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【映画レビュー】『アイアムアヒーロー』:「ラスト10分の衝撃」ってのはこういう映画だ!

投稿日:2016年6月15日 更新日:


 これだよこれ!こんなゾンビ映画を観たかったんだ!現代日本の平和な日常が加速度的に崩壊していく過程。暴徒化する群衆。大胆な欠損表現のZQN。そして、はじけ飛ぶ脳味噌!

 まずもって、大泉洋の素晴らしさ。漫画原作映画の懸案の一つである「キャラクターが似てない」という問題を軽々と飛び越えている。例えば、『探偵はBARにいる』のような典型的な大泉感、まあ要するに髪の毛モジャモジャの飄々としたおっさん、という強固なイメージがあっさりと拭い去られていて、そこにいるのは確かにだらしなくて等身大の「鈴木英雄」なのだ。

 原作ではこの漫画家志望のおっさん[note]そういえば、同じようなシチュエーションの漫画で『俺はまだ本気出してないだけ』があるが、あちらの映画版の主人公役も大泉と同じテイストのアクの強いやつ、堤真一だった。[/note]が、ほぼ単行本一冊を丸々を使って鬱々とした日常を送る様を描いていて、だからこそ、第一巻の終わりで突然[note]正確に言うならその前にも前兆のようなものが断片的に描写されたり、あからさまな化物も出るのだけど、どれも白昼夢めいていて。[/note]ZQN(ゾンビ)が登場するシーンは衝撃的だった。ところが、映画ではそもそも最初から「ゾンビもの」だという体で宣伝されているので、序盤の日常パートはあっさり目で抑えられている。しかし、そこから緩やかに日常が崩壊していく描写は原作にも増して上手い。例えば、てっこと喧嘩して(映画ではてっこの家に寄生しているという設定)閉めだされた英雄が、仕事場で夜を明かして家に戻る場面。自転車や車が行き交い、人々が生活する音が流れる。そのさりげなさ。最初の襲撃を逃れた英雄が街を逃げ惑うシーンでも、日常生活の中に少しずつ、しかし加速度的にZQNが入り込んでいく。ZQNという非現実的な存在によって、次第にパニックに陥っていく人々の姿が非常にリアルに描写されていて、この群衆パニックの場面だけでも十分な見応えがある。

 さらに素晴らしいのが、この映画の裏の主役とも言えるZQNの造形。原作で出てきた温水さんや葉加瀬太郎モデルが実現しなかったのはちょっと残念ではあるのだけれど、それにしてもZQNの圧倒的な存在感!アニメではこのリアリティのあるおぞましさを出すことはちょっと難しかったのではないだろうか。最初に遭遇する例のZQNのアクロバティックな動きからしてすでに感動的なのだけれど、前述の群衆パニックの場面でシンボリックに登場する、映画オリジナルのサラリーマンZQNがまたいい。原作でも印象的だったアウトレットモールで遭遇するアスリートZQNはさらにパワーアップしており、事実上この映画のラスボスとも言える存在になっている。あの大きく陥没した頭部、どうやって再現するのかと思っていたのだけれど、3Dプリンタで頭部の枠を生成し、画面合成で抜いているのだとか。彼の纏う、非現実的な現実感はこの映画を象徴するにふさわしい。

 ところで、この映画、主人公である英雄はなかなか銃を撃たない。もっとも原作でもそれは同じなのだけど、比呂美(有村架純)と出会った森ですでに銃でZQNを殺している原作と違って、映画の方では本当に最後の最後まで撃たない。しかし、その最後の最後の10分。これが本当にすごい。完全にネタバレになってしまうのだけど、英雄の散弾銃で次々に弾け飛ぶZQNの頭!頭!頭!邦画らしからぬ激しいゴア描写。それが延々と続く!『キングスマン』の威風堂々がかかる例のシーンを思い出す。戦っている人々の疲労と興奮が伝わってくる騒々しい緊張感。原作では地下だったシチュエーションが駐車場の上層階に設定されているのだが、この改変が映画の最後で活きてくる。逆光の中に立つ英雄の姿は、まさにタイトルである「アイアムアヒーロー」そのものだ。

基本情報

アイアムアヒーロー  127 min

監督:佐藤信介

音楽:Nima Fakhrara

脚本:野木亜紀子

撮影:河津太郎

出演:大泉洋/有村架純/長澤まさみ/吉沢悠/岡田義徳/片瀬那奈/片桐仁/マキタスポーツ/塚地武雅/徳井優/風間トオル

公式サイトhttp://www.iamahero-movie.com/

公式Twitterhttps://twitter.com/iamaheromovie

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