え、これってフィクションだったんですか???
評判作の『ブルータリスト』を観てきました。予備知識無しで行ったんですが、まさかの3時間超えでインターバルまであって驚いてしまった。長過ぎる。
ブダペスト出身のユダヤ系建築家ラースロー・トートの数奇な半生が大まかなあらすじですが、ホロコーストから逃れてアメリカにわたるものの、その過程で妻と姪と生き別れになり、実業家ハリソンの気まぐれに翻弄され…、とてんやわんやで全く飽きさせない。エイドリアン・ブロディが主人公ラースロー役ですが、彼がまあ素晴らしく良い芝居ですね。彼の存在がこの映画の魅力の大部分を占めているのではないでしょうか。そしてもう一つの主人公が、映画の後半でラースローが手掛けるヴァン・ビューレン・コミュニティセンターという名の巨大な礼拝堂。あの天井の高さと静謐さ、天井から入ってきた光が十字架になるギミックなど、魅力的すぎる建築物。遠くから見た駆体の巨大さと、これまた十字架になっている構造が素晴らしい。映画では建築過程だけで実物は殆ど出てこないのですが、最後の最後でこの建物を散策するパートがあり、ここがまあ本当に素晴らしいですね。あとこの役者と建築を映し出す手際もかなりよく、人々がこの礼拝堂が建てられる丘に登っていく姿をロングショットで捉えたカットなど、とても印象に残ります。
それにしても、ラースロー・トートという建築家がいたんだなあ、と思って観終わったあとWikiで調べようとしたら、ええええ、これって架空の建築家の話なんですか??というオチでした。まんまと騙されてしまいましたね。絶対実話ベースだと思ったのに。最後に1980年のベネチア建築ビエンナーレのフッテージっぽい画が出てくるのも騙しに来てますよね。良い騙されでした。
えー、ちなみに直前にご飯食べちゃってたので結構寝てしまいました…。配信始まったらまた観ます…。
ややタイトル詐欺では?
去年の「地球交響楽」は何故かスルーしたのですが、今年の『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』はあの大傑作『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』の寺本監督の12年ぶりの監督作であり、かつ絵画がテーマということでこれは観ないわけには…、ということで観てきました。というか、「ひみつ道具博物館」から干支が一周しているのか…。
さて、まあ結論から言いますと、面白いポイントはいくつもあるんですが、やや肩透かしというか期待しすぎたかなというのが、正直な感想ですね。ツッコミどころはいくつもあるんですが、まあとりあえず物語の端緒となるキーアイテムの絵画のタッチが明らかに13世紀のそれではないあたりから嫌な予感がしており…。しかもその後出てくるアートリアの宝物庫には写本挿絵的なタッチの作品も普通に置いてあるわけです。マイロの描いてる王女の絵もやっぱり現代的なタッチ、というか構図がそもそも現代的であって、マイロが未来人だったら納得なんですがそういうオチでもないし…。ただこのへんは13世紀のタッチで描いても見に来た子どもたちにとってはわけがわからないと思うので、しょうがないかなという気がしますが、それなら13世紀にする意味もよくわからないんですよねえ。中世ヨーロッパをやりたかったのはなんとなくわかるんですが。それよりも問題なのは4年ぶりに神隠しから帰ってきた王女が、両親が外遊に出かけているとはいえ、すぐに城に向かわないくだりですよ。大臣なりなんなり知ってる人がいないわけないのに不自然すぎる。特にそのあとの伏線でもないし。
で、一番問題なのはタイトル詐欺なところですね。「絵世界物語」というからには絵の世界の中で冒険する話だと思うじゃないですか。で、オチとしては「創世日記」みたいなメタ感じで締めるの。ところが、この映画、「はいりこみライト」で絵の中に入るのはいいんですが、すぐ出てきちゃうんですよね。結局冒険するのは実際の過去の世界という流れで、うーん、絵がテーマになっていて物語でもかなり絡んでくるとはいえ、ちょっとタイトル詐欺なんじゃないかなあ。
良かった点としては、直前で書いたことと矛盾してるんですが、はいりこみライトの使い方ですね。劇中でドラえもん自身が言及してるんですが、はいりこみライトを二重に使って過去に行くというのはかなり面白い発想。はいりこみライトの原理が説明されるくだりも面白いし、このあたりのひみつ道具の使い方は「ひみつ道具博物館」を彷彿とさせる感じでした。特に、のび太の描いた下手くそなドラえもんの絵がピンチを救うくだりはかなり良かった。しかし、原理的には可能とはいえ、あんなにポンポン絵の中から出てこれちゃうのセキュリティ的にかなりまずいのでは?という気がします。その点では「はいりこみ靴」系の道具のほうが安全性は高い?気がします。
「七瀬三部作」を読む
今年のテーマは筒井康隆、ということで今週は「七瀬三部作」を読んでいました。三部作それぞれが全く毛色が違っていて独立した作品のような面白さなんですが、やはり第二部『七瀬ふたたび』と『エディプスの恋人』の間の非連続性がすごい。『エディプスの恋人』読み始めたときの????感は唯一無二ですね。最近の流行りだとマルチバースかな?とも思えるので、なるほどね、となるわけですが、当時はそんな概念もそこまで広まってないでしょうし、かなり衝撃的だったのではないでしょうか。で、別の世界線の話にしてはちょっと変な感じだぞ?と思ってみているとまさかの最後の10ページで『七瀬ふたたび』と再接続される。これはさすがに驚きました。とはいえ、こういった虚無的な感覚っていかにも筒井康隆的ですよね。筒井康隆の作品の特徴の一つってやはり「神」の存在にあると思うんですが、筒井的な神って筒井康隆自身でもあるわけで、そのあたりのメタ的な面白さが存分に出ている三部作ですね。たしかにこれは映像化するのは躊躇するかなという気がします。
絵に描いたようなどんでん返し
今週は超話題作『都市伝説解体センター』をやっていました。聞き込みと念視を使って都市伝説の真相を解明していくスタイルのゲームですが、グラフィックとキャラクターがいいですね。4色しか使っていないドット絵はスタイリッシュでクール。『ファミレスを享受せよ』でも思ったけど、自分はこういう制限された表現の方が好きなことに気づいてきました。立ち絵でも常に動いているのはまあ好みが分かれそうですが(自分は苦手)、とにかくリッチに動かしていこうという意思を感じますね。主人公の福来あざみ通称あざみーはもちろん、ヒロイン(?)のジャスミンさん、センター長こと廻屋の3人に加えて、各エピソードで出てくるキャラも濃くてとてもいいですね。個人的に好きな登場人物を3人挙げるなら頼れる富入さん、完全に巻き込まれただけの一般人であるミステリーツアーのガイドさん、そしてすでに人気が出つつある山田ガスマスクですね。濃いわ。
で、問題は物語の結末なんですよね。いやー、これはまんまと騙されました。「管理人の正体」までは予想内、というか見え見えじゃない?と思っていたんですが、まさかその先があるとは…!たしかに伏線っぽいものは散りばめられていたような気もしなくもないんですが、まさかねえ。これは2周目やりたくなるのもわかります。そして、これってめちゃくちゃ映像化しづらくないですか?アニメか映画で観てみたくはあるし、絶対企画は動いてますよね。あ、あと続編も出しづらそう。ジャスミン主人公でいい感じにできそうな気もしますが。
いや、それにしてもいい体験でした。今年のベストゲーム候補ですね。
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