やっぱり1ヶ月に1回の振り返りだと忘れてるし一回あたりが重いし、というわけで映画と本と映像コンテンツと美術その他諸々を一週間ごとに振り返りたいシリーズです。

コンセプトは「ゆるく」「ざつに」「てきとうに」。個人的な備忘録がてら、ゆるゆると続けたいと思います。

年末ですが、とりあえず第1回目。

「渡辺ブラザーズ」の新作を観る

MOOSIC LAB 2023」で大田原愚豚舎(渡辺ブラザーズ)の新作を観てきました。今年はスニークプレビュー(関係者以外への初上映)でしかも2本同時公開!という豪華さ。

1本目は『TECHNO BROTHERS』(テクノ・ブラザーズ)。なんと大田原愚豚舎初の全編カラー作品!これだけでも衝撃的なんですが、さらに劇映画的なストーリーがあるというのも割とレア。物語としては「テクノ・ブラザーズ」なる音楽家集団が東京を目指して栃木県大田原市をウロウロするというロードムービー(のような話)。音楽がテーマになっているところと東京を目指すというあたりは過去作の『地球はお祭り騒ぎ』を彷彿とさせるのですが、今作の特徴は大田原の市井の人々が大勢出ているという点。明らかに大田原らしからぬ雰囲気のテクノ・ブラザーズ一行が過剰な劇映画的な演技と先端的すぎる演奏で浮きまくっているのがとにかく楽しい。お気に入りのシーンは「紫塚地域市民音楽祭」の場面で、子どもたちのかわいすぎる演技やテクノ・ブラザーズの演奏を無表情に聞いている人々の反応が実にいい。ロケーションが大田原ばかりというのも地元映画として素晴らしいし、『あなたの微笑み』で出てきた蘭園が本当に出てきたり、いつもの喫茶店が出てきたりと、愚豚舎ファンにはたまらない映画となっております。黒崎さんの扱いはひどい。

もう1本は『生きているのはひまつぶし』と題された、タイトルからして挑発的な作品。上映前に監督自ら「この映画はやばいですよ!」と言っていた通り、冒頭から安倍晋三元首相の国会答弁が延々と流されたり、たしかにかなり異常な雰囲気。といっても今までの大田原愚豚舎作品でやばくなかった作品ってなかった気がするけど(笑) 主演と撮影が監督自身だったのでどういうこと??と思ったのですが、ほぼ定点カメラで撮っていて、上映後のトークショーで言われていたように、コロナ禍における純粋ドキュメンタリー、記録映画というテイストですね。基本モノクロで渡辺監督の部屋が映され、その合間に監督が絵を描く場面がカラーで映されるという構成なのですが、この監督が描いている絵がとてもいい。バスキア風で力強く荒々しい作風。監督自身「誰か買ってください!」って言ってたけど、額装されてどっかのサイトで売ったら売れるんじゃないかなー。自分もかなり欲しいものもあったし。映画の最後には1本目に上映された『TECHNO BROTHERS』のとある重要なシーンのメイキングが置かれていて、これがまた面白い。

ところで、『あなたの微笑み』の蘭園が出てくるのに元東京国際映画祭の矢田部さんが出てこないのは寂しいな…、と思っていたらトークショーのMCで登場して感激!特に今年は映画祭で矢田部さんのトークを聞けなかったので、このサプライズは本当に嬉しかったです。

 

週末は原恵一監督の新作『かがみの孤城』を。あまり期待してなかったのだけど、これが年間ベスト級の素晴らしさ!

魅力的なポイントはいくつかあるのですが、やはり第一に挙げたいのは演出。パンフで監督自身言ってるように、複雑な中学生の内面を描いた過去作の『カラフル』に近い設定なんですが、7人の中学生たちのそれぞれ違ったトラウマを描写していく手つきの繊細さはこの辺に由来している気がします。原監督の持ち味だなあ、と。

ファンタジーではあるのですが、「パラレルワールド」という単語が飛び出してくる中盤からのSF風味も予想外で、さらにそこから二転三転する展開と伏線の回収がかなり良かったです。個人的に伏線回収はあまり評価しないのですが、これはなんというかしっくりくる感じでした。それとなくヒントが散りばめられているのも楽しいポイント。ルーズソックスとか。

井上俊之さん&松本憲生さんというレジェンドアニメーターが参加してるのも作画ファン的にはサプライズで嬉しい。井上さんはクライマックスのこころとアキ(+みんな)のシーン、松本さんはオオカミのシーンとのこと(パンフレットより)。全体的に作画が良かったんですが、個人的に印象に残ったのは、こころが城に着いてオオカミ様に引きずられていくカットと後半にある割れた鏡を足で避けるちょっとした芝居の場面。

キャラクターデザインが「ここさけ」っぽかったんでてっきり田中(将賀)さんだと思って観てたんですが(制作A-1だし)、佐々木啓悟さんでした。このキャラデザもとても好みですね。

あとマサムネの「真実はいつも一つ!」はずるい。コナンの配給東宝なのによく出来たなー(本作は松竹の配給)。

小川哲『地図と拳』の奇想

直木賞の候補にもなっている小川哲先生の話題作『地図と拳』を読了。物理本は異常に分厚くてやや尻込みする感じですが、中身は600ページ強で、かつバリバリのエンターテインメントなので本当にあっという間に読めます。

一言で言ってしまえば「満州の架空の都市を舞台にした50年にわたる群像劇」で、「架空の都市」というあたりからカルヴィーノの『見えない都市』を想像していたのですが、紐を解いてみれば人間ドラマのほうが圧倒的に重く、ソローキンの『図書館大戦争』を連想させる奇想と運命と殺戮と人生の物語でありました。

とにかく物語の密度に圧倒されるのですが、それを支えているのが膨大な数の登場人物たち。文字通りの主人公たちから数節で命を落とす端役まで、あたかも実際に生きていたかのようなリアリティがあります。まあ明男の絶対温感とか李大綱の千里眼とか細川の主人公属性とかはそこはかとなく異能力バトルもの感があり、そこもまた善し。

この群像劇の人々を枝葉として、仙桃城(李家鎮)という都市もまた一人の登場人物だったのだということがわかるエピローグもまた素晴らしい。諸行無常の響きあり。

 

藤津亮太『増補改訂版「アニメ評論家」宣言』。増補改訂する前のバージョンを読んだつもりだったんですが、普通に未読でした…。2000年代前半くらいまでの藤津先生の評論まとめ+α。

『ルパン三世 カリオストロの城』の魅力を独自の視点から分析する冒頭の「パラシュートの白い寂しさ 『ルパン三世 カリオストロの城』」、押井守の作品における「乗り物」の役割に着目した「スクリーンプロセスの彼方へ 『紅い眼鏡』『ケルベロス―地獄の番犬』『トーキング・ヘッド』」「世界と向き合う三つの手段 ―― 押井守のアニメーション 『GHOST IN THE SHELL/ 攻殻機動隊』」、そして巻末の書き下ろし「アニメ評論は難しい」が良かったです。

特に「アニメ評論は難しい」は藤津亮太という「アニメ評論家」のスタンス、現在のアニメ評論が抱える問題が適切にまとめられている好文。

 

『旋舞の千年都市』ぶりのイアン・マクドナルドの新刊『時ありて』は時を超えるカップルをめぐる魅力的なミステリーノヴェラ。こう書くとやや安っぽい気がするけど、「夢と現実」ならぬ「過去と未来」がぐちゃぐちゃになってよくわからなくなる混沌さが魅力的です。古書をめぐる物語でもあって、なるほど最後はそうくるか、と物理本マニアなら感慨深くなること必至。ノヴェラなのでサッと読めるのもいいですね。

 

和山やま先生の『女の園の星』第3巻。相変わらず静かに異常な面白さ。こもりん(古森さん)の三者面談の話だけでお値段以上。マストバイ。

 

映画あるある掌編コメディ、茶んた『死亡フラグに気をつけろ!』第3巻。これで終わりなのは寂しいけど、これくらいの分量がちょうどいいような気もしますし、人にも勧めやすいんだよなー。第28話「破壊に気をつけろ!」に出てくるなんでもハンマーで破壊しようとするマ・ドンソクみたいなおっさんと第33話「話し合いに気をつけろ!」のサイボーグ村長が良かったです。最終話のメタ展開としんみりさせる雰囲気も良すぎ。ちょっと『さよなら絵梨』を思い出した。

茶んた先生、キャラの魅力もそうだけど、短い尺で予想外の展開を作れるストーリーテラーだと思うので新作も期待してます。

最終回ラッシュ

冬の新作アニメが最終回ラッシュに突入。配信メインで観ているので、今週はとりあえず『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』と『モブサイコ100Ⅲ』を。

 

Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』最終話、すてっぷ⑫「DIYって、どんなときも・いつまでも・ゆうじょう!」。ツリーハウスの完成とジョブ子の出立、そしてせるふとぷりんの共同作業。このせるふとぷりんが「あるもの」を二人で作るシーンがめちゃくちゃエモいんですよね。シリーズを通して構成が巧みで作画も安定していたオリジナルシリーズ、これで終わっちゃうのはちょっともったいない気がします。

 

モブサイコ100Ⅲ』最終話、#12「告白 〜これから〜」とにかく作画が異常なレベル。Aパートのモブに追い縋っていく霊幻師匠の一連のカットの躍動感とスピード感、『スペース☆ダンディ』第1話のBahiさんのカットを思い出す感じ。ていうか総じて師匠が格好良すぎる。モブに告白するシーンとかの表情とかもね…。つぼみちゃんに告白した後のモブの泣き顔とかラストの笑顔のカットもすごい…。3期分の総締めとしてふさわしい出来でした。「話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」には#9「通信中② 〜未知との遭遇〜」を選ぼうと思ってたんですが、さすがにこっちかなあ。

 

さて、今年は「話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」に参加しようと思い、駆け込みで今年の話題作を観ています。今週は『明日ちゃんのセーラー服』全12話を。

特に尖ったところはない作品ですが、総じてレベルが高く、特に第1話Bパートの学校帰りのシーンなどは異常に高密度な作画で印象に残ります。というか「尖ったところがない」というのも当世では割と尖ってるような気もする。

主要キャラクターが全員クラスメートで、彼女らに一人ずつスポットを当てていくというコンセプトも面白いですね。個人的に印象深かかったのは生物部の大熊さんで、癖っ毛といい口調といい、なんというかまんま秋山殿なんですよね…。秋山殿→大熊さん→スレッタヌキみたいな系譜ができそう。

安バッグを直す

ZOZO USEDで古着を買うのが楽しい。古着のいいところはざっくり言うと ①安い ②どれでも即日配送可能 ③タグがついてない(重要)。①の「安い」はまあ当然だしどうでもいいんですが、②と③は重要で特に個人的には③の「タグがついてない」はかなり重要。タグ外すのが地味にすごくペインなんですよね。こういう「地味なペイン」を潰していくとQOLが上がっていい感じ。

で、今月も安い服飾品のさらに安い古着を買い漁ってたんですが、ついにハズレを引いてしまいました…。コンディションBだから安心してたんですが、これは単純に見落としですかね?肩紐がまさに紐一本で繋がってる状態…。

で、元値も安い合成皮革の製品を修理に出すのもバカバカしいので自分で無理やり修理してみました。

まずは死にかけの肩紐を思い切って根本から切断。

ベルトに穴をあけるやつで開通。

安い丸型カラビナで無理やり接続。

完成。まあ安いバッグだしこんなんでいいでしょ。ヨシ!

今週のおやつ「七種餅」by HIGASHIYA GINZA

シュトーレンもケーキも買い忘れていたので(まあ毎年)、クリスマスにはHIGASHIYA GINZAの季節限定商品である「七種餅(ななくさもち)」を。この量で2,000円超えは正直厳しいものがありますけど、まあクリスマスケーキの代わりみたいなものですので…。いや普通に高いわ。

よくあるわらび餅のパチモンみたいなやつかと思ってたんですが、かなり独特のもっちり感と不思議な風味。七種とあるように、「米、麦、粟、黍、稗、小豆、胡麻」の7つの穀物を使っていて、なるほどこの辺のレア穀物使ってたら高くもなりますよね…。粟とか黍とか、クリスマスに食うもんじゃないな…。江戸時代の農民感ある

正直、まあ美味しいか美味しくないかで言うと美味よりの普通なんですが、現代社会で食べるものとは違ったレア感があるので一回食べてみると面白いと思います。パッケが縁起物感あるし、一人で食べるのはやや多いので、手土産にちょうど良さそう。1月上旬までです。