライバルのガキとの忌々しいラブコメとか女学校ならではの百合展開も無い。シンプルイズベスト、とでも言うべきストーリーだ。

「動き」を見る楽しさ

 じゃあ、この映画には何があるのかと言えば、「アニメーションらしいアニメーションが見れる」ということに尽きると思う。『天元突破グレンラガン』や『キルラキル』由来の、吉成監督らしい大胆すぎるアクションシーンもさることながら、日常のほんの一コマまで常にキャラクターたちが表情を変え、動きまわる。特に主人公であるアッコが実写では到底出来ないような様々な表情へと次々と移り変わるのは観ていてとても気持ちがいい。無鉄砲でお転婆で多少気が狂っているという彼女の特徴が最大限に活かされていて、さらにほとんど表情が外に出ないスーシィとの対比が面白い。

 「実写でもがんばればできること」という表現は多いし、この作品の中でもいくつも使われているが、そういった表現が全くウソっぽくならないのがアニメの強みだと思う。例えば、中盤での街のワルガキ共との小競り合いのシーンで、トマトをしこたまぶつけられトマトまみれになったアッコが身体を震わせるとアッという間に元通りになるカットとか、コンスタンツェのデバイスがスローで見たらよくわからない感じの謎の変形で光線銃(っぽい魔法武器)になるところなんかは嘘だと知りつつもなんだか本当のように見えるのだ。あとそれから新キャラクター紹介シーンでのヤスミンカの超高速つまみ食いシーンとか。この映画ではそういう「アニメでしか出来ない表現」がてんこ盛りになっていて、その点からすると、同じ時期に公開している『心が叫びたがってるんだ』とは対局の位置にある(もちろん、あちらもアニメであることの意味はあるのだけど)。

広がる、世界

 もう一つ良かった点は、世界観に広がりがもたらされたということ。前作が魔女育成学校であるルーナノヴァに立つ塔を舞台に、文字通り上を下への大騒ぎが繰り広げられたのに対して、今作では学校の外という横への広がりが描かれることで、それまでよくわからなかったこの世界での魔女と魔法の位置付けが、街という外部から相対化されて浮かび上がってくる。

 一番衝撃だったのが普通に携帯電話があることで、学園内に情報化デバイスが一切ないのは校則でそう決まっているからだとか。新キャラの一人であるコンスタンツェ・ブラウンシュバンク・アルブレヒツベルガー 1 (長い…)は「ハイテク機器の校内持ち込み及び密売」の校則違反という、不意打ちのSF的面白さを見せてくれるし、さらに、前作でもある程度言及はされていたが、学園の塔から一定以上離れると魔法が使えなくなるであるとか魔力は数値化できるといったより細かい設定も披露される。なんとなく、ラリイ・ニーヴン 2 の『魔法の国が消えていく』のようなロジカルファンタジーを連想する設定だ。

 世界が広がり、設定が明らかになったことで、「学園から離れたら魔法が使えないのだったら何のために魔女はいるのか」「ルーナノヴァから卒業した魔女はどこに就職するのか」など様々な疑問が浮かぶが、そのあたりはこれからの展開で描かれるのを期待しておきたい。彼女らのその後が気になるとても楽しい作品だ。

基本情報

リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード  56 min

監督:吉成曜

音楽:大島ミチル

脚本:島田満

出演:潘めぐみ/折笠富美子/村瀬迪与/日笠陽子/志田有彩/村川梨衣/上田麗奈/日高のり子/

公式サイトhttp://littlewitchacademia.jp/

公式Twitterhttps://twitter.com/LWA_jp

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NOTES

  1. コンスタンツェ・ブラウンシュバンク・アルブレヒツベルガーちゃんかわいい!コンスタンツェ・ブラウンシュバンク・アルブレヒツベルガーちゃんかわいい!大事なことなので二回言いました!
  2. アメリカのSFおじさん。『リングワールド』マスト読んでね!

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