5年ぶりにスクリーンで『鉄コン筋クリート』を観る。

新文芸坐×アニメスタイル vol. 157 STUDIO4゚Cのキセキ 『鉄コン筋クリート』」にて久々に観てきました。スクリーンで観るのは10年ぶりくらいかな?作品を観たいというのもあるんですが、こないだガンで入院されていたアニメ様こと小黒祐一郎さんの姿を見たいというのもあり。特に気にしてなかったんですがまさかの35mmでした。良い味わい。

Blu-rayも持ってるし、劇場でも何回も観てるんですが、時間をおいて観ると新しい発見があるのがいいですね。スルメ感。イタチが出てきてからのトリップシーン的な場面がやたら長いなあ、とか。この年になるとネズミがかっこよく見えるなあ、とか。「大事なことなんだよ…」。あとやっぱり木村さんの美術が素晴らしいなあ、とか。正直言って木村さんの美術とシロ役の蒼井優と「或る街の群青」だけで300点ですよ。ストーリーと作画ももちろん素晴らしいのだけど。

今回観ていて思ったのは、宝町と『風の谷のナウシカ』の腐海はアナロジーで繋げられるのではないかということ。もちろん、ラストカットからの逆算なんですけども。瘴気としての暴力、マスクは鉄パイプとナイフ、逞しく生きる人々、浄化する機能…。巨神兵としての子供の城(これは無理やり)。

上映後にはアニメ様と4°Cの田中プロデューサーのトーク。アニメ様元気そうで良かった。今まで違和感なかったけど、やっぱり1時間持たせるMC力すごいですわ。監督がマイケル・アリアスさんになった経緯とか脚本を作るプロセスとか面白かったですねえ。アリアス監督はこの映画を「ヤクザ映画」にしたかったそうなんですが、田中Pは逆に「デートムービー」にしたかったという裏話も。個人的にはネズミとキムラが大好きなのでヤクザ路線も気になるところです。「鉄コン」といえばやはりアジカンだと思うんですが、そのあたりの経緯が知れたのも良かったです。オフレコなので書けないのが残念!後藤さんすごいなと改めて。

ところで、今回の35mmフィルムは4°Cに無造作に置いてあるものを持ってきた(今ではどのアニメ会社もそんな感じで保存されてるそう)そうで、いつまで上映できるかわからないとのこと。今回観れて良かったです。

シリーズ最終巻はめちゃくちゃ読みづらい。N・K・ジェミシン『輝石の空』

三部作の最後!ぶっちゃけめちゃくちゃ読みづらい!です!

創元ってたまにこういうの投げてくるのよね〜。「難解系」とでも言えばいいのか、ユーン・ハ・リーの『ナインフォックスの覚醒』シリーズとか…(あっちは1巻で挫折…)。シリーズ1巻目の『第五の季節』はわかりづらい視点人物や入り乱れる時代といった要素はありつつも3人の魅力的な主人公に引っ張られて一気に読めたのですが、この最終巻はあまりにも読みづらい。登場人物が多すぎるのが一つあるんですが、やはりこの手の作品はまとめて読まないと厳しいという気がします。

しかし、歯を食いしばって最後まで読んでみれば、なんと今年ベストレベルの傑作でした。まあ途中読みづらいのでプラマイゼロ感はあるのですが…。後半に行くに従って絶滅文明の遺跡が出てきたりしてSF風味がどんどん増していき、さながらアニメ映画版の『アリーテ姫』のよう。著者が後書きで述べているようにクラークの「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。」をやってみたかったのだとか。

またシリーズを通して描かれているフェミニズム小説的な側面や、親娘の葛藤といったテーマも素晴らしくまとまりがよく描かれていて、読後感の爽やかさは最高!エッスンとナッスンの最後の対決とそこから弁証法的に導き出されていく結末は、意外性という点では物足りないような気がしますが、収まりの良さ、心地よさという点では満点。個人的には最後にホアが言う「永遠を生き延びるただ一つの方法だ」に心打たれました。やはり人間は社会的生き物なのだなあ、と。

いまからシリーズを読む人は絶対にまとめて一気に読み切って欲しいですね。

『葬送のフリーレン』はコンタクトものSF

最新第10巻はほとんど回想なのに異常な面白さ。ファンタジーだと何の了解もなくむき出しで提示されがちな「魔族」という存在を知的生命体として取り扱う手際にサイエンスフィクションの香りを感じたり。進化論も出てくるし。そういえばこの黄金郷編の主要なギミックである「万物を黄金に変える魔法」もまた、当初は「(当人のマハトにすら)わからない”呪い”」として登場するものの、この巻の引きでフリーレンによって「解析可能な魔法」へと書き換えられる。このあたりも魔法から科学への変化のような大局的な歴史意識が通底していて興味深い。

今巻では、大魔族マハトと、かつての城塞都市ヴァイゼの領主との「悪友」的な奇妙な関係、そして若き日のデンケンとの師弟関係が描かれるが、一見すると紳士的で都市に忠実なマハトがなぜ裏切ったのか?という謎が一気に明かされかなり面白い。まあこの「謎」というのは全く謎ではないのですが。裏側を知ってしまうと、マハトの安全装置である「支配の腕輪」が実に滑稽なことがわかってしまったりね。

相変わらず極端に動きに乏しいアクションシーンも魅力的。これアニメで同じテイストが出せるのかがかなり気になるところではあります。

木刀2本の伏線はずるい。『よふかしのうた』

最新第15巻はいよいよ北海道へ。修学旅行編、微妙じゃねえ?と思ってたけど、空けてみたらめちゃくちゃ面白い。探偵さんがぽんこつになっていくあたりとか、真昼くんが一人修学旅行で「修学旅行って実質移動しか無いな…」みたいなところを呟くくだりとか。おまけに最後のコウと真昼の再開のあたりがかなり最高!お土産の木刀2本買ってたのはそういうわけかあ。伏線の使い方が面白いですね。あれだけ深刻な雰囲気で話進めておいてこのノリは卑怯だわ。

コウと真昼の確執を主軸にしつつも、「吸血鬼とはなんぞや?」という大テーマを描き続けているのもいい感じ。新しく出てきた北海道の吸血鬼・ハルカは陽キャ系男子で、地元に馴染むために観光客を狙って血を吸っているという生活スタイルが面白いですね。みんな各々のスタンスに従って色々考えてるんだなあ、という。新たに焦点となった「人間に戻る方法」がこれから物語を牽引していきそうで楽しみです。

フレームワークから始まる人間関係。『今日から始める幼なじみ』

前作の『ぐるぐるてくてく』が4巻で終わってしまったので、こっちも心配してたんですが、無事に6巻まで続いているのが嬉しい。前作もそうだったんですが、この作品、あざとさ(=オタク的気持ち悪さ)が無くていいんですよね。本当に安心して読める。作者が男性というのも意外なんですが、男性でここまで色気がない演出ができるのが驚き。時代は前に進んでいるなあ。

さて、この巻でまさかの妹が新登場するんですが、この作品の面白いところは全くの無関係の人間同士が既存のフレームをまずその名称から取り入れて、そこから実体としての人間関係を構築していくという点ですね。それも漫画やアニメといったフィクションで描かれる関係性を積極的に模倣して、その中でさらに独自の関係を作り出していくという、メタ的な概念を足がかりにして物語が進んでいくのがオタク的ではあるのだけれど、しかしそこには現実の人間同士がそれをやっているような妙なリアリティが存在していて、そこが唯一無二の魅力なのだと思います。それが冒頭の「あざとさの無さ」につながっていくのだなあ。

ワンチャンアニメ化しないかな、と思ってますがくらげバンチってのがね…。

表参道のブノワでリーズナブルでいい感じのランチ

3年ぶりに表参道のBistro Benoitへ。相変わらず最高のインテリアと最高のホスピタリティと最高の料理でした。お値段もお手頃。

フレンチは前菜が美味しいと思っているので、今回は前菜2、メイン1、デザート1のランチコースで。

アミューズ リコッタチーズのプチシュー

軽くて美味しい。

前菜その① サーモンのマリネとじゃがいも グリビッシュソース

サーモンの甘味とじゃがいものほくほくした感じ、爽やかなグリビッシュソース。かなり好き。

前菜その② オニオングラタンスープ(+1,000円)

うーん、めちゃくちゃ美味しくはあるんだけどあえてここで頼むこともなかったかなあ。見た目が可愛い。

メイン 岐阜県産 ”ボーノ・ポーク” ロース肉とブーダン・ノワールのオーブン焼き リンゴと根菜

実は初”ブーダン・ノワール”。豚の血をテリーヌ仕立てにした料理ですね。くさそうだな、と思っていたのですが、やはりそのあたりはかなり独特の風味ながらお上品な味でした。ワインが進みますね。豚ロースのソテー、お野菜も美味しかったけど、豚の血はインパクト大。

デザート ル・ショコラ・アラン・デュカス 東京工房のショコラ ブノワ風 長野県産蕎麦の実アイスクリーム

アラン・デュカス大好きなので迷わずこれを選択。かなりビターで添えられたソルトがいいアクセント。これだけでもかなりいいんだけど、蕎麦の実のアイスクリームのクオリティがすごくて驚き。

やっぱりコース料理はこれくらいがちょうどいいですね。お酒おまかせ、+ホールケーキ付き(写真撮り忘れ)で一人12,000円弱でした。お手軽ね。

ブノワはプリフィックスなので当日メニューを選ぶ楽しみもあり…。二人で行くとそれぞれもらったりできるので楽しみ2倍なのも最高。

ちなみに一緒に行ったお友達のチョイスは…

”サラダ・ブノワ” ベーコン 鶏砂肝のコンフィ:野菜メインの中にベーコンと鶏砂肝がゴロゴロ入っていて美味。ドレッシングが地味に美味しい。

グリーンピースのスープ リコッタチーズ:これめちゃくちゃ美味しい。大好き。こっちにすれば良かった。

サクラマスのソテー 春野菜 ブールブランソース:やっぱり魚の方が美味しい気がするんですよね〜。次回のメインは魚にします!

静岡県産”紅ほっぺ”のクープ フロマージュブランのソルベ:ビジュアルが最高!いちごは酸味が主体で大人の味。美味しい。