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映画『スーサイド・スクワッド』レビュー:ハーレクインがかわいいから良し!【ネタバレなし】

      2017/09/12



あらすじ

 特殊な技能1を持つデッドショット(ウィル・スミス)ら6人の凶悪(?)犯罪者たちは政府の秘密刑務所2に収監されていた。彼らの持つ能力に目をつけた政府組織A.R.G.U.Sの長官ウォーラー(ヴィオラ・ディヴィス)は、スーパーマン後のメタヒューマンとの戦いにその人的資源を活用することを思いつき、特殊部隊「タスクフォースX」を結成。折しも、部隊に(強制)参加予定だった古代の魔女・エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)が暴走し、ミッドウェイ・シティが危機に陥る。果たして即席クソ野郎部隊「スーサイド・スクワッド」3は事態を収拾できるのか…!

「全員悪人」…じゃない…。

 看板に偽りあり、と言い切ってしまっていいものか悩むのだけれども、正直ちょっと拍子抜けしてしまったのは事実だ。「ヴィラン達が共闘して悪を倒す」というコンセプトだけが頭に残っていたので、もっとこう『アウトレイジ』的なものを想像していたのだけど。

 仮にも「極悪人部隊」を銘打つくらいなら、出会い頭に女子供であろうとも頭を撃ち抜くくらいの凶悪さが欲しかったというのが本当のところ。デッドショットは娘思いの職業ヒットマン(女子供は殺さないぜ!)だし、火力最強のエル・ディアボロ(ジェイ・ヘルナンデス)は望まない能力で家族を失ったかわいそうなチンピラ、キラー・クロック(アドウェール・アキノエ=アグバエ)なんてワニっぽいから下水道で暮らしたかっただけのマイノリティ4。この映画で本当にヤバイやつって実はハーレイ・クイン(マーゴット・ロビーちゃんかわいい!)くらいで、それにしたってせいぜい無人の街でショーウインドウからアクセサリーを強奪する程度のことで、正直ぬるすぎる。まあ首に爆弾が入ってるから仲間の兵士たちを惨殺するのは無理にしても、回想シーン(ジョーカーとのドライブ♥)では『デスレース2000』さながら老人や障害者を轢き殺すくらいのことはやっても良かったのではなかろうか。とはいえ、それをやるとこの物語の本当の「悪」が見えなくなってくるので難しいところだとは思うけれども。

 それから、大ボスのエンチャントレスに対抗できるやつがほとんどいない。というかいない。バットマンも特殊能力はなかったけど、金はあったもんね。部隊の中で特殊能力といえるレベルってディアボロくらいで、クライマックスのアクションシーンは彼が大活躍!でも、ハーレイ・クインなんか金属バットですら無い木製バットだし(でも強い)。遠距離戦が強いようなきがするデッドショットはなぜか接近戦で戦う。まああのシーンはカッコいいんだけど。ブーメランおじさんことキャプテン・ブーメラン、あんなんでフラッシュと戦えるのか?部隊のお目付け役の最強の軍人フラッグ大佐(ジョエル・キナマン)なんてしょっちゅう捕まってるし…。ピーチ姫かよ。

どうして彼らは戦うのか

 彼らが戦いに身を投じるのは、もちろん直接的には首元に爆弾を埋め込まれているからだが、それだけでは説明のつかない部分もある。物語の後半、彼らを縛っていた爆弾の起爆装置が外れるが、それでもなお、彼らはエンチャントレスを倒そうと奮闘する。彼らを動かしていたのは一体何なのだろう。

 例えば、それは「共通の敵」の出現によるフラッグとの仲間意識の醸成であったり、とりあえずヤバいやつがいるから倒そうということでもあるのかもしれないが、しかしより根本的には、これは自由を求める戦いだ。そしてその目的が達成されることはない。ブーメランはウォーラーに問う。「終身刑を何回も食らってるのに、どれだけ戦えば自由になるんだ?」。無駄と知りつつも自由を求めて戦う彼らの姿は、ヒロイックでもあるけれども、よりささやかなしあわせを手に入れようとする打算的な一面も垣間見える。例えば、獄中でケーブルテレビを観たい、とか。

 ともあれ、いくら足掻こうとも彼らの罪が根本的に消えることはない、という現実が突きつけられているのだけれど、このあたりはデビッド・エアー監督の前作である『フューリー』におけるキリスト教的な運命論のようなものが感じられる。エンチャントレスとの戦いの中で、「もしかしたらあったかもしれない普通のしあわせな生活」という幻惑に惑わされる仲間たちに向かって、ディアボロは叫ぶ。「過去は戻ってこないんだ!みんな目を覚ませ!」

本当に悪いのは誰なんですか?

 この物語は絶対的な悪であるエンチャントレスと制御された悪であるスーサイド・スクワッドが戦うという、一見すると単純な二項対立の映画である。しかし、物語の中盤、もう一つの悪というべき存在が登場する。中盤以降、正義の親玉のような存在であったウォーラーは「暴走した正義」しての本性を明らかにする。この辺りの転調はかなり衝撃的で、そしてスマートだ。悪役たちがそれほど悪くないという伏線はここにきて活きてくる。正義と悪が逆転する。絶対的な悪と暴走する正義という悪はあたかも神話の世界であり、そしてその間に挟まれたスーサイド・スクワッドは悪ではあるけれども、彼らに翻弄されるか弱い人間的な存在だ。

 暴走する正義であるウォーラーは現代アメリカの象徴としても取れるだろう。そして、完全な制御下に置かれていた、と思われていたエンチャントレスが暴走し、かつての雇い主に牙をむくというプロットは、あたかも9.11前夜のアメリカ政府とアルカイダの関係を思わせる。ベタな言い方だけれども、そういった意味ではこの映画も「9.11」以後の映画であることを意識して作られている。DCシリーズでは前作に当たる『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』がそうであったように。

予告編

基本情報

スーサイド・スクワッド  Suicide Squad123 min

監督:デビッド・エアー

音楽:スティーブン・プライス

脚本:デビッド・エアー

撮影:ロマン・バシャノフ

出演:ウィル・スミス/ジャレッド・レト/マーゴット・ロビー/ジョエル・キナマン/ビオラ・デイビス/ジェイ・コートニー/ジェイ・ヘルナンデス/アドウェール・アキノエ=アグバエ/アイク・バリンホルツ/スコット・イーストウッド/カーラ・デルビーニュ/アダム・ビーチ/福原かれん/コモン/シェイリン・ピエール=ディクソン

公式サイトhttp://wwws.warnerbros.co.jp/suicidesquad/index.html

公式Twitterhttps://twitter.com/suicidesquadjp

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NOTES

  1. といっても次に書くように幅がありすぎる…。
  2. 秘密刑務所の割にはジョーカーに襲撃されたりするのな。
  3. 直訳は「自殺分隊」って意味だけど、邦題つけるなら『自殺突撃隊』とか…かな。
  4. たぶん人殺したりしてるんだろうけど、それならそれでちゃんと描写はして欲しい。

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