映画祭ではこういうのを観たい

東京国際映画祭2本目にして最後の作品はカタリナ・グラマトヴァ監督のスロバキア映画『大丈夫と約束して』。スロバキアの田舎で祖母と暮らす少年の話。母親はなにやら怪しげな仕事に手を染めている様子で、そのことを知った少年が思い悩む、といった筋書き。

とにかく撮影と演出が素晴らしい。1カット1カットが絵になっていて、いかにも映画祭の映画。映画祭ではこういうのを観たいよね。日本でロードショーになるのは難しそうなやつね。少年たちがバイクで疾走するシーンなど本当に美しくて印象に残る。そういえば主役の4人の少年たちはロケ地の村で見つけた素人の子たちだそうで、そういったところもいかにも映画祭の映画っぽい。ストーリーの筋は親子関係なんだけど、この4人の少年たちのみずみずしさだけでも見どころが多い映画。満足満腹。

【大丈夫と約束して】 | 第37回東京国際映画祭

終わり方の潔さ

『ヴェノム ザ・ラストダンス』、当然(?)あまり期待しないで観たんですが、これが思いの外面白い。まあ当然大味ではあるんですが、それにしてもよくできてます。サブタイが「ザ・ラストダンス」なわけですが、「まあ言うても終わらんでしょ…」と思っていると本当にちゃんときれいに終わるのがいいですね。もちろん、ユニバースとしては続くのは示唆されるんですが、エンドロール後のラストカットでありがちなヴェノムがちょっと復活しそうみたいなカットもなく(まあそれっぽいのはあるんですが)、本当に終わるのがいい。ヴェノムは粘っこいのに物語は潔いね。

話のカテゴリとしてはロードムービーなんですが、道中の様々な出来事も面白い。UFO信者の一家の車にヒッチハイクしたり、ベガスでスロットに興じたり。特にベガスでサブタイトルを回収するダンスシーンは良かったですね。後半のヴェノム軍団の活躍もアガりますが、それにしてはバンバン死にすぎだろ君ら。即席とはいえ弱すぎる。

映画『ヴェノム:ザ・ラストダンス』 オフィシャルサイト

圧倒的な質と量

東京都現代美術館の「高橋龍太郎コレクション」へ滑り込み。噂には聞いていたけど、それにしても凄まじい質と量!どこかの美術館のコレクションじゃなくて個人のコレクションですからね…。もちろん展示では上澄みを持ってきていると思うのですが、それにしたって、これはすごい。今年のベスト展覧会には必ず入れたい展覧会となりました。時間がなかったのでさっと1時間くらい…と思っていたのに、駆け足でも2時間程度かかる物量!しかも現代美術でありがちなビデオアートが少ない。これは個人的には嬉しいポイントでした。

作家的にはほぼ日本作家、しかしそれだけでこの物量と質!すごいですよ。定番の草間彌生で一部屋使ってる余裕もありつつ、MOTともシナジーのある菅木志雄とか横尾忠則、篠原有司男あたりの戦後現代美術の黄金期を飾る作家たちから、最近の作家だと梅津庸一なんかまであって、とにかくすごいの一言。

もう一回言うけど、これが個人コレクションというのが本当にすごいですね。いいものを観させてもらいました。

日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション | 展覧会