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2016年、映画祭で見たこの映画が良かったよベスト10

      2017/01/03

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 2016年が終わったぜーーー!というわけで恒例の映画ベストだぜ!一昨年の映画ベスト記事はロードショー新作と映画祭作品まぜこぜでベスト125とかいう頭の悪い記事を書きましたけど、今年はめんどくさいのでロードショーベスト50、映画祭ベスト10で行きます!

対象作品について

 2016年1月1日から12月31日までに映画祭で上映された日本初公開の作品です。具体的に参加した映画祭は以下の通り(開催日順)。

■未体験ゾーンの映画たち2016
■東京アニメアワードフェスティバル2016
■カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2016
■第29回東京国際映画祭
■第29回東京フィルメックス

 「未体験ゾーンの映画たちも入れるのかよ…」と言われてしまうとあれですが、まあいいじゃないすか。メインで参加したのは東京国際映画祭と東京アニメアワードフェスティバル。鑑賞作品総数は37作品(プログラム)となります。

ベスト10はこんなかんじで!

1

   天才バレエダンサーの皮肉な運命
      After You're Gone [ Posle tebya ]119 min


 第29回東京国際映画祭にて。これは内容もさることながら、上映環境が素晴らしかった!EX THEATER ROPPONGIだったので、椅子やら画面やらはおせじにも良いとは言えなかったのだけど、客層の半分くらいがロシア人(推定)!もうみんなドッカンドッカン笑ってるし、内容がコメディということもあって大層盛り上がりましたね。上映後のQ&Aセッションでもみんなロシア語で質問してるし…笑

 本編の内容はと言うと、主演のセルゲイ・ベズルーコフ演ずる引退したバレエダンサー・アレクセイのクズ男っぷりが本当に見事。よくある「実はいい人なんでしょ??」ということはまったくなく、本当に自分本位のクソ野郎なので逆に嬉しくなる。徒歩一分のところにわざわざ高級車で乗り付ける初っ端のシーンからもう最高!あと彼の娘役であるアナスタシア・ベズルコワの奇跡的な可愛さ!演出面も小洒落てて、バスがどいたらそこに芸術劇場があるところとか、思わずハッとしてしまう。あと夕方のバレエ教室の空気感も良かったなあ。

 是非是非、日本でロードショーしてほしい作品です!

監督:アンナ・マティソン

脚本:チムール・エズグバイ
撮影:セルゲイ・オトレピエフ

出演:セルゲイ・ベズルーコフ/アナスタシア・ベズルコワ/リーナ・アンドレンコ/ウラジーミル・メンショフ/アリョーナ・バベンコ/セルゲイ・ガザロフ/ステパン・クリコフ/マリヤ・スモルニコワ/ヴィタリー・エゴロフ

2

   鳥類学者
      The Ornithologist [ O Ornitólogo ]118 min


 初ロドリゲス!鳥類学者のおっさんが川べりをうろうろする映画ですが、謎の中国人巡礼者二人組とか天狗とか出て来る。一応、キリスト教の聖人、聖アントニオの説話がベースになってるんだけど、そんなことは全く知らずとも一人の男が森の中を放浪して不可解な体験をする冒険物語として楽しめます。最終的にああなったりこうなったりするので一種の貴種流離譚みたいな見方もできますね。そもそもが説話的な展開だし。色々と面白い場面はあるんだけど、美女二人に拘束されるフェルナンド(ポール・アミー)のあたりのやり取りとか、羊飼いの少年との真っ昼間の川べりでの情事とか印象深いです。これもまた観たい作品ですねー。前回のロドリゲス・レトロスペクティブに行けなかったので、次やるなら絶対行きます!

監督:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス/ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
音楽:セヴェリーヌ・バロン
脚本:ジョアン・ペドロ・ロドリゲス/ジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタ
撮影:ルイ・ポッサス

出演:ポール・アミー/シェロ・カジアオ/ジョアン・ペドロ・ロドリゲス

3

   プールサイドマン
      POOLSIDEMAN117 min


 東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞受賞作!渡辺兄弟の作品は処女作の『そして泥舟はゆく』、去年の『七日』と観続けてきたわけですが、今回の『プールサイドマン』はこれまでの作品の集大成と言うか、作家性を前面に押し出しつつも、かなり観やすい作品になっていると思います。といっても、『七日』と同じように前半の執拗な繰り返し描写はかなり人を選ぶとは思いますが…(でもそれがいい!)。職場入ってからの長回しが予想通り過ぎて素晴らしかったですね。『七日』は控えめに言ってかなり淡々とした作品だったのですけど、今回はそこをベースにしつつ「泥舟」の軽妙な会話劇が乗っかっているのが特徴で、主人公の水原(今村樂)の超無口(ほんとに一言もしゃべらない)と対比的に、白崎(渡辺監督)のおしゃべりクソ野郎っぷりが際立っていて実に楽しい。「すたみな太郎って人類の夢だと思うんすよね!」などといういい感じのセリフがポンポン出てきて、しかもそれがテーマと直結してる。プールサイド=周縁というアナロジーも見事でしたが、それが東京から対比的に描かれる栃木県で起こっているという二重構造の面白さ。で、最後のあれはやっぱりあれですよね…。某監督の渋谷スクランブル交差点爆破映画を思い出しました。

監督:渡辺紘文
音楽:渡辺雄司
脚本:渡辺紘文
撮影:方又玹

出演:今村樂/渡辺紘文/平山ミサオ/黒崎宇則/戸田古道/鈴木仁/武田美奈/かりん

4

   Tout en haut du monde
      Long Way North81 min


 色々といざこざがあった東京アニメアワードフェスティバル2016のコンペグランプリ作品。去年のグランプリ作品である『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』と同じように、東映長編的なテイストを持った作品でした。そういうものが求められているのかもしれないですね。シンプルで力強い物語というか。この作品、「Tout en haut du monde」[Long way north](直訳すると「北へ」)もまた、貴族の家に生まれた少女が冒険家である祖父の後を追って北極冒険に向かうという王道の冒険物語であり、成長物語。特徴的なのが輪郭線を廃したシンプルなキャラクター造形で、切り絵で作られたような美しさ。そして、どこか森康二さんのふっくらしたキャラクターたちを思い出します。汽車の煙のようなエフェクトも面白い。そしてなにより主人公サーシャのキャラクターとしての力強さ。19世紀のロシアが舞台なので女性冒険家というのはかなり特異な存在になりうると思いますし、事実物語中盤までは確かにそういう扱いなんですけど、最終的には他の男性船員たちと対等の存在になっていく、それも決して女性性を捨てるわけではない、というあたりは21世紀的な感覚だなと思いました。茫漠とした北極の情景の美しさも必見です。「ソング・オブ・ザ・シー」と同じように日本でも上映されますように…。

監督:Rémi Chayé
音楽:Jonathan Morali
脚本:Claire Paoletti/Patricia Valeix


出演:Christa Théret/Féodor Atkine/Antony Hickling/Thomas Sagols/Loïc Houdré/Audrey Sablé

5

   ぼくらの亡命
      Our Escape115 min


 第17回東京フィルメックスにて。まあとにかく主演の須森隆文さんの怪演が見事ですねこれは。ホームレス感がパない。テーマ的にもキャラクター的にも渡辺監督の『プールサイドマン』と共通したところがあるんですけど、こっちの主人公である昇くんは超攻撃的でドン引き。でも世界からの疎外感と孤独は痛いほど伝わってきましたね。前半の都会のシーンは録音ミスったのか、と思うくらい環境音が大きすぎて字幕(英語)がないとセリフがわからないほどでしたが、それが後半の港町と海岸の閑散とした感じをより強調してて良いですね。でも前半、ほんと聞きづらいからロードショーするときには調整して欲しくもあります。物語としてはメンヘラとメンヘラ(まあこの紋切型もどうかなという気はしますが)の共依存恋愛ものであり、それに加えて世界のどうしようもなさに対する荒々しいまでの反抗が吹き出していて、そのむきだしの佇まいがただただ愛おしいのです。

監督:内田伸輝
音楽:Yamikurae
脚本:内田伸輝
撮影:斎藤文

出演:須森隆文/櫻井亜衣/松永大輔/入江庸仁/志戸晴一/松本高士/鈴木ひかり/椎名香織/森谷勇太/高木公佑

6

   メコン大作戦
      Operation Mekong [ 湄公河行動 ]123 min


 東京国際映画祭にて。チャン・ハンユーとエディ・ポンも最高なんですけど、やっぱり主役は犬っすよ犬!めちゃかしこい!それだけに最後の展開が…。実話ベースの麻薬組織撲滅者ですけど、Q&Aセッションで監督自身が言っていたように、かなり脚色されてて、映画的になってます。ロケランばかすか出て来る前半のカーチェイスも良かったけど、息詰まる心理戦が楽しい中盤のショッピングモールが素晴らしかったですね。椅子が強いぞ!あと衝撃的だったのが、少年テロリスト。事実じゃなくてよかったけど、あれに近いのは実際にあるんだろうなあ。ダンテ・ラム監督は前作の『疾風スプリンター』も日本上映決定してるし、来年・再来年あたりに来そうな感じですね。

監督:ダンテ・ラム

脚本:ダンテ・ラム/チュー・カンキ/ラウ・シウクワン/タム・ワイチン/エリック・リン
撮影:フォン・ユンマン

出演:チャン・ハンユー/エディ・ポン

7

   名誉市民
      The Distinguished Citizen [ El Ciudadano Ilustre ]118 min


 東京国際映画祭にて。ノーベル賞作家が故郷での名誉市民受賞を機に帰郷し、そこでのギャップに翻弄される物語。何十年も経ってると変わってるものもあるし、変わってないものもある。そして一番変わってしまっていたのは自分だったというお話ですね。全編ブラックジョーク満載でかなり笑えます。ノーベル賞受賞作をトイレットペーパー代わりに使ったり、地元にだっさい銅像建てられたり…。うっかり一晩の遊びのつもりだった小娘が親友の娘だったりね。次第に地元の人々と軋轢が高まり、不穏な空気になっていく展開もいいですね。。で、そのあとのオチもなかなかに衝撃的。これは日本ではたぶん上映されないだろうなあ。

監督:ガストン・ドゥプラット/マリアノ・コーン
音楽:トニ・M・ミル

撮影:ガストン・ドゥプラット/マリアノ・コーン

出演:オスカル・マルティネス/ダディ・ブリエヴァ/アンドレア・フリジェリオ

8

   私に構わないで
      Quit Staring at My Plate [ Ne gledaj mi u pijat ] min


 東京国際映画祭にて。カメラ近いよ!近すぎるよ!ってなかんじのカメラワークが面白い。閉塞感のある家族と地方という状況にぴったりはまってます。実際に住んでるアパートも小さいし。で、物語序盤で強権的な父親が倒れて介護ものになるんですが、結局、お荷物にしか見えない家族も代わり映えのない世界も、どちらも捨てていくことはできないというのがテーマなわけです。劇中2回ある水中の場面が開放感あるんですが、ラストのどん詰まり逆戻りにつながってるんですよねえ…。バスに乗り込んだあとの描写がとても良いです。主人公のマリヤナ役であるミア・ペトリチェヴィッチは全くの素人らしいんですが、全然そんなふうに見えないのもすごい。あ、あと劇中のごはん、みんな不味そうに食べてるんですけど、エキゾチックで美味しそうなんだけどなあ…。

監督:ハナ・ユシッチ
音楽:フルヴォエ・ニクシッチ

撮影:ヤナ・プレチャシュ

出演:ミア・ペトリチェヴィッチ/ニクシャ・ブティエル/ズラッコ・ブリッチ/アリヤナ・チュリナ/カルラ・ブルビチ

9

   ブルーム・オヴ・イエスタディ
      The Bloom of Yesterday [ Die Blumen von Gestern ]125 min


 東京国際映画祭コンペグランプリ作品。もうとにかくヒロインのザジ(アデル・エネル)のキチガ…エキセントリックぶりに衝撃を受ける。ついていけねえ。主人公のトト(ラース・アイディンガー)も負けず劣らず短気すぎてヤバイんだけど。彼女の情緒不安定の理由は物語が進むにつれて明らかになっていくわけですけど、いやそれにしてもエキセントリックすぎて絶対に仕事したくない同僚です。トトは祖父がホロコーストの加害者側で、その贖罪のために研究をしているという背景があり、一方でザジはそのホロコーストの被害者側という関係性。凸凹コンビすぎるこの二人のロードムービー&ラブストーリーですが、はてさて、どこに向かっていくのか…。かなりブラックなネタが多いので人を選ぶ作品ではありますね。日本で公開できるのかな…。それにしても、去年のグランプリ『地雷と少年兵』(公開名『ヒトラーのわすれもの』)といい『帰ってきたヒトラー』といい、ナチものだと犬がひどい目にあいますね…。

監督:クリス・クラウス
音楽:アネッテ・フォックス

撮影:ソニア・ロム

出演:ラース・アイディンガー/アデル・エネル/ヤン=ヨーゼフ・リーファース/ハンナ・ヘルツシュプルング

10

   ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ
      Wyrmwood: Road of the Dead98 min


 新春のお楽しみ、「未体験ゾーンの映画たち2016」にて。この映画祭もDVDスルーの作品を大画面で見せていただけるのでほんとありがたいです。で、このオーストラリア産のゾンビ映画ですが、「ゾンビ版マッドマックス」という謳い文句は伊達じゃない!ゾンビが蔓延するのは普通のゾンビ映画ですけど、不幸にもガソリンが不活性化してしまう。でもってガソリンの代わりになるのがゾンビの血液というトンデモ設定。ゾンビがいると騒音で移動できないけど、燃料であるゾンビがいないと車が走らないという…。自分から積極的にゾンビを探しに行くゾンビ映画もなかなかないよね。丁寧な作りです(当社比)。

監督:キア・ローチ=ターナー

脚本:キア・ローチ=ターナー/トリスタン・ローチ=ターナー
撮影:ティム・ネーグル

出演:ジェイ・ギャラガー/ビアンカ・ブラッドリー/レオン・バーチル/キース・アギウス/ルーク・マッケンジー/バーイン・シュワート
【映画レビュー】『ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ』

まとめ!

 というわけで映画祭新作映画ベスト10でした!どれもこれも良かったので日本公開してほしいですねー(ゾンビのぞく)。今年も東京国際映画祭とTAAFメインで行きますが、フィルメックスも観る作品増やしていきたい感じです(でも時期が被っててめんどうなんですよね…)。

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