目次
今回はどういうコンセプトかわからない、という声が多かったのですが、一昨年辺りからやってる「スクリーンで見たい劇場アニメ」の流れですかね。前年に上映した質の高い劇場アニメ特集。今回は今年のも一個混じってますけど…。「ガルパン」が入ってたこともあり、チケット売り切れ!満員でした!
前回の「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.85押井守映画祭2016 第三夜 ケルベロス・サーガ+」レポートはこちら!
トークショー
!notice!
トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。
登壇者
原恵一監督(以下「原」)
福島祐一プロデューサー(以下「福」)
小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「小」))
新文芸坐・花俟さんによる前説
花 この企画が発表された途端に「抱き合わせだ」とか「適当だ」とか言われましたけど、ご覧のとおり満席でございます。ざまあみろという感じです(会場笑) この企画はアニメの面白さの土壌を広めたいと思ってやっています。今日のプログラムで、何か一つ心に引っかかるものがあればいいと思います。
最初から酔っ払ってる原監督!
小 今日のプログラムはどうですか?
福 自分が原さんの隣りに座ってるのが信じられないです。原さんがハイボールもってくるとは思わなくて…自分も飲んできたかった。
原 新文芸坐のオールナイトは一発入れてくるといいですよ…。
ところで、今回、ひどいよね。
小 水島さん1がここにいないことですか?
原 俺、水島さんの代わりなの?
小 ほんとのことを言うと、今回はプロデューサー特集にしようかと思ったんですけど、断られてしまって…。
原 俺に依頼があったのは先週の日曜日だよ!誰かの代わりなのかなって。
小 実は(「百日紅」の)松島プロデューサー1の代わりだった!
原 でも、小黒さんには恩があるからね。30年前にシンエイ動画1にいた時、アニメージュの編集部にいた小黒さんがはじめて俺を紹介してくれた。
小 86年の暮れですね。取材に行ったの。
原 あと、新文芸坐にも思い入れがあって、当時、ひばりヶ丘に住んでたんだけど、その時もこの場所に文芸坐があって、文芸坐が洋画専門、新文芸坐は邦画専門、あともうひとつあって、その時どれだけ映画を観たか!それがそのあと大変役に立った。だから、日曜に言われても来ましたよ。
プロデューサーのおしごと
福 歴史ある話のあとに申し訳ないんですけど、30年前は生まれてちょっとのことで…。
小 A-1にすごいプロデューサーがいると聞きまして…。
福 原さんの前でほんとやめてください(笑)。
小 作品はどうやって作っていくものなんでしょうか?
福 『同級生』の場合は監督、キャラクターデザイン、美術監督を中心にスタッフィングをして…1。
小 監督と作監の組み合わせを考えたりとか。
福 いろんな絵を見て、自分は絵を描かないので、感性でしかないんですけど、組み合わせを考えて発注していきます。
小 人柄も考えていきます?
福 怖いけどすごい人とかもいるんですけど、若い人が嫌厭してしまうこともあって…。
原 それは俺も同じですよ。いくら絵がうまくても、毎日の挨拶が出来ないやつはほんとダメ。
小 原さん、お酒入ってますね(笑)。
原 そんなの常識じゃん。アニメの現場って非常識じゃない。出社しても仕事してるんだかなんだかわからなくて、それで徹夜で大変って言われてもね…。だから事務所にはそういう機器がいっさい無いの。CDすらない。スタッフがどうやって仕事してるか見てるわけ。1ヶ月たっても全くカットが上がってない人がいたら注意するの。まずは制作に言って、それでも上がってこなかったら引き上げる。当たり前じゃん。
小 そういう人がいるんですね。
福 たまにいます。
小 どうするんですか?
福 言います(会場笑)。
小 スピードとクオリティって比例するんですか?早くて上手い人。
原 いますいます。……ほとんどいないけどね。「百日紅」だと、井上俊之さん2。井上さんが3人にいればアニメ映画ができます。ただし2年かかるけど。
小 そんな人います?
福 います。あまり会ったことないけど。
小 福島さんはこだわりのあるクリエイターさんと付き合うのは得意なんじゃないですか?
福 こだわりがあるというよりはその人により良いカットを上げてもらうためにパソコンを閉じたりとか、そうやってアニメを作ってます。
小 『同級生』の場合はどうでしたか?
福 60分で3人を中心として作っていたので、各セクション、キャラデザ、作画、美術の人たちと話し合って作っていきました。
小 「百日紅」はどうでした?
原 松島さんという30代の女性の方だったんですけど、この人が苦労人でね。中途入社だったんだけど、20代の貴重な7年間を『ももへの手紙』3に捧げて…でもそこで旦那さんを見つけたんだけど(笑)その人がスタッフィングをしてくれて、長年付き合ってるアニメーターを何人か入れてもらって、井上さんなんかも松島さんが声掛けてしてくれて…。世の中にこんなに上手いアニメーターがまだいるんだと驚きましたね。今、劇場アニメを任せられるアニメーター、50人…くらい?そういう人たちが日本のアニメ映画のここぞというところをやっている、そんな感じなんです。
小 松島さんは良くしてくれたわけですね。
原 (制作中に)自分にもいろいろ事件がありまして…。知りたい人は豪華版のDVDを買ってください(会場笑)
小 制作中に連絡したら、こんなに豪華な環境で仕事ができて、とおっしゃってましたね。
原 『カラフル』の松本憲生さん1が北斎のあの波の画1を描いてくれて…。ほんとすごかった。
小 (福島Pに)「百日紅」はご覧になりました?
福 ちょっと…まだ…。
原 ぜひ買ってください。俺も同級生観てないんだけど。
福 買ってくれとはいえないので、あとで…。
小 楽屋でデジタル化の話していましたけど、リテイクが簡単にできるのはどうですか?
原 簡単にリテイクできるので、ラッシュチェック観て修正しちゃう人もいます。やるところはやるという感じですね。俺はアナログからデジタルに移行するのを体験しているわけだけど、最近のアニメのラッシュチェックは異常ですよ。地獄です。ワンカットをループで繰り返し見て、スタッフがここ、ここって、で直したらまたここ、ってきりがない。
小 シリーズものでもそんなにやるんですか?
福 システムは同じなので、やる時もあります。
原 とはいえ完璧なものは作れないですからね。
小 プロデューサー的にはどうですか?
福 戻れないことが重要なわけですし(小 『ズートピア』とは違うわけですね)、問題でもあり、以前ではできなかったことでもあり、バランスが大事ですね。
原 いまはアニメファンの人が作品を観た感想がダイレクトにスタッフに来る。鬼の首を取ったようような書き込みをするやつがいるわけよ。でも、いいじゃん、そんなの。人が作ってんだよ。コンピューターが一から作ってるわけじゃないんだよ。なにを求めてるのかなー、って。全体を観て、ちょっと傷はあるわけよ。昔の日本映画とか観ても傷はあるわけだけど、全体を見ると映画を観た、という感動があるわけ。
福 その通りだと思います…。
女性スタッフはおしゃれで良く働く
小 今日の上映作品についてですけど、『同級生』はどんな作品でしたかね。適当な質問ですね(笑)
福 世に言うBLというジャンルで(小 原さんBL知ってます? 原 ボーイズラブ!知ってますよー)、原作ものです。ジャンルがどうとかではなく、良い現場を作って、良い作品を作ろうというのがコンセプトでした。
原 プロデューサーが目指すものってそれしかないと思いますよ。自分がその作品、スタッフに惚れて、仕事がしたいと思うわけですよ。監督からしたら。
福 常々、そういうのが目標で、売れたらそれは嬉しいけど、そこに至るまではなるべく良い環境で終えていくというのが目標でした。
小 『同級生』はスタッフが全員女性で彼だけ男性だったんですよ。
福 あと編集の西山さん1。
小 女性だらけの現場はどうでしたか?
福 えー、女性は怖い面もあると思うんですけど、この現場では無かったです。女性スタッフの方がこだわる力はありましたね。女性が集まって団結する場面もありましたし、女性強いなー、って思いました。
原 「百日紅」でIGと仕事したんだけど、女性が多いんですよね。で、女性はおしゃれなんですよ。シンエイ動画は男ばかりで、IGに来たら女性ばかりでびっくりしました。それもよく働くんだね。これが。
福 そうなんです。おしゃれでよく働くんです。
原監督「杉浦さんに胸を張れる映画を作った」
小 「百日紅」について。杉浦日向子さん原作ですけど、前からファンだったですよね?
原 大ファンです!ほんとに。『カラフル』をサンライズで作って、その後の企画がなかなか決まらなくて、どうしようと思ってた時に、IGの石川さん1が頭に浮かんだんです。IGは「しんちゃん」もやってたし、『エスパー魔美』のときにグロス担当してくれて、縁があったので、相談するなら石川さんかな~、ということで行ったんです。杉浦さんの別の原作を持って行って、こういうのを作りたいんだけど、と言ったら、「百日紅」の企画を前に上げたことがあったと言っていて、後日また行ったら「百日紅」やらないか、と言われて。ただ、短編連作だから映画にするのは難しいなあ、と思ってたんだけど、石川さんが「「百日紅」ならうちやるよ」と言われて「じゃ、やる」と。ただし、90分以内で予算がこれくらいで、と。
小 まあ、大長編じゃないよ、ということですね。手応えはどうですか?
原 出来上がった時は高揚感があったし、杉浦さんは亡くなっちゃってたから見せられないんだけど、墓参りも行ったし、墓前で「こんな作品を作った」と胸を張って言える作品になりました。
小 アニメスタイルでもショートインタビューしましたけど、原さんの作品の幅が広がった気がします。
原 そうですね。半年ほどスタジオに行けない時期があったんだけど、スタッフはちゃんとその間も仕事をしてくれていて、あたたかく迎えてくれて、完成した。興行的には…そんなに…だったけど…。
小 大ヒットではなかったですけど、海外では賞をいっぱい取ってるし。
原 フランスでは受けましたね。10月からアメリカでも公開が始まると聞きました。
小 エキゾチックな内容で海外で受けそうですね。
原 それは石川さんも考えていたと思いますよ。北斎と娘の物語ですけど、北斎は海外の何かのランキングで唯一入ってる日本人なんですよね。波の絵も世界的にも有名ですし。海外で紹介するアニメを作るというのは意識的にやっていましたね。
原監督は次回作準備中!
小 福島さんは今後どんな作品を作られますか?あと展示してある本の説明をお願いします。
福 ジャンルにこだわらず、何でもやってみたいと思っています。いろんな人とも仕事をしてみたいと思っています。『同級生』を観て良かったなあと思った方は、今、原画集とビジュアルブックを作っています。今日展示してますので是非見てみてください。
小 原さんは次回作はまだ発表できないと思いますけど、どんなものを…。
原 次の劇場作品を準備中です。今は月曜から金曜まで○○○○1に行って、○○○○1が監督やってるテレビシリーズの絵コンテを手伝ってます。けっこう特殊なことを題材にしているので、日常芝居なら描けますよ、ということでやってます。来年オンエアする予定ですけど。
小 いまのはオフレコでー。次(の劇場作品)はどんなものを?
原 「百日紅」作ってもう作りたいものないなー、と思ってたんだけど、急に頭の回路がおかしくなって作りたいものが何本も出てきたの。死ぬまでに作りきれるかな、というくらい出てきたの。
小 『河童のクゥと夏休み』4を観て、これが原さんの最後の作品だと思ってた。
原 俺も思った。今57歳だけど、70歳までにあと何本作れるか、と思ってる。
小 じゃあ、次の次の次くらいは福島さんプロデュースで…。
原 安く、安く上げるから!チェックも全然しないし。井上さんのが来たらノーチェック!
福 そのハードルがまず高いんですけど…(笑)
上映作品
[cf_cinema post_id=5390 format=3 text=” 評判良かったのに見逃していたのでありがたいです。二人の細やかな感情表現もさることながら、特に目を引くのが余白と漫画的表現。最初の草壁くんが廊下を駆けていくシーンで「おおっ!」ってなりましたね。ちょっとルパン三世っぽくて面白い。レイアウトがどれもいいですね。余白が美しい。原先が自分の咥えてる煙草を佐条くんの口の中に押し込むシーンとか好き。二人が嫉妬しあってるのが可愛いっすね。あと、ベロチューがエロいので確かにPG12も納得ですわ…。”] [cf_cinema post_id=3262 format=3 text=” 今回、改めて観て気づいたのが、音楽の素晴らしさ。特にお栄とお猶が雪の中出かけるエピソードの劇伴ほんといいですね。トークの方で「短編連作だから長編映画としては考えていなかった」と原監督がおっしゃってましたけど、確かに各エピソードのぶつ切り感は否めず…。ただ、キャラクターはそれほど多くないし、北斎とお猶の関係を軸にした話がメインなのでそれほどバラバラという感じはしませんね。見ようによってはただの非道な親父にも受け取られかねない北斎ですが、彼の抱いていた恐怖はとてもよくわかります。”] [cf_cinema post_id=2462 format=3 text=” 去年劇場で5回ほど観て、Blu-rayも週に1回流してるくらい大好きな作品ですが、やはり新文芸坐の大画面をみんなで観るという体験は非常に良いものですね。オールナイトの3本目は大抵皆さん眠りかけてるんですけど、そこかしこで笑いが起こっていていちファンとしてとても嬉しい気持ちになりました。「中身が無い」という意見をよく聞くのですが、確かにテーマはわかりづらいですよね。後半に出てくるCV平泉成のおじさんがポイントですね。それにしても、前半で細かなエピソードを重ね、後半は一気に突き進むというこの脚本が実に見事!”] [cf_cinema post_id=3740 format=3 text=” 前回は去年の暮にトーホー渋谷あたりで観たんですが、新文芸坐は音いいですね!爆音とまではいかないまでもかなり大きな音で、朝の5時にもかかわらず全く眠れませんでした。前半の親善試合のところ、こんなに長かったかなあ。で、その後にまだまだ本番が残ってるんだからすごい詰め込み具合!でも全然違和感がないという脅威の脚本。そして、各キャラクターの見せ場とアイデア満載の対大学選抜チーム戦。みんな何回も観に行くのがわかりますね。何回観ても飽きないもん。エンディングで各チームが地元に帰るシーンがもう素晴らしい。”]写真など
まとめ
前説で花俟さんも仰ってましたけど、今回はそれぞれが全く違うテイストの作品なので、観に来た人の裾野が広がったんじゃないかなあ。個人的には大好きな『花とアリス殺人事件』でみんな笑っていたのがすごく嬉しかったです。
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関連リンク
■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/
■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/
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