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【映画批評】『スウィート17モンスター』:こじらせ陰キャ女子のための青春冒険譚【ネタバレなし】

      2017/09/19


 控えめに言って、この世界は不平等だ。金持ちもいれば貧困に喘ぐ人がいて、寂しい独り身の人と対になるように愛を語らう恋人たちがいる。全てを持って生まれた人々がいるかと思えば、何も持てない人々も同じ世界に暮らしている。隣の芝生は青く見えるとは言うけれど、自らが不遇であると感じたことが無い人はいないのではないだろうか。勝ち組と負け組という二元論、それがこの世界のルールの一つだ。

 さて、この映画の主人公ネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)はその負け組の側にいる。取り立てて目立つ美人でもなく、頭も別によくないし、スクールカースト下の方。父親は幼い頃に目の前で死に別れ、未亡人となった母親(キーラ・セジウィック)は行きつけの歯医者と懇ろになっている。アニメ『おジャ魔女どれみ』の主人公・春風どれみは事あるごとに「あたしって世界一不幸な美少女〜」と嘆いていたが、ちょうどそんな感じだ。そして、ネイディーンがとりわけこの世界に腹を立てているのは兄であるダリアン(ブレイク・ジェナー)の存在だ。同じ父と母であるにも関わらず、ダリアンは完全に勝ち組。がっしりした身体に爽やかな笑顔、学校に行けば友人たちと群れをなしているスクールカースト上位の存在。同じ家庭に生まれたのにどうしてこうも差がついてしまったのか。ネイディーンの悩みはそれだ。

 そんなネイディーンのたった一人の親友は同じく冴えない仲間のクリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)。ところが、彼女があろうことかダリアンと恋仲になってしまい、ネイディーンは孤立してしまう…。今まで通りの付き合いを続けたいクリスタにつれられてリア充パーティーに行ってみたりもするものの、案の定一人ぼっちになってしまい、孤独感は増すばかり。クラスメイトのアーウィン(ヘイデン・ゼトー)はいい人だし家も金持ちだけど映画作りとかいう暗ーい趣味だしなんかイケてない…。そして、唯一の親友とも絶交してしまった彼女は、前から想いを寄せていた男にビッチなメールをご送信してしまうのだが…。このあたりの一連の彼女の転落ぶり、孤立して暴走していく様子の描き方は実に瑞々しく魅力的だ。誰もが自分の胸に手を当てて記憶を辿ってしまうような生々しさと痛々しさに溢れている。

 この映画の軸となるのは「勝ち組vs負け組」という対立構造だが、そこに別な要素として絡みついてくるのが教師のブルーナー(ウディ・ハレルソン)だ。劇中、ネイディーンが彼の元を頻繁に訪れるのは、授業の質問をするとか話し相手になってもらおうとか、そういったことではない。彼女はこの頭の禿げ上がった薄給の、人生を諦めているかのような孤独な男を蔑みに来ているのだ。負け組の、さらに負け組というレッテルを貼ったこの初老の教師に、ネイディーンは助けを求める。そしてブルーナーの家に迎え入れられた時、ネイディーンは自分の過ちに気付くのだった。そして、勝ち組である兄の抱える悩みも。勝ち組も負け組もみんながみんな悩んでいて、そして幸せを持っている。「世界で自分だけが不幸」と思い込んでいた少女の価値観が鮮やかに書き換えられていく。『スウィート17モンスター』は一人の少女の成長と目覚めを通して、「勝ち組と負け組」という現代に蔓延る二元論を軽やかに乗り越えていく物語だ。

予告編

基本情報

スウィート17モンスター  The Edge of Seventeen104 min

監督:ケリー・フレモン・クレイグ

音楽:アトリ・オーバーソン

脚本:ケリー・フレモン・クレイグ

撮影:ダグ・エメット

出演:ヘイリー・スタインフェルド/ウッディ・ハレルソン/キーラ・セジウィック/ブレイク・ジェナー/ヘイリー・ルー・リチャードソン/ヘイデン・ゼトー

公式サイトhttp://www.sweet17monster.com/

公式Twitterhttps://twitter.com/Sweet17Monster

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