『フェイブルマンズ』の身体性

ラストシーンがあまりにも素晴らしい映画。それもシーンの最後のまさに映画のラストカットが実に素晴らしい。ちょっとしたシーンに過ぎないし、ネタバレしてもさほど問題はないと思うのだけど、一応書かないでおく。しかし、この最後のカットのふとした動きによって、この映画に通底しているものが何なのかが鮮やかに浮かび上がってくる。

この映画は主人公サミー・フェイブルマン(ガブリエル・ラベル)に自己を投影した巨匠スティーブン・スピルバーグの自伝的映画だ。つまり「映画を撮る」映画というある種のメタ的な構造があるのだけれど、この最後の瞬間まで視聴者はそれを意識することはない。この最後のほんの些細な動きによって、観者は映画のこちらがわ、つまりファインダーを覗くフェイブルマン少年(この時は青年なのだけど)の意識と同期する。

このときの「動き」の質もまた重要な要素だ。あまりにもざっくりとした肉体の感覚を残したカメラの動きは、劇中でさり気なく強調されていた身体感覚を脳裏に呼び起こす。それは幼少期のフェイブルマン少年が魅入られた「激突する機関車」であり、母ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)がヘッドライトの中(これもまた映画的!)で踊るエロティックなダンスであり、あるいはまた青年となったフェイブルマンを虐めるジョック、ローガン(サム・レヒナー)がスクリーンの中で魅せる虚栄的肉体と、それが現実での泣き顔に変わっていくその身体的意識であったりする。このあたりの生々しい身体性は、同じく映画の「上映」を身体的な視点から見つめるパン・ナリン監督の『エンドロールのつづき』と地続きだ。

この映画は駆逐されつつある荒々しい身体性を回顧する視点を持っているが、そのことは未だにフィルム撮影にこだわっているスピルバーグ監督の自伝的映画であることと無関係ではないだろう。

浜辺美波の代表作になりそう:『シン・仮面ライダー』

巷では「庵野秀明が暴走した」とか評されているけど、仮面ライダーに思い入れがない人間からすると「普通に面白い映画」だった。ここで書くことではないのかもしれないのだけど、オタクの語彙の乏しさというか過剰さは近年ますます気になってきている。これはSNSという環境がもたらす承認欲求の誘惑と切り離して語ることはできないから、オタク特有というわけではないのだろうけど。

話を作品自体に戻すと、冒頭のクモオーグ配下の戦闘員たちとのアクションシーンから容赦なく潰れる身体、飛び散る血飛沫で、「あ、これは大人向けの仮面ライダーなんだ」ということをはっきり示してくるのが気持ちいい。まあ普通に考えたらこうならないとおかしいよな、という。風を受けてマスクが変形していくカットもとてもわかりやすい。初心者でも観れる。

仮面ライダーに造詣深くないのでなんとも言えないのだけど、全体的なテイストは昭和ライダーっぽいのにところどころで平成ライダーっぽい安っぽいCGが入ってくるのは気になった。あと基本的にこの尺だと短すぎるだろ、という。普通に1シーズンで観たいよね。みんな言ってるけど駆け足すぎ&詰め込みすぎ。

と、いろいろとアラは目につくのだけど、それはそれとしてヒロインであるルリ子役の浜辺美波が素晴らしすぎるので100点です。

最高のファンムービーであり最高の完結編『グリッドマンユニバース』

まさかの今年ベスト(級)。タイトルからして「あー、はいはい。グリッドマンとダイナゼノンが合体したりするのね~。『マジンガーZ対デビルマン』みたいなノリでしょ。知ってる知ってる」という感じで高を括っていたのだけど、「ユニバース」の真の意味が明かされるシーンで鳥肌。普通に考えると「いや、そうはならんやろ!」という設定なんだけど、『SSSS.GRIDMAN』を経ているので全く違和感がない。この「フィクションとしてのフィクション」の使い方はテレビシリーズの時からとても上手くて、劇中劇の「グリッドマン物語」が何度も改稿されるくだりであるとか、みんなが下手くそなグリッドマンのイラストを描いたりするあたりの伏線が、後半の展開につながっていく。特に戦いの中で「新しい戦いかた」を想像するくだりがいい。テレビシリーズである『SSSS.GRIDMAN』において、人間の条件は「想像力」(≒創造力)であり、それゆえに劇中では新条アカネだけが真の人間だったわけだけれど、「ユニバース」においては戦いの中でさりげなく登場人物たちの想像力が示されることで、彼らが彼らの世界(物語)において真の人間(主人公)になったことが示されている。そういった意味でこの映画は主人公としての役割がフィクションの登場人物たちに委譲され、テレビシリーズの完結編として完璧な構造を持っている。

とまあ、メタフィクション的なテーマの読み応えも素晴らしいのだけど、それ以上に一つの青春物語、人間ドラマとしても非常に出来がいい。話の軸としては高校2年生になった裕太が六花に告白しようとする話なのだけど、その過程で消えたはずの怪獣が出てきたり、新世紀中学生が再登場したり、ダイナゼノンの連中がグリッドマンの世界に出てきたり、ガウマさんが北海道物産展でカニを買ったり、みんなで文化祭の準備をしたり、裕太の周りに幽霊が出たり…といった様々な出来事が五月雨式に、並行して生じることによるカオス状態の面白さ!前半は裕太がかわいすぎてやばい(やばい)。新世紀中学生組とダイナゼノン組と合計で10人くらい六花の家に居候しているというカオス状態は「六花のパパ」(コスプレですよ)が登場することで頂点に達して、転がるようにして世界の真実が明らかになっていく…。この疾風怒濤の脚本が飽きさせないし、軽妙な台詞回しはテレビシリーズから健在。「裕太、頭、おかしくなったんだな…」とか「私のモバイルバッテリーを貸そう」とか「うわぁぞろぞろと」とかまあこの会話を聞いているだけで実に楽しい。特に六花ママ(新谷真弓)の空気の読めなさもそのままで楽しすぎる。

後半は怒涛のアクションシーンの連続でこちらも飽きる暇がない。特にキーマンであるあの人が新衣装で登場するあたりが盛り上がりの最高潮。このあたりからどんどんトリガー濃度が上がっていく…!新合体もバンバン出てくるし、それにちゃんと理由がつけられているのがいいんだよね。ベタすぎるけど、「UNION」がかかるとテンションがマックスに…。最高のファンムービーでした。

普通に臭そう:『シング・フォー・ミー・ライル』

ほんとに「ワニの歌声を聴かせて」だった…。原作全く知らなかったし、映画も興味なかったんだけど、タイミングがあったので観たという感じでした。なので適当に吹き替えにしちゃったんだけど、いやあこれは字幕、というか原語で聴きたかったなあ。いや、大泉洋もいいんですけど、ミュージカル映画だしさあ…。ねえ。

さて、動物映画なので主役のライルの可愛さで魅せていくタイプの映画だと思いますよね。原作のライルもめちゃくちゃキュートだし、映画冒頭でヘクターと出会う仔ワニのライル、ベリーベリーキュートですね〜。場面が変わって1年半後のライル…いやでかすぎるわ!でかいし質感がリアルすぎる…。実写だからそうなんだけどさあ…。普通に臭そうなんだよな。おまけに残飯パーティーね。実写で見るとキツすぎないですか?絵本とかアニメだったらいいんだけどなあ。

まあライルのキモ可愛さはだんだん慣れるし、ストーリーも普通にいいです。あまり尖ったところがなくて子供でも安心してみられる感じ。ママがライルと意気投合して残飯パーティーにまで参加するようになるあたりはめちゃくちゃ違和感ありましたが…。パパもツッコんでたけど「変わりすぎやろ」。

個人的に良かったのがライルの元の飼い主であるヘクターのキャラクター。最後まで人間的には成長していないのがリアルでいいんですよね。小悪党…とまではいかないけど、いかにも理想な俗っぽい凡人という感じで、かなり共感を覚えます。

『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』は裏社会版『花とアリス』(前から言ってるな)

これも今年ベスト(級)。まあそれくらいの期待はしてたんですけど。自分は会話が面白い作品に弱いので、これも当然高評価です。やっぱりね裏社会版『花とアリス』なんですよね。で、そこから恋愛を抜いたやつ。本当にしょーもない会話が延々と続いて、嫌いな人は嫌いだろうな〜。序盤からコロナ禍らしいZOOM会議でめちゃくちゃ笑うし(田坂さん最高!)、中盤のバイトシーンでは松本さん(渡辺哲)の怒涛のサブカルトークで腹がちぎれるほど笑う。まさか渡辺哲さんの口から『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』なんて単語が出てくると思わないじゃん。このゆるーいノリが最後の最後まで続くのでそれだけでかなり最高。一番好きなセリフは田坂さん(水石亜飛夢)の「こんな夜更けに死体かよ!」と「ギャル〜」(ポーズ)。いや良すぎ。

今回は殺し屋協会に所属していないバイトとしての殺し屋兄弟がライバルなんだけど、このあたりの嗅覚というか時代感覚もいいよね。この二人が殺し屋協会のポストを狙ってちさととまひろを殺そうとするんだけど、この発想が出てくる時点でなんというか取り残された人々という感覚なんだよね。普通はそれで自分たちがそのポストに行けるとは思わないわけで。この二人は性別もそうなのだけど、ちょうどちさととまひろの対極にあるキャラクターとして設定されていて、例えば女子二人がオフビートな文化系(サブカル)なのに対して、この兄弟は露骨な体育会系。殺しに行く時も「気合い入れるぞ!」みたいなことやってるし、とにかく暑苦しくて芝居がかってる。そして自分たちが「物語」の主人公だと思い込んでいる。彼らが結局勝者になれないのは当然の帰結なのだけど、それは彼らの主人公としての意識がそうさせているのだと思う。ちさととまひろにとって殺しは日常の一部なのだけど、神村兄弟にとっては物語を盛り上げる場面であり、そうして物語には当然終わりというものがある。

初「どん底」@新宿三丁目

新宿重課金勢なのに実は行ったことがなかったんですよね~。なんか狭そうという印象もあったし。行ってみたらここ中は大箱系なんですね。食べログ見たら100席あるじゃん。こういう店好きすぎる。大箱系すき。

外見もいいんですが、店内の雰囲気がさらに最高!天井低い系でめちゃくちゃうるさくて、でも隣の人との会話はスムースにできるというかなり理想的な酒場。BGMもバーテンの人たちがそれぞれ好き勝手かけててカオスな感じがたまらない。スタッフのノリも良すぎて好き。

一杯目は名物の「どん底カクテル」、通称ドンカク(650円)。ハーブ系の香りで爽やか、ジュースのように飲みやすいけどアルコール度数は15度。

鴨の生ハム(1,200円)。味がしっかり、風味は爽やか。噛みごたえがあって美味しい。

チーズオムレツ(900円)。火加減が絶妙。チーズとろとろ。美味しい!

林さんのみ(950円)。兄弟メニューの「林さんのライス」からライスを抜いたやつ。牛肉とキャベツをウスターソースで炒めただけのメニューだけどこれが美味しい!味付けが見事。味が濃くてお酒が進む味。

他にも、チーズがめちゃくちゃ美味しい「ミックスピザ」(1,300円)や異常に種類がある(バーだからね)カクテルやらを大量に飲んだりしたんですが、写真撮り忘れました…。

カウンター多めだから一人でも入りやすいし、次回は一人飲みに挑戦したいな。