今回はアニメスタイルのイベントなのに小黒さんが司会してないというレア回です!司会は氷川竜介さん。そういえば80年台ロボットアニメ特集というのも最近なかった感じですね。「ゴーショーグン」はかなり前の首藤さん追悼の時に流れてた気がしますけど。
前回の「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.81 神山健治の軌跡 STAND ALONE COMPLEX & 009」のレポートはこちらになります。
トークショー
!notice!
トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。
登壇者
小山茉美さん(『Dr.スランプアラレちゃん』のアラレちゃんの声の人。青二プロダクション所属。以下「小」)
平野俊貴さん(東映動画出身。『超時空要塞マクロス』の作監等で知られる。以下「平」)
羽原信義さん(葦プロダクション出身でXEBEC設立者の一人。最近だと『蒼穹のファフナー EXODUS』の監督とかやられてますね。以下「羽」)
大張正己さん(葦プロダクション出身。『機甲戦記ドラグナー』のOPあたりが有名でしょうか。以下「大」)
氷川竜介さん(アニメーション研究者。アニメの解説者としてそこかしこで見る方。以下「氷」)
新文芸坐・花俟さんによる前説
花 今日はアニメスタイルオールナイトですが、小黒さんは登壇しません。代わりに素敵な方がいらっしゃっています。今日はBlu-ray発売記念ですので、終わりましたら是非Amazonでポチっていただければと思います。
「アンチロボットアニメ」としての「時の異邦人」
小 「時の異邦人」、ロボットアニメと言いつつ全然ロボット出てこないんですよね(笑) レミーの車の所に人形があるだけで…。
羽 あれ、私が描いたんです(笑)
氷 羽原さん、作画どのあたりやられたんですか?
羽 昼は「ダンクーガ」1をやって、夜はこっちでいろんなカットをやってました。主に爆発を。
大 当時、僕も葦プロにいたんですけど、だから夜になると羽原さんいなかったんですね(笑)
羽 夜から朝は「ゴーショーグン」をやって、朝から夜は「ダンクーガ」をやってました(笑)
氷 「ゴーショーグン」といえば声優の掛け合いですけど…。
小 首藤さん2の脚本がすごかったですね。アンチロボットアニメというか。
小 当時、(アフレコの時に)ほとんど絵が入ってなくて…。フィルムだったんですけど、絵が入ってなくてわけがわからなくて、特にこの「異邦人」は観念的な部分があって…あ、ネタバレになっちゃいますね。首藤さんの中では女性といえばみんなレミーということだったんですけど、そういうわけにもいかなくて…。難しい役でした。それまでのロボットアニメだと脇役のヒロインが主役を張るというのも新しかったですね。
氷 人生そのものを描いている作品ですよね。
羽 今回見なおしてみて、びっくりしましたね。こういうやり方があるんだと。アニメを超えている。
氷 特別にオススメのポイントはありますか?
小 首藤さんも監督も、録音の時はスタジオにいらっしゃって、声優の掛け合いを観ていて、それもらうね、という感じでやっていましたね。番宣はそのやりとりなんかを即興で首藤さんが取り入れて作ったりしていて遊び心がありました。ロボットアニメの中でも特別なロボットアニメだと思います。
羽 今回(のBD-BOX)、ドラマCDも全部入ってるんですよね。もう聞けないと思っていたから嬉しい!
氷 今回は全てのサントラが入っています。お買い得です!
小 私が初めてやったのが「ガイキング」3で、ド新人だったのでみんなについていくのが大変で…。掛け声をやるのもロボットアニメではあまりなかったので、どうやっていいのかわからなくて、毎回別録りでとってました。
氷 あれって使い回しじゃないんですか?
平 動画で入ったのが「ガイキング」でした。僕が入ったのは最後の方でした。変な蛇のやつで…。
羽 どうでした?
平 最近のアニメと違って、なぞるだけじゃないんですよ。いろんな色鉛筆で描いてあって…。
氷 その平野さんも小山さんの大ファンだったんですよね?
平 アフレコ行きたかったですねー。
氷 大張さんは小山さんとの思い出ありますか?
大 ロボットアニメのヒロインといえば、小山さん、という感じですね。
小 ところで、自分の描いた絵についた声がイメージと違うってことあります?
平 いろんな声優さんがいらっしゃいますからね…。そういうこともなくはないですね…。
小 現場でも声優さんの話出るんですか?
羽 誰になるのかな、という話はよく出ますね。始まってしまえばそれで定着するんですけど。
平 あの頃の東映アニメは神谷さんと小山さんで総なめでしたね。
「イクサー1」の与えた衝撃
氷 「ガイキング」あたりからロボットアニメが下火になってしまったんですよね。
平 「マジンガー」4観て業界に入ったんですけど、なくなっちゃったんですよね。単純に戦いを見せるというやつが。
氷 大張さん、羽原さんは当時はどうされてたんですか?
羽 葦プロは細々と活動してまして、当時は「ミンキーモモ」5を作ったりしてたんですけど、そんな時に「イクサー1」を観て衝撃を受けたんです。
大 私も、当時、「ダンクーガ」やってるときに、葦プロの社長室で「イクサー1」を観せられて衝撃を受けまして。特撮の要素もあるし…。そんなときに平野さんから話があってアクト2から参加させてもらいました。
氷 平野さんがきっかけだったんですね。
平 人が足りなくて、「ダンクーガ」には注目していて、すごい人がいるなということでダメ元で頼んだら実現したんです。
大 「イクサー1」は枚数の制限もなくてやりたいことができましたね。
平 「ダンクーガ」も1話すごいじゃないですか。小 昔はじっくり作れたんですか?(今は)デジタルになって簡単に色が載せられるから、ちゃんとしたものがアフレコの時に来るかと思ったらまだ来ないんですよね(笑)
大 逆に今は凝り過ぎちゃうということがありますよね。一回完成したけどもうちょっと直したいとか。「ダンクーガ」は平均作画期間、一週間でしたよね。よく間に合ってましたよね。
羽 間に合ってはなかった(笑)
80年台の空気感
氷 今回、Blu-rayになって「ダンガイオー」の1話、すごいクオリティですね。
大 35ミリでしたっけ?
氷 そうですね。
大 初コンテが「ダンガイオー」なんですよ。平野さんからここからここまでやってみろと言われて。
平 そうだっけ?
大 今の時代はやりたいカットを選べるけど、昔はここからここまで!という感じでしたね。「ダンガイオー」は150カットくらいやってますよ。
小 結構、なあなあの世界なんですね。
羽 80年台って仕事してると友達がスタジオにやってきて、ちょっと1カット描かせてよ、でその代わりに別のところで返す、ということが頻繁にありましたね。だからノンクレジットになる。
大 初監督が「バブルガムクライシス」6だったんです。社長に無理です、と言ったんですけど、やるんだよ、と言われて。結構、自由にやらせてもらいました。アニメーターが監督をやるのは自由にできるというのもあるし、友達のアニメーターを連れて来てくれるという期待があったとも思います。
羽 80年台は自由でしたね。アニメの世界もそうだし、世間一般的にも。アフレコ現場はどうでした?
小 録ったものを切り貼りしていくんですよね。みなさん忙しくて別録だったりして。特にゲームの録音はほとんど別録だったんですけど、自分の分以外の脚本が無いから何が何だかわからなくて…(笑) でも80年台ってみんな自由でしたね。声優もキャラクターの口が開いていればアドリブでセリフをねじ込んだり。どれだけ面白いこと言えるかという競争ですね。
おわりに
羽 80年台はいろんな作品をやらせていただいて、「ゴーショーグン」もそうだけど、声優さんも亡くなられてしまいましたが、フィルムは残りますので。観ていただければ役者さんも喜ぶと思います。先日も水谷優子さんが亡くなられてしまって…。
大 今日、「イクサー1」と「ダンガイオー」が上映されるんですよね。あのとき、すごく頑張ってたんですよ。すべてを叩き込んで作った作品です。自分の作品はあまり観ないんですけど、そういう意味ですごく楽しみです。水谷さんとはスーパーロボット大戦で関わっていて、手紙をもらったのが感動的でした。まだまだ一緒に仕事がしたかったです。
平 30年前の作品をこうして観られるのはいいことだと思います。「男泣き」ってあるけど、今日は女性も多いですね。大画面と渡辺宙明7サウンドを楽しんでいただければと思います。
大 宙明先生、ちゃんと絵コンテを観て曲作っていただいているんですよね。
氷 今日監督がいらっしゃってないのですけど8、『鉄人28号 白昼の残月』はすごくまとまりの良い作品です。伊福部昭さん9のサウンドも素晴らしいです。
小 「時の異邦人」、私には特別な作品で、逝ってしまった仲間たちに作品の中で再開できる機会がいただけて嬉しいです。
上映作品
[cf_cinema post_id=4670 format=3 text=” 「ゴーショーグン」はTVシリーズの方は全話観てるんですけど、異色作と噂の本作は未見。今回はじめて観たわけですけど、これはすごいですね。ロボットアニメなのにロボットが出てこないというのもそうですけど、子ども向けのアニメらしからぬ、どんよりとした空気とか、リアリズム的な厳しい結末とか。でも希望がある終わり方なのがいいですよね。それにしても、後半に至るまで知らない街をうろうろするだけなのにここまで面白いとは。ロボットなしでも話が成立してしまうところに、当時のキャラクター人気が伺えます。やっぱり敵方の3人が魅力的ですよねー。どう見てもカタギには見えないくせに企業人のケルナグールがかわいい。”] [cf_cinema post_id=4678 format=3 text=” 名作ということは聞いていたのですが、恥ずかしながら今回初めて観れました。トークの方でも触れられてましたけど、ロボット物というよりは特撮作品っぽい。イクサーロボもロボットっぽいけどスーツアクターっぽくも見えるし。結構容赦なく、しかもグロく人が死んでいくのも新鮮でした。あと富士シリーズね。あれだけ出撃に尺取ってワンカットでやられるって完全に噛ませ犬過ぎて爆笑。しかもあそこだけ作画がガラッと変わるし。3回もあるし。ほんと特撮好きな人が作ってるんだなあ。あとイクサー1が完全に疫病神感ある。”] [cf_cinema post_id=4680 format=3 text=” こちらも初見の作品ですが、画面の情報密度が半端ないですね!特にコックピットまわり。BDということもあり、細かい線がはっきりくっきり見えて気持ちいい!ダンガイオーチームの面々がサイキッカーでダンガイオーの必殺技がサイキックウェーブというところに80年台っぽさを感じますね。スーパーロボット系のお約束を引き継ぎつつも主人公たちが暗い過去を背負っていたりとリアル系の要素が取り入れられているところも面白かった。ロール・クランが主役なのに主役っぽくないところも新鮮。あ、主役はミアなのかな。腹黒いのに人が良いターサン博士がいいアクセントですねえ。ところで、今回は1話と2話の上映だったんですが、その次の第3話で一旦終了してしまって未完なんですよねー。うちに帰ってからdアニメストアで第3話見たんですが、先が気になる展開で、キャラも立ってるのにもったいないなあ。まあ、あの後どうすんだよ、って感じでもありますが。”] [cf_cinema post_id=4676 format=3 text=” 今回の上映作品の中ではこれだけが2回目の作品。改めて観ると、やっぱり脚本の完成度が高いですねー。生物以外を破壊する廃墟弾とかクライマックスで登場する蓮コラみたいな大鉄人とか、完全に荒唐無稽なんだけど、抵抗なく受け入れられるんだよなあ。正太郎とショウタロウの対比とか、ショウタロウの正体とか、色々と語るべき点はあるんだけど、この映画の最大の見所は包帯ぐるぐる巻きで半分溶けた鉄人というショッキングなビジュアル。露骨なまでの原爆への言及を含意したこの鉄人の姿は、どうしたってこの物語、あるいは鉄人という存在そのものを戦争へと結びつける。でもそういった政治的な視線というものがことさらに強調されるわけでもなくてエンターテイメントの中に組み込まれている点が流石だなあ、と。ダイナミックな戦闘シーンも多くて楽しい漫画映画としても楽しめますね。今川監督の味がよく出てます。”]写真など
まとめ
今回は番外編みたいな雰囲気の回でしたが、トークも当時の空気感のようなものが伝わってきて楽しい一夜となりました。個人的に、80年台のロボットアニメはあまり詳しくないので、そのへんも色々触れることができて勉強になりました。
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関連リンク
■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/
■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/
NOTES
- 『超獣機神ダンクーガ』。1985年、奥田誠治総監督。制作は葦プロダクション。羽原さんはメカ作監等で参加。大張さんはメカデザイン。
- 首藤剛志(しゅどう・たけし)[1949年8月18日-2010年10月29日]。葦プロでの『魔法のプリンセスミンキーモモ』と『戦国魔神ゴーショーグン』が代表作。
- 『大空魔竜ガイキング』。1976-77年。東映動画制作。東映初のオリジナルロボットアニメ。小山さんはフジヤマ・ミドリ役で出演。
- 『マジンガーZ』。1972-74年。東映動画制作。
- 『魔法のプリンセス ミンキーモモ』。1982-83年、湯山邦彦総監督。第一期ですね。モモ役は小山さん。
- 『バブルガムクライシス(BUBBLEGUM CRISIS THE STORY OF KNIGHT SABERS / MEGA TOKYO 2032-2033)』。1987-91年に全8巻が発売されたOVAシリーズ。大張さんはpart5と6の監督を担当。制作はアートミックとAIC。
- 渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい)[1925年8月19日-]。テレビドラマから映画、特撮、アニメまで広いジャンルを手掛ける作曲家。アニメーションでは1974年の『マジンガーZ』から最近の作品まで手掛ける。
- 当初は今川泰宏監督もトークショーにいらっしゃる予定でしたが、諸事情により中止になってしまいました。残念。
- 伊福部昭(いふくべ・あきら)[1914年5月31日-2006年2月8日]。やっぱり『ゴジラ』の人、という印象が強いですねー。
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