はじめに

 米魂2日目は由緒正しい企画「サイバーパンクの部屋」へ。今年で14回目だそうです。ゲストは藤井太洋先生。藤井先生ばかり見てる大会だなあ。あ、上の写真を見て頂ければおわかりかと思いますが、パネリストは全員サングラス着用です。サイバーパンクっぽいから。そして、観客もサングラス着用です(ほんとです)。筋金入りって感じだ。

トークセッション

!notice!

トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。

登壇者

巽孝之先生

小谷真理先生

菊地誠先生

とりにてぃ先生

藤井太洋先生(ゲスト)

パネリスト自己紹介

菊地真先生

■ 最近サイバーパンク活動をしていない。

■ ギブスンとディックがあれば生きていける。

■ 「ブレードランナー4」1を翻訳して欲しい!

■ ジーター2の『ブレードランナー2』、『ブレードランナー3』再評価活動。映画のブレードランナーの続編にあたる。レプリカントの数の矛盾を巡る話3。(映画の)ファイナルカットでは修正されてしまったので、もはや何の続編でもない続編というところに惹かれる。

小谷真理先生

■ 「マトリックス」の1と2はGOTHだけど、3はGOTHじゃない。(菊 3は海底軍艦みたいな話だよね(笑))

■ モラルの問題が歴史改変ものにつながる。

■ 80年台の半ばに歴史改変についてのモラルが適当になる(ex.『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)。SFがファンタジーになるかどうかという危機。

■ テッド・チャン4「スチームパンクはファッションだね」と言われる。

■ 今ホットな作品は『マッドマックス 怒りのデスロード』5

巽孝之先生

■ ギブスン6が新たな3部作を書きったのでまとめた7

■ ゼロ年代のギブスンは普通小説的なところが特徴。

■ 『The Peripheral(ペリフェラル)』8はギブスン初の時間SF。『ミラーグラスのモーツァルト』9にインスパイアされた作品。2030年台から2090年台へ時間移動する。時間移動の方法論がサイバー空間を使うというもの。ポストアポカリプス後の世界が舞台で、ロンドンはヴィクトリア朝のものとして保存されている。

■ サイバーパンク第一世代唯一の女性作家であるパット・カディガン10と藤井太洋先生が祖母と孫の関係になった!

(ゲスト)藤井太洋(サイバーパンクの孫)

■ 『ジーンマッパー』はサイバーパンクです!

■ ニック「サイバーパンクだけど米なんだ!」11

■ 「サイバーパンクはマージナルを求める」

菊 サイバーパンクにはコンピューターも必要ない。アティチュードでありスタイルだ。バチガルピ12はゼンマイパンク。

サイバーパンク最前線

『マッド・マックス 怒りのデスロード』のサイバーパンク的見方

■ 『マッド・マックス 怒りのデスロード』は体育会系サイバーパンクだ!

■ サイバーパンクの身体改造が源流にあるフィリオサ13

■ 社会や女性のステレオタイプを打ち砕くシーンが多く描かれる。初期のサイバーパンクに近い。

菊 ヒューマニズムを捨てたのがサイバーパンクの一つの特徴。

藤 モラルの変化は文学が担うべきトピックで、それをサイバーパンクでやるという意義。『アンダーグラウンドマーケット』14は主人公の武器がモラルという設定。今までない設定をエンタメ小説でやってみようという意味でアンチテーゼではあります。

巽 追手15の動きの美しさは暗黒舞踏やシルク・ドゥ・ソレイユを連想させる。優雅。暗黒舞踏は日本のサイバーパンク。ブロムカンプ16は『第9地区』が素晴らしい。『チャッピー』もパンクな人物が登場する。『第9地区』は塚本的で、ローテク的サイバーパンク。

藤 ありあわせのものを組み合わせていくのはエンジニアで言うハッキング。

藤井太洋特集

■ ワールドコン17で『ジーン・マッパー』の朗読をした。

■ ワールドコンの「セルプパブリッシングの部屋」。携帯電話で執筆している話で大受け。

■ あちらではサイバーパンクと言うと反応が違う。サブジャンルがきちんとしている。

『ディファレンスエンジン』18はスチームパンクかサイバーパンクか問題

小 あれは分岐点のようなもの。

菊 ヴィクトリア朝でもサイバーパンクは書けるということを示したことが重要。

菊 サイバーパンクの中にSFがある、ということでいいんじゃないか。

菊 ギブスンの『パターン・レコグニション(Pattern Recognition)』はサイバーパンクだけどSFじゃない

菊 『スロー・リバー』19はサイバーパンクだけどSFか?

小 『トーマの心臓』20はSFです。トーマの心臓のSF性とはなにかと考えた時に、「異世界としてのギムナジウム」が出てくる。キリスト教的な世界をベースにした時点でSF。

菊 極論するとバチガルピはSFではない、でもサイバーパンク

藤 最新作の『ウォーターナイフ』21もSFかというと疑問符を付けたくなる。そのシチュエーションをを作り上げたことをSFかというとそうだけど…。版元も宣伝もSFとは銘打ってないんですよね。

巽 『シップブレイカー』22の頃からそうだよね。

藤 でもサイバーパンクではあると。

菊 ニコラ・グリフィス23(の『スロー・バード』)は下水道ハードSFだけど、SFじゃないのかも…。SFの部分よりは、普通小説の方が多い。背景はSFだけど。

サイバーパンクな小ネタ

■ オキュラスかっこい!

■ 日本橋のライオン24がサイバー化してる!

■ マツコロイドの件25

まとめ

 あんまりメモできなかったんですけど、終始まったりとした雰囲気で、その点はサイバーパンクっぽくはなかった笑 SF初心者にも優しげ。そして、「サイバーパンクだけどSFじゃない」という事実の衝撃!うーん、SFは奥が深い…。

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■トップページ|第54回日本SF大会 米魂 2015.8.29-30 (現在は閲覧不能)

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NOTES

  1. 『Blade Runner 4: Eye and Talon』(2000年、本邦未訳)。作者はK.W.ジーター。
  2. K.W.ジーター((Kevin Wayne Jeter)[1950年-]。アメリカの作家さん。個人的には『ドクター・アダー』が印象深いです。あれもサイバーパンクですね。
  3. 6人目のレプリカントはどこに行ったのか?問題。詳しくはウィキでどうぞ。
  4. テッド・チャン(Ted Chiang、姜峯楠)[1967年10月20日-]。アメリカの中国系SF作家。『あなたの人生の物語』が珠玉。映画化進行中らしいですね。
  5. 2015年、ジョージ・ミラー監督。一部で熱狂的に受けた傑作。サイバーパンク感もそうですが、数カットだけ出てくる水耕栽培のシーンにSF魂を感じました。
  6. ウィリアム・ギブスン(William Ford Gibson)[1948年3月17日-]。『ニューロマンサー』の人であり『ディファレンス・エンジン』(ブルース・スターリングとの共作)の人。
  7. 『パターン・レコグニション』(2003年)、『スプーク・カントリー』(2007年)、『Zero History』(2010年)の「Blue Ant Trilogy」。『Zero History』は本邦未訳。
  8. 2014年。
  9. ブルース・スターリングとルイス・シャイナーの合作。スターリング編纂のアンソロジー『ミラーシェード サイバーパンク・アンソロジー』(1988年、早川書房)に所収。
  10. パット・カディガン(Pat Cadigan)[1953年9月10日-]。「SFマガジン 2014年3月号」にヒューゴー賞中編小説部門受賞の「スシになろうとした女(The Girl-Thing Who Went Out for Sushi)」が掲載されてます。
  11. すみません、どんな話だったかメモしそこねました!
  12. パオロ・バチガルピ(Paolo Bacigalupi)[1972年-]。2009年の『ねじまき少女』は石油が枯渇した世界で使役動物が巻いたゼンマイを動力にするというまさにゼンマイ・パンク!
  13. シャーリーズ・セロンがかっこかわいすぎる。
  14. 『ジーン・マッパー』『オービタル・クラウド』に続く藤井先生の長編第三作。
  15. イモータン・ジョー率いるシタデル砦の面々。ドーフ・ウォーリアーとかカッコいいよね。
  16. ニーム・ブロムカンプ(Neill Blomkamp)[1979年9月17日-]。出身地である南アフリカ共和国を舞台にしたSF作品を撮る映画監督。『第9地区』『エリジウム』、直近だと『チャッピー』。
  17. 2015年にワシントン州スポケーンで開催されたワールドコン73かな?
  18. ”The Difference Engine”。1990年。ギブスンとスターリングによる共著。機械式コンピュータが普及した異形のロンドンを舞台にした歴史改変SFの傑作。後半眠くなる。
  19. ニコラ・グリフィスの1995年の作品。ネビュラ賞受賞作品。
  20. 萩尾望都先生の名作。1974年くらい。ドイツのギムナジウムを舞台にした物語。
  21. 2015年に『神の水』の邦題で早川書房より出版。水資源の枯渇した近未来のアメリカを舞台に各都市の小競り合いを描く。違うか。
  22. バチガルピの2010年の作品。ラノベっぽい。『ねじまき少女』と同系列の資源の枯渇した世界でボーイ・ミーツ・ガール!読みやすいよ!
  23. ニコラ・グリフィス(Nicola Griffith)[1960年9月30日-]。イギリスのSF作家。邦訳されてるのは『スロー・リバー』くらいかな?
  24. 三越の前にいるやつ。
  25. 2015年の4月から9月にかけて放映された「マツコとマツコ」に出演していた石黒教授製作のマツコ・デラックスそっくりのアンドロイド。こわい。