押井守映画祭2015もついに最終夜!伝説とも言える『立喰師列伝』をはじめとするヤバイ作品群ですね…。正直、結構寝ました。すみません…。あ、今気づいたけど、今日の作品、ほぼ全て実写作品だ…。アニメスタイルなのにw

 前回の「新文芸坐×アニメスタイル セレクションVol.68 『東のエデン』Special あなたが救世主たらんことを」のまとめはこちらになります。

トークショー


!notice!

トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。

出席者

押井守監督(かわいいおじさん。以下「」)

佐伯日菜子さん(かっこいいおねえさん。以下「」)

小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「」))

桑島龍一さん(プランナーの人。押井守映画祭の企画者。以下「」)

新文芸坐・花俟さんによる前説

花 今夜ここにいらっしゃるお客様が一番の押井ファンということですね(会場笑)。そこに富士そばがありますが、いっぺんに行くと入れなくなりますのでご注意下さい。

第一部

押井監督「佐伯さんは金星人でもやってくれる貴重な女優さん」

押 途中の『立喰師列伝』が一番つらいと思います。そこを越えたら後は楽ですんで…。自分はトークが終わったらとっとと帰ります。

小 今日の企画について…。今日は押井さんの発案ですが、どんなもんなんでしょう。

押 今日組んだやつってのは幸福じゃない方で…なんでかけてくれないんだー、という作品ですね。ただ網羅してみると何かが見えてくるんじゃないかということで企画してみたわけです。大きい作品の合間にこういう小さな作品をコツコツ作っていたわけですが、いわば習作とも言えるこれらの作品が大きい作品につながっているんですね。例えば、『アサルトガールズ』がなかったら「ガルム」(『GARM WARS』1)はなかったかもしれない。
 こういう短編をもっと作ってみたいんですが諸条件が揃わなくてね。
 今日集まった皆さんは実に幸運である。観終わったあとは不幸になってるかもしれませんが(会場笑) 少なくとも話のネタにはなる。そして好みの女優さんが必ず一人は見つかります(笑)

小 佐伯さんに出会ったのはいつなんですか?

押 「エコエコ」2だったと思います。素敵な女優さんがいるな、と。あれは「ガルム」の準備がはじまったころで、佐伯さんの大きなポスターを手に入れまして、仕事場に飾っておりました。そのころから一緒に仕事をしてみたいなということがありまして。

小 佐伯さんは押井監督とはどういう出会いだったんでしょうか。

佐 秘密基地みたいなスタジオに連れてきて頂いて、こんなすごいところに連れてきて頂いてありがたいなあ、という感じでした。

押 あのころ何歳くらいでした?

佐 未成年でしたよ、18歳くらい。

押 その後、「ガルム」の企画が頓挫してしまって、その話は流れてしまったんです。それで、佐伯さんのPVを作る話もあったんですが、これは衛星軌道上からザクに乗って降りてくる、そして地上でモンスターと戦うと。まあ『アサルト・ガールズ』ですね。「ケンタッキーの日菜子」はそのPVでやりたかったことをやった感じですね。

佐 出会ってから『アサルトガールズ』がちゃんと形になって、10年ごしでちゃんと実現してもらったので、一生ついてこようと思いました。

押 今日上映するプログラムのほとんどは、やると言い続けていてようやく出来た作品たちですね。『立喰師列伝』なんか15年くらい言い続けてましたからね。

桑 その間に「パトレイバー」があるわけですよね。

佐 八丈島を歩いてる時に押井さんが「今度、日菜子は熱海の駅前で拡声器でアジテーションをするんだ」って言ってて、なんなんだろうと思ってたらほんとにやることになって(笑)

押 金星人の役3ね。

小 押井さんは佐伯さんを戦わせたかったの?

押 戦わせたかったというより騒がせたかったの。佐伯日菜子って女優はスーツが合うんですよ。ムッチリ系はスーツと合わない。そういう点ではオプションとしてとっておきたい女優さんなんです。金星人の役なんてやりたがらないでしょ。知的な役をみんなやりたがるんです。宇宙人とかサイボーグとかやらない女優さんは女優さんじゃないと思ってるところがどこかであって、そういう条件が合う女優さんが佐伯さんなの。できればライフルが似合って、それで、できればスーツが似合う。いつでも撮りたい女優さんの一人です。

桑 佐伯さんの中ではどういう役をやりたいとかありますか?

佐 どんな役でもやってみたいんですけど、でもせっかく他の人間になるわけですから、変な役をやってみたいというのはありますね。押井監督が声をかけてくれる時は人間以外とか、でもそういう役も嬉しいです。演じている時はわからないんだけど、出来上がった映像を見ると感動しますね。監督を次はどう楽しませようか、というのがあります。

押 確かに楽しいね。自分の妄想が形になっていくというのは監督の醍醐味の一つでもあるので。特に外で撮りたいというもあります。スタジオで撮ったことないでしょ。

佐 大島とか砂漠とか…。

押 大島で撮った時は台風が来て、台風が去ったと思ったら3m先も見えない霧が出て…。でもたまたまいい感じの雰囲気になったので撮ってみたりしました。2回目の時は強風で、男のスタッフが飛ばされちゃうくらいで、特に高いところに立って銃を撃ちまくるシーンだったから真面目に心配したんだけど…。

佐 私、これで死んでもいいかなって思ってましたけどね(笑)

押 大島は大変だったけど、ああいうところじゃないといい画は撮れないとは思いましたね。

佐 西部劇に出てくるようなコロコロ転がる草とかマリモみたいな木とかがあって…。

押 リアルに遭難したりして面白い、というか大変な現場だった。

桑 『アサルトガールズ』って脚本すごく薄くありませんでした?台詞が少なくって8ページくらいって。

押 水増しして8ページなんだよ。印刷屋に出すのが恥ずかしいくらい。台詞もストーリーもないしね。コンテも金子4がギャーギャーうるさいからバーって3時間くらいで描いた。でも全然使わなかったけどね。脚本がないと俳優さんの事務所に話を持っていけないんだよね。

桑 衣装の話をうかがえますか?

押 (佐伯さんに)あの衣装どうだった?きつかった?

佐 きつくはありませんでしたけど…。

押 あの衣装を着こなせるのは日本で佐伯日菜子だけ!きつすぎて。最初は甲冑をFRPで作ろうと思ったんだけど、役者さんが着れないから断念したの。でも布でも良い質感が出せるなって。意外と良い出来だったので、もったいないなと思って2回目に使ったわけ。

桑 『紅い眼鏡』5の時からプロテクトギアの表現良かったですよね。

押 あのプロテクトギア、電圧を挙げると赤く光るんだけど、目も焼けちゃう、危険なスーツなわけ。だから、ああいうのを映画で表現するのはすごく難しい。スーツの兼用もできないし。スーツものはノウハウの塊です。予算もかかるし。そういう点で言うと、「アサルト」シリーズってのはとても良く出来ている。

小 CG使ってるからじゃないですか?

押 いや、あまり使ってないんだよ。予算なかったから。ぶっちゃけいうと5%以下だよ。現場で粘っていい画を撮らないといけない。このへんは大作でもなんでも変わらない。日本でこういうのを撮れるのは俺くらいだよ。
 佐伯日菜子が出てる映画ベスト3があるんだけど、No.1が『ギプス』6。佐伯日菜子の魅力が引き出されてる。2番目が『蛇女』7ですね。ヘビ嫌いだから見たくなかったんだけど、佐伯日菜子が出てるから買った。最後に地獄の釜が閉まるところで終わるっていうすごい映画。カタログモデルという珍しい職業ですね。3番目はやっぱり『エコエコ』。話は全く面白くないんですが、黒井ミサというキャラクターの魅力が出ている。

第二部(佐伯さんは帰りました)

川井憲次なしの『東京無国籍少女』

桑 今日の作品を全部観たことある人?

・ (会場:10人くらい?)

押 『東京無国籍少女』観た人は?

小 まだ公開してませんよ(笑)!

桑 私は試写で見ました。

小 かなりの傑作とか?

桑 川井憲次さん無しでかなり疑問だったんですが、良かったですね。

押 川井さんのところに持っていく予算がなくて…。今回はモーツァルトありきの話だったので。バレンボイム8っていう指揮者の演奏を考えていたんだけど、通常の演奏より遅いって知って焦りましたね。オーケストラ呼ぶ金があったら川井憲次呼ぶしね。

桑 今回はコンテはどうだったんですか?

押 コンテは全く切ってない。音楽に合わせて撮影していくスタイルだったの。最初の60分くらい変な空気が流れてるから。予告の予想外のラストってのは特に意外でもないから。僕のファンだったらああ、こういうことか、と。「パトレイバー」と同時に撮ってたので、「パトレイバー」で満たせなかったところを満たした作品です。どういうことかわかるでしょ?真っ赤っ赤ですよ。

桑 銃撃戦とかすごかったですね。

押 端的にいうとエロと暴力だ、ということなんだけど、エロに関しては綺麗な女優さんでヌードがあるわけでもなく、濡れ場があるわけでもなく…。暴力についてはナイフ、これを出すと画面が真っ赤かになっちゃうんだけど、そういう意味でリミッターを外しました。女子高生を撮ることになるとは夢にも思わなかったよ。

桑 『うる星やつら』を思い出しながら見たりとかしたんですが…重なるところとかあって。

押 撮影以外のところではキャーキャーキャーキャー大変だったんだよ。リアル女子高生だからね。これ以上話すとばれるかな。1ヶ月後に公開ですので。

エンターテインメントを真面目にやろう!「首都決戦」

小 「首都決戦」について伺いたいのですが。娯楽作ということで驚きました。一緒に行った女性が「押井さんが娯楽作を作るなんて」と驚いてました(笑)

押 エンターテインメントを真面目にやろう、ちゃんと楽しめるように作ろうということがあって、その上でやりたいことをやろうということがありました。シリーズのほうが楽しかったのでまだやってみたいと思っちゃって…。シリーズの方も順調だったんだけど、会社が期待するほどではなくて、シーズン2ができるかどうか微妙な状態で。で、ここで自分の好き勝手やっちゃまずいな、と思っちゃったんだよね。

小 「パト2」はパトレイバーを終わらせるつもりだったんですよね。

押 あの時はもうどうでもよくなってたからね。「TNG」はシリーズがあまりにも楽しかったので…。

小 ファンサービスのようなシーンもありましたが…。

押 「パト2」をなぞったシーンがあってファンサービスと捉えられるんだけど、そういう意図は全くなかった。そういう部分の差分がテーマだったわけで。10月の作品を見て欲しい。10月1日が初日だから。最初の公開日は○○○9だったからね。でも自分の納得できるオリジナルの方も公開するという約束は取り付けていたので我慢したんです。10年後にどっちが生き残るか、と思ってる。自分のオリジナルの方が優れているという自信があるから。DVDとかBlu-rayを買うときにも長いほう買うでしょ?

オフレコです!

小 「灰原レイ」というキャラクターの名前は意識されていたんですか?

押 意識したに決まってんじゃん。好きな漢字を並べたんだよ。灰色好きだし、レイってのも何も意味しないってことで気に入っていて。灰色の女の末裔をイメージした。本当は30台前半がいいなあ、と思ってた。20台の女性が自衛隊の最新鋭の戦闘ヘリのパイロットなんてありえないよ。

小 あの時点でかなりアニメアニメしい感じになっていましたね。バスケットボールも最初からあったんですか?

押 あった。

小 30台というイメージでも?

押 子供っぽさというわけではなくて、明との繋がりで。明は集団で、灰原は一人で遊んでいて、そういう差異を描きたかった。バスケットボールはうるさいから周りを苛つかせる、そういうのも狙ってた。音の出る道具、それでいてコクピットに持ち込める大きさ、そして最後に水面に浮かび上がるもの、バスケットボールしかないじゃない。そういうふうに組み立てていくの。

次回の「押井守映画祭」は…?

押 リクエストしていい?「ケルベロス」のシリーズやろうよ。あと『御先祖様万歳』の各話上映。それくらいしかないじゃん。ここまでやってもらって、監督冥利に尽きます。『御先祖様万歳』は各話を味わって欲しいので、全6話上映してくれるなら、絶対また来ます!
 あと、やっぱり女優呼ぼうよ!汚いおじさんが並んでてもアレでしょ?女優さん来るなら絶対遅刻しないから(会場笑)



上映作品

[cf_cinema post_id=952 format=3 text=” なんだかんだ言って、映画館で年に1回くらい観てる気がします…。何回観ても気が狂ったような作品ですね。スルメみたいに何回か観てるとだんだん癖になってくる変な映画。押井監督のエッセンスが詰まってますよね。個人的に好きなのは神山監督がハンバーガーを焼きまくるとこ。”]

[cf_cinema post_id=5348 format=3 text=” 「.50 Woman」 鈴木敏夫が殺されるだけの作品だけど、それが良い。あとはただひたすら仁乃結がひたすらコンビニ食材を食べ続けてるだけという潔い、というかいつもの押井守だ…。エンドロールでも登場食材が流れてくるところに狂気を感じる。鈴木敏夫さんの演技がいいですよねえ。逃げ惑うところとか。”]

[cf_cinema post_id=5352 format=3 text=” すみません、最初数分間以降完全に寝てました…(´・ω・`) といっても全部で23分なわけですけど。ちょっとPOVっぽい雰囲気が珍しいと思いました(小並感)。”]

[cf_cinema post_id=5355 format=3 text=” 「金魚姫 鼈甲飴の有理」 結局、立喰師してないじゃねえか!というが正直なところであり、押井監督らしいなあ、と思うところでもあります。しかし、このエピソードを『真・女立喰師列伝』というオムニバス映画の一本目に持ってくるのはさすがですよね。画の撮り方もドキュメンタリータッチで新鮮です。しかし、いきなりジブリの社屋と鈴木さん(今回は死なない)が出てきたのには笑った。和室に裸身を横たえるひし美ゆり子さんがとてもセクシーでございました。
 「ASSAULT GIRL ケンタッキーの日菜子」 オチで出てくる巨大カーネル像は『猿の惑星』のパロディだと思うんだけど、こういう不意のSF要素に弱いんですよねえ…。フィリップ・リーヴの『移動都市』でもドナルドダックの神像が出てきたとこでときめいちゃったし。それはそうと、『アサルトガールズ』の方と見比べるとほんっっとに使いまわしですね笑 予算なかったんだなあ。佐伯さんはカッコいい。
 あ、あと『真女立喰師列伝』の中だと、若き日の小倉優子が主演の『歌謡の天使 クレープのマミ』が好きですね。”]

[cf_cinema post_id=5358 format=3 text=” 「ASSAULT GIRL 2」 このオムニバス映画自体は「チャンバラ」がテーマなんですけど、押井さんの作品が一番チャンバラしてないんじゃないかな…。川井憲次サウンドは耳に心地よいのですが…。前半は完全にヒーリング映像ですよね…。アサルトガールズ、というかアヴァロン系を観てないと理解できないところが多い感じですね。”]

[cf_cinema post_id=5308 format=3 text=” 「ガールズ」ってタイトル付いてますけど、実質的に主人公、藤木さんですよね…。70分しかないのに冒頭10分世界観説明があったり、Chapter2がまるまるダレ場だったりと押井ズム全開ですね。ウィザードリィの押井流実写化ですけど、ロケ地・大島ということを知っていると「なんか異世界っぽいけど、これ大島なんだよな…」という謎の優越感が味わえます。それにしても安定の画作りと川井憲次音楽はさすが!冒頭の折れ曲がった信号機のカットとか藤木さんが登場するシーンとか。ところで、一番面白いのは黒木さんと藤木さんが格闘戦するとこですね。3本勝負じゃねーのかよ!”]

写真など


まとめ

 というわけで、2015年の押井守映画祭の最後を見届けてきました!トークで押井監督が仰ってたように、来年は『御先祖様万々歳』全話上映期待してます!!

 


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関連リンク

■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/

■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/


NOTES

  1. 2015年10月2日北米公開。当初予算60億円とも言われた大作だが、一旦凍結されたいわくつきの作品(そんなんばっかだといえばそのとおりだけど)。本来は2000年に公開予定だったので20年近くかかってるんですね…。
  2. 『エコエコアザラクIII -MISA THE DARK ANGEL-』(1997年、上野勝仁監督)。佐伯さんは主演の黒井ミサ役。
  3. 『THE NEXT GENERATION パトレイバー』エピソード5「大怪獣現る 前編」に登場。言うまでもなく『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年、本多猪四郎/円谷英二監督)のパロディですね。本編もよくわからない長回しがあったり、『アサルトガールズ』の繰り返しギャグがあったりと押井ズム全開の楽しい作品です(個人の感想です)。
  4. 助監督の金子功さん。
  5. 『紅い眼鏡/The Red Spectacles』(1987年)。「ケルベロス・サーガ」の記念すべき第一作目。プロテクトギアかっこいいです。
  6. 2001年、塩田明彦監督。佐伯さんがギプスをはめて街を練り歩く映画…らしい(未見)。
  7. 2000年、清水厚監督。
  8. ちょっと良く聞こえなかったんですけど、イスラエルのダニエル・バレンボイム[Daniel Barenboim]さんでしょうか…。
  9. 伏せときました…。