西尾鉄也ファンならマスト。『ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン』

今更観たんですが、これはいいですね!西尾鉄也濃度がすごすぎ。どことなく『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』感があるなあ、と思って観始めたのですが、話が進んでいくと車も出てくるし犬も出てくるしで「なんか押井守っぽい匂いがする…」となりました。きれいな『赤い眼鏡』的な…。違うか。まあでもロードムービーだしねえ。

世界観がいいよね。よくある設定だとは思うんだけど、技術と官僚制の人間サイドと文化と王政の吸血鬼サイドという対比が面白い。この人間サイドの描写が、おそらくロシアの跡地であることとあいまって(ダーチャとか出てくる)社会主義国みが強くて最高。このへんも押井守(『アヴァロン』)っぽいんだよなあ…。そういえば押井守の最新作も吸血鬼モノでしたし…(『ぶらどらぶ』)。「楽園」の座礁した原子力潜水艦の描写もすごくグッときたし、うんうんポストアポカリプスだったらこうやって電気をね…と思ったらミスリードだった展開とか大好きだなあ。

文化、特に音楽が物語の鍵となるわけですが、それが最も色濃く現れているのが第3話の車中のシーン。モモを探す司令官の放送が流れるラジオを消すように、フィーネがカセットテープの音楽を流し始める。もちろん、この物語における音楽はモモとフィーネを繋ぎ合わせるものであるのだけど、それとともに、ここで描かれるように、厳しい現実を上書きするものとしても出てきていて、そのあたりの多義性も面白いポイントでした。吸血鬼モノなので、ああこういうエンドになるよね、というのはあるけれど、それにしても素晴らしく美しい幕引きなのも満足。Netflix独占なので全く話題になっていないけど、オールタイムベストに入れても良いと思えるクオリティでした。全5話だから映画でも良かったんじゃないかなあ。

全国民絶対買ってほしい…。愛蔵版『国民クイズ』

まさかの令和に復活!しかもとてもでかい!『AKIRA』と同じB5判なんですよ。重い。よくこの体裁で復刊する気になったなあ。太田出版エライ!まあ大きいのでめちゃくちゃ高く、上下巻で5,500円なんですよね…。これで気軽に人に勧められなくなってしまった…。電書版も連動して高くなっちゃってるし…。とはいえ、自分のオールタイムベスト漫画の一冊なので特に躊躇せず購入。引っ越しの時に段ボールの中に取り残されちゃったというのもありましたし。

この大きさで読むと前の愛蔵版では気づかない描き込みに気づけて楽しい!よく見ると結構遊びがありますね。なんか変なところに顔ついてたりとかするのね。何回も読んでるから別に今読む必要ないよなー、と思って雰囲気だけ確認しようとページを捲ったらあっというまに全部読んでしまいました。やはり傑作!特に最後のコマの力強さが素晴らしい。2023年版の原作者あとがきが追加されていて、やはり後半は打ち切りだったと語られているのですが、本人も言っているようにそれによって疾走感のようなものが出ていて自分は後半もかなり好きですね。とはいえ、今回のあとがきで書かれている未公開エピソードも加藤先生の作画で読んでみたかったというのは本当に思いますね。

それはそうとせっかく復刊したんですし、ここでブレイクして映画版とかできませんかねえ…。大泉洋主演で…(さんざんこれ言ってるけど大泉洋は微妙な気がしてきたな)。

田島列島の新シリーズ『みちかとまり』は人を選ぶかも。

みんな言ってるけど、1話のアレがグロすぎて無理な人は無理かもしれないなあ。自分も目玉をあれする系は苦手なんですよねえ。それにしても今回も変な話。いつもの軽いノリ+重い話というバランスも健在で先が気になる面白さ。

どこかで見たような話のように見えてかなり捻ってあるのも魅力的。竹藪から子供は「竹取物語」的でもあるのだけど、神になるか人になるかを人が選ぶというくだりであるとか、あるいは後半に訪れるマヨイガ的な空間での親族大集合&氏神様のあたりの独特の雰囲気はさすが田島先生といったところ。基本的なテーマとして「子どもによる選択」があるのも個人的に好きですね。

面白いんだけどなんか惜しいな…。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

回想シーンが長すぎる〜〜!!!そんなにいらんやろ。逆にルーヴルは本当に一瞬しか出てこないけど、まあこんな感じかな…という感じはしますね。むしろあれだけの尺でもよくルーヴルで撮影できたというのはすごい。

いやまあ面白いんだけど、原作漫画も単行本1冊未満なわけだし、2時間にすると冗長じゃないかなあ、とは思いました。まあ映画オリジナルのオークションのあたりとかは物語の導入としていい感じだし、原作だとあっさりしすぎているルーヴル地下の場面でもう一捻りあるという展開はかなり良かったです。やっぱり回想シーンがなあ、そんなに尺要らんやろ…という気持ちがありますね。たぶん諸々の都合で入れられたであろう長尾謙杜さん演ずる若露伴はがんばっていて良かったですね。

ところでこの映画、「新発見のフェルメール」なる絵画が小道具として出てくるんですけど、これが画面越しでもわかるパチモン感。あんなタッチじゃないだろ。初期ならわからなくもないけど、モティーフとかレイアウトはどちらかというと後期なんだよなあ。なによりテカテカしてる。あー、あと全体的に絵画の扱いが適当すぎるのは気になりましたね…。そこは持たんやろ!みたいな。

日本ダービーに行く

友人に連れられて初めて東京競馬場へ。まあ一言で言うと1日中いる場所じゃないね。朝10時から日本ダービーの終了(15:45ころ)までいたんだけど、座る場所がないからとにかく疲れた。収支としては途中で28倍のオッズを当てたけど飯代とかを考えると結局トントン。でも一回行ってみたかったのでかなり満足です。以下感じたこと。

  • 広すぎる。想像の10倍くらいの広さ。普通に迷子になった。
  • 人が多すぎる。特に日本ダービーの時は文字通り立錐の余地もないほど。
  • 想像の100倍くらいあっという間に終わる。え!もう終わり???という感じ。
  • 馬が遠すぎる。馬を観に行ったのにモニターばかり見てた。芝だと若干迫力あるカットが見れる。パドックだと近くで見れて良い。
  • 馬券の買い方がわかりづらすぎる。決定木で示してくれないかなあ…。
  • ガチで奇声上げてるおじさんとかがいて良かった。
  • 府中は遠すぎる。
  • 座る場所がなさすぎる。本当に疲れた。
  • レースとレースの間の虚無の時間。事情はわかるけど長すぎる。
  • 電波状況が悪すぎる。虚無の時間が多いのにネット繋がらなくてキレそう。
  • 「俺の生きる道」の東京競馬場店があるけどやっぱり店の方が美味い(これはしかたない)。
  • ランダムでも割と当たる。素人が予想するより完全ランダムの方が良い(仮説)。

『ルート オブ オッドタクシー』はめちゃくちゃ良くできたスピンオフ

アニメで綺麗に終わってるじゃんと思っていたのだけど、あの一連の事件に全く別の視点を挿入するというのが面白い試み。『オッドタクシー』本編もかなり実験的な作品だったと思うけど、そこにさらに別のレイヤーを乗せていく。こういう構造の物語って映画とかだとそこまで珍しくないけど、スピンオフという形で展開していくのは、無限に物語を作ることができそうという意味でも面白い。有名どころだと「機動戦士ガンダム」のORIGIN(安彦さんの)とかね。オリジナルとの間で破綻をきたさないかだけが心配ですけども。

本作の主人公は二人の探偵事務所調査員。19歳の玲奈はなにやら過去に秘密がありそうだし、相方の佐藤は「珍しいものを引き寄せる/二択を必ず外す」といういかにもオッドタクシー世界のキャラらしくて楽しい。本編で起きた事件をこの二人がまさに覗き見していくのだけど、あー、そんな手があったか、というのに驚かされるし、あー、このシーンあったわ、え!ここでこんなことが…、という物語世界の広がりが感じられる構成が上手い。個人的に一番驚いたのがタエ子さんが実は…のあたりですね。本編を観直したくなるという意味でもスピンオフとして出来が良すぎる。