映画レビュー

【映画レビュー】『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記』:結局いつものドラえもん

投稿日:2015年4月1日 更新日:


正直、微妙

 ここ数年、旧作のリメイクとオリジナルを交互に発表している大長編ドラえもんシリーズ。ついに満を持してというべきか、今年のテーマはヒーローもの!ということで、それなりに期待はしていたのだけど、これがどうにも消化不良というか微妙な出来だった。ていうか題材的にも今更感がある。

 物語の大筋は、悪宇宙人の侵略を受けている銀河辺境の星・ポックル星を、ヒーローに扮するドラえもんたちが救うというもので、どこかで見たような宇宙小戦争である。要するにいつもやってる冒険活劇にヒーローものっぽい皮を被せただけで、率直に言って新鮮さはない。

ヒーローものとしての盛り上がらなさ

 特に気になったのが全体的な緊張感の無さで、これまでのドラ映画の定番だった「ひみつ道具の封印」という仕掛けがなく、空気砲もヒラリマントも使い放題。あの手この手、時にはしょうもない理由(ポケットの中にスッポンが入ったとか)をつけて四次元ポケットを使用不可能にしてきた先人たちの創意工夫があったというのに…。おまけにそれぞれ固有のヒーローパワーもあるためよりどりみどり感が半端ない。

 ヒーローがなんらかの理由でその能力を失い、クライマックスで再起するという展開はありきたりかもしれないが、確かに盛り上がるし、そもそも大長編ドラえもんはそのプロットをなぞってきたのではなかっただろうか。まったくピンチに陥らないアクション映画は退屈だ。もちろん、本作でもドラえもん一行は多少困った事態にはなるものの、絶体絶命の大ピンチというには程遠い。中盤でのび太がうっかりヒーローバッヂとひみつ道具を手放してしまう展開が全員に降りかかっていればもう少し盛り上がったのかもしれないが。

 ちなみに、ヒーローバッヂを装着した状態での固有能力は、ドラえもん:頭突き、のび太:あやとり、ジャイアン:怪力、スネオ:天才的メカニック、しずか:お湯(水)を出す、というものだが、前述したようにひみつ道具も使える上に、そっちの方が明らかに使い勝手が良いので、ヒーローパワーを使う必然性があまりない。唯一見せ場だったのはいつものようにパニクったドラえもんが出すゴミから、スネオが即席でメカを作ったシーンくらい。のび太の、一見何の役にも立たないあやとり能力も、ジョジョ的な頭脳戦で活用されるのかと思いきや、普通に(そしてなんとなく)戦闘用に覚醒してしまう…。

嘘と真と映画とリアル

 ただ、面白かったのは映画全体の設定で、ポックル星の住人を挟んで、ドラえもん陣営と宇宙海賊陣営のどちらもが「嘘」を付いているという点。ドラえもんたちはヒーローを装い、宇宙海賊たちは友好的なグローバル企業のサラリーマンを演ずる。悪役が当初は善人の皮をかぶっているというのは、現代の経済的侵略を模してもいるように思えるし、嘘のヒーローが本物のヒーローになっていくというプロセスもわかりやすくて良い。ただ、上に書いたように、全体的な展開が盛り上がりに欠けるため、なんとなくヒーローになったような感じは否めないのだが。

 ドラえもんたちは映画の撮影中に期せずして本物の宇宙戦争に巻き込まれていくわけだけれども、このあたりの感覚の面白さもある。(映画の中での)映画からリアルへのシームレスな移行。ディーン・パリソット監督の『ギャラクシー・クエスト』を思わせる(というかそのまんまだ)。とはいえ、映画の中で映画を撮る映画は何本か思いつくのだけれど、この映画では「映画を撮る」という行為が物語を始めるためだけの口実に見えてしまった。何も『地獄でなぜ悪い』のごとく、カオスの中で映画を撮れと言っているわけではないのだけれど…。ドラえもんたちが「ココは現実である」と自覚する瞬間が一番盛り上がる。

 と、さんざんdisっておいてなんだけれども、普通に楽しめるドラえもん映画ではあります。一昨年の『ひみつ道具博物館』が奇跡的なクオリティだったのだ…。

 ちなみに、映画監督ロボットという触れ込みの「バーガー監督」の主な役割は大道具と撮影。脚本機能くらいつけるべきでは…。

 あ、ヒーロースーツ姿のしずかちゃんはかわいかったです(小並感)。

出てきたひみつ道具(登場順) ※ネタバレになるのでクリックで開きます

クリックで開きます
  • グレードアップライト
  • 着せかえカメラ
  • バーガー監督
  • タケコプター
  • ほんやくコンニャク
  • 宇宙カプセル
  • ヒラリマント
  • 空気砲
  • ひみつ木っち
  • ムード盛り上げ楽団
  • 透明マント
  • 地熱を測る機械(不明)
  • もぐら手袋
  • グルメテーブルかけ
  • カチンコチンライト
  • ビッグライト

基本情報

映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記  100 min

監督:大杉宜弘

音楽:沢田完

脚本:清水東

出演:水田わさび/大原めぐみ/かかずゆみ/木村昴/関智一/田中裕二/観月ありさ/市村正親/井上麻里奈/能登麻美子

上映開始日:2015年3月8日

公式サイトhttp://doraeiga.com/2015/

公式Twitterhttps://twitter.com/doraemonChannel

関連商品

 主題歌はなんか良かった。耳に残る感じ。

 ここ数年の作品だとこれが出色の出来ですね。

 SFドラマの出演者たちが本物の宇宙戦争に巻き込まれるやつ言えばコレ。傑作SF映画です。

関連コンテンツとスポンサードリンク

-映画レビュー

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

【映画レビュー】『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』

冬のニューヨークを舞台にクソミュージシャンが右往左往する映画『インサイド・ルーウィン・ディヴィス 名もなき男の歌』のレビューです。コーエン兄弟は本作でカンヌ審査員特別グランプリを受賞。F・マーレイをはじめとした名優たちの演技が素晴らしく、特に主演のオスカー・アイザックのダメ男役はハマり役。

【レポート/レビュー】記録映画『飄々~拝啓、大塚康生様~』&大地丙太郎監督トークショー【TAAF2015】

目次記録映画『飄々~拝啓、大塚康生様~』大地丙太郎監督特別講演「私のなかの東京ムービー」大塚さんとの思い出記憶の中のトムス・エンタテインメント(東京ムービー)トムスの中で影響を受けた作品アニメ業界内で …

「原爆ドーム」を超えて。映画『この世界の片隅に』がつなぐもの。【ネタバレなしレビュー&考察】

片渕須直監督、主演のんによる映画『この世界の片隅に』のネタバレなしレビュー&考察。戦時中の人々の「日常」を綴ることで、何を表現したのか?2016年のベスト映画です。片渕監督の過去作である『アリーテ姫』との関連にも触れています。

【映画レビュー】『THE NEXT GENERATION パトレイバー 第1章』

押井守総監督による実写版パトレイバーシリーズ『The Next Generation パトレイバー 第1章』のレビューです。「ep 0 栄光の特車二課」と「ep 1 三代目出動せよ!」の2本立て。押井守らしい、煙にまいたような話でした。真野恵里菜ちゃんかわいい。

【レビュー】「ワタクシノモノガタリ」カナダフォーカス⑤【TAAF2015】

 「TAAF2015」、2日目の3月20日(金)は「カナダフォーカス⑤ワタクシノモノガタリ」。カナダ国立映画制作庁による短編アニメーションの特集です。テーマは「個人史」ということで、絵画でいうところの …

search