はじめての『ゴッドファーザー』

初見、新文芸坐にて。最終日だったので三部作の最初だけを観た。ちょうど今『仁義なき戦い』をBGVとして作業中に流しているのだけど、オーバーラップして面白かった。ただやはり終始ジメジメしている広島と違ってイタリアはカラッとしている。印象的なのが冒頭の結婚式の場面。闇の執務室と光の庭園の強烈な対比。

マーロン・ブランドのドン・コルレオーネがとにかく最高。いるだけで眼福。三部作、ドンが主人公かと思っていたら早々に撃たれて瀕死になるわ、思いの外穏やかな最期を迎えるわで予想外の展開で良かった。死に様が特に印象に残る。ヤクザ映画だとあんな穏やかに死ぬことないものなあ。二代目がマイケルというのも意外だったし、序盤なよっとしてた彼がパキッとしていくのも見どころ。

ところで『ゴッドファーザー』を『仁義なき戦い』の面々で吹き替えたやつが観てみたいんですよね。呉(広島)弁で。マイケルは菅原文太、ソニーは千葉真一、フレドは田中邦衛、そしてドン・コルレオーネは金子信雄で…。滅茶苦茶怒られそうだけど、ドン・コルレオーネと山守義雄、ちょっと雰囲気似てません??

今年ベスト級:『数分間のエールを』

予告編の時点からかなり期待していたけど、とにかく表現が良い。輪郭線なしのセルルック3DCGというスタイルは、短編アートアニメーションの文脈だとそれなりに頻繁に観るけれど、これで一本中編を作って、さらにそれを商業ラインに載せるというのはなかなかすごいことだと思う。同じようなスタイルだと『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』のレミ・シャイエ監督なんかがいたりするけど、『数分間のエールを』のいいところは日本の漫画的表現が効果的に多用されている点で、表情のコミカルさであるとか漫符であるとか、一見独特の尖った表現でありながら、そういった点で入りやすいのがいい。

表現の面でいうと、MVを作るシーンもいい。この話はMVを作って動画サイトに投稿する主人公の奮闘を描くものなのだけど、そのMVを作るシーンが実にいい。このあたりは実際に観てみないと魅力が伝わらないとは思うのだけど、想像上の描写とはいえ、VR/AR時代の創作はこのように進化していくのではないかという明るい未来感があるのが良かった。創作シーンが印象的な最近の作品というと『映画大好きポンポさん』の編集シーンがあったけど、『数分間のエールを』の方はだいぶスタイリッシュでイマドキという感じがする(どちらも好きですが)。

テーマも個人的にはかなり好き。単純にMVづくりでの成功を夢見る高校生の挫折と再生というだけでなく、夢を諦めてしまった創作者たちの視点が入っているのがいい。成功者の視点を「何者にもなれなかった人々」に反転させることで、物語に深みが与えられている。それを68分という短い尺に収めたのも素晴らしい。

個人的にはヒロインの織重先生の目が終始死んでいたのが良かったです。てかあれですね、めちゃくちゃポジティブな『言の葉の庭』。

『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:』の編集が上手すぎる

いうて総集編ですしね…と思って後回しにしてたんだけど、やはり音楽映画、映画館の音響で観るとかなり最高。というか編集が良すぎるんですよね。総集編なんだから編集が良くないとまずいとは思うんですが、それにしても良かった。前篇である「Re:」は1話から8話までの総集編なんだけど、8話といえばあれじゃないですか。で、案の定8話から始まったので例のセリフでOPかと思いきや、最後まで引っ張る。予想はできるけど、やっぱりアガりますね。シンプルに上手いなあ。TV版の面白いところをギュッと詰め込んでいる手際もいい。音楽ものなので曲流しながら回想シーン回すのもできるし美味しいですねー。

何より大画面で観る演奏シーンが良すぎです。テンションあがるわ。TV版を見返したくなりました。