ゆるふわかと思ったらガチポストアポカリプスだった…

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コミケへの聖歌 [ カスガ ]
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ハヤカワSF新人賞の大賞作品『コミケへの聖歌』をようやく読みました。文明崩壊後の日本でかつての「部活」を再現して日々を送る少女たちが幻の「コミケ」を目指す…というあらすじを読んで、よくあるゆるふわ終末もの、『少女終末旅行』とか『ヨコハマ買い出し紀行』あたりを想像していたんですが、蓋を開けたらあまりにも過酷なガチのポストアポカリプスでぶっ飛んでしまった。近いのはむしろ『漂流教室』とか椎名誠の『武装島田倉庫』だったという。

確かに冒頭こそ「部室」(と呼ばれる掘っ立て小屋)にうら若き女子たちが(遺跡から発掘してきた)制服姿で集い、(これまた遺跡から発掘されてきた)ボロボロの漫画を読んで、漫画を描いたりしてるんだけど…。彼らの住む村は技術が次第に失われていて、農作業は人力だし、漫画を描くための紙は貴重資源で、布すら作れないという惨状。人口と秩序の維持のために封建制に近い統治体制が幻想の上に築き上げられていて、女権社会ながら女性の権利は失われつつある。

そもそもが「コミケ」に向かうロードムービーだと思って読み始めたので、文明が失われたこの悲惨な村の惨状が淡々と描かれていくという物語に驚かされたんですよね。というより旅に出るまでの話で、その旅に出るというのが因習とか親からの呪縛を解くという構成になっているのが素晴らしい。全く希望の見えない話なのだけど、最後に突き放す母はむしろいっそ清々しく、謎の爽快感がありました。新人賞とは思えない今年ベスト級の傑作。

やはりとんでもない情報量

『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』、前作の「唐傘」に引き続き、今回もものすごい情報量で圧倒されます。ネズミの怪異なのでそうだろうなと思っていたけど、直球に世継ぎの話だった。実に大奥らしいテーマでもあり、様々な家の思惑が絡み合うポリティカルサスペンスの側面もあるのだけど、注目したいのは時代の変遷を経て、女性自身が「産む/産まない」の選択肢を勝ち取っているくだり。子を堕ろした悲劇が怪異を産むが、女性自身がその再生産を断ち切る、というあたりも含めて、かなりフェミニズム的な主題を直球で扱っていると感じた。構成としてかなり上手い。またボタンとフキのシスターフッド的な関係性も魅力的だ。

相変わらず豪華絢爛な舞台背景だが、特に面白かったのは抽象的な駒の形をした将棋(のようなゲーム?)で劇中の重要アイテムとして登場する。三角の形をした枡もそうだけど、このアニメは既存の事物を少し変形させてさも当然のように出してくるのがすごく好きですね。

そういえば前作にはいなかった女中でめちゃくちゃTRIGGER感(というか満艦飾マコ感)がある子が居たけどあの子は何???いや可愛いしいいんだけど。

第二章|『劇場版 モノノ怪』公式サイト

ポン・ジュノ監督らしい快作。

エドワード・アシュトン原作、ポン・ジュノ監督の『ミッキー17』をようやく観ました。原作は既読でかなり面白かったのは覚えているのだけど、細部はあまり覚えていない、という状態。植民星における人体複製とアイデンティティの問題をコミカルかつシニカルに描きつつ、ファーストコンタクトものでもあるというSF的ミックスフライ定食的なちょうどよい盛り込み具合。しかし極寒世界のSFというとやはり同監督の『スノーピアサー』を思い出してしまいますね。

本作の見所、というか主題の一つは複製体というある種の不老不死を得た主人公ミッキーの悲哀なわけですが、前半から中盤にかけて地球から逃れて「エクスペンダブル」になったミッキーが様々な死に方をしていく様を描いていくのがこの映画の肝でもありつつ、やや冗長かなとも思ったり。少なくともタイトルは原作通り『ミッキー7』で良かったのでは?やはり面白いのはミッキーが二人に増えてからなんですが、ここは思いの外すぐにバレてしまうのが意外でした。ところで、この映画を一言で言うなら人外(ヴァンパイア)が人間に戻るまでの映画であって、その意味では最後に出るタイトルが「ミッキー18」から「ミッキー17」に戻るかと思いきや、「ミッキー・バーンズ」に戻るというのが本当に素晴らしかった。真名を取り戻すことによって人間に戻る、というわけでですね。

ところで、この映画のもう一人?の主役である異星の生命体クリッパー。これがもう素晴らしいデザインなんですよ。というよりアニメートがいい。でかいクマムシで口から触手が生えているという、ザ・エイリアン、というデザインなんですけど、動きがめちゃくちゃ可愛い。子どものクリーパーは完全に犬。というか犬から動きとってますよねこれ。大きい方は象的な頼もしさ。そして後ろ姿は完全に王蟲(子どもが吊るされるシーンもある)。これはぬいぐるみがほしいなあ。

映画『ミッキー17』公式サイト – Warner Bros.

いまいちピンとこないけど画面はいい

話題作『ロングレッグス』。うーーん、面白いんだけど、オチというか犯人がそれなのはちょっとピンとこなかったなー。いや全然面白いんですが、こっちは刑事ものとして観ていたので、いやそれは反則じゃない?というね。

ただ、画面づくりは本当に素晴らしくて見入ってしまいました。不穏な雰囲気とか端正な画面構成なんかはすごく黒沢清っぽい。というか『CURE』ですよね。これだけで元は取ってる。

主人公の若い女刑事リー・ハーカー(マイカ・モンロー)と対峙するのは謎のおじさんロングレッグスなんですが、このキャラクターはどこかで見たような感じでお粗末な感じでしたね。ピエロを殺人鬼にするの、ちょっとありがちすぎて、「またこういうやつか…」みたいな感想になりがち。というか、全く気づかなかったんですが、ロングレッグスの役、ニコラス・ケイジなの?????あの人なんでも出来るしやっちゃうな。ハローキティかよ。

映画『ロングレッグス』公式サイト|2025.3.14 日本解禁