短編スロット3

[cf_cinema post_id=8290 format=3 text=” 一本の道で表された人生の上を青くて滑稽な生き物が走っていく。スロット1の『ちゅんちゅん』と同じような設定/テーマの作品だけど、向こうはリアリティある表現とアンビバレントなシチュエーションがシュールな雰囲気を作り出していたのに対して、こちらはクラシカルなキャラクターがいかにもディズニーライクな動きで駆けたり飛び跳ねたりする。同じような道が並行して走っていたり、ときに交差したり。傍らに目をやれば様々な走り方の生き物がいて、それぞれの人生を走り抜けている。この多様性への目配せのようなものが印象的な作品だった。走り始めは美しい青色が瑞々しかった生き物は終わりに近づくに連れ、しだいにくすんだ色になっていく。そしてまたきれいな青色の生き物がその走りを継いでいく。シンプルでありがちなテーマだけれども、妙に心に残る。”]
[cf_cinema post_id=8292 format=3 text=” スロット2の『人形は泣かない』も細かーい作品だったけど、こちらはそれに輪をかけて緻密!仄暗い室内に所狭しと置かれた調度品の数々、車が狂ったように走り回る立体的で広大な街のジオラマ、そして主人公の人形が作る小さな籠!『人形は泣かない』の方でも人形がものを作る様子が描かれていましたけど、あちらがテーマとの絡みであえてリアリティを少なくしていたのに対して、『籠』のそれは実写に迫ろうとするリアリティが感じられます。一方で、それをストップモーションという技法でわざわざ表現する意味があるのかと考えてしまうのですが…。その点、グランプリの『ネガティブ・スペース』はアニメーション的な想像力がふんだんに盛り込まれた独特の世界が構築されていて上手かったですね。ただ、『籠』についても、例えばリアル志向の世界とは対照的な漫画的キャラクターが見せる情感的な表情は独自の雰囲気を生み出していたと思います。特に時計が壊れてるのに気付いたお父さんのガッカリ感がとても良かったですね。単純にがんばれば上手くいくわけではないけど救いはあるというストーリーも万人に受け入れられるものだと思います。”]
[cf_cinema post_id=8294 format=3 text=” 「なんか変な作品だな…」と思いつつ観ていたのだけど、最後で「なるほど」となる作品。テーマが前面に強く強く打ち出されてるので、まあプロパガンダアニメという啓蒙アニメというか…。あまり上手なやりかたではないような…。ただ尺も短いしやれることは少なかっただろうな、とは思いますけど。目がギョロッと大きい典型的なピクサーっぽいキャラデザの子ガメの最後がつらい…のだけど、いまいち緊迫感がないのはこの表現形式とマッチしていないのでは?とも思いったり。ただ、子ガメが浜に出た時にゴミに行く手を阻まれる場面のゴミの巨大感とかは良かったですね。でもゴミがあんなに浮いてるのに透き通った水ってのはやっぱりおかしいよ!”]
[cf_cinema post_id=8297 format=3 text=” これすごく好き!キャラクターデザインと色彩設計が抜群に良いですね。スマホに夢中になっちゃったお兄ちゃんにかまって欲しい妹ちゃんがめっちゃかわいい!!等身低め、目と耳大きめ。漫画っぽい動きがキャラとマッチしてます。お気に入りカットは妹ちゃんがベッドから頭を出すところ。ためてビュン!ってかんじがアニメだ~ってなります。これはどこかでまた観たいな~。”]
[cf_cinema post_id=8300 format=3 text=” 新文芸坐の大画面で観ると最高なやつ!カンディンスキーを思わせる抽象的なものが画面下から上方へと音楽にノリノリで登っていく。こういう物語性を限りなく削ぎ落とした実験映像的な作品が短編コンペに出ているのも、この映画祭の懐の深さなんだと思う。これ以外の作品はほとんどが何らかの物語/テーマを表現するためにアニメーションという技法を使っているわけだけど、この作品はそういったところから少し離れて、動きの楽しさ面白さをひたすらに追求している。短編コンペは30作品以上が出品されているわけだけど、それぞれの世界の断片の渦に翻弄され、千々に乱れていたところにこういう作品が来ると、表現は悪いかもしれないけど、箸休め的な、思考ではなく感覚的な楽しさに癒される。後半の色が突如として無くなった世界も素敵だった。こういう映像を永遠と流したい。新文芸坐は音響も素晴らしいので、そういった意味でも貴重な機会だったと思う。”]
[cf_cinema post_id=8303 format=3 text=” アニメーション・キャラクターの外見を決めるのは誰なのか。それはもちろんキャラクターデザイナーだが、この掌編ではキャラクターがデザイナーに反旗を翻す!描かれたキャラクターが自らの容姿を決定しようとする鉛筆や消しゴムを押しのけようと奮闘する姿は健気で応援したくなるし、単純にビジュアルとして面白い。このエピソードではデザイナーは女性キャラクターをセクシャルなものにしようとするが、当の本人からNOを突きつけられる。動きと展開はコミカルだが、ここでは女性が自身の容姿/服装についての決定権を持たないという極めて同時代的な問題が提示されている。さらに、そのデザイナーも女性であるという点も示唆的だ。メタ的な構造と現代的なテーマ、そして何よりアニメーション的な動きの面白さの調和が取れた作品。”]
[cf_cinema post_id=8305 format=3 text=” 全体的に画面が暗く見づらい…。舞台となる都市は中華圏サイバーパンクで魅力的なのだけど、暗くてディテールがよくわからない上に、押井守監督の『イノセンス』でもう見た!と思わず思ってしまう(択捉特区のとこね)。…のだけど、後半、一気に視界が開けてくるとそれまでの鬱屈した雰囲気が一掃されて、これはこれで開放感があっていいかも。ストーリーはわかりづらいというか独りよがりというか…。まあこれはこれでこういうのも好きですけど。結局、「秘密」がなんなのかよくわからなかったなー。メカニックデザインは好き。”]
[cf_cinema post_id=8308 format=3 text=” 小林源文風味のウサギたちが第一次世界大戦の塹壕戦で戦う。毛並みがリアル。筋書きはシンプルながら、そこに入り込む「異質なもの」が作品を彩っている。少しSFっぽいテイストが付け加えられていて、その変なモノの正体が実は…、というお話。ありがちな話といえばそうなんだけど、演出力は高い。主人公のアトリビュートであるハーモニカは、戦いの始まりを告げるものであり、破壊と創造という対比であり、戦場という非日常の場に日常を再現しようとする一匹のケモノの必至の抵抗のようにも捉えられる重層性を持っている。”]
[cf_cinema post_id=8310 format=3 text=” コミカルで痛烈な社会風刺。タイトルの「ブラウンナンバー」とは肌の色の濃さに付けられた番号のこと。番号が多ければ多いほど濃い黒に近づいていく。そして、その濃さによって身分が固定されてしまう…。ディストピア的な設定だが、これは世界で現実に起きていることだ。カースト制が色濃く残っているインドでこのような作品が作られたことは自虐的だけれど、そこに住まう人々もやはり問題を認識していることが伝わってくる。「北に住む人ほどナンバーが少ない(白い)」とか「欧米人のブラウンナンバーは憧れ」といったインドあるあるが面白い。ブラウンナンバーを少なくするために奮闘するキャラクターたちは滑稽だが、現実世界におけるその切実さが逆説的に反映されている。あたかもカラーサンプルやパレットのような四角いキャラクターたちが、ビジュアル的にも独特の面白さを生み出している。”]
[cf_cinema post_id=8315 format=3 text=” 個人的に今回の映画祭の短編MVP!こういうシンプルで、それでいて登場人物の人生にまで言及するような作品が好きなんですよね。認知症を扱った作品は、もう一点『頭が消えていく』(スロット1、フランク・ディオン監督)があったけど、あっちがシュルレアリスム的な世界観を前面に押し出してきたのに対して、こちらの作品はあくまでも日常生活をベースにしつつ、そこに忍び寄る認知症の恐怖を描いている。オーソドックスなゴブランっぽいビジュアルで丁寧な芝居が印象的。メモや写真立て、電話などを通して、主人公の老人の立ち位置、境遇をさり気なく示していく。全てが白く塗りつぶされていく認知症のビジュアルは圧倒的で、普通だったら黒一色にしてしまいそうなところを、独特の恐怖感で上書きしていく面白さ。明るいけれど、それゆえに孤独さが迫りくる。”]
[cf_cinema post_id=8317 format=3 text=” 巨大図書館の崩壊を描く。高さ数十メートルはあろうかという超巨大書架が立ち並ぶ荘厳な空間が最高。そして、それがうっかりミスでピタゴラスイッチ的に連鎖崩壊していく!本が河のように流れていく様も面白いし、象徴的。しかし、あの状況であの3人はよく生き残ったなあ。通電したら普通に火災になりそうだけど、そのへんはまあアニメーションだからいいか。のっぺりしたCGっぽいCGで技術的には普通なんだけど、現実味のない世界をそれっぽく描いているのはアニメーションならでは、と言えるかも。”]
[cf_cinema post_id=8320 format=3 text=” 今回の映画祭で一番最初に観た作品で、初見では非常に地味な作品だなという印象。中年に差し掛かった主人公が功をあせって失敗するという比較的シンプルな筋書きなのだが、どうにも忘れられない作品でもある。短いの尺の中に盛り込まれた、彼女の境遇をそれとなく示す細かな演出が上手い。例えばコーヒーをめぐるシーンからは彼女の焦りと苛立ちが強く伝わってくる。静かな前半から終盤の予想もつかない銃撃戦という展開も、起承転結をきれいになぞっていて、観やすい作品でもある。人の人生の一瞬を切り取ったかのような美しい掌編。”]
[cf_cinema post_id=8322 format=3 text=” ちょっとよく分からなかったというか、技術力はあるんだけど…。フックがないというか、こういう国際映画祭のカラーには沿ってないというか…。「どこかで観たことがある」んですよね。ただ、同じArtfxの作品でも『ケイロ』の方はオリジナリティとアニメーション的な面白さがあったんだけどなー。ナイトの片腕がチェーンになってるのはスチームパンクっぽくて好き。”]
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