傑作すぎる

3時間もあるし、題材もあまり興味ない歌舞伎だしなあ…と思って渋っていた『国宝』をようやく観ました。手のひらを返すようですが、3時間全く飽きさせない傑作でした…!

主演の吉沢亮/横浜流星の圧倒的な存在感は言うに及ばず、とりわけ素晴らしいのが画面のレイアウトと撮影。一瞬たりとも、というと言いすぎかもしれないですが、とにかくあらゆる場面がカチッと決まっていて隙がない。冒頭のヤクザの出入りの場面のガラス越しに見える雪中の最期、初めての舞台での楽屋の二人、終盤の壊死しかかった右足に頬ずりする吉沢亮…。どの場面も美しすぎる人生の一コマという作りなんですよね。没落して地方でドサ回りする場面ですら。

そして、3時間という長丁場全く退屈しない密度の高いドラマ。まあ言ってしまえば二人の男がくっついたり離れたりする話ではあるのですが、かたやヤクザの息子、かたや歌舞伎の名門の血を引く男、という対立構造がねじれにねじれを呼び、めちゃくちゃ面白い!印象的な場面が非常に多いのも特徴的で、例えば舞台上でいきなり血を吐いて死ぬくだりとか、舞台上でいきなり足が死んで運ばれるとか…。一番好きなのは田中泯演ずる万菊さんの稽古のくだりですね。「でもいいの。それでもやるの」は「でもやるんだよ!」に通ずる名台詞。

映画『国宝』公式サイト

かわいい顔して異常なマンガ


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『ホイホ・ホイホイホ』第1巻。タイトルからは全く内容がわかりませんが、超能力に目覚めた女子高生が主人公の日常ものというよくある感じのアレですね。

基本よくある感じなんですが、端々から感じられる異常な感じが味を濃くしている感じ。高校初日でいきなり担任の首を後ろ向きに折ったりとか、テレポーテーションがじわじわ移動するタイプのくだりとか…。タイムリープの使い方もしょーもなくて面白い。で極めつけは「下痢便部」の存在ですね…。これは依頼に応じて他校(自校も)の運動部の水筒に下剤を入れるという最悪の部活で、超能力とは全く絡まないのに異常な存在感。こいつら主人公でも面白いんじゃないか??

推しは多分毎回ひどい目に会うであろう猫山さん。

アニメーションがすごすぎて話が頭に入ってこない

クリストバル・レオン/ホアキン・コシーニャ監督の『オオカミの家』(同時上映:『骨』)、ロードショーの時に観のがしてたんですが、ようやく観れました。もうとにかくアニメーションがすごすぎる。平面と立体が入り交じる構成も異常だし、リアルタイムで事物が描かれていくのもすさまじい。これを少人数で作っているというのもすごい。欠点を挙げるとするなら、表現がすごすぎて話がよくわからないということですね…。アマプラで配信してるのでまた観よう。

コワすぎる。

原作も読んで朝楽しみにしてた映画版『近畿地方のある場所について』。期待はしてたんだけど、後半が完全に「コワすぎ」で個人的には最高でした。合わない人は知らん。まあでもちょっと日和ったかな、というか一般向けかなとは思いましたね…。具体的には祠を燃やしてほしかった。まあでも「口裂け女捕獲作戦」よろしく怪異を車で跳ね飛ばすし、買ってきたばかりのバールのようなもので祠をぶち壊すし、終盤の菅野美穂は工藤Dが乗り移ったかのようなテンションで最高でした。マシラ様の造形もかなり白石ワールドだったし。見せすぎじゃねーかとは思いつつ、いいねえ。逆に言うとあのノリが合わない人は置いてきぼりな気はするな…。

それにしても原作読んでたからそこまで驚かなかったけど、原作未読だったらオチはかなりびっくりするのではないでしょうか。あの母性の強調という点も含めて、原作からの改変も上手いし、主人公の菅野美穂の存在感がすごい。キャスティングナイスですね。最後までまともな人のフリが上手いなあ。

前半は原作準拠でモキュメンタリー的なフッテージ映像メインなんですが、このパートも白石監督らしい手際でめちゃくちゃ面白いです。この手の映像は本当に上手いし、個人的に唸ったのは平成の女子高生の映像でガラケーを開く芝居。そうそう、これだわ、となりましたね。映画オリジナルの『日本昔ばなし』風のアニメパートも再現度が高くて驚きますね。

ちなみに一番怖かったのは夜逃げした編集長の家の場面。特に奥さんの音が二階から響いてくるのが怖すぎ。

映画『近畿地方のある場所について』公式サイト – Warner Bros.

ダンカンさんがMVP

『ジュラシック・ワールド 復活の大地』、まあいつものジュラシック・ワールドなんですが、最初から最後まで飽きさせないのがさすがにすごい。3つのアイテムを集めるというゲーム的な筋書きですが、例によってトラブルが起き予定通りにはいかないわけですね。この3つのアイテムを集めるというのがわりと面白くて、陸海空でそれぞれ最大の恐竜の生体サンプルを集める、というもの。これは夏休みで見に来た子どもたちはわくわくしますわ。特にティタノサウルスの群れのシーンはすごい迫力で、初代の例のシーンを彷彿とさせる名シーン。尻尾細すぎじゃね?とは思ったけど。

さらに本作では舞台となる島で秘密裏に作られていた遺伝子組換え恐竜が登場し、これがとてもかっこいい。ヴェロキラプトルに翼がついたような「ミュータドン」もいいですが、もう一種の「ディストートゥス・レックス」がすごい。パッと見、エイリアンのゼノモーフっぽくて、ティラノサウルスの弱点?ともいえる腕がめちゃくちゃ長くなっていて強い!普通にガタイもでかいし。怪獣映画っぽくなりそうなところを、ギリギリで恐竜映画にとどまっている良いデザインですね。

そして、この映画の一番好きなところは「倫理」がテーマの一つになっているということ。シリーズを通じて、科学者の倫理というものは主要なテーマになっていたわけですが、本作では科学にとどまらない普遍的な倫理について語られていて、主要な登場人物が(当初は希薄であっても)倫理観を持って行動しようとするのが素晴らしい。物語のキーとなるのは大西洋で遭難していたところを主人公ゾーラたちに助けられ、ともに島に行くことになるデルガド一家で、物語後半では彼ら、特に幼いイザベラを助けるために奮闘する大人たちが素敵なんですよね。とりわけ、よりよい生き方を模索しているダンカン(マハーシャラ・アリ)が最後に見せる犠牲は心に残ります。あまりにもかっこよい大人!

映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』公式サイト

はじめてのクリィミーマミ

【新文芸坐×アニメスタイル vol.192】アニメーション作家 望月智充

クリィミーマミ、というかぴえろ魔法少女シリーズ全般未履修だったんですが、「【新文芸坐×アニメスタイル vol.192】アニメーション作家 望月智充」に行ってきました。上映作品は『魔法の天使 クリィミーマミ 永遠のワンスモア』『魔法の天使 クリィミーマミ ロング・グッドバイ』の二本立て。

完全に未履修だったんですが、「永遠のワンスモア」の前半はTVシリーズの総集編だったので全く問題ありませんでした。TVシリーズ一本も見てないのに観たかのような不思議な感覚ですね。で、この総集編の中でときおり「ん?」となる面白い演出(特になにもないのにぐるぐる回り込む演出とか)がいくつかあり、トークショーで言及されていたように、これが望月監督の味なんですね。「永遠のワンスモア」の後半は続編になっているのですが、途中まで観て「ははあ、これは新キャラの愛ちゃんが二代目になるんだな…」と思ってみていたら全く違うオチだったのが良かったです。ネガとポジが優秀すぎる。

本編の3年後を描く「ロング・グッドバイ」も面白く、自分の意志とは関係なく優とマミが入れ替わってしまう体質?になってしまった優/マミがライバルのめぐみと共に映画に出るという話なんですが、優/マミがメインと言いつつ、パルテノンプロの面々や優の周囲の人々のその後の部分に重きが置かれている感じがしました。特に木所さんの恋の行く末はいかにも三枚目という感じで良かったですし、慎悟/めぐみの結婚式で終わるというのもきれいな流れ。そういえば二人のキスシーンを背伸びだけで表現するのも上手すぎて驚きました。

トークショー、望月監督と高橋プロデューサー(とアニメ様)という面白い組み合わせで、高橋さんは当時のアニメージュのライターだったとのことで、当時の思い出話やら書けないような裏話とかで大変盛り上がりました。左右から質問攻めになっている絵面も珍しくて面白い。それにしてもこれだけイベントやってるのに望月監督がアニメスタイルのイベントに出演したのが初めてというのが驚き。話が面白かったのでまた呼んでほしい。