画質があまりにも良い

大昔に見た気がする『犬神家の一族』(1976年版)のリマスター版を新文芸坐で鑑賞。まあリマスターというてもね、そんなたいしたことないと思ってたんですが、これがあまりにもきれいで驚いてしまいました。ノイズが全く無く、解像感もくっきりしていて不気味なほど。

話はおなじみの…はずなんですが、なにぶん大昔に観たので結末のあたりを全く覚えておらず、逆に新鮮な感じで良かったですね。まさかあの人が犯人とは…。画面づくりの格調高い感じや当時の那須の雰囲気も良かったです。あと大野雄二さんの音楽が素晴らしい。これは耳に残るなあ。

そういえば犬神家の生業が製薬業で麻薬を作っていたという裏話が語られるわけですが、このあたりの地方の闇的なもの、いわゆる因習村ネタは「ゲ謎」に引き継がれていったわけですね。

役者的には金田一役の石坂浩二ももちろんいいんですが、古舘弁護士役の小沢栄太郎が印象深い。

はじめての『幻魔大戦』

『犬神家の一族』に続いて、同じく角川の『幻魔大戦』を。新文芸坐でやってた角川春樹事務所特集ですね。

実は『幻魔大戦』未見でして、終盤の龍の場面の切り抜きを知っている程度だったんですが、ようやく実物を観られた感じです。ストーリーはいかにも80年代っぽい…と書いてググったら原作は1967年なのか…。あの頃ってエスパーものとかもう流行ってたんですかね?

この映画、ストーリーはともかく、とにかく作画と演出がいい。冒頭のあまりにも印象的な女占い師(野田 卓雄さん)から始まり、東京での丈とベガの戦い(なかむらたかしさん)、クライマックスの火焔龍との決戦(金田伊功さん)まで見どころが多すぎる。すぐに荒廃しちゃうけど、実際のブランドがバンバン出てくる80年代の東京の雰囲気も見どころ。

火焔龍との決戦シーンではキース・エマーソンの「地球を護るもの」がくり返しずっと流れてるんですが、決戦なのに遊園地っぽいどこかのどかな曲でこれも印象深い…。

ドラム式洗濯機が怖すぎる

全く興味がなかったのですが、界隈で評判がかなり良かったので『ドールハウス』を観ました。

オーソドックスな日本人形ものホラーを令和風にアップデートした感じ、といえば伝わるかどうか。人形が何度捨てても帰ってきてしまう、あたりはテンプレ展開なのだけど、割とテンポがいいので割とギャグ感があるのだけど、捨てた当人ではなくゴミ収集のお兄ちゃんがやられるのはなんとなくコロナ禍後の作品という感じがするし、予告でも話題になっていた人形をMRI検査にかけるくだりは『残穢-住んではいけない部屋-』を連想しました。で、一番戦慄したのは、人形供養のために人形をわざわざ生地まで運び母親のお墓に入れてあげて一件落着♪ となるんですが、実はこれ「毒親案件」だったのがわかるというのがオチという。道理で前日の旅館であんなにアグレッシブに暴れてたわけだ。

個人的に一番恐ろしかったのは心霊的な面よりも子どもが死ぬ描写ですね。冒頭、ドラム式洗濯機の中で死んでいるのを母親が発見するくだりも印象的ですが、自分の子供を誤ってクッキー棒で撲殺してしまうシーンが夢に出そうなほど恐ろしかった…。

映画『ドールハウス』

整理としての「対話」

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光用千春『次の整理』、これまたすごい作品が来たなあ。

小説家を目指して進学せず清掃員を続ける女性と小説家になったかつての同級生がふとしたきっかけで再開し、交流していくというもの。面白いのはこの二人の関係が対等な友人などではなく、雇用関係にあるという点。主人公・黒川は清掃業の一環として小説家カベの家に通うことになるのだけど、そこで実際に行われているのは、対話を通じた小説家の頭の中を整理すること。まあ言うなればいわゆる壁打ち相手なのだけど、全く別の職業に就いていながら、かたや小説家、かたや小説家になれなかった人、という対比が残酷でありつつも興味深い会話の流れを作っていく。対話と同じように黒川は彼女の頭の中でもモノローグを繰り広げていて、彼女の中でも様々な「整理」が行われ、さらにそれが次回の「対話」へとフィードバックされていく。そういった意味では、これはかなり密度の濃い対話篇だ。何度も読むとスルメのように味が出てくるタイプ。