目次
はじめに
さて、データ原口先生のアニメ講義もはや6回目。今回からはTVアニメ50年の歴史を振り返る連続講義になります。初回は『鉄腕アトム』以前(1961年くらい)から1967年まで。でも読んでもらえればわかりますが、『鉄腕アトム』の話とかほとんどないんですよね(笑)相変わらずマニアックだ…。
前回の「第97回アニメスタイルイベント 原口正宏アニメ講義vol.5 TVアニメ50年史編集会議」のまとめはこちらになります。
アニメ講義
!notice!
トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。
登壇者
原口正宏さん(アニメーション研究者。通称、データ原口。以下「原」)
小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「小」))
日本初のTVアニメは『マンガ・ニュース』?
■ 『マンガ・ニュース』というものがあったが、現物がない。未だにここぞというところまでたどり着いていない作品1。
■ 放送枠は21時12分から3分ほどやっていて、途中で時間帯変更している。ドラマみたいなものだったり、止め絵でほんとにマンガを映していくだけかもしれないと思っていたが、どうもちゃんとしたアニメらしい。
『宇宙少年トンダー』とは
■ 横山隆一さん2の鎌倉のお宅3に、『インスタントヒストリー』4を借りにおじゃました時に、「こんなものもあるよ」ということで出てきた。
■ 横山隆一原作、おとぎプロ制作による作品。5分間の13本組で制作は終了していたらしい。
■ 貸して欲しかったけど、フィルムの状態が悪く断念。5分間の作品をいくつかまとめたフィルム。
初期の『鉄腕アトム』
■ 『鉄腕アトム』のカット袋は80話分残っている。虫プロの天井裏の更に奥にあった。発見されるまでに何十年もかかった。
■ 杉井ギサブローさん5がカット袋に彩色の落書きを描いてる(かわいい)。
■ カット袋に細かいスタッフが書かれている。
■ 1話から3話までは手塚治虫自身がやっていて、3話の時点で大晦日になってしまった6。スタッフはあきらめ気味だったのだけど、○○さん3が説得して継続することに。ただし、手塚さんに任せてると危ないということで、急遽5話と4話を入れ替えて、坂本雄作さんが文字通り1週間で作ることになった。
■ 残ってるコンテで一番古いのは5話の杉井ギサブローさんのもの。
■ 手塚さんのコンテは絵コンテというよりはラフレイアウトみたいなもの。原画用紙の大きさ。台詞はなかったので、スタッフは何を作っているのかわかっていなかった。できあがったものを手塚さんがジグソーパズルのようにつなぎ合わせたという神話が…。
■ 月岡さんは東映で『狼少年ケン』7の仕事が終わるとアトムの手伝いに虫プロに行っていた。月岡さんに載せないほうがいいか聞くと「ぜひ載せてくれ、あれが当時の一番の仕事だ」と言ったとか。
『仙人部落』8放送回数の謎
■ 23話+未放映1話。エイケンの資料に準拠。第6話「SEXの巻」がヤバイかと思ったら第7話「昇天の巻」が放送中止になっている。
■ 放送回数としては24回のはずだが、縮刷版をカウントしていくと23回になってるので合わない…。24回で1回ダブりのはず。
■ TCJ9は元CM会社なので、原作の絵柄を再現しようとする傾向があった。東映はアニメーターの個性を打ち出す方向性。
50年史に追加するもの
■ エイケン10の資料を漁っていると、『マザーグース』がオンエアありになっている。さらに、『炉辺のこおろぎ』はNHKでオンエアありになっている。オンエアしているのなら50年史に追加しないといけない…。
■ NHKのアーカイブ11でダメ元で検索してみたら、『マザーグース』は「ヒネクーレ国ものがたり」12になっていて、エイケンの資料とぜんぜん違う(笑) 備考にTOJとあり、TCJの打ち間違えか。
■ 合作先の資料を見ると「81分」になっていて、81分の作品を45分で放送したらしい。
■ 『炉辺のこおろぎ』のほうは「こおろぎの冒険」13になっている。
■ 合作だが、アニメーターは向こうの人3。梁瀬次郎14(TCJ)がクレジットされているのみ。制作現場は日本だったらしい。
■ ランキンバス・プロダクションはビデオクラフトインターナショナルの次に作られたらしい。
ランキンバスによる日米合作アニメ
■ 「TOEI Animation ’79」に記載されている海外合作漫画映画。『メイフラワー号のねずみ』(NTJで放映)、『スモーキー・ザ・ベア』(NHKで放映)。
■ 『スモーキー・ザ・ベア』は『進めや進めスモーキー!』になっている。前半がアニメで後半がドキュメンタリーの「動物王国」。20分枠っぽい15。
■ 『スモーキー・ザ・ベア』の最終回、同時放送は『ロンドン指令X』になっている16。
■ 『スモーキー・ザ・ベア』のクレジット、「Animation Supervisor: Stave Nakagawa」。アニメーターでもある通訳の人。女優の淡島千景17の弟、中川雄策さん。雄策という名前が悪かったため、スティーブ中川にしたらしい。
■ 『スモーキー・ザ・ベア』のクレジット。「Toei Animation Studio」の文字が!
■ 『メイフラワー号のねずみ』では「Toei Studio」のクレジットだけ。
■ 『メイフラワー号のねずみ』:東映の広報誌にも放送の事実が書かれなくなる。NTV3放送されたはずだが、証拠が見つからない。1970年2月3日の新聞に「『メイフラワー号のねずみ』と『スモーキー・ザ・ベア』を今年中に放送します」という証言がある。東映の広報誌は放送局の間違いが多いので、実際にNTVで放送されてないかもしれない。72年までは縮刷版のチェックが終わったけど、放送されていない。79年までには放送されているはず…。
■ 文京区のフィルムライブラリーに『メイフラワー号のねずみ』の日本語版がある18。1972年3月23日に購入している。5日後に上映されたという事実はあるが、テレビで放送されたかはまだわからない。
■ ビデオクラフト・インターナショナルと日本との関係は非常に深い。8割方、日本との合作。手始めが『the New Adventure of Pinocchio』19で、非常に重要な人形アニメ。「Dentsu Studio」のクレジット。5分で130エピソード。途中でMOMプロダクションのスタジオが火事になり、経営不振に。アメリカでは、25分×26回でやった例もあるけど、日本では未放映分がある。フィルムは原口さんが電通スタジオで目撃している。一回だけサブタイトルが乗っている縮刷と突き合わせると頭から順番にやっている。最低4回まとめてやった回がある。
■ 『キングコング』20は日本では26回やってるが、本国では25本しかない。最後の2回は『親指トム』を抜かしてキングコングをAパートBパートでやっている。
■ 1972年からは制作受注会社にトップクラフト21が登場。ランキンバスとの関係による。ランキンバスとしての最後の作品は「たのしい川べ ヒキガエルの冒険」22と『サンダー・キャッツ』23『シルバー・ホークス』24『コミック・ストリップ』25。
■ ランキンバスは作画と仕上げと彩色を日本に発注。コンテ、脚本、レイアウト、美術などは自社でやっていた。実質的に日本側は下請け。
■ 合作経験によって日本のアニメーターが得たものも多い。
ニコ生の結果発表!
■ 良かったが57%、悪かったが14%。初心者殺しなのでしかたない。
■ 総視聴者数は1031人。
『レインボー戦隊ロビン』のDVDは史上初の「解散宣言」入り!
■ 『宇宙パトロールホッパ』26がDVD化される。かなりの冒険だ!
■ 『レインボー戦隊ロビン』27も、傑作選以外でついにDVD-BOX化。
■ ファン活動が活発化する契機となった作品。『海のトリトン』28『科学忍者隊ガッチャマン』29、そして『ロビン』(と『サイボーグ009』30)。
■ DVD化されるに際して新発見されたフィルムがある。「ロビンの解散宣言」で1分間の尺、最終話の予告の代わり。
■ 「東の研究会」と「西の交流会」。上映会を頻繁に行っていて、この「解散宣言」はおなじみだった。
■ 「解散宣言」はVHSでもLDでもなぜか収録されず。今回のDVDで初めて収録。
■ トップクラフトで交流会での上映会のために新規フィルムを作る。窪詔之さん31がコンテを書く。原画も2,3カット描く。ロビン交流会のファンがトップクラフトで仕上げをやっていた。ちなみに、久保さんの奥さんは交流会OBの方。
■ ロビンの49話を作ろうプロジェクト。30分は難しいので、とりあえず予告編を作る。人気キャラのリリが主役。新作カットはかなり動いているとか。声も八木さん3、里見さん3が声をあてている。
■ プロと一緒になってフィルムを作ってしまうような熱気、独特なエネルギーがあった。
まとめ
今回の目玉は「ランキンバス・プロダクション」!これに尽きますね。にわかアニメファンなので何もかもが新鮮な話です。それからエイケンのマニアックな作品がオンエアされてるかされてないか問題。NHKのアーカイブは便利だなあ。でも間違って入力されてると無力、という。次回の講義も楽しみです!
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関連リンク
■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/
■TVアニメ50年史のための情報整理|Webアニメスタイル http://animestyle.jp/special/tv-anime50th/
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- これについてはwebアニメスタイルの原口さんのコラムがあります。TVアニメ50年史のための情報整理番外編 『もぐらの アバンチュール』日本最初のカラーTVアニメの“発見” | WEBアニメスタイル
- 横山隆一(よこやま・りゅういち)[1909年5月17日-2001年11月8日]。漫画の『フクちゃん』でお馴染みの方ですが、最初期のアニメスタジオである「おとぎプロ」の主宰でもあります。
- 今はスタバになってます。スターバックス鎌倉御成町店。
- 1961-62年。国産初のTVアニメシリーズ。夕方の帯番組で3分間。全312本。制作:おとぎプロ。
- 杉井ギサブロー(すぎい・ぎざぶろー)[1940年8月20日-]。東映動画→虫プロ→アートフレッシュ→グループ・タック→フリー。色々やられてますけど、『銀河鉄道の夜』あたりが印象的ですね。
- 『鉄腕アトム』の放映は翌日の1963年1月1日から。
- 1963-65年。東映動画初のTVアニメーションシリーズ。スタッフには月岡さんをはじめ、芹川有吾さん、児玉橋夫さん、高畑勲さんらが名を連ねる。月岡さんは原作とキャラクターデザイン、演出などを担当。
- 1963-64年。日本テレビジョン株式会社映画部(現:エイケン)制作。日本初の深夜テレビアニメ。仙人が住む「仙人部落」を舞台としたエロティックなスラップスティック・コメディ(でいいのかな?)。
- この時は「日本テレビジョン株式会社映画部」。日本テレビジョン株式会社は元々はテレビ受像機の輸入会社だったが、収益確保のためにCM制作に乗り出す。
- 株式会社エイケン。前身である日本テレビジョン株式会社は1952年創業。1969年に株式会社ティー・シー・ジェイに商号変更し、1973年に現在の株式会社エイケンに商号変更。なんといっても『サザエさん』シリーズが強い。
- 1951年以来の番組データを保存したアーカイブ。便利。番組表ヒストリー | NHKクロニクル
- 『児童劇映画 「ヒネクーレ国ものがたり」 ―“マザーグース”から―』。1971年8月20日(金)午後06:00 ~ 午後06:45放送。
- 『少年映画劇場 「こおろぎの冒険」 チャールズ・ディケンズ原作 「クリスマス・ブック」から』かな?1969年12月28日(日)午後6:05 ~ 午後6:49放送。
- 梁瀬次郎(やなせ・じろう)[1916年6月28日-2008年3月13日]。自動車輸入会社である株式会社ヤナセの二代目。日本テレビジョン株式会社の創設者の一人。
- 前述のNHKのアーカイブによると、1970年10月18日(日)18:05-18:49が初回かな?「<新番組>」という表示があります。
- 1971年2月21日(日)。この時、『ロンドン指令X』も最終回。
- 淡島千景(あわしま・ちかげ)[1924年2月24日-2012年2月16日]。宝塚歌劇出身の大女優。
- 視聴覚ライブラリー | まなびと出会う 文京アカデミーの生涯学習講座
- 1960-61年。ウィキペディアでも「電通スタジオが制作」とありますね。ジュールス・バス、アーサー・ランキン・ジュニア、MOMスタジオの持永只仁さんが監督。
- 1967年。原題は”The King Kong Show”。Aパート、Bパート、Cパートの構成で、AパートとCパートが本作、Bパートは『001/7 親指トム』。
- 1972年に東映動画出身の原徹さんが設立。『風の谷のナウシカ』を手がけ、1985年にスタジオジブリに改組。
- 1987年の『ウィロータウンの仲間たち』(”The Wind in the Willows”)でしょうか?
- 1985-89年。”ThunderCats ”。テレビシリーズで1話22分の130エピソード。結構人気があるらしい。
- 1986年。”SilverHawks”。テレビシリーズで23分の65エピソード。
- 1987-88年。”The Comic Strips”。4本の短編もの(The Mini-Monster、Street Frogs、Karate Kat、Tiger Sharks)の2本の組み合わせで放送。1話20分で65エピソード。
- 1965年。東映動画制作。キャラクターデザイン・作画監督(監修)は森康二さん!
- 1966-67年。東映動画制作。
- 1972年。アニメーション・スタッフルーム制作。手塚治虫先生原作。
- 1972-74年。タツノコプロ制作。
- 1968年。東映動画制作。劇場版2作品に続いて制作されたテレビシリーズってのも珍しいですよね。辻真先さんと芹川有吾さんの脚本が印象的な作品。
- 窪詔之(くぼ・つぐゆき)[1942-]。タツノコプロからトップクラフトへ。ランキンバスとも縁が深い。今に至るも現役のすごいアニメーター。
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