目次
作家陣が豪華すぎる『藤子・F・不二雄トリビュート&原作アンソロジー F THE TRIBUTE』
タイトル通り藤子・F・不二雄先生のトリビュート本。メンツがあまりにも豪華。トリビュート作と原作一遍をあわせる構成もいい。
個人的に良かったのは『エスパー魔美』×『ドラえもん』の石黒正数「音速の箱」。石黒ナイズされたマミのデザインもいいし、やはりストーリーテラーの同氏だけあってオチが抜群に上手い。ドラえもんマニアの主人公がドラえもん世界に迷い込む大童澄瞳の「ねがい星の災難」も楽しい。主人公がブツブツ早口系のオタクというのもいいし、オチがいかにも原作っぽく、タッチも原作に寄せてあるのがいい。奥浩哉の「AnotherPerman」は原作の10年後くらいを描いた作品で、これもオチが上手い。絵がまんま奥浩哉なんだけど、パーマンとわかる原作のデザインはやはり秀逸。
それにしてもこれだけいいメンツが揃っているとはいえ、現役でバリバリの藤子・F・不二雄オマージュの作品を描いている道満晴明先生とかが入っていないのはやはり不満ですね。第2弾があったら絶対入れてほしいが…。
まさかの「地面師」かぶり!『アングリー・スクワッド 公務員と7人の詐欺師』
いつもながらウェルメイドな上田慎一郎監督による痛快コメディ。韓国のTVシリーズ『元カレは天才詐欺師 〜38師機動隊〜』のリメイクらしいんだけど、そっちは未観(マ・ドンソクが出てるのに!)。主役の気弱な税務署署員・熊沢を演ずる内野聖陽が非常に良い。序盤のオドオドした感じはいかにも微妙な邦画コメディという感じなのだけど、ターゲットを騙すために必死に役作りをするあたりから確変に入ってくる。ビリヤード場での堂々たる姿とのギャップも楽しいが、どこか嘘くさい感じもリアル。天才詐欺師役の岡田将生とのバディものでもあるのだけど、そのせいで他の詐欺師たちの存在感が薄いのは残念。2時間ない映画なのでそのへんは仕方ないとはいえ、なかなかに個性的な面々が揃っているだけに、ちょっともったいない。そして驚いたのはまさかの「地面師」かぶり!地面師単体で観るとさすがにあっちのほうが出来はいいなあとは思うんだけど、こちらはカラッとしていて観やすくはある。グロがないのは大きいね。詐欺師側に倫理観がちゃんとした人間が一人いるのもいいし。『地面師たち』のおかげで基礎知識を持った状態で見れたのも嬉しい。上田監督的にもありがたかったんじゃないかなあ。あと、当然どんでん返しするとは思っていたけど、後半の絶体絶命のあたりはかなり驚いたし、逆転の方法も痛快。それは思いつかなかった。
2024年11月22日公開『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師
やっぱりニコラス・ケイジはいい役者。『ドリーム・シナリオ』
世界中の不特定多数の人々の夢の中にニコラス・ケイジ演ずる大学教授が現れ始めるという愉快なコメディ映画…と思って観始めたのだけど、まさかこんな展開になるとは。ニコラス・ケイジの絶妙な普通のおじさん感が良すぎますね。夢現象のおかげで一躍時の人となり浮かれまくるニコケイも最高だし、間髪入れず夢の中の自分のせいであらゆる場所が出禁になる天国と地獄のスピード感。夢映画といえば夢と現実が曖昧になっていくのが定番だと思うのだけど、この映画は夢と現実ははっきりと区別されているにもかかわらず、夢が現実に大きな影響を与え始めるというのが面白い。ニコケイにはまったく非がないのもあいまって、夢映特有の不条理感が現実世界で再現されているのがすごいですね。逆に出てくる夢が割と現実寄り…というより夢としては現実感がありすぎて、若干そのへんは物足りない感じがしますね。それにしてもニコラス・ケイジはどんどん脂が乗っていくなあ。
エジプトが列強になった世界。『精霊を統べる者』
魔法と機械技術が異常発達し、エジプトの国力が列強並になった歴史改変世界で強い女×強い女×強い女が活躍するバディ物。書いてて思ったけど、世界観は「FF6」っぽさもあるね。魔法の象徴でもある精霊「ジン」が人間たちと普通に暮らしていたり、「蒸気機関宦官」なるロボットが実用化されていたり、「天使」と称する高次元存在が人類の隣人として居を構えていたりと、この盛りだくさん具合がまず楽しいし、要素マシマシにもかかわらず思いの外すんなり入ってくるのがいい。説明というかいろいろな要素がちゃんと生き生きと描写されているからだろうか。終盤には巨大ロボットまで出てくる。
主人公ファトマは魔術省に務める男装の女性エージェントで、同じく女性の新人エージェント・ハディアと組んで英国人太守殺害事件を追うこととなる。ある種の刑事ものでありバディものなのだけど、魔法の存在が推理を撹乱してくるのが面白い。例えば幻覚の魔法は見ているものの証拠能力を失わせるし、明らかな証人がいるにも関わらず、そのことを喋ろうとすると自ら舌を切り落としてしまう魔法がかけられていて容易に証言が取れない、といった具合。これらの障害をかいくぐり、真犯人を暴き出す終盤の推理シーンは見もの。
個人的に良かったキャラは一人だけ世界観がちょっとズレてるアビゲイルお嬢様。大変なことになってるけど、次作があったら出てほしいなあ。
コメントを残す