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TAAF2026へ行く
毎年恒例の東京アニメアワードフェスティバルに行ってきました。TAAFとしての開催は今回が最後らしいですね。まあ名前が変わって中身はそのままだと思うのでそこまで寂しさを感じるものでもないような気がする。
今年もフリーパスで長編コンペ4本と短編コンペ3プログラムでコンペティションはコンプリート、+『アポカリプスホテル』のイベントへ行きました。
2026年3月13日(金)
- 『広場』(コンペティション部門長編アニメーション):初日からいきなり傑作。北朝鮮を舞台にしたスウェーデン人外交官と交通整理員の女性とのラブロマンス。北朝鮮が舞台というのがまず面白く、現地の暮らしぶりが少しだけ垣間見える。孤独を抱えた第3の男ミョンジュンの存在が物語に深みを与えている。
2026年3月14日(土)
- 「コンペティション部門短編アニメーション スロット1」:このスロットでは韓国のカン・ハンナ監督の「過ぎ去りしもの」が特に良かった。デザイン的なセンスのスッキリしたビジュアルが良く、ビターな物語も良い。グランプリを取ったアリス・エサ・ギマランイス監督の「今日は土曜日なのに」も印象的だった。そして学生賞の田久保はな監督の「小さな世界の終わり」。これが今回のすべての作品の中で一番刺さったかもしれない。可愛い絵柄で少しずつ生活が悪くなっていく世界が描かれる。ぶつ切りにされるカット割りの演出が素晴らしい。時勢に合っている…というとかなり不謹慎だが、現在進行系で戦争が続けられている今、この作品が賞を取ったことはかなり重要な事実だと思う。必見。
- 『アポカリプスホテル』セレクション上映&トークショー:Blu-rayも持ってるのでもちろん生の竹本泉先生を観に行ったのですが、いやいやどうして、上映も素晴らしかった。特に本放送時は他の話数に比べると「普通すぎる」という印象だった1話の良さに気づけたのが良かった。そして11話は映画館で観てもかなり「映画」として成り立っている。絵力の強さ。竹本泉先生と制作の竹中さんのトークショーも素晴らしかった。生の竹本泉先生を観ることができる機会はもうそうそうないだろうし、かなり貴重な経験。この回はさすがに混み合っていた。
- 『リンドグレーンのクリスマス』(コンペティション部門長編アニメーション):いきなり実写で始まったので驚いてしまったのだけど、なるほど劇中劇がアニメというパターン。全体の尺も短く、中の話もそんなに尖った話はないのだけど、それぞれの技法が違っているのもあってか思いの外楽しめた。クリスマスシーズンに子どもたちと観ると盛り上がりそう。
- 「コンペティション部門短編アニメーション スロット3」:新潟国際アニメーション映画際で観た「3月の冬」をまた観たのだけど、改めていい作品だと思った。鳥へのモーフィングが魅力的なストップモーション作品「マーマレーション」、難解だがビジュアルが魅力的な「食事の時間」あたりが印象的。例年そうだけど、スロット3はやや対象年齢層が高めで面白い作品が多い。
2026年3月15日(日)
- 『青いソングバードの秘密』(コンペティション部門長編アニメーション):切り絵アニメなのだけど、画面構成が巧みで、平面的な素材感がありつつ広がりのある画面という意欲的な作品だった。後半の怒涛の伏線回収がジェットコースターのようで面白い。でかい犬も出てくるしかなり好きな感じ。個人的にはこれが優秀賞を取ったのはかなり嬉しい。
- 『スティッチ・ヘッド』(コンペティション部門長編アニメーション):『モンスターズ・インク』のリスペクトがすぎるだろ…と思って観ていたのだけど、中盤からはかなり趣が違ってくる。中身がみっちりと詰まっていて密度の高い作品。見世物小屋における見る/見られるの非対称性、他者との相互理解、アジテーションされる民衆の暴走、創造主/被造物、親子の関係、と様々な現代的テーマが内包されており、かなりの見応えがある。一言で言ってしまうと「フランケンシュタイン2.0」といったところだろうか。基本的にはドタバタ喜劇であり、クリーチャーが村にやってきて小さな女の子を恐れているくだりなどかなり面白いが、怒れる村人たちが城に押しかける場面は本邦でもそろそろ笑い事ではなくなってきたという感じがする。あと怪物たちのデザインが秀逸で、クリーチャー(個人名)なんか一見モンスターズ・インク風の怪物なのだけど、普通の人間の手が一本追加されているだけでかなり不気味な化物になっている。上手い。
- 「コンペティション部門短編アニメーション スロット2」:「カマラード -同志の選択-」がかなり『Atomic Heart』っぽくて良かった。優秀賞を取った「結末はただひとつ」は面白いは面白いんだけど、そこまでか?という気持ち。よく見るやつだなあという感想。最後に置かれたストップモーションの「真珠の涙と少女」はビジュアルも素晴らしいし、どんでん返しがすごい。そう来たか、という感じ。
「佳作」という言葉が似合う
『パリに咲くエトワール』、見た目地味なんだけど、かなり中身が詰まっておりたいへん良かったです。ガール・ミーツ・ガールの物語として観ても面白いし、大正期における女性の社会進出、アジア人差別の問題、洋画家たちのパリ留学、とテーマ的にもかなり盛ってあるし、そこにビジュアル的には薙刀とバレエが入ってくるので情報量的には思いの外大渋滞なのだけど、ストーリーラインは伝統的なのでスッキリと入ってくる、という割と不思議な映画でしたね。ベース2コマ打ちで作られているとのことなのですけど、芝居がとにかく丁寧でしたね。特に薙刀の殺陣とバレエを組み合わせたような場面がいくつかあり、かなり面白い。と思いきや後半には友永和秀さんが手掛けたらしいルパンっぽいカーアクションが入っていたりして、そのあたりのメリハリも良かったですね。これは2回目、3回目がより面白く感じられる映画かな。
200回記念で八犬伝
【新文芸坐×アニメスタイル vol.200】アニメを観る・アニメを語る …
「【新文芸坐×アニメスタイル vol.200】アニメを観る・アニメを語る『THE八犬伝』『迷宮物語』」へ。200回かあ。もう15年以上やってるのか。自分はいつから参加しているのだろうか。多分調べればどこかで記録してあるとは思うのだけど。
さて、200回記念は『THE 八犬伝』の第1話と新章の第4話、それと『Manie-Manie 迷宮物語』。「迷宮物語」はもう何回もやってるので今更ですが、改めて観てもすごいですよね。昔は「工事中止命令」が一番好きだったんけど、色々経験してからこの年になると、作画的には「ラビリンス・ラビリントス」と「走る男」のすごさが際立つなあと思いますね。
『THE 八犬伝』第1話は大平さんが作監。かなりうろ覚えだったのだけど、途中のどう見てもうつのみやさんのカットで「そうそう、このうつのみやさんのカットがいいんだよな」と思って観ていたらクレジットで載っていないのでびっくりしてしまったのでした。このへんはトークでもアニメ様からツッコまれていて良かったですね。なるほど『御先祖様万々歳』からの流れでこうなってるのね。
『THE 八犬伝[新章]』第4話もかなり久々に再観。こっちの方は本当にすごい。トークで「事故」という表現が出ていたけど、まさに。カット割りやレイアウト、湯浅さん的なゆれゆれの線も素晴らしいのだけど、トークでも言及されていた障子を閉めると反対側の戸が動くカットが個人的にはベスト。今年はシリーズ通して観直したい。
トークは井上俊之さんと沓名健一さん。結構年齢差があるためか、観ているポイントや評価する感覚がかなり違っていたのが面白かったですね。
ところで、締めでアニメ様が「300回は難しいだろうけど、250回まではやりたい」と言っていたのがだいぶショッキングでしたね…。いやいや300回までやってください!なるべく毎回行きますので…。
思ったより過激だけど後味良し
『私がビーバーになる時』、前評判では聞いてましたけど、主人公のメイベル、かなりラディカルなエコロジストですよね。いや全然そういう人が主人公でもいいんですが、ディズニーにしては思い切った配役という感じがします。冒頭のダム爆破を止めようとするくだりからしてかなり身体張ってますし。そんなやつが動物たちの世界に入れるとなったら、まあこうなるよなあ、という感じのドタバタっぷり。意識転送系はずっと入ってると精神に異常をきたしそうなイメージがあるのでかなりハラハラしながら見ていました。一回帰るとか全く無くて入りっぱなしなんですよね。怖いて。
3Dプリンタ製の動物ドローンで動物たちの世界に繰り出すメイベルですが、この動物たちの世界、というか「池」と呼ばれる国のような共同体がまた魅力的なんですよね。「池のルール」という法律のようなものがあったり、捕食者と被捕食者の間のサバサバした関係があったり…。哺乳類だけでなく鳥類、爬虫類、両生類、虫類とそれぞれに王様がいるというのも面白い。哺乳類たちの王がビーバーで腹の出たおじさん(キング・ジョージ)なんですが、このビーバーがまた良いキャラクターで。そして池は内陸なのにサメも出ます。サメの場面はかなり驚きました。その発想はなかったな。
ヴィランとして登場するジェリー市長も根っからの悪人というわけではないのが良かったです。すったもんだのドタバタがありつつ、最後は対話によって物事の収拾を図ろうとするあたりは今のアメリカのリーダーにも見習ってほしいところでありますね。
ディズニー&ピクサー最新作『私がビーバーになる時』(大ヒット上映中)
ロッキーが良すぎる
期待のSF超大作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を鑑賞。原作は『火星の人』のアンディ・ウィアーによる長編第3作。読んだのがかなり昔だったので細部はあまり覚えていなかったのですが、観ているうちにだんだん思い出してくる感じでした。
とりあえずビジュアルがかなり良いですね。原作だとややダサめだったヘイル・メアリー号が非常に洗練されたデザインにリファインされており、宇宙船内の描写も素晴らしい。遠心重力モードに移行するときの変形も面白いですね。原作忘れてたので一瞬何事かと思いましたが。そしてヘイル・メアリー号に輪をかけて素晴らしいのがロッキーと彼の宇宙船ブリップAのデザインでしょう。ブリップA、巨大だしトゲトゲだし石っぽい金属質だし、まさに異星の宇宙船といった趣。ロッキーのデザインはあまりにも良すぎですね。これはマスコットキャラになるわ。なんで劇場の売店でぬいぐるみが売っていないのか。この石の塊っぽい宇宙人と主人公であるグレースが交流を深めていくのが中盤のパートになるわけですが、いきなりグレースの宇宙船にカチコミさながらのおうち訪問をかますロッキーに爆笑。こんなキャラだったかな?面白いからいいけど。
物語的にはほぼ原作通り(だと思う)んですが、原作あまり覚えてない中でもラストシーンだけはなぜか強烈に印象に残っていて、エリダニ40で教師に戻るグレースの場面が観れただけでも、個人的にはかなり満足度が高かったです。原作になり地球側の反応が追加されているあたりも良かったですね。総じてかなりレベルが高く、SF映画の新たな古典の一つになるのではと思いました。原作を読み直して再観したいですね。
子どもの目線
あの傑作『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』のスタッフが監督した『アメリと雨の物語』を観ました。あまりにもビジュアルのタッチが似すぎていて監督が同じなんじゃないかと思って観ていたけど、スタッフさんが同じというパターンか…。「ロング・ウェイ・ノース」と同じように輪郭なしの水彩風タッチで描かれるのは、1960年代の神戸を舞台にしたベルギー人の少女アメリの成長物語。ベルギーの小説家アメリー・ノートンによる自伝的小説だとか。
やはり特徴的な画作りが素晴らしいですね。輪郭がなく、色彩が直に置かれているビジュアルはこれまでの作品と同じですが、本作でとりわけ素晴らしいのは、あまりにも鮮やかな色彩の美しさ。昭和の日本にしては明るすぎるような気もしないでもないですが、街なかというよりは自然描写が中心なので全然ありです。レイアウトもいいですね。子どもの視線の高さのカットがいくつかあって、アメリになったかのような感覚が面白い。舞台となる日本風洋館の中に置かれた様々な小物も、いかにも昭和っぽい。
そして鮮やかで美しいビジュアルとは裏腹に、物語を覆うのは濃厚な「死」のイメージ。自分の自我を目覚めさせた異国の祖母の突然の死に始まり、アメリ自身も何度も死に近づく体験をする。時代設定は第二次世界大戦の敗戦から四半世紀立たないくらいの時期で、アメリと接する日本人たちは誰もが戦争の記憶を持っている。物語のキーパーソンであるニシオさんが夕食の支度をしながらアメリに自身の家族を失った話をするくだりは、演出的にもテーマ的にも本作のクライマックスの一つになっている。
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