目次
さて、今回はプロダクション・アイジーの誇るスーパーアニメーター・西尾鉄也さんの特集です。実質「NARUTO」特集ですね。作画がすごいとは聞いていたものの、なんとなく観る機会がなかったのでありがたいです。ゲストもう一人はナルト役の竹内順子さん。アニメーターと声優さんという組み合わせですが、お二人の掛け合いも楽しかったです。
客席はほぼほぼ満員。今回は女性が多い感じでした!
前回の「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.86 アニメはいいぞ。『同級生』『百日紅』『花とアリス』『ガルパン』!」レポートはこちら!
トークショー
!notice!
トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。
登壇者
西尾鉄也さん(IG所属のスーパーアニメーター。以下「西」)
竹内順子さん(うずまきナルトの中の人。以下「竹」)
小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「小」))
新文芸坐・花俟さんによる前説
花 夜明けの『スカイ・クロラ』ということで皆さん頑張ってください(会場笑) 今日は久々にあの人とあの人がいらっしゃいます。楽しんでいってください。
「西尾鉄也画集」発売記念!
小 今日は西尾さんのサイン入り色紙のプレゼントもあります!
竹 じゃんけん?フリスビーみたいに投げる?
小 今日は画集1が出たということで、どうですか?
西 売れてますか?
小 なかなか売れてます。
西 よりがんばりましょう!
竹 もっと夢のある話しませんか?(笑)
小 竹内さんはどうでした、画集。
竹 等身が違うのを同時に描くと聞いて、頭がおかしいのかなって。女の身体がいやらしいと思って見てました(笑)
西 その時その時の作品に影響を受けちゃって、これあの作品やってた時のだなってのがありますね。
竹 画力って何が画力かわからないんですけど…。構図?
西 うーーーーん…。やっぱり同じキャラは同じに描けることじゃないでしょうか。
竹 「ナルト」の話ですけど、(「THE LAST」では)ナルトが成長していって、30歳になってマントを羽織ってるんですけど、それでちゃんと分かるように描いたと書かれてましたね。
西尾さんと竹内さんの出会いと「停電少女」
小 アニメーターさんと役者さんてあんまり接点ないと思うんですけど…。
西 「メダロット」2の打ち上げの時にお見かけして、そのあと「NARUTO」があって…。(「NARUTO」の)劇場版の時は毎回打ち上げがありまして。極めつけはフランス行った時の珍道中!3
竹 鉄さんが男の人に絡まれてて…。
西 向こうのスタッフだと思ってついていくとこでした。大変でしたね。ホテルに帰っても色々あって。
竹 二人とも英語しゃべれないからボディ・ランゲージでいろいろやってたんですけど、そこで仲良くなりました。
小 で、その後、「停電少女」につながっていくと。これはどういう話なんでしょうか。
竹 この世界では人間は目が見えなくて、蛍を買ってきて契約を結ぶと目が見える、その代わりに(自分の)寿命をあげる、という話です。
小 西尾さんは話があった時はどんな感じだったんですか?西尾さんの記憶だと話が向こうから来たことになっていますけど…。
竹 私の記憶だと、どっかの飲み会の席でお願いした気が…(笑)。あまり覚えていないんですよね。描いてもらったのにどんな画かも覚えてなくて。
西 打ち上げの時にどうでした?と聞いたら「ナルト」の感想がはじまっちゃって…。
竹 ちゃんと見れてないんですよね。
小 今日はトークの途中で「停電少女」を上映して、感想を聞いていきたいと思います。まず、制作の状況はどうでしたか?
西 予算もあまりなくて、スタッフもほぼ私一人で…。彩色とか録音とかのスタッフはいたけど、絵を描くのはほぼ自分一人。
小 背景も西尾さんが描いてます。
西 今日、来るときに絵コンテ見てみたら、バッテンバッテンってどんどん削ってて。文節単位でも削っていて、階段を上がるカットとかもバッサリカット。今日見る人はそういう工夫とか「安さ」を楽しんでもらえれば…。
小 西尾さんの言葉で言うところの「ちびキャラ」、アニメではあまり描いてないものがアニメーションで楽しめます。
西 本来は8等身のかっこいい絵柄なんですよ。
竹 ちなみに私は女役です。ヒロインです。この話が来た時、間違いかと思ったんですけど、思いっきり女の子っぽい演技でやったらNG出て、「「デジモン」のゴマモンみたいにやってください」と言われて、それでやったんですよ(会場笑) だからあまり女の子っぽくないんですよね。
小 あっという間に終わりましたね。
西 前振りで安い安いと言いましたけど、けっこう見れますね。
竹 TVアニメでもこれくらいの雰囲気のありますよね。
小 ちょうちょのあたりで尺を稼いだり…。階段のところ苦労してましたねー。
西 覚えてない理由がわかりました。出番が少ないからだ。
小 数カットでしたね。確かに「デジモン」ぽい。
西 (原作は)コミカライズされたものを頂いていて、だいたいで作ってしまいました。
小 西尾さんの監督作品ですよね。
西 そうですね。でも録音にも立ち会ってないんですよね。(元が)ドラマCDだったからお任せしてしまって。
竹 裏話を話したいけど、あまり覚えてない…。
小 でもこういうのももっと見たいですね。
竹 ウェブでやればいいんじゃない?
西 簡単に言ってくれるなあ(笑)
対照的な二人の監督による「NARUTO」
小 今日の他の上映作品を…。「THE LAST」はどういった作品なんでしょうか。
西 本編の内容にあまり触れないものが続いてたんですけど、9本目の劇場版4のあと一回休んで、ちゃんとした映画を作りたい、とぴえろの社長以下お歴々がやってきまして…。いつもはバタバタと3ヶ月くらいで作ってるんですけど、ちゃんと作りたいんだというオファーが来たんですね。最後の何本かになるんで、お願いできないか、と言われて。自分もそろそろ恩返ししないと、と思っていたのでわかりました!と。いつもはIG5でやってるんですが、ぴえろ5に出向してがっつりやりました。しかも、原作に描かれてないもので、かつパラレルワールド的なものではない、ナルトに転機が訪れて歴史が進む、それでいてあまり成長しない正当な歴史の作品として参加しました。
竹 (客席に)『NARUTO』、ご存じですか?忍者の話なんですけど、最初にネタばらしします!(この映画は)恋愛の話です。いい感じのシーンがあるんですけど、小っ恥ずかしかった!なんで男の役なんだろうって(会場笑)
西 漫画とは全く違うルックスで登場するという、当時は画期的なものでした。そのあたりも楽しいですね。
小 亡くなられた小林監督6の仕事ぶりはどうでしたか?
西 テレビシリーズはちょっとやってたけど、『NARUTO』全くわからないんで、というスタンスで来られて、逆にそれが良かった。TVシリーズや原作にとらわれない発想が良かったですね。悪く言えば原作クラッシャー。ヒナタの家は監督が一人ロケハンしてきて…。ファンにしてみれば賛否評論なんでしょうけど、僕は楽しかった口で、むしろ歓迎しちゃう方です。あまり大きな声では言えないですけど。(小林監督は)アニメーター出身の監督じゃないので、絵は描かないんですけど、ビジュアルに対するこだわりはすごくて、さっきの一人ロケハンとか、インターネットで東南アジアのどっかの遺跡の写真を探してきたりとか。そのこだわりが仇となって、結局、バタバタとした作り方になっちゃったのは、監督のこだわりの結果ですね。最後のボスとの戦いが終わったあとにもう一盛りさせたいとか言い出したりとか。「西尾さん、変貌した敵のボスのデザインをお願いします」と言われたりして。今からですか!と(笑) 尺が長くなりすぎちゃってカットしたところもたくさんありました。
竹 忍者の映画なのに最後怪獣映画みたいになってるんですよね。見ていて楽しかったです。
小 で、次が「BORUTO」。現在の最新作ですね。
西 こちらは小林監督とは真逆の山下監督という若者で、彼は「NARUTO」がやりたくてぴえろに移籍してきた生き字引みたいな人。螺旋丸の種類も全部覚えてる。「そこでその螺旋丸は使えません」みたいな。それくらい「NARUTO」大好きなんですよね。
小 上映の時もNARUTO愛が溢れてましたよね。
西 原作読んでるとわかる細かいネタもいっぱいあって…。自分もちゃんと原作は読んでるんですけど、原作長いじゃないですか、しかももう少年ジャンプの対象年齢じゃない、それであやふやになっちゃたりすることもあったりして…。
小 監督になるべくにしてなった人ですね。作画マニア的にはクライマックスの作画が「NARUTO」史上最高の出来ですね。
西 音楽との相乗効果がすごいですよね。あのシーン実はほとんど関わってないんですけど(笑) もう任せた!と。
竹 螺旋丸のシーンぜんぶ鉄さんがやってるんじゃないの?
小 初期の螺旋丸のところは西尾さんがやってるんですよね。
竹 螺旋丸のこと愛してください!
西 愛してないわけじゃないですよ。15年もやってるんですから(笑)
「スカイ・クロラ」のNARUTOっぽさ
小 最後は「スカイ・クロラ」です。
西 高校生くらいの子供たちが戦闘機に乗って戦争をするという話です。人造人間の子供たちで年をとらない。血沸き肉踊るアクション映画かと思いきや、なんのことはない日常が流れるという。
竹 え、そっちのほうが面白そう。もっと詳しく教えて下さいよ。
西 主人公は優一くん。
竹 日本語だ!
西 彼がいるところは日本人があつめられていて、ヒロインが水素さんというこれも子どもの司令官。最後に上映するから眠くなるかな…(会場笑)
小 西尾さんの代表作ですね。アンニュイな映画です。
西 元が小説なので挿絵とかはあったんですけど、監督の方針でゼロからやってくれということで、当時は「NARUTO」も平行してやっていたから、あ、こいつ木の葉の里のやつっぽいな、とか。
竹 やっぱり引っ張られちゃうんですね。
小 俺も言った覚えがあります(笑)
色紙のプレゼントタイム(「スカイ・クロラ」3枚)
西 権利関係が面倒ですからね。「スカイ・クロラ」が一番無難かなと。
最後に一言
竹 今日はもっとマシンガントークしたかったんですけど、まったりとした空気だったので我慢しました。大福を食べている感じでした(笑)
西 今日選んでもらった3本はどれも思い入れがある作品なので嬉しいです。楽しんでいってください。
上映作品
[cf_cinema post_id=5932 format=3 text=” イベント上映された作品なので、作品知ってないと設定がわかりづらくはあるのですが、西尾さん特有のちびキャラがちまちま動いていてこれは楽しい。トークでも言われてましたが、たしかに怪談を上がるシーンは独特の節約感がありますね。西尾さんの一人原画+二等身という点だと『ミニパト』を思い出します。”] [cf_cinema post_id=5936 format=3 text=” トークでも言われてましたけど、ド直球の恋愛映画でしかも怪獣映画!中盤からまさかの展開になるのが面白かったですね。すごくSFしてますし。ネタバレになっちゃうけど、まさかの地球空洞説!そして宇宙も出る!すごい。ヒナタが編むマフラーは『君の名は。』の糸のモティーフを連想しました。あと『アイアン・スカイ』(笑) クライマックスが長い気がするところはあるのですが、一方でトネリの城のあたりのこだわりかたも小林監督の趣味なんですかねー。”] [cf_cinema post_id=5943 format=3 text=” アニメ様も言ってましたが、とにかくすごいのが終盤のアクションシーンの作画!!個々の動きもそうですが、カットの割り方がとても気持ち良いテンポで、ここだけでもBlu-rayが欲しくなる出来!今回、大画面で観れたのはほんと良かったです。物語的にもボルトとナルトの親子の葛藤があり、少年の成長があり、としっかりとした作り。「近道をするべきか?」というテーマもいいですね。三人組も可愛い(特にメガネ)し、パパになったサスケが性格丸くなってて微笑ましい。あと、ヒマワリの誕生日会のアレな感じが印象深い…(レミー・べルヴォー監督の『ありふれた事件』を思い出しました笑)。”] [cf_cinema post_id=2568 format=3 text=” 毎度おなじみの押井守映画。この時間帯これはキツイ!好きな映画ではあるのですけど、まったりしてるからどうしても眠くなりますね…(ちょっと寝ました)。NARUTOも西尾さんらしいキャラクターデザインだと思いますけど、押井ラインというかこちらの作品の方はより中性的な感じですね。あと色が白い。”]写真など
まとめ
普段、NARUTOのシリーズは全く観れてないんですけど、今回は大画面で観ることができて良かったです。TVシリーズもHuluとかで配信されてたし観てみようかな…。すごく長いけど。アニメーター単位の特集(仕事シリーズとか)はアニメスタイルらしいので今後も期待してます。
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関連リンク
■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/
■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/
NOTES
- 「西尾鉄也画集」(2016年9月26日発売、400ページ)。西尾鉄也の集大成「西尾鉄也画集」ネット書店、一般書店で9月26日発売! | WEBアニメスタイル
- 1999年7月2日-2001年3月30日。岡村天斎(第1期)/荒川真嗣(第2期)監督。西尾さんは原画(第2話など)、竹内さんはメタビー役。
- 2009年7月にパリで開催された「ジャパンエキスポ」ですね。
- 『ROAD TO NINJA -NARUTO THE MOVIE-』(2012年、伊達勇登監督)。
- 株式会社プロダクション・アイジー
- 小林常夫(こばやし・つねお)[1965年-2015年5月]。亜細亜堂所属。
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