はじめに

 今月は新作9本。積読消化月間だったのであまり劇場に行けなかった…。どの作品も良かったけど、人には勧めづらいものが揃ってる印象。

本の方のログ

今月のおすすめ!

[cf_cinema format=3 no=1 post_id=8809 text=” 今月はどれもこれも面白かったんですが、一本選ぶならこれかなあ…。万人向けじゃないかもしれないけど。
 誰もが「自分の信じたい物語」を持っている時代に、生々しい「現実っぽいもの」を叩きつける映画。『万引き家族』という挑戦的なタイトルと、肝心なところを語らない予告編も確信的。「貧困の末に犯した犯罪は許されるのか?」というテーマで来るかと思いきや、そのはるか先に飛んでいってしまってる。あの一家が日々食うにも困る貧困層で、食べるために万引きしてるというなら話はわかりやすいし、それが「みんなの求める物語」なんだろうけど、そうじゃない。単にそういう犯罪一家がいるという現実だけがポンと投げ出されている。物語の一つの軸となるゆり(佐々木みゆ)にしても、「虐待されている子どもを救った貧しいけれど温かい家族」という方がスッキリするんだけど、家族の背景が次第に明らかになっていくにつれて、様々な思惑が絡んでいることが見えてくる。「わかりやすい物語」「みんなの信じたい物語」を否定するのがこの映画のテーマなんだと思う。そして、そういった劇中の出来事に対しても是枝監督は一切の価値判断を挟まない。良いも悪いもない、そういう現実があるだけなんだ、というこの突き放した態度は、ともすれば思考の停止とも取られるかもしれないが、あらゆる人が「自分の物語」によって他人を断罪する現代においてむしろ必要な態度であるようにも思える。だから本作は「わかりにくい」
 脚本とテーマも素晴らしいのだが、その脇を固めるスタッフ陣も良い。是枝作品でおなじみの美術の三ツ松けいこさんによる家族が暮らす平屋のこれでもかという貧困家庭っぽさ。『そして父になる』のリリー・フランキーんちもなかなかだったけど、今作はさらにごちゃごちゃ感が増していて、リアリティがある。自分も貧困層で育ったから、あーこれこれって感じだった。そしてカメラの近藤龍人さん。個人的に大好きな撮影監督なんだけど、あのシャープでフラットな視線が今作の雰囲気と実によくマッチしている。総体的に観て今年のランキングかなり上位にくる作品。もちろん、その「わかりにくさ」も含めて(というかそっちが本体か)。上映前にSNS上で「万引きという犯罪を肯定している」とか「お金がないならカップラーメンじゃなくて自炊すればいいじゃん」とか「行儀が悪いからたぶん朝○人」いうクソレベルの低い議論してる人たちいたけどあれはなんだったんですかね…?監督はもっと遠くを見ているというのに。”] [amazonjs asin=”B07B57WJNF” locale=”JP” title=”誰も知らない Blu-ray”] [amazonjs asin=”B00HVTEV7G” locale=”JP” title=”そして父になる Blu-rayスタンダード・エディション”]

観た映画一覧(時系列順)

[cf_cinema format=3 no=2 post_id=8774 text=” 「新文芸坐シネマテークVol. 22 知られざるアントニオーニ」第一夜にて。初アントニオーニにして彼の処女長編を観ることになるなど。まあとにかく主演のルチア・ボゼーの可愛いこと!ベッドの上でゴロゴロしてるシーンとか最高!これだけで元は取ったぜ。それにしても初めて撮った長編映画とは思えない完成度ですね。そしてオーソドックスなようでいて随所に刻まれた個性の刻印。彼のこの後の作品を観てないにもかかわらず、作家性がすでに滲み出ているような。カメラワークが全体的に素敵だったんですが、特に良かったのがエレベーターをめぐる螺旋階段を二人が登っていく場面。ルチアのあの情感たっぷりな戸惑うような不安を感じさせる足取り、どこか楽天的な浮気相手のマッシモ・ジロッティ、そして彼らを上から覗き込むようなカメラ。上り下りの無骨なエレベーターの上下運動と圧迫感が彼らの今後を暗示しているかのよう。そういえば、1950年台の作品なんですけど、日本の高度成長期のような活気に満ちた雰囲気も時代を感じさせて面白かったですねー。郊外に一歩出ると田舎だけど、町中は綺麗な車は走ってるし、エレベーターはあるし、モダンなキャバレーはあるし、公共工事っぽい街路の整備が行われていたりして、新品の街っていう感じなのね。最初は話の筋が分かりづらかったんだけど、浮気者二人に焦点が絞られてずんずん悲劇へと突き進んでいく終盤の展開が見事!”] [cf_cinema format=3 no=3 post_id=8777 text=” いやー、もう最後の10分がヤバイ。犯人も捕まって一件落着したと思ったら、まだまだアクションシーンがたっぷり残ってた!このお得感。人工衛星VSサッカーボールですからね(マジで)。あ、あと人工衛星VSドローンもあった。あのスピードの人工衛星(のカプセル)にドローン(C4搭載)をぶつける少年探偵団の操縦能力やべえ。前作、「から紅の恋歌」も最後の展開がぶっ飛んでて、ツッコミどころ満載だったけど、今作も負けず劣らずそれ以上。前作の服部バイクは川中の石の上を器用に渡っていくところに爆笑したけど、今回の安室さんカーも頭おかしくて興奮必死。渋滞の首都高に突っ込むはゆりかもめのレールは走るわ、挙句の果てに人工衛星に体当たりかますわ…(人工衛星とコリジョンするオブジェクトが多いな!)。比較的論理的な推理シーンと真逆のハッチャケぶりは映画ならではですね。極めて小さい個人的な物事が宇宙規模まで拡大していくダイナミズム!正直今回もツッコミどころ満載なんだけど、コナンだし、それくらいいいだろと思わせてくれるこの懐の深さ。「正義の為には法を犯しても許されるか?」というかなりセンシティブな問題が裏のテーマに据えられていて、ただ、そちらのほうは若干おざなりだったような印象がある。コナン自身も盗聴とかしてるし、あまり突っ込めなかったとは思うのだけど、最後のC4のあたりなんかは緊急避難的な言い訳をしてほしかったところではある。最終的な問題解決のために、無実の人(今回は小五郎のおっちゃん)を起訴寸前まで持っていくのは明らかにやりすぎだと思う。冤罪問題が取り沙汰される現代の社会にこの筋書きはそぐわないと感じた。もちろんフィクションではあるのだけれど。それはそうと背景美術がやたらいいシーンが多くて、安室さんが埋立地の公衆電話で電話してるとことかめちゃめちゃ綺麗。それとは対照的に作画は微妙なシーンがいくつか…。クライマックスのアクションシーンが力入ってるんで相殺されますけど。”] [cf_cinema format=3 no=4 post_id=8780 text=” 「コナン」に続けて、公開初日(6月1日)の午前3時から観たんだけど、笑い過ぎて全く寝れなかった笑 初っ端の(めちゃくちゃ趣味の悪い)ウルヴァリンオルゴールとデップーバラバラからもう最高!!テンションもテンポも下がらず最後まで突き進むノリの良さ。前作に引き続き、全編、映画を中心としたサブカルネタのオンパレードで、画面もセリフも情報量が多い多い。二度三度観たくなる密度。特にライアン・レイノルズの過去作に対する「自虐的」言及を含むエンドロールでのシークエンスが最高。過去改変という劇中のガジェットも巧みに使われていて実に上手い。全編に渡ってかなりきついゴア描写が散りばめられているものの、ほとんどコメディのノリなので人がバラバラになってるのに大笑いしながら観られるのも良いよね。特に中盤のX-フォースの「活躍」シーンは実写版『ハッピーツリーフレンズ』!透明人間ヴァニッシャーの正体が一瞬わかるシーンとか場内爆笑!まさかあの人が、あの数秒のために出演するとは…!個人的には『インビジブル』で透明人間やってたケヴィン・ベーコンだったらさらに最高だった笑 あとノリで応募してきちゃった一般人のおっさん・ピーター(ロブ・ディレイニー)も一般人のくせにいいキャラだった。エンドロールで過去が変えられててめっちゃハッピー(他のやつはどうなったんだろ…)!アクションパートのヒロインであるドミノ(ザジー・ビーツ)の能力は「運がいい」だけなんだけど、劇中で一番活躍しててクソ強い上にアクション映画映えがハンパない。ハリウッド版『ラッキーマン』こんなかんじやろな、みたいな。後半の児童養護施設での戦闘とかピタゴラスイッチさながらに児童虐待クソ野郎たちが死んでいくの、ファイナル・ディスティネーションみがあってグロくて最高!劇場でみんなでドッカンドッカン笑いながら観るのが最高だと思うので応援上映とかあったら絶対行きたいタイプの映画ですね。「理事長死ねー!!」とかやりたい。あ、そういえば前作から続投してる何の能力もないタクシー運転手ドーピンダー(カラン・ソーニ)に最高の見せ場があったのも良かった。あの最後の茶番感とぶっこんでくるタクシー、ほんと好き。”] [cf_cinema format=3 no=5 post_id=8790 text=” 小松菜奈の原作再現度だけでも必見。目付きの悪さがここまで生かされた映画がかつてあっただろうか。あ、原作未読かつこの前やってたアニメも観てません。なので最初はスルーするつもりだったんですけど、監督があの超傑作コメディ『ジャッジ!』(2014)の永井聡監督じゃないですか!去年の『帝一の國』も狂ったように面白かったし、これは絶対観るでしょ、というわけで急遽観たわけなんですが…。いやー、前評判、というか「観てない人による思い込み評論」、すなわち「大泉洋演ずる中年男性が女子高生を性的に喰い物にする」とは完全に真逆の物語ですよね。むしろ、紳士かつ真摯すぎてリアリティがないくらい誠実な映画でした。ていうか『ルパン三世カリオストロの城』。大泉洋演ずる近藤店長が紳士すぎるんですよね。突然、女子高生から告白されて、自身もテンパってるのに、彼女の気持を無下に扱うでもなく、不自然に距離を取るでもなく、真摯に諭すように説得していく様にむしろ惚れる。あんな日本人中年男性いねーよ!という声が上がるかもしれませんが、目指すべき中年男性像を示してくれたことに感謝すべきでしょう。特に「こんなにセクハラセクハラ言われたらコミュニケーションなんて取れねーよ!」とか抜かしてるおっさんたちね。手品の場面とかまんま「カリ城」意識してんじゃねーかってくらいだったけど、ハグのシーンも我慢してほしかった笑 おしい!女子高生と中年男性の恋愛コメディのようなドタバタ劇が、雨宿りしていた二人の再出発という真のテーマにシフトしていくのも上手い。表層的なあらすじと本質的な部分が調和していて、素晴らしい人間ドラマになっています。あと、最後の青空をバックに大泉洋と小松菜奈が「友達」になる場面がね、小松菜奈の涙をこらえる演技といい、やや長尺な撮影といい、何気ないカットなのにものすごく印象に残る名場面なんですよ。風評被害的に嫌厭する人がいそうなので、そういう人にこそぜひ観て欲しい映画でした。あ、あと監督の前々作『ジャッジ!』、全く評価されてないけど、これもまた泣くほど笑えるのに非常に真摯なテーマを持つ傑作なのでみんな観て!”] [amazonjs asin=”B00J86BEZM” locale=”JP” title=”ジャッジ! Blu-ray”] [cf_cinema format=3 no=6 post_id=8802 text=” 今年のはじめに公開されたときはイオンシネマでしかやってなかったので、今回新宿武蔵野館までやってきてくれてようやっと観れました。イオンシネマ、都内は意外と少なくて行きづらいんよね。さて、明るく拗れた恋愛映画の皮を被った不穏な人間ドラマが魅力の今泉作品。前作である『退屈な日々にさようならを』は「死」の影が濃厚に見え隠れしつつ表舞台に飛び出してくる凄まじい作品でしたが、今作では「孤独」が裏テーマ。まあ裏テーマも何も、中盤には孤独にまつわる本を集めた本棚まで出てくるのでかなり露骨なんだけど、恋愛(結婚)へと踏み出せないアラサー女子の心が揺れる様を描いた作品の軸としてはやはりかなり異色でそこが面白い。普通だったら男Aと男Bという選択肢が提示されるところ、この作品では男A(たもつ(山下健二郎))と「孤独」が併置される。「私には孤独が必要なんだと思う」なんてセリフ、恋愛映画らしからぬセリフなんだけども、孤独大好き人間の自分にとってはこれほど共感できる言葉というのもなかなかない。新鮮。それにしても今泉監督の空気感好きだなー。やたらと明るくて、静か。「MV、ミュージック抜き」みたいな変な雰囲気。ふみ(深川麻衣)とたもつがお互いの「非日常」を見せ合う場面も良かった。あなたの日常は誰かの非日常。誰かを好きになって好きになられるというのはそういう「非日常」を日常のものにしていく過程なんだと思う。だからそれが日常になってしまったら…。「スキにならずに、スキでいる。」というキャッチコピーの秀逸なこと!”] [cf_cinema format=3 no=7 post_id=8805 text=” かなり久しぶりに再見。ちなみに前回は高校生くらいのときで長過ぎて途中で寝てた。まあだから今回が実質初見ですね。3時間半、全然飽きないのがもう奇跡(前回は寝ちゃったけど…)。途中休憩があるというのもあるけど、単純に面白い。古い映画で上映10:00からだというのに満席だというのも納得ですね。老人ばかりじゃなくて若い人も多かった。意外。4Kリストアということもあってか、鮮明な画面で古臭さが全く無かったのも最高。いやもうね、三船敏郎(菊千代)がとにかく天使。可愛すぎるヒゲ。天才!そして志村喬(勘兵衛)の安心感しかない佇まい!っていうかみんな良いよね。キャラものの基本というか、美少年(勝四郎)あり、クルデレ(久蔵)あり、馬鹿(菊千代)あり、ムードメーカー(平八)あり、みんなキャラ立ってるなー。それにしてもやられた侍の実に75%が種子島によってやられてるわけですけど、そういった意味では古い侍の世界の終焉が見え隠れする映画でもありますね。「農民が侍を雇う」という根本的なプロットにしても、かつては一方的な支配者であった侍が、多少の同情と義理という面はありつつも、金(≒米)によって対等の契約関係を結ぶという社会構造の変化を描いた映画でもあると思います。最後の「今回もまた負け戦だった。勝ったのはあの農民たちだ」というセリフも趣深い。さて、帰宅してあの名作『SAMURAI7』を観始めたんですが、本編観た直後だと「あ、水車!」とか「あ、「ご冗談を」!」とか盛り上がれて非常によろしい。”] [amazonjs asin=”B00UZKGQVC” locale=”JP” title=”アニメ「SAMURAI7」Blu-ray BOX”] [cf_cinema format=3 no=8 post_id=8816 text=” 前作がびみょーーーーーな感じだったのでそんなに期待しないで行ったんだけど、かえってそれが良かったみたいで大変楽しめました。期待よりは、という意味かつ、ゾンビものという補正がかかってますけど。ツッコミどころは山のようにあるけどあの長さで最後まで退屈せず、しかも投げっぱなしエンドじゃないゾンビ映画ってのは貴重。まず、最後の都市である「The City」のビジュアルが良いよね。普通の都市じゃん、と言えばそうなんだけど、あの荒廃しきった世界の中にすっくと立ち並ぶ壮麗な高層ビル群には感動する。というかファーストカットの、ポストアポカリプス世界を鳥瞰したカットがもう良いんですよ。前作から間空いてたんで展開忘れてたんですが、ニュート(トーマス・ブロディ=サングスター)が出てきたあたりでなんとなく思い出した。あの顔、忘れがたい。ミンホ(キー・ホン・リー)を助けるために最後の都市に侵入するという筋書きだけど、難攻不落っぽい言い方されてる「壁」も簡単に越えられるし、色んな意味で穴だらけの脚本だった。WCKDもあんな扱いしたらミンホもブチ切れるでしょ。丁重な扱いしてればまだなあ…。最後の方はめちゃくちゃスケールの大きな『ランド・オブ・ザ・デッド』という感じで盛り上がるんだけど、レジスタンスのリーダーのおじさんが特攻かけるのイミフ…。地下から行けばいいじゃん…。あれだけ無実の人を殺しておいてハッピーエンド感出すの、クソ後味悪くないですか?いろいろと見どころはあるんだけどさ…。あ、何かとでかいものを吊り下げる場面があるのも印象的だったなー。バスのところとか良かった。まあただ、なんだかんだ言って一作目が一番面白かったな…。「外の世界が実は…」パターン、見飽きた気がする。”] [cf_cinema format=3 no=9 post_id=8829 text=” もうね、「五城合体!!!!!」。これに尽きる。戦国版バットマンを観に来たと思ったらグレンラガンだった…。何を言っているのか分からねーと思うがマジです。開始3分で21世紀のゴッサムシティから中世日本の尾張の国にタイムスリップして、開始10分でバットモービル(整備済み)が出て、開始15分で廃車になるという凄まじい展開の速さ。わけがわからないよ。85分しかないからな。何も知らないでみたら1.5倍速で流れてると勘違いしそうなくらいのスピード感。アクション、アクションまたアクションが雪崩のように押し寄せてくる。このごちゃごちゃして狂ったようなテンポ、好きな人は好きだけど、無理な人はマジで無理だと思う。賛否両論も頷ける。最後の方とか城は合体するわ巨大猿は出てくるわやたらとカートゥーンっぽい巨大バットマンは出てくるわでもうめちゃくちゃ!いいぞもっとやれ!バットマンはひたすら真面目キャラなんだけど、その分ヴィランたち、特に第六天魔王ジョーカー様(高木渉)のテンションが今まで見たことがない超ハイテンションなジョーカーでもう最高!合体のところの「ヴィランの諸君!合体だよぉお〜〜〜!!」のとことかほんと好き。デザイン良かったのがトゥーフェイス(森川智之)で、あいつやっぱり実写だとちょっとグロいんだよね。アニメだとちょうど良いカッコよさ。双面城とかいうノエインに出てきそうなけったいなデザインの城も良い。子安武人演ずるゴリラグロッドの高速手のひら返しも笑ったし、やっぱり子安はゴリラだよね!あー、あと作画に興味ある人だと途中にものすごいカットがあるのでそれも必見!ジョジョのOP観てたと思ったら急にアートアニメになるの。「完全にこれ大平(晋也)さんじゃん」と思いながら観てたんだけど、エンドロール(「牧歌パート」とかいう名前がついてる!)ではうつのみや理さんの名前しか見つけられなくてパンフ買いました。パート作監は宮本託自さんで、宮本さん、大平さん(原田慎之介名義)、うつのみやさん、崎山(北斗)さん、斉藤(拓也)さんが原画。内容もぶっ飛んでて、「記憶喪失になったジョーカーとハーレイ・クインが山奥で農民生活を営んでいる」という。あそこだけいい意味で浮いてた。アクション映画ファンにも作画マニアにもオススメできる、色んな意味で必見の映画!めっちゃ人選ぶけど。DCファンは知らね。このスタッフでNetflixあたりでシリーズ作って欲しいなー。”]
[cf_cinema format=3 no=10 post_id=8835 text=” 全体的に、終わってみればとてもいい映画…いい映画なんだけども、主人公の外村君(山崎賢人)がクッソうざい。はじめのうちは新入社員やしな…と思って観てたんだけど、いやー、厳しくないですか?真面目も度をすぎるとこうなるんやな、という典型。初っ端から事務のおばちゃん(堀内敬子)に「コツコツってなんですかね?」とか聞いちゃってるの、新入社員という下駄履かせてもクソリプ過ぎないですか?しかもみんな忙しそうにしてるんやで?で、こいつのウザさが頂点に達するのが、お得意様の中学生姉妹(上白石萌音・上白石萌歌)がコンクール出たあとのアレよ。いやー、ちょっと自意識過剰すぎません?演技も過剰なら演出も過剰。めんどくさそー。まあここがターニングポイントになって、クライマックスは非常に良いのですけど。あー、あとちょくちょく出てくるけど、本編にほとんど影響してこない外村君の家族の描写とかなんだったんだろう。ばあちゃん(吉行和子)も意味ありげに椅子に座ってるんだけど、どんな意味があったのかちょっと自分にはわかりませんでしたね。馬鹿なので。ただ、こういった変なところを除けば、地方に生きるちょっとマイナーな分野の駆け出し職人が成長していく物語としてとても良くできています。ピアノの調律師の話なんで、耳馬鹿な自分にとっては縁遠い話だし、どうせ聞いても違いわからないだろうなー、と思って挑んで見れば、これがまた驚くくらい違うんですね。特に「硬い音」と「柔らかい音」の比較をしてくれるところ、全く違う音になってるので、これからの「音」に向き合う姿勢が一転しそうなくらいの衝撃でした。で、また山崎君がここでゆで卵に指を突っ込んだりしているイミフなシーンが入ったりするんですけど…。ピアノの調律師が北海道の山奥で食っていけるのか、という疑問も持ったんですが、なるほど、各家庭にあるピアノを見て回るんですねー。なるほど、という感じでした。あと師匠の三浦友和の安定感がハンパない。”] [cf_cinema format=3 no=11 post_id=8819 text=” 新たなるトラウマ映画誕生。しかも実話…。実際の「事件」が起こるまでがひたすら長く、そしてあっさり終わるのだけど、その効果は抜群。小火程度じゃなかったのかよ…。防火テントの訓練ちゃんとしたのに…。厳しい訓練と任務の成功、そしてホット・ショット(精鋭部隊)への昇格。合間に隊員たちの抱える家族との問題が描かれる。序盤こそはヤク中ニートのブレンダン(マイルズ・テラー)の成長(更生)物語のように展開するのだけど、軸足は次第に指揮官のエリック(ジョシュ・ブローリン)の家庭の問題に移っていき、そして唐突に終わる。実話ならではと言うべきか、この唐突に、無慈悲に、否応なく、伏線も何もない幕引きには驚かされた。現実は非常である。フィクションであったとしてもたっぷり100分以上をかけて感情移入させられていたらつらすぎるというのに、実話という事実が追い打ちをかける。勇壮なお仕事映画だと思ってデート映画に選んでしまった人もいるんだろうな…。ジョシュ・ブローリンと妻アマンダ役のジェニファー・コネリーの家族をめぐるやりとりとかかなりセンシティブだし、一人で観るべき映画だなー。それにしてもアメリカは毎年毎年こんな山火事に脅かされてるのか。住みづらそうなイメージだけど、日本で言うところの地震や台風みたいなものなのかな。森林消防隊という職業、日本ではあまり聞かないのでどんな消火活動をしているのかイメージしづらいんだけど、本作の中でそれがどんなものか知ることができたのは良かった。こんな浅い溝で効果があるのかな?と思ってしまうのだけど、樹齢2000年の樹を守るという、物語のターニングポイントとなる戦いを真上から映すカットは非常にわかりやすく、そして印象的だった。あと炎の速さね!ブレンダンが退避してるシーンとか、文字通り「炎が追いかけてくる」。あれは怖い。結構離れてるじゃん、と思ってるとあっという間というのがよくわかりますね。炎はあれはCGなんですかね?単純にビジュアルの技術力もすごい。必見の映画だけどもうあまり観たくない、素晴らしき鎮魂曲映画。”] [cf_cinema format=3 no=12 post_id=8843 text=” オールナイトイベント「新文芸坐×アニメスタイルセレクションvol.104 東映長編の名作」にて。ラインナップは前回(vol.60 映画館で出逢うアニメの傑作・東映長編特集『ガリバー』『ホルス』『長猫』『ど宝』)から『ガリバーの宇宙旅行』が抜けて、この「わんぱく王子」が入った形ですね。初っ端から森康二みあふれる動物(タイガー&バニー)が最高。特に虎のほうの四角い感じ。スサノオが道中出会う神様たちのデザインも平面的で面白いんですよね。ツクヨミのデザインとか幾何学であまりリアルじゃないんだけど、そこが良い。火の神の仁王立にデザインも良い。そういえば、火の神との戦いの場面とかもろ伊福部サウンドでテンション上がりますね。後期の作品に比べると、動きもヌルヌルしていて明らかに手間がかかってますねー。天早駒を手に入れてからのクライマックスのとんでもないアクションシーン、あきらかにおかしいカットは月岡さんで岩が落ちるところとか水の飛沫みたいなめんどくさいけど地味なところは大塚さんがやっていたという話がトークで聞けたので、そういう目線で見るとまた面白い。なお、一番好きな場面はスサノオが高天原でやらかすところですね。タイタン坊の「大丈夫ですかねえ…」のあたりとか、社会人になってからだとなんとなく別の意味が出てきて…。”] [cf_cinema format=3 no=13 post_id=1839 text=” フィルムの状態がめちゃくちゃ良かった!これまで観た中でベストの状態でした。この作品は、なんといってもヒロインのヒルダ!目つきがいいですよね。あの蔑むような視線。市原悦子さんの凛とした声と相まって、いかにも氷の悪魔グルンワルドの妹といった貫禄。トークの方で、森康二さんがヒルダの「キャラ作監」的な役割をしていたと聞いて(ていうかキャラデザも森さんだしね)、このスッキリした線は森さんかと納得。大塚さんが担当されたというホルスの線の太い雰囲気とは真逆で面白い。それにしてもホルスはよく動きますねー。冒頭の灰色狼との乱闘場面からもうすごく動くんだけど、好きなのは大カマス退治のシーンですね。あそこは盛り上がる。音楽もいいし。後半のいいところ(雪狼とかマンモスとか)を結構寝ちゃったんだけど、うん、観れてよかった!”] [amazonjs asin=”4196695140″ locale=”JP” title=”「ホルス」の映像表現 (アニメージュ文庫 (F‐002))”] [cf_cinema format=3 no=14 post_id=1843 text=” 今回のオールナイト、ゲストの叶先生が色んな大学で講師やられている関係か、大学生くらいの若い方が意外と多かったんですが、ちょうど前の席に座っていた女子大生(っぽい)3人組が大絶賛してたのがこれ。「ペロがかわいい!」「全然眠れなかった!」って口々に称賛していて、自分のことのように嬉しくなりました。オールナイトの3本目って絶対眠くなるし、自分も何回も観てるからいいかーって感じだったんだけど、確かに全然眠れなかった。4本の中では一番笑いが上がってたのも嬉しい。一番受けてたのがやはりドタバタアクションシーンで、最初の兄弟の家の中での乱闘シーン、ペロと殺し屋猫が並んで金槌を振るってるシーン、それとクライマックスの追いかけっこの場面でのルシファーの「くやしぃ~~」は場内爆笑という感じでした。トークで出てましたけど、魔王ルシファー、可愛いですよね。顔色が露骨に変わるのといい、仕草が女性っぽいのといい。名キャラクターだと思います。それにしても今回改めて思ったのがルシファーの城の複雑さですよ。あんなごちゃごちゃした建造物もあまり観たことがない。制作してる時は誰が管理してたんですかねー。トークの際には宮崎さんが設定作ったようなことが言われてた気がしたんですけど、確かにカリ城ですよねー。カリ城風アクションもあるし。長猫シリーズはこればっかりかかるので、そのうち三部作一挙上映とかやってほしい(人は入らない気がするけど…)。”] [cf_cinema format=3 no=15 post_id=1875 text=” 東映長編でいっちゃん好きなやつ!オープニングがもう楽しい。これもまたヒロインが魅力的な作品ですよね。元祖ツンデレ。キャシーは最初はジムの妹的なキャラだったらしいんですが、宮崎さんが「ヒロインは主人公と同じくらいの年齢でキツイ性格じゃないとヤダヤダ!」と駄々をこねた結果ああなったという逸話がトークで語られてて、まさに宮崎さんの好きそうなキャラですよね。性格がキツイナウシカみたいな。やっぱり面白い作品って印象に残るキャラクターがいるんですよね。長猫のルシファー然り、ホルスのヒルダ然り。個人的には海賊団も大好きなんですけど。シルバー船長の憎めない悪役っぽさとか八奈見乗児さんの演技が光る男爵とか。特に男爵はデザインも声もまんま『ハッスルパンチ』のガリガリ博士で、この人のどこかすっとぼけた憎めない悪役感に毎回感情移入してしまう…。宮崎さんお得意のモブ豚がどっさり出てくる劇中屈指の名場面の一つである海賊船VS海賊船の場面、今思うと(ラピュタの)タイガーモス号VS空中戦艦ゴリアテっぽいですよね。クライマックスの定番追いかけっこもいいんですが、個人的にはこっちのほうがわけわかんないくらい盛り上がってて好き。途中、数カット退色してるところがあったけど、こちらも状態のいいフィルムでした。”]

まとめ

 今月はどれも良かったんですよ。個人的には大当たりの月!でも人に勧めるとなると…。『デッドプール2』はグロ耐性ないと厳しいし、「コナン」はクライマックスの超展開を許せる人じゃないとキレそうだし、『万引き家族』はスッキリしないし、『パンとバスと二度目のハツコイ』もモヤモヤした恋愛ものだし(だがそこがいい!)、『オンリー・ザ・ブレイブ』は鬱になるし、『ニンジャバットマン』は友達がすでにキレてたし…。

 というわけで、小松菜奈と大泉洋の演技が光る『恋は雨上がりのように』は万人に勧められる作品ということでオススメしておきます!

 来月はあまり観たいのがないけど、なんかタイムラインで大大大絶賛されてる『カメラを止めるな!』は観たいなー。ゾンビ映画だし。あと多分定番で面白い『ジュラシック・ワールド2 炎の王国』。あ、やっと新文芸坐さんが『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ 王の凱旋』の二本立てやってくれるので絶対観に行きます!