おひるねラジーズ

毎日を、楽しく生きる

*


【映画レビュー】『トータスの旅』

      2017/06/02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ひりひりとする死と再生の旅

 観る者の胃をキリキリと軋ませるかのようなロードムービーである。

 そもそも、ロードムービーであるからして、なんらかの事情を抱えた多種多様な人々が一緒くたになって旅をする中で、次第に融和していくというのが基本的な流れであると思うのだけれども、この映画に登場する人々の奏でる不協和音は、観ている我々の身体を蝕むかのようだ。まず主人公の次郎(木村知貴)がいる。数年前に交通事故で妻を亡くした男だ。そして彼の息子である登(諏訪瑞樹)。絶賛反抗期中の少年は、過去を振り切れない父親を疎ましく思っていて、常に不機嫌。次郎の兄・新太郎(川瀬陽太)とその婚約者(湯船すぴか)は物語の序盤の牽引役。彼らが次郎と登を強引に結婚式へと誘うことで物語が始まっていく。兄である新太郎は芸術家という職業もあってか常にエキセントリックで、悪く言えばキ*ガイ。ファミレスで「セッ○スしませんか!!」とか叫んだりする、個人的にはあまり友だちになりたくないタイプだ。

 そして最後に、タイトルにもなっている亀。彼は、次郎と登の家族であるとともに、次郎の妻に対する未練を象徴している。この4人と1匹のイカれたメンバーを詰め込んでワンボックスカーは南へと疾走する。行き先はかつて次郎が式を挙げた島。緊迫感が漲る旅だ。キチ*イ兄貴がいつコトを起こすのか、こまっしゃくれたガキがいつ感情を爆発させるか、そして気まぐれな亀がいなくなってしまわないか。次郎の気持ちに寄り添っていくと、この旅は悲惨極まりないものに思えてならない。そして、彼がこの旅に消極的だった決定的な理由が物語の最後に明かされる。この映画はひたすらに「死んだ妻の不在」を軸に廻る物語であり、そして陳腐な表現になってはしまうのだけど、家族の再生の物語でもある。物語の終盤、死者への執着心を象徴する亀の失踪を巡って次郎が奔走する場面や、かつて結婚式を挙げた砂浜で繰り広げられる生と死のドラマを目撃して和解へと至る親子の情景はとりわけ印象的だ。

 と、ここまでなら、この映画はそれほど特徴のない家族ものロードムービーだ。主演の木村知貴の演技もどこか凡庸な印象だし、川瀬陽太の強烈な演技が主役を食ってしまっている感じがする。物語的にも、親子の和解という、ある意味観客の期待するところで決着させてエンドロールに行けば非常にスッキリ爽やかに後味よく終わる。が、この映画のすごいところは後半20分の展開だ。実のところ、この土地は次郎の妻が事故で死んだ場所であり、事故を起こした当人が暮らしている。次郎にとってはいわば因縁の地だ。彼がこの旅に消極的だった決定的な理由はここにあったのだ。旅の終わり、次郎は事故を起こした男と対決する。これは彼と彼の家族が前に進むために必要な通過儀礼でもある。それまでそれほど感情を表さず、どこか頼りなかった男に骨が入り、思いの丈が迸る。それも、単なる殴り合いであるとか言い争いでないところがスマートだ。泥酔した木村知貴を真正面から捉えたカットが実に良い。文字通り裸の思いをぶつける男の姿は、この映画の印象を一変させるだけの熱量を持っている。

予告編

基本情報

トータスの旅  82 min

監督:永山正史

音楽:石川江里也

脚本:永山正史/鈴木由理子

撮影:神野誉晃

出演:木村知貴/諏訪瑞樹/川瀬陽太/湯舟すぴか/竹中友紀子/柳谷一成/大宮将司/たくしまけい/近藤善樹/小田篤/上山学/竹下かおり/田中一平/岡本裕輝/満利江/山口陽二郎

 - 2017年新作映画レビュー