目次
今回のアニメスタイルオールナイトは恒例の今石洋之監督特集!『天元突破グレンラガン』の劇場版は過去2回(vol.3とvol.40)で上映されてますね。『アベノ橋魔法☆商店街』の第3話「合体!アベノ橋☆大銀河商店街」も実はvol.3の時に上映されていたりします。劇場で2回も上映されるTVアニメの1エピソードってすげーな。今回の目玉はもちろん10周年記念のグレンラガンなんですけど、個人的にはあまり観られない『宇宙パトロールルル子 初恋BIG版』と『SEX and Violence with Machaspeed』っすね!
前回の「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol.92 吉浦康裕の世界」のレポートはこちら!
トークショー
!notice!
トークの内容につきましては、その場で速記してまとめています。事実誤認、不適当な記述などございましたらご連絡ください。対応させていただきます。
登壇者
今石洋之監督(言わずと知れた大アニメーター。以下「今」)
小黒祐一郎さん(アニメスタイル編集長、司会。以下「小」))
色々あって5分遅れくらいでスタート!
新文芸坐・花俟さんによる前説
花 私事ではありますが、「アニメスタイル011」に私が載っています。詳しくは買って確かめていただければと思います。100回まであとわずかですが、「グレンラガン」はその中でも3,4回上映しています。10周年ということですが、10年前、皆さんどうだったでしょうか?
「グレンラガン」10周年!
小 今日のお客さん若いですよ!
今 嬉しいですか?
小 え、俺はどうでもいいけど(笑)さっき楽屋で話してて、当時幼稚園の人とかもいるんじゃないかって…。(観客に)当時幼稚園児だった人ー?え、結構いるよ!今日はじめてグレンラガン観る人ー?あ、結構いる!ネタバレできないですね…。あの人とあの人、なんで死んだんですか?
今 死にましたね(笑)
小 今日は予習してきました?
今 見返したんだけど、結構忘れてましたね。順番入れ替えたのとか思い出したりして。
小 俺もちょっとだけ観てきたんだけど、作品が若いよね。
今 10年経ってみると若さだけで作ってるなって。
小 当時はわからなかったんですけど、結構キャラクターのこと好きですよね?
今 好きですよ。
小 端役も好きですよね?むしろ端役の方が…。
今 スタッフもみんな好きですねー。こいつ3カットしか出てないのに、とか。
小 見返して思ったのは、当たり前なんだけど、あるキャラが死ぬシーンとか、こいつら本気で作ってるなって。
今 入り込みすぎましたね。
小 終了後にトークイベントやったけど、スタッフみんなグレン団だったもんね。
今 そういう雰囲気だったよね。やっとかないと、みたいな。
小 それまではもっとシニカルでしたよね(笑)
今石監督のロボット遍歴
小 今更こんなこと聞くのもアレですけど、今石監督は昔からロボットアニメ好きだったんですか?
今 むしろロボットアニメだけが好きでしたね。ロボットが出てこないと満足しない。ドンパチがあるといいんですよね。「ハイジ」1とか名作劇場見たのって20歳過ぎてからですよ。教養として。宮﨑駿と高畑勲がいかにすごいかという。
小 それで業界入ってからロボットアニメやりたかったんですよね。今日は「アベノ橋」の第3話(「合体! アベノ橋☆大銀河商店街」)やりますけど、(観客に)観たことない人ー?おー、8割くらい観てない。
今 第3話はSFだったんでロボット出して、子供の頃からのロボットアニメの引き出しを全部開けました。それで「グレンラガン」で引用したところもありますね。アベノキングは「グレンダイザー」2と「ザンボット」3のカラーリングにしようって。敵は今見ると顔面にしか見えないですね。
小 その後、「グレンラガン」をやることになって、最初から今石監督だったんですか?
今 最初は違うタイトルだったんです。戦国ロボット物みたいな感じで、当時は織田信長と豊臣秀吉がモチーフになってて、最初に名乗りを上げるあたりとか結構残ってますね。自分の好みに変えましたけどね。
小 「グレンラガン」のポイントはどこでした?
今 一番は人の人生を描くということ。大河ドラマ的なものをロボットアニメでやりたいというのがあって、4部構成にしました。自分の好きなロボット物を全部入れるには4部構成にしなきゃと。「マジンガー」4だけでもいけないし、「エヴァ」5だけでもいけないし。
小 最初から「ガンダム」6っぽい感じになる可能性もあったんですか?
今 企画書には「未来のアニメ」とかいうわけのわからないことが書いてあったんですよ(笑)
小 主としては「スーパーロボットもの」になってるわけですね。
今 ちょっと昔の感じにしたくて。斜に構えるんじゃなくて、まっすぐに行こうと。
小 熱血要素が多いですよね。
今 「トップ」7で一番好きなのは5話目で合体するところなんですよ。熱血要素、カタルシスがあるところに惹かれます。
小 現場のテンションはどうでしたか?
今 僕がアニメーター出身なので、アニメーターの鬱憤を晴らすというのがモチベーションになるだろうと思っていました。2000年台に入って丁寧な作りの作品が多くなって、少し外れたことをすると演出や作監に直されてしまって鬱憤が溜まっているんじゃないか、自分は溜まっていたからそれを晴らしたかったというのがあります。
小 画の統一とか。
今 画の統一よりも熱量とか勢いとかを大切にしたいですね。
小 スタッフとの付き合い方はここで固まったわけですか?
今 そうですね。作品に貢献しているとか、コミットしているということがモチベーションにつながると思います。
小 今日はTV版に手を加えたものですが、アクション作画とかマシマシですよね。
今 宇宙に出たら現場もちょっとおかしかった。脳が麻痺してた(笑)
小 ひどい質問なんですけど、今アニメスタイルでは男の乳首問題が取りざされているわけですが、2000年台以降で言うと二大乳首アニメは『おそ松さん』8と「グレンラガン」ですけど(会場爆笑)、どうして描かれたんですか?
今 男女平等で。別に見たいものでもないけど、無いのは気持ち悪いからね。今でも女の乳首は光で隠されているけど、男の乳首だったら書いてもいいでしょって。キルラキルでは男の乳首も光りますけど(会場爆笑)
小 錦織さん9いかがだったんですか?
今 彼は男もセクシーに描こうとする人だったので、別にやめてくださいとも言われませんでしたね(会場笑)
今石「「パンスト」よりもひどいものを…」
小 今日の他の作品は「ルル子」ですね。感想言っていいですか?今石さんの作品なのに女の子がかわいい!彼女の気持ちにそって進みますし。
今 がんばりました。やってないことをやってみようと。「ルル子」も一周年なんですよね。(会場拍手)
小 もう一本は「マッハスピード」。これはアニメスタイルの良い子に見せるのははばかられる作品ですね(会場笑)
今 「螺巌篇」のあとには忘れてますよ(笑)
小 パソコンの小さい画面で観るのと劇場の大画面で観るのとはかなり印象が違いますね。今石さんが自由に作ってる感じですね。
今 「パンスト」10よりもヒドいのを作らないと並み居る先輩たちに勝てねえぞ!と(笑)
小 まだ親戚には見せられますね。
今 見せたくないですね(会場笑)やっちゃいけないことほどやりたい。
小 作ってるもの観ると全然縛られてる感じしませんけど(笑)恒例の「デッドリーヴス」11に負けないぶっ飛んだ作品ですね。
Q&Aコーナー
Q 「グレンラガン」の3部で出て来る刑務所は『あしたのジョー』12の「ねりかん」ですか?
A 正解!いろいろネーミングの法則があったんですけど、いきなり「ねりかん」かあ…って。
Q 「ニアボックス」まだですか?
A 出したいですねえ…。ヨーコボックスのあとでニアボックスも作るべきだろうと言ってたんですけどいつのまにかなくなりましたね…。アレは僕よりも錦織君の仕事になると思うのでANIPLEXと彼が作ると言ったらできるんじゃないでしょうか。
Q 今アイドルアニメを作るとしたら?
A 一人の子が左腕、もう一人が右腕、5人で一人のアイドル、みたいなかんじですか…?
小 石森章太郎っぽい(笑)
Q 「カレカノ」13や「ルパン」のTVスペシャル14の頃を思い返すとどうですか?
A あの頃は目立つことだけ考えてましたね。あのころは水島精二さん15とよく仕事をしていて、手応えを感じたのを覚えています。自分の描いたものが放映されたりして少しずつ上手くなっていくのは楽しかったですね。どうやっても目立てないやつとか、そういうモヤモヤはありましたけどね。
Q 「アイカツ」16と「メダロット」17の仕事を受けた経緯を。
A 「メダロット」はPA(ピーエーワークス)の堀川さん18で、タツノコ(タツノコプロ)のころから付き合いがあって、「メダロット」で声かけてもらいました。3つ全部(絵コンテ・演出・作画監督)やったのは初めてだったので感謝していますね。PAは「レイトン教授」19のアクションパートだけやりましたね。「アイカツ」は木村さん18つながりで、「ルル子」終わったあとに電話がきて…。
小 何描いたんですか?
今 ロボットです(会場笑)全然「アイカツ」っぽくなかったですけど(笑)
Q 「グレンラガン」のコミカライズ20のアニメ化はしないんですか?
A あれはいいですよね。会わないはずのキャラが一緒に住んでたりして。
おわりに
小 近況はどうですか?
今 新作はまだ言えないんですけど、ここ2,3日原画の仕事が忙しくて…。某最終回の18。
小 今後はどんなの作りたいですか?
今 スカっとするのを作りたいですね。小難しい話の後でスカッとしたいですね。あ、今回の「ルル子」はイベント上映版で、作ってるときから、これ繋げるだけで映画にならねえかな、と思ってて、ある意味グレンラガンの劇場版とは同じようで違う作り方になってます。新作カットはないんですけど、それなりに観れるものになってます。
小 『キルラキル』も作ってよ。『キルラキル』はいくらでも短くできるじゃん。あいだはナレーションで繋いで。あのあといろいろなことがあってーって!次回は上映したいですね。
上映作品
[cf_cinema post_id=6327 format=3 text=” 短いので毎週ちゃんと観れてたアニメっすね。今回はイベント限定上映版の「初恋BIG版」ということだったんですが、すごく普通に纏まっていて驚きました。観やすい!普通に劇場で金取って流せるレベルだと思います。画作りは『インフェルノコップ』っぽいんですけど(笑)今石節と言っていいのか、超ハイテンションで物語がアレよアレよと進んでいくのを観るのが楽しい作品ですね。ワイドスクリーン・バロックみがある。後半のTRIGGERの諸作品を舞台にした惑星を巡っていくパートがいいですね。美人探偵局、下的にはちょっとマイルドになってるんだけど、ヤクザの組員たちがヤクザジープに乗って行くカットのパワーアップっぷりがもう最高!ヤクでもやってんのかと思った。「マッハスピード」でもこれやってくれたら良かったのに笑 あ、メインキャラでは顔色が悪いハル子さんことミドリさん推しです!”] [cf_cinema post_id=6329 format=3 text=” これもまた劇場で観たかった作品!ていうかBlu-rayも何も出てないから普通じゃ観れないしね。前回はバルト9の「日本アニメ(ーター)見本市」あたりで観たんですが、新文芸坐の大画面と大音響で観るマッハスピードはやはり違いますね。今石監督は「パンストを超えるものを」と仰ってましたけど、流石にこれはテレビでは流しづらいっすよね笑 「日本アニメ(ーター)見本市」の中では一番好きな作品です。色彩設計とデザインまわりのポップな感じもいいですし、何よりアニメーションとしてのキレの良さ!山寺さんと林原さんもベテランらしい芸達者ぶりですよねえ。ああ、「日本アニメ(ーター)見本市」もBlu-ray出して欲しいなあ…。”] [cf_cinema post_id=6331 format=3 text=” 2009年10月17日のvol.3「今石洋之のロボットアニメ魂!」以来、実に90回ぶり!TVアニメの1エピソードを上映するのは非常に手間がかかるそうなんですが、今回もまた大画面で上映ということで非常にありがたいですね。2話まで観てなくてもなんとなくわかるし、ちゃんとアバンで前回までのあらすじが説明される親切仕様。トーク聞いたあとだと、これは確かに「ガンメン」ですわ。アクションも今石監督っぽい感じですし、「グレンラガン」の原型として観るとまた面白い。そういえば、この前も「アベノ橋」何話か上映したし、いっそのこと一挙上映やってほしいっすね!”] [cf_cinema post_id=6333 format=3 text=” さて、今日のメイン!…なんですが、ここで新文芸坐始まって以来の珍事が!なんと前編(紅蓮篇)と後編(螺巌篇)を入替えて上映してしまったのです!笑 しかもそのまま5分くらい上映が続くもんだから、「あれ?テッペリン攻略戦から始まるんだっけ…?○○○もう死んでるけど…????」となってしまいました(久しぶりに観たので!)。でもそんなトラブルに対して客席から温かい拍手がおくられるあたり、愛されてる作品だなあ、と感じました。紅蓮篇の見どころとしては○○○の死に様の場面ももちろんそうなんですけど、劇場版のオリジナル展開である対四天王のところですねー。あの圧倒的なスピード感。ちょっと新規カット追加したとかそういうレベルではなくてもう完全に別物になってるんですよね。最初観た時、「これ、総集編じゃねーだろ!」って衝撃を受けました。TV版はTV版でいいんですけど、こっちのわけわからないテンションで瞬殺される四天王もまたいいですね笑”] [cf_cinema post_id=6335 format=3 text=” TV版リアルタイムで観てた時にはいきなり青年シモンが出てきてびっくりしたものです。懐かしいなあ。10年前とは思えないほどの熱量!色褪せない面白さとクオリティ!後半の加速度的にスケールアップしていく展開、やっぱり熱いですね。あと、紅蓮篇と同じく改変が著しくて、TV版で死んだ連中が尽く死なないことになってるのも個人的には最高!全員天元突破とかマジ現場のテンションが伝わってきますよねえ。熱い。○○○の兄貴は死んだままだったけど…。あとニアね。でもこの物語、彼女をあそこで生き返らせちゃったらいけないんですよね。「死」というものに対して最低限真摯であるというか…。そしてあのエピローグ!SFだなあ…。”]写真など
まとめ
10周年記念ということもあって、全作品拍手がおくられる温かいオールナイトでした。スクリーンで観る「グレンラガン」やっぱりいいですね!明け方だったのに見入ってしまいました。トークショーでも言ってましたけど、次回の今石オールナイトでは是非『キルラキル』を観てみたい!TV版一挙上映でもいいぞ(10時間かからないし)!
[cf_event]
関連リンク
■新文芸坐 http://www.shin-bungeiza.com/
■Webアニメスタイル http://animestyle.jp/
NOTES
- 『アルプスの少女ハイジ』(1974年)。演出(監督):高畑勲。
- 『UFOロボ グレンダイザー』(1975-77年)。『マジンガーZ』、『グレートマジンガー』に続く東映動画のロボットアニメ第三弾。前二作と世界観を共有しているということもあり、兜甲児も出たりする。
- 『無敵超人ザンボット3』(1977-78年)。今をときめくサンライズのオリジナル第一作。人間爆弾でおなじみ。安定の富野作品ですね。
- 『マジンガーZ』(1972-74年)。東映動画のロボットアニメ第一弾。
- 『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-96年)。監督:庵野秀明。
- 『機動戦士ガンダム』(1979-80年)。監督:富野喜幸。こないだからやってる安彦監督の『THE ORIGIN』面白いっすね。
- 『トップをねらえ!』(1988年)。監督:庵野秀明。全6話で構成されるOVAシリーズ。ガンバスター登場シーンのBGM最高。あと最終話。
- 『おそ松さん』(2015-16年)。監督:藤田陽一。なんかやたら売れましたね…。
- 錦織敦史(1978年9月14日-)。『天元突破グレンラガン』のメインキャラデザ、作画監督ほか。
- 『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』(2010年)。監督:今石洋之。これ、ほんとにテレビでやってたんだよな…。ほんとヒドい(褒めてる)。第二期はまだかなー…。
- 『DEAD LEAVES』(2004年)。監督:今石洋之。これも自由すぎる作品ですね。以前、アニメスタイルオールナイトでかかってます。
- 『あしたのジョー』(1970-71年)。監督:出崎統。「ねりかん」は練馬東京少年鑑別所。主人公の矢吹丈が入所してたとこ。
- 『彼氏彼女の事情』(1998-99年)。監督:庵野秀明ほか。今石監督は絵コンテとか作監とかやってる。
- 『ルパン三世 炎の記憶〜TOKYO CRISIS〜』(1998年)。ルパンTVスペシャル第10作。今石監督は作画。
- 水島精二(1966年1月28日-)。ガルパンじゃない方。最近だと『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』(2015年)とか『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014年)とか。今石監督とは『スレイヤーズNEXT』(1996年)とか『マッハGOGOGO!』(1997年)とかと被ってますね。
- 『アイカツ!』第159話「ギャラクシー☆スターライト」(2015年11月12日放映)の原画。結構話題になりましたね。
- 『メダロット』第1話「うごけ! ポンコツメダロット」の原画、第14話「忍びが通る」の絵コンテ・演出・作画監督。
- プロデューサーの堀川憲司さんかな?
- 『レイトン教授と永遠の歌姫』(2009年)の絵コンテ。
- 森小太郎先生によるコミカライズ。全10巻。
コメントを残す