映画レビュー

【映画レビュー】『THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章』

投稿日:2014年4月20日 更新日:


 なにごとも、とりあえず否定から入る奴はまずクソだし嫌われるんだけど、この作品で押井守はいつものようにそれをやってのけている。「やってのけている」というよりはコレはもう彼の「業の深さ」が成せるわざだよね。本作の制作発表時に「監督、押井かあ…」と思った人はやっぱりその不安が的中したわけだし、「監督!押井守!これは期待www」と思った人はやっぱりその期待通りの作品になっているという次第。

 まあ、要するに一言で言ってしまえば、コレはパトレイバーなのだけれど、それ以前に「押井守の映画」なのだ。

 多少ネタバレになってしまうのだけど、なにしろ本編に先立つ「エピソード0」の中でシバシゲオ(千葉繁)を通じて、「二足歩行ロボットなんて非実用的なフェチズムの産物だ!」と切って捨てているのだから、これからの展開がわかろうというもの。予告編とポスターはほとんど詐欺に近く、レイバーが活躍する(というより動く)シーンはほぼ皆無。思えば『劇場版2』で特車二課不在の物語を描いた押井守らしい映画ではある。

 では、何が描かれているかといえば、端的に言ってしまえばダラダラした特車二課第二小隊の日常である。ちなみに物語に先立ち第一小隊は解体されている。

 エピソード0の中でも繰り返し言われているように、この世界(2013年)はレイバーという存在が否定された世界である。そのため、98式AV(イングラム)が出動する機会もほとんどない。押井守が描きたいのはレイバー同士の格闘戦でも、手に汗握る近未来警察サスペンスでもなくて、「レイバーのある世界での日常」なのだ。だから、彼は第二小隊のある埋立地を舞台にして、普通の映画だったら「クソいらねえシーン」と言われそうな「正しい整備員の歌」とか、上海亭のオヤジとのやりとりとか、それに続くオヤジのチャーハンを作るシーン(歌付き)とか、買い出しのシーンとかにあれだけの尺と技術と情熱を注ぎ込んでいるのである。

 繰り返すけれども、これは「レイバーが添え物になってしまった世界の物語」である。それだからこそ、エピソード0でレイバーをさんざんこき下ろした後の「俺だって好きだよ!」というシバシゲオの慟哭は押井守本人の言葉として聞く必要があるだろうし、とても胸を打つのだ。

 あ、あと泉野明(「いずみのあ」ではない)役の真野恵里菜がありえないほどカワイイのでそれだけで見る価値はあると思います!

基本情報

THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章  58 min

監督:押井守

音楽:川井憲次

脚本:押井守

出演:真野恵里菜/福士誠治/太田莉菜/堀本能礼/田尻茂一/しおつかこうへい/筧利夫/千葉繁

関連コンテンツとスポンサードリンク

-映画レビュー

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

『さよならの朝に約束の花をかざろう』は今年必見のアニメ映画!【2018年2月に観た映画感想レビューまとめ/全12本】

2018年2月に観た映画の覚書です。新作4本しか観てない…。月間ベストは『さよならの朝に約束の花をかざろう』。

杉田協士監督『ひかりの歌』は後からじわじわくる今年のベスト候補!【2019年1月に観た映画感想レビューまとめ/全16本】

2019年1月に観た映画の感想レビューまとめです。ネタバレなし。今月は杉田協士監督の『ひかりの歌』をめっちゃ推します。今年のベスト候補。ちょっと長いのであれですが、後からじわじわ来るホッカイロみたいなタイプのやつです。

映画『パディントン2』は可愛いだけじゃない。【ネタバレなしレビュー&考察】

ポール・キング監督の大人気クマ映画の続編『パディントン2』の(あまり)ネタバレなしレビュー&考察です。今回もくさそうでした。前作に引き続き、移民と反移民の狭間をユーモラスなタッチで描いています。楽しい映画なのですが、若干気になるところがあり、今回はそれについても触れています。

「原爆ドーム」を超えて。映画『この世界の片隅に』がつなぐもの。【ネタバレなしレビュー&考察】

片渕須直監督、主演のんによる映画『この世界の片隅に』のネタバレなしレビュー&考察。戦時中の人々の「日常」を綴ることで、何を表現したのか?2016年のベスト映画です。片渕監督の過去作である『アリーテ姫』との関連にも触れています。

死者の国なのにファンキーだぜ!『リメンバー・ミー』が楽しい!【2018年3月に観た映画感想レビューまとめ/全15本】

2018年3月に観た映画の覚書です。今月は短編アニメばかり観てました…。東京アニメアワードフェスティバル(TAAF2018)のコンペティション部門(長編4本、短編スロット4プログラム)がメイン。新作は6本しか観てないです。月間ベストは、カラフルな死者の国のビジュアルとトリッキーな脚本が楽しい『リメンバー・ミー』(TAAF2018の『オン・ハピネス・ロード』は別格で…)。

search