新文芸坐シネマテークvol.11、オルミ特集二夜目は長編2作目の『就職』でした。これから社会に出る就活生の皆さんに是非観ていただきたい映画ですね(笑) 講義も大変勉強になりました。

 都合により第三夜(『婚約者たち』)は行けなかったのが残念。

 前回の第一夜『時は止まりぬ』のレポートはこちら。

大寺眞輔さん講義覚書

雑なメモです。

『就職』について

■処女長編『時は止まりぬ』は企業内ドキュメンタリー映画としてスタート。

■最初からフィクションとして企画したのは『就職』が初めて。

■エディソン・ボルタ在籍中に制作した自伝的作品。

■(インタビューから)自分の人生の一部を語った作品。上司に挨拶に行くシーンなどは実際の体験を元にしている。

■(インタビューから)オフィスが外の世界から孤絶した世界であることに気づく。

■(インタビューから)定年退職した人が毎日のようにオフィスに来るという体験。

■会社の廊下という構造が重要な映画。

■ドキュメンタリー的な現実+主観的現実。

■オフィスの濃密な人間関係。

■会社を描きつつ、一生ここにはいないという決意表明。

■登場する会社はエディソン・ボルタ自体を使っていて、エキストラも実際の社員。

■トゥリオ・ケツィク1が適性検査の人を演ずる。

■(インタビューから)エディソン・ボルタ出資ではない。ミラノにはプロデューサーがいないため、相続したベルガモの実家を売却することで資金を作り、その後数人の友人が出資。

■カメラはエディソン・ボルタから勝ち取る。

■(インタビューから)製作期間は6週間だったが、週末しか撮影できなかった。その期間に他の作品も製作する。

■(インタビューから)試写会に役員が来て激怒。社内で少し問題になる。

■主人公のアップで始まり、アップで終わる映画。主人公ドメニコの興味、眼差しで物語が進む。彼に寄り添った作品。

■キッチンで寝ているドメニコ→まだ働きたくないという気持ち。

■街に行く途中の電車でも自然と子どもに目が行くドメニコ。

■入社試験のあたりはとても青春映画らしい場面。アントニエッタとの出会い。

■コートは作中で重要な記号。サラリーマン的なアイデンティティ。ドメニコにとってはカジュアルなコートであることが重要。

■転職して嬉しいというシーンが全く無い。

■コートを買う→カジュアルなコートが買ってもらえないという挫折。

■伝言係の意味 ①廊下を行き来する ②先輩とのやり取りの面白さ ③様々な人を観察できる立場 ④アントニエッタを探す

■ドメニコが見ていないオフィスの人々の生活 ①単線的な物語+様々な人生があるということを提示 ②ドメニコのこれからの人生の暗示

■アントニエッタ役のロレダーナ・デットはその後オルミと結婚。

■自殺をほのめかす事務員の死とその後の官僚的な手続きによってドメニコは職を得る。

■絶望的な反復が待っているというペシミスティックなエンディング。輪転機の音が鳴り響く。

■(インタビューから)劇中の音楽は現実の一部。教会の鐘は区切りとなる音、失われつつある農村・地域社会の音。

■(インタビューから)アメリカでのタイトルは『トランペットの音』だが、これはこの作品に合っている。

『就職』

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ステッカーもらいました!

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 次回のシネマテーク「チェコ・ヌーヴァルヴァーグ」の前売り券買ったら今回の特集2作品をモティーフにしたステッカーを頂きました。イラストは菅原睦子さん。『時は止まりぬ』のダサセーターが再現されていて良いですね。

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NOTES

  1. Tullio Kezich(1928-2009)。『聖なる酔っぱらいの伝説』(1990年)の脚本とか。