ついに!ついに!ついにこの日がやってきた!!2009年7月に始まった「新文芸坐×アニメスタイルセレクション」が9年弱の時を経てついに記念すべき第100回を迎えました!!個人的に初めて参加したのは確か2011年9月のvol.18の『東のエデン』特集ですかねー。vol.47からはなんとか休まずに100回まで来ることができました(途中退席が2回にずっと寝てたのが1回)。このあたりは別の記事にまとめたいですね。「印象深かったアニメスタイルオールナイト10選」とか。

 さて、今回はゲストも上映作品も実にアニメスタイルっぽいセレクトで、まさにベスト・オブ・ベスト!客席も満席!めでたい!

 前回の「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.99 湯浅政明の長編アニメーション!」のレポートはこちら!

トークショー


!notice!

トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。

登壇者

片渕須直監督(今もっともホットなアニメーション映画監督!以下「」)

佐藤順一監督(新文芸坐では久々に拝見しました。以下「」)

小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「」))

新文芸坐・花俟さんによる前説

花 こんばんわ、新文芸坐の花俟です。私と小黒さんが並んでるショット珍しいんですけど、わかる人にはわかると思います。みなさんのおかげで100回まで行くことができました。

小 100回で終わるって話もありましたね(笑)新文芸坐さん的にはどうなんですか?

花 こっちのほうも順調で…(円マークのジェスチャー)。

小 いやらしいですねえ…(笑)

花 最初はわからないことだらけだったんですけど、最近は「コンテを切る」とか普通に使いますからね。今後ともよろしくお願いします。

『アリーテ姫』、まさかのフィルムブッキング?!

片 片渕です。よろしくおねがいします。

佐 佐藤順一です。よろしくおねがいします。

小 アニメスタイルの小黒です。定番ですが、観た人アンケート取ります。ユンカース初めての人ー?

(たくさん手が挙がる)

小 おー!ほとんど観てない!ネタバレできないですね。

 

小 昔作ったものが上映されるというのはどうですか?

佐 「ユンカース」は東京と大阪で一館ずつ一週間とかの上映だったのでありがたいですね。

片 『アリーテ姫』についてはどれくらい上映したかも覚えてないですね。舞台挨拶に行ったのは覚えてるんだけど…。

小 『迷宮物語』もお蔵入り状態から…最初は映画祭で、最初にVHSが出て、その後ロードショーでしたね。今日やる中で、大々的に上映したのは「ボビー」だけですね。アニメファンはあまり観てないかもれないけど。アニメスタイルオールナイトはアニメファンがあまり観ないものを選んだ感じですね。

片 さっき、立川で『アリーテ姫』やってたんですけど1シネマシティさんが「フィルムバッティング??」とか言ってて、誰もフィルムが2本あることを知らなかった(会場笑)

小 特撮とかだと、(フィルムが)地方に行って戻ってくると短くなってたりしましたね。

佐 「ユンカース」は何本あるんですか?

小 2本は無いでしょう…。

片 じゃあ、昔、下高井戸シネマ2でやっていたフィルムがかかるんですね。「『ユンカース・カム・ヒア』を観る会」3の。

小 片渕さんは「アリーテ」、「マイマイ」、「このせか」、とちゃんと上映の方までみていく方針がありますよね。

片 「『ユンカース・カム・ヒア』を観る会」で『アリーテ姫』を2回くらいかけてもらって、それ以来かもしれないですね。

小 『アリーテ姫』は製作中からプロデューサーが「自分が車で運んで上映会するんだ」という話がありましたよね4

片 あれは、車までは用意したんだけど、ブッキングどうするんだ、というところで止まってしまってで実現はしなかったんですよね。「マイマイ」がそれに近いですね。

「ものづくりをする根拠」としての『アリーテ姫』

小 『アリーテ姫』は相当前から準備されていたんですよね?

片 相当前から準備していて、お金が足りなくて、2000年の前くらいからですかね…。

小 原作はフェミニズム的な作品ですよね。

片 イギリスの出版社と途中で連絡が取れなくなっちゃって…。

小 原作はどうやって選んだんですか?

片 けっこう話題になってて、持ち込まれてきたんですけど、これなら女性監督ですか?ということだったんですが、田中プロデューサー5がこれは男性で!という話があって。

小 片渕さんはどういうアプローチをされたんですか?

片 何本分か話を考えてましたね。もう一本作れるくらい。

小 『アリーテ姫』というのは何をポイントにした構成になってるんでしょうか?

片 自分で、ものづくりしていく根拠のようなものを持ちたいという願いでやってました。けっこう切実でした。最初は『MEMORIES』6の手伝いから入って、日本アニメーションの『ちびまるこちゃん』、(マッドハウスの)『あずきちゃん』、『カードキャプターさくら』の絵コンテを連続してやってて、ちょっともう限界かもしれないという時に、田中Pのところに行ったら「じゃあアリーテ姫、資金集めて回すわ!」と。場数を踏んだ上でもう一回自分を振り返る作品ですね。

小 自分に向き合う作品ですよね。佐藤監督は『アリーテ姫』どうでした?

佐 DVD買いました!画の処理が「マイマイ」と同じですよね。

片 実は『アリーテ姫』はまだ影ついてないんですよ。1カット1カット色付けしてて、背景合わせで色付け。

佐 セルですか?

片 自分の中ではあそこからデジタルなんですよ。色が無限になって、最後まで色彩設計といろいろやってました。同じシーンでもワンカットごとに違います。

小 新作の時から古典的名作感ありましたよね。色、大事ですね。

なかなか終わらなかった『ユンカース・カム・ヒア』

小 『ユンカース・カム・ヒア』は「セーラームーン」7の途中から始めた作品ですよね。

佐 東映(アニメーション)にいながら外の仕事は禁止だったんですけど、出向という形で。

小 (「セーラームーン」の)24話8の絵コンテをやってから離脱ですよね。

佐 45話9のコンテで戻るけど、その時は『ユンカース・カム・ヒア』を並行してやってて。

小 「S」10で戻ってくるんですよね。

佐 その時まだ(「ユンカース」が)完成してないんですよ(笑)お父さんのキャストだけずっと決まらなくて。公開が明確でなかったからダビングもなかなか終わらなくて。

小 『ユンカース・カム・ヒア』はTVシリーズのスピンオフじゃない初めての作品でしたが、意気込みはどうでした?

佐 代表作になるようなものを、という気持ちでやってました。画の質感みたいなことはこだわっていこうと考えてましたね。

小 佐藤さん、こんなリアルなものも作るんだ、と驚きました。

佐 大きい画面で作るという経験があまりないのでよくわかってなくて、初号試写の時に庵野さん11が来て、帰り際に「劇場作品の画作りとは」という講義を始めて、最初に聞いておきたかった!(会場爆笑)

小 でも庵野さんの通りに作ったら『ユンカース・カム・ヒア』じゃなくなってハラハラするものになっちゃう(笑)さっき小松原さん12の話が出ましたけど、どういう経緯でああいうキャラクターになったんですか?

佐 色々描いてもらったんですけど、大平さん13のものがベースになってます。本当は原画で入ってほしかったんだけど、実家に帰っちゃってた時で…。

小 大平さんは写実志向ですよね。

佐 パイロット版は大平さんのテイストがすごく出てますけど、これで劇場一本作るのは無理!『ユンカース・カム・ヒア』の時は完全に実写というよりはもうちょっとドラマっぽい動きにしようと思っていました。

小 当時、漫画とリアルについて言われてましたよね。

佐 「実写でしたね」と言われてもあまり褒め言葉に感じなくて、単にロトスコープにすればいいんじゃなくて、漫画っぽい方が伝わることもあるので、その塩梅を探っているんですよね。

知らないうちに変わってる『この世界の片隅に』

小 (片渕監督に)佐藤さんの働きぶりはどうですか?

片 いわゆる漫符のようなものを始めてみたのが佐藤さんで、(それに比べて)自分はもっとリアルかな、と思っていたら『ちびまるこちゃん』をやることになって、佐藤さんを思い出したりしましたね。一つの流れを生み出した、というふうにみていました。

小 主には『きんぎょ注意報!』14

佐 あれは猫部ねこ先生の原作にもあるんですよ。

片 突然変異のように出てきて驚きました。

小 佐藤さんの漫符表現がどれくらいイケてたかというと、「エヴァンゲリオン」でも出てきますよね。
 佐藤さんと片渕さんは同じ大学なんですよね。

片 先輩後輩で、佐藤さんが3年で東映(動画)に行っちゃって、自分も3年でテレコム15に行くことになるんですけど、「お前はやめないでくれ!」と言われて。しかもどちらも池田ゼミ16。2年連続で学生が辞めちゃう、ということでテレコム行きながら大学行ってました。

小 お二人とも東映の血が濃い先生に習って、東映系に行く。

片 大学中はあまり意識しませんでしたね。月岡さん17が東映と虫プロの両方行ってましたし。だから東映とか虫プロとかあまり意識しなかったですね。

小 佐藤監督は片渕さんはどうですか?

佐 『この世界の片隅に』は衝撃でしたね。ここまで調べた、というところ(笑) バックボーンがあるから支える人もいるし、応援する人もいるし。

片 クラウドファウンディングのときに佐藤監督に大変応援してもらって、たいそう感動しました。

佐 公開した後も調べてるみたいだし、2020年版とか出せばいいのにとか思ってます。

片 こないだ、最後のロケハンを終えました(会場爆笑)

小 やっぱり(笑)!今度の全長版ではどんなところが変わるんですか?

片 電柱描き忘れてたりとか…(会場爆笑) 電柱だけ描いてはめ込んで…。

小 船の数とか…。

片 それはこの前のBlu-rayの時にやりました(会場爆笑)今上映しているやつは修正版です。最低でも2回は色々修正してしまったんですけど。こういうのやってもいいのかな。

小 音響は変わらないんですか?

片 そこはもう変えようがないですからね。

佐 でも直したいんでしょ?

片 全く無いというわけじゃないですけど…。それをやっちゃうと全部録り直しになっちゃうし…。

祝!寄せ書きパネル3枚目完成!

小 パネル今日で3枚目完成するんですけど、この場で書き込みしてもらいます!

片 さっき、押井監督が何個あるか数えてた。

小 一番いらしてますね〜。

片 もう描く場所がない…。前回どうして大きく描いてしまったのか…。本当にどっか小さく描くしかない…(会場笑)

アニメスタイルオールナイト、フォーエバー!

佐 作品って人の目に触れて初めて完成すると思うので、こういう機会はありがたいです。新文芸坐さんもアニメスタイルさんもありがとうごさいます。

小 いつか『魔法使いTai!』18オールナイトやりましょう!

片 「片渕さん、長編が2本しかないからオールナイトできないんだよ」と言われてて…。こういう場があるのはいいですね。これからもよろしくおねがいします。

小 これからもアニメスタイルオールナイトよろしくおねがいします!

上映作品

[cf_cinema post_id=3250 format=3 text=” ついこないだのレイトショーでかかったんだけど、なんとなくススーって流しちゃってたのでまた観れて嬉しい!前半2/3くらいと残りの部分で全くテイストが違うのが面白い。前半のポップな実験アニメっぽいパートも見応えありますけど(めちゃリアルな靴ワンカットとか)、やっぱメインは最後のバイク疾走っすよねー。あそこは何回観ても良い。結末わかってても身構えちゃう。ちゃんとボビーが一時停止してるのがつらい。確かにあまり観られてないだろうし、みんな観てほしいなー。”]

[cf_cinema post_id=8099 format=3 text=” なんか新文芸坐でばかり観てるような気がするんだけど、調べたら新文芸坐×アニメスタイルセレクションでは3回しかかかってないんですよね。意外と少ない。昔はなかむらさんの『工事中止命令』がサイコーって思ってたんですけど、何回も観るうちにりんたろう監督の『ラビリンス*ラビリントス』も味があるなあと思うようになってきました。定期的に観る機会があるのはいいですねー。いつももっと長いような気がしてるんだけど、実は3本合わせて50分しかないんすよね。コンパクトで良い。”]

[cf_cinema post_id=3244 format=3 text=” これこれ!今日のメインですよ!vol.70で観たきりでまた観たかったんですよね〜。色彩の優しさと日常芝居の細やかさがスンバラシイ!まさにベスト・オブ・ベストにふさわしい作品。個人的に好きなカットはお父さんへの手紙を書いて、めくって、また戻すところ。りんたろう監督の『メトロポリス』でもヒゲオヤジが同じような芝居してるんですけど、ああいう何気ない仕草にハッとさせられるんですよ。ちなみに場内爆笑だったのが圭介さんに婚約者がいると判明した時に文江さんがテンパるシーン。あのおばちゃんもいいキャラしてますよねー。今日来たお客さん、ほとんど未見の人だったっぽいんだけど、ファンになってほしいなあ。”]

[cf_cinema post_id=3246 format=3 text=” オールタイムマイベスト映画が100回記念のトリを飾るというめちゃくちゃ嬉しい展開!この映画も再評価されてほしいので狂ったように上映してほしいやつ。Blu-rayはまだか!だんだん認知度が高まってきたので、そろそろ出るんじゃないかと踏んでるんですが…。イギリス、フランスあたりだと買えるんだよなあ。新文芸坐でも何回も観てるんで特に改めての感想というのはないんだけど、今回気づいたのは王子たちが夜這いかけるシーンで遠くの空に人工衛星が写ってるとかその辺。あと、『この世界の片隅に』と同じように、この映画も「物語が一旦終わったあとも続いていく物語」なのではないかと思っているので、オールナイト100回記念のトリにはまさにふさわしい作品なんじゃないか、と思ったりもしました。レンタル無いからみんなDVD買って!!”]

写真など

まとめ

 100回記念ということで、場内満席、上映終わりには拍手もあり、おめでたい回でした!これまで企画を続けてきて頂いたアニメスタイルのスタッフの方々(特にアニメ様)と新文芸坐の皆様(特に良い王様)には感謝の気持ちしかございません。今後も(冠婚葬祭がかぶらない限りは)参加し続けるつもりですので、よろしくお願い申し上げます!


[cf_event]

関連リンク

■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/

■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/

NOTES

  1. ちょうどこのオールナイトの当日(2月24日)から立川シネマシティで「片渕須直監督特集」がスタート。『アリーテ姫』、『マイマイ新子と千年の魔法』、『この世界の片隅に』を週替りで上映。
  2. 世田谷にある名画座。結構歴史がある。
  3. 1998年から2006年ころまで活動していた(要出典)。一応検索するとサイトがヒットします(2番目にアニメスタイルの記事)。この会の活動の結果、ビデオが発売されるようになったとか。
  4. 『アリーテ姫』がらみのトークショーで何回か出てる話。4℃の田中栄子プロデューサーが自分でフィルムを運んで興行すると言っていたとか。
  5. スタジオ4℃を創立した田中栄子プロデューサー。アニメスタイルオールナイトにも一回いらっしゃってます。
  6. 『MEMORIES』(1995年、監督:大友克洋/森本晃司/岡村天斎)。『彼女の想いで』、『大砲の街』、『最臭兵器』の3話オムニバス映画。アニメスタイルでも結構かかってます。
  7. 『美少女戦士セーラームーン』(1992-93年)。
  8. 第24話「なるちゃん号泣! ネフライト愛の死」。
  9. 第45話「セーラー戦士死す! 悲壮なる最終戦」(最終1話前)。
  10. 『美少女戦士セーラームーンS』(1994-95年)。サトジュン監督は1話絵コンテから。
  11. 庵野秀明(1960年5月22日-)。別に書かなくてもいいと思うんだけど一応。ちなみに、「ユンカース」が公開された1995年はちょうど『新世紀エヴァンゲリオン』の放送年にあたる。
  12. 小松原一男(1943年12月24日-2000年3月24日)。TVアニメ初期から活躍してた敏腕アニメーター。Oh!プロダクションを設立した人。外注スタジオとして東映動画(現東映アニメーション)の作品を支えた功労者。「ユンカース」ではキャラクターデザイン・作画監督で参加。
  13. 大平晋也(1966年-)。規格外アニメーター。パイロットフィルムではキャラクターデザイン・作画監督・原画。なんか前回の湯浅監督特集でも大平さんの話題が出たなあ…。
  14. 『きんぎょ注意報!』(1991-92年)。シリーズディレクターが佐藤監督。サトジュンと言えばこれですよね。
  15. テレコム・アニメーションフィルム。トムス・エンタテインメント傘下。『NEMO/ニモ』制作のために作られたスタジオだが、最初に作ったのが宮崎監督の『ルパン三世カリオストロの城』。
  16. 池田宏(1934年8月10日-)。初期の東映動画を支えたレジェンド。『空飛ぶゆうれい船』(1969年)の演出(監督)など。
  17. 月岡貞夫(1939年5月15日-)。「みんなのうた」の『北風小僧の寒太郎』(1974年)を作った人。
  18. 『魔法使いTai!』(1996-97年:OVA、1999年:TVシリーズ)。