おひるねラジーズ

毎日を、楽しく生きる


【映画レビュー】『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』:炎上商法大成功!必殺料理人、怒りのキューバサンド!

      2017/09/10


ジョン・ファブローのリズミカルな調理に惚れる

 軽快な音楽にのせてバットの上に載せられていく多種多様な食材たち。無骨な太い手が滑らかに動き、それらを切り離し、つまみ、組み合わせていく。映画の冒頭からジョン・ファヴローはセクシーな包丁さばきを見せつけてくる。

 『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』は一人の料理人とその家族を描いた作品だ。この映画の感想をザックリ言ってしまうと「キューバサンドイッチうまそう!」の一言で終わってしまうのだけど、それよりなによりジョン・ファヴローの素晴らしい手際の良さに目が釘付けになってしまう。

 エンドロールのメイキングで明かされるように、ジョン・ファヴロー自身は全く料理の技術が無いにもかかわらず、出てくる映像は実にスタイリッシュ!野菜や肉を切り分け、焼き上げ、盛り付ける。その一連の動きが全く無駄の無い動きで描かれる快感。真上や横から食材に迫るカメラポジションも洒落た料理ガイドを見ているかのようで美しい。

 特に良かったのが息子のために作るホットサンドで、こんがりと焼きあがるパンの焦げ目もさることながら、熱せられた鉄板の発する音の臨場感、とろけていくチーズ。咀嚼される音も食欲を刺激する。大量のニンニクを使ったバジル風味(?)のペペロンチーノも、最後にちょちょいと指で形を整えるところなんか、妙に艶かしい。

アメリカ横断ロードムービー

 物語の骨子はロードムービーだが、そこに至る過程もすこぶる面白い。主人公は『アイアンマン』シリーズの監督であり役者でもあるジョン・ファヴロー。彼の演じるカール・キャスパーはロサンゼルスにある一流レストランの名物カリスマシェフだ。別れた妻イネス(ソフィア・ベルガラ)、そして息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)とは疎遠というわけではないけれども、なんとなく中途半端な関係が続いている。創作料理が大好きなカールは厨房の仲間からは信頼されているものの、伝統的料理を好む頭の固いオーナーとは衝突ばかり…。

 話を転がしていくのがTwitterやブログといったネット社会であるというのも、この映画の面白いところだったりする。グルメブロガーのラムジー(オリヴァー・プラット)にボロクソに酷評されてブチ切れたカールは、パーシーから教えてもらったばかりのTwitterでラムジーに公開@(もちろん罵詈雑言)を送って大炎上、おまけに店内で取っ組み合いのケンカを仕掛ける動画を流されてしまい…。ネットにどっぷり浸かって生きてきた人々からすると目を覆いたくなる光景なのだけれど、よくわからない新しい世代のモノに体当たりで取り組むカールの姿はコミカルで前向きだ。

 ともあれ、諸々の騒ぎのせいでレストランを辞めることになったカールはイネス、パーシーとともにマイアミへと向かい、そこでキューバサンドイッチに出会う。イネスの元夫マーヴィン(アイアンマンでお馴染みのロバート・ダウニー・Jrだ!)から買ったボロボロのフードトラックを改装し、パーシー、そして元同僚のマーティン(ジョン・レグイザモ)とともにマイアミからロサンゼルスへの旅が始まる。アメリカの南東部にあたるマイアミから西海岸のロサンゼルスへは約4,400キロ。まさにアメリカ横断の大旅行だ。この旅行がどこかへ向かうのではなく、もとの生活の場に戻る旅というのも上手く出来ている。解けた糸がもとの塊に戻っていくかのようにカールとパーシーという親子の関係、そしてカール自身の人生が元の場所に収束していく。イネスは「飛行機でひとっ飛びよ」なんて言うのだけれど、まさにこの旅というプロセスそのものが重要なのだ。

分断するもの、繋ぐもの

 この映画の中ではいくつもの分断が描かれる。カールとイネス、パーシーの家族が最初からバラバラに引き離されているのはもちろんのこと、炎上によってカールは店をクビになるし、行く先々で言葉の壁にぶちあたる。そういえば、冒頭のものすごい勢いのみじん切りやジューシーな肉を切り分ける場面など、ナイフを使った切断の場面はとても印象的だ。

 そして、それと対応するかのように、切られたものを繋ぐものも現れる。それはバラバラになった食材に料理という秩序を与えるカールの手であるし、言語の隔たりに介在する人々(スペイン語を喋れるマーティンとか)だったりするのだけど、やっぱり一番おもしろいのはここでもまた「Twitter」だ。カールはTwitterでの暴言がきっかけとなって、それまでの店をクビになってしまうが、同時にフォロワーが数万人規模に膨れ上がる。後半のフードトラックの旅ではTwitterによる宣伝が大勢の客を運んでくるし、まさに炎上商法大成功という感じだ。映画の中ではネットとSNSという新しいテクノロジーが分断するものと繋ぐものを印象的に描かれていて、そういった意味では物語の終わりで使われるvineは素晴らしい効果だった。分断された時間をパッチワークのように接続し、そして親子の絆も繋いでいく。

 もしかしたらこの映画の結末はとてもご都合主義的に見えるかもしれないし、140字くらいで適当にまとめるなら「血の気の多い職人肌の小太りのおっさんがTwitterで炎上した結果フォロワーが増えて家族も円満になったし自分の店も持てたシンデラレストーリー」と言ってもそれほど大きく外れてはいないだろう。とはいうものの、ジョン・ファヴローの巧みな料理さばき、そして出来上がるメニューの素晴らしいビジュアルは、この甘ったるいお伽話にいくばくかのリアリティを与えてはいないだろうか。

予告編

基本情報

シェフ 三ツ星フードトラック始めました  Chef115 min

監督:ジョン・ファブロー

音楽:マシュー・スクレイヤー

脚本:ジョン・ファブロー

撮影:クレイマー・モーゲンソー

出演:ジョン・ファブロー/ソフィア・ベルガラ/ジョン・レグイザモ/スカーレット・ヨハンソン/ダスティン・ホフマン/オリバー・プラット/ボビー・カナベイル/ロバート・ダウニー・Jr./エイミー・セダリス/エムジェイ・アンソニー

上映開始日:2015年02月28日

公式サイトhttp://chef-movie.jp/

公式Twitterhttps://twitter.com/chef_movie_jp

関連商品

 - 映画レビュー

関連コンテンツとスポンサードリンク