だいぶ驚いた

『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』を観る。TVの方はかなり楽しく観ていたので期待はしつつ、まあいうてよくある劇場版だと思ってたんですが、これがいい意味で期待を裏切られました。話自体は佐賀(および全世界)に宇宙人が攻めてくる感じのよくある?話なんですが、結構人死んでんじゃね?というレベルでスケールが大きい。インデペンデンス・デイぽさ。クライマックスのアクションもだいぶイかれてるんですけど、それよりも伝説の山田たえが正気に戻る展開ですよ。まさに劇場版ならではという感じでこれはしてやったりという感じだろうなあ。山田役の三石琴乃さんもさぞ驚いたことでしょう。問題はこれがインパクト大きすぎて他の印象が薄すぎることですね…。これはずるいて。

劇場版『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』公式サイト

当時でもこのタイトル大丈夫だったのかな

新文芸坐の伊丹十三特集で『あげまん』を観る。主演の宮本信子演ずるナヨコの波乱万丈すぎる人生がメインテーマだけど、個人的に良かったのがそんなに男前でもないようなキャタクターなのにめちゃくちゃプレイボーイの鈴木主水を演じた津川雅彦。若いときの津川雅彦、こんな感じだったのか。2枚目と3枚目の間くらいですごく好きだなー。島田正吾演ずるフィクサー・大倉も「こんなやつおらんやろ」というマンガ感がマシマシで楽しかった。しかし、このタイトル今では誰も知らないけど、当時は下品な感じで受け止められたのでは?まあそんなに気にすることでもないか。

宮本信子のかっこよさ

同じく新文芸坐の伊丹十三特集で『ミンボーの女』。こちらも初見。まあ伊丹十三作品は大体そうなんですが、この映画は特に宮本信子がかっこいい。これと『マルタイの女』の宮本信子が一等かっこいいですね。それに対して美人局に引っかかる宝田明演ずる総支配人・小林の情けないことといったら…。引き立て役としてああいう役どころだとは思うのですが、それにしてもね…。宮本演ずる井上まひるとともにヤクザに立ち向かう鈴木(大地康雄)、若杉(村田雄浩)も最初は頼りないんですが、どんどん成長していき、最後にはホテルの全員が一致団結してヤクザたちに立ち向かっていく姿が素晴らしく印象的。コミカルとシリアスのバランスもよく、笑って泣けて感じ入るという教科書的な社会派エンタメですね。

ビターエンドだが後味は良い。

『ファンファーレ!ふたつの音』、タイトルからもよくある感じのやつだな~と思って観に行ったのだけど、なかなかシビアな現実が突きつけられた。主人公はカリスマ指揮者のティボ(バンジャマン・ラベルネ)で、ある日突然に白血病の診断がくだされる。ドナーを探す中で自分が養子であることと、生き別れの弟がいることがわかる。その弟であるジミー(ピエール・ロッタン)はかつて栄えていた炭鉱都市の寂れた街で暮らしながら地元の吹奏楽団で演奏していた。全く違う境遇の兄弟が交流を深めていく、というのはいかにもありがちだし、そこで生まれる葛藤や運命についての詳察が主なテーマとなる。もちろん、兄は弟の楽団を手伝ったりもするのだけれど、物語のもう一つの主役は寂れた炭鉱町の楽団そのものであったりもする。労働者たちが支配的な企業に対して立ち向かっていく様とその挫折は、物語終盤でティボが直面する過酷な運命と双璧をなしている。物語はかなりビターな終わり方をするのだけれど、最後に客席から奏でられる楽団の演奏によって不思議と後味の良い余韻が残る。

映画『ファンファーレ!ふたつの音』公式サイト – 劇場公開作品

長崎とシスターフッド

『遠い山なみの光』はカズオ・イシグロ原作で1980年代のイギリスと1950年代の長崎とが交錯するトリッキーな作品。要するに1980年代から1950年代の長崎を回想するという形になっているのだけど、さらに現在(1980年代)の主人公は過去編の主人公である悦子(吉田羊)の娘であるニキ(カミラ・アイコ)であり、彼女が悦子から彼女の体験を聞き取るという構成になっている。それに加えて、1980年代の悦子は長女を亡くした苦しみを抱えており…というかなり多層的なレイヤーをもった作品であるのが面白い。過去編(1950年代)では、終戦後の復興期に長崎で暮らす悦子(広瀬すず)がバラックで暮らすシングルマザー佐知子(二階堂ふみ)と交流を深めていく話になっていて、このパートがやはり抜群に面白い。悦子の義父・緒方(三浦友和)はかつて悦子が勤めていた学校の校長であり、地元の名士であるとともに戦時中の軍国教育を反省しない保守的な人物として描かれており、物語後半では彼が話の焦点になったりもして、このあたりの重層性も面白い。やはり気になるのは悦子と佐知子が交流を重ねるうちに育まれていくシスターフッド的な関係性で、戦争のトラウマや抑圧された女性性、あるいは貧困といった過酷な環境に対して、個ではなく群れとして立ち向かっていく彼女たちの逞しさが印象に残る作品だった。

映画『遠い山なみの光』 – GAGA