『デイドリームアワー』は『ダンジョン飯』公式同人誌みたいな本

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九井諒子先生の落書き集だけれども、とても豊かな一冊。オールカラーで紙の質も良く、これで2,000円しないのはお買い得すぎる。

基本的に連載が終わったばかりの『ダンジョン飯』のイラストやショート漫画がメインになっていて、眺めているともう一度あの世界に戻りたくなってくること必至。キャラクターや小道具、服の設定もあるのだけど、キャラ同士の服交換ネタや現代服バージョンのキャラクター集、裏話を描いたショート漫画なんかは作者公認の二次創作という趣がありめちゃくちゃ楽しい。

個人的に一番良かったのがクリスマス交換会で各キャラが何を持ってきてもらったものに対してどういう反応をするかを妄想した項。特にミスルン隊長が**を持ってこようとするが廃止されていたので**を持ってくるというくだりはいかにもやりそうで笑ってしまった。(作者だから当然なのだけど)キャラクターに対する解像度が高い!

『ダンジョン飯』を読み終わった後にすぐさま読みたい本ベスト1。

漫画史に残るパンダ:『望郷太郎』第10巻

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レース決着編だけど、この巻の主役はやはりパンダ。まあパンダ凶暴だけど、限度があるやろ~というレベルにデカすぎて凶暴すぎる。こんなヤバいパンダは漫画史上始めてなのでは?基本的に真面目な話なのに、パンダがデカすぎてそこだけB級映画的な感じになっていて面白すぎる。

太郎サイドの話でいうと、ついにガソリンを使うバイクが活躍するのが熱い。ちゃんと毛皮で隠してカモフラージュして運用するあたりが芸が細かくていい。パルとガラガラのレース最終盤で新しい武器として**が出てきてのも「おお!」と唸ってしまった。まあパンダには効かなかったんですが…。物語が進むに連れて新しいテクノロジーがアンロックされていくあたりはゲーム感があってこのへんも面白い。

橋本愛最高:『熱のあとに』

橋本愛の怪演…というべきか、とにかく演技がいい。彼女が演じた沙苗は「愛」に関する独自の哲学を持つある種エキセントリックな女性なのだけど、彼女の中では完全に論理的な異常行動を熱演していてかなり良い。というかこれはアレですね。アニメのような典型的表現から離れたやたらと解像度の高くリアリティのある「ヤンデレ」もの。プラネタリウムで淡々と独白するシーンがクライマックスなのだけど、ここがやたらといい。近くの席の女の子が「なんか怖いこと言ってる〜」とツッコミを入れるのだけど、これってあらゆる恋愛における客観的な視点なんじゃないかという気がする。

そして最後の「60秒」!ここがこの映画の最高到達点。緊張感を煽るシチュエーションもさることながら、見せ方がいい。ラストカットも最高。

映画『熱のあとに』公式サイト

北野武と押井守は似ているという話:『その男、凶暴につき』

新文芸坐の北野武特集にて。観るのはたぶん20年ぶりくらい。映画館では初見。

最近、北野武作品を再見していて思うのは、どことなく押井守っぽさがあるよな、ということなんですけど、このデビュー作を観て、なんとなく確信が深められた気がする。この作品を観ていて具体的に連想したのは『機動警察パトレイバー The Movie』、すなわちパト1なのだけど、中盤のヤク中の売人を追跡するくだりが、松井刑事が帆場の足取りを追って東京を彷徨うあたりとオーバーラップする。ある意味でこの映画も東京という都市が主人公のように感じた。北野武も「虚構」に近いもの(虚無とか)をテーマの一つにしているし、そのへんも押井守っぽい。

一つ、全く違う点を挙げるとするならやはりビートたけし演ずる暴力刑事・我妻の放つ強烈な存在感。他の武作品と同様にかなり狂った人物なのだけど、普段のおとなしさとのギャップがいい。犯人を轢いて止めようとするあたりとか「コワすぎ」シリーズの工藤Dを連想する。子供に間違えて拳銃の弾を当てて始末書を書いたエピソードで「だってわざとだもん」とかいうくだりとか、あー、これがビートたけしだよなあ、と思う。

あと岸辺一徳が若い!若いのにあの声だから老獪なたぬき感を醸し出してるのも面白い。

弐瓶勉風味ファンタジー:『タワーダンジョン』第1巻

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弐瓶勉先生の新作はまさかの剣と魔法と迷宮のファンタジーもの。…なのだけど、まあ弐瓶先生が普通のファンタジーを描くわけもなく。ダンジョンはお得意の巨大建造物だし、モンスターは独自解釈が強いし。スライムをあんな感じに描くのはさすがすぎる。モンスターもそうだけど、王国からの知らせを持ってきた存在があまりにも弐瓶勉で最高。ああいうのをサラッと出してくるのがいいよなあ。

それはそうと、この話、絶対SFになるでしょ。